公開日:2022.11.09

半構造化インタビューとは?メリットや実施時の注意点を解説

  • 定性調査

企業がマーケティング調査でよく用いる手法に「インタビュー」があります。インタビューは調査対象者への様々な質問を通して、回答者から情報を引き出すのにとても有効な調査手法です。一方で、インタビューは「インタビュアーの技能」「調査内容の明確さ」「調査対象人数」など様々な要因によって制約を受けるという一面があります。インタビューから適切な結果を得るためには、自社の調査状況に適したインタビュー手法を選択することが大切です。

そのようなインタビュー手法の中で、商品開発やサービス改善の調査によく用いられるのが「半構造化インタビュー」です。「半構造化インタビュー」は集計できる数量調査と深掘りする質的な調査の両方を同時に実施できるという特徴を持っています。この記事では、「半構造化インタビュー」の特徴や注意点について解説します。
 

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半構造化インタビューとは

半構造化インタビューとは、「あらかじめ質問項目を定めておき、回答内容に応じてその心理を掘り下げていく調査手法」です。調査手法としての大きなポイントは、以下の通りです。

● 調査する目的が比較的明確になっている
  例)商品開発、サービス改善、ブランドイメージ把握など

● 大まかな質問内容を事前に設定する
  例)「商品購入を検討しはじめたきっかけは?」「商品に不満を感じる点は?」など

● 回答者から得た答えを、インタビュアーの裁量で深掘りする
  例)「少し使いづらさを感じます。」→「どんな時に使いづらさを感じますか?」など

 
半構造化インタビューは、調査したい内容を効率的に深掘りできるという特徴があります。質問項目が明確になっているため、アンケート調査のような集計結果が得られるとともに、筆記では敬遠されがちな自由回答を引き出すこともできます。また、事前に知りたいポイントの仮説を立てておけば、インタビューを通して検証することも可能です。
 

構造化インタビュー、非構造化インタビューとの違い

「半構造化インタビュー」と比較されるインタビュー手法に、「構造化インタビュー」と「非構造化インタビュー」があります。ここではこれらとの違いについて解説します。

①構造化インタビューとの違い

「構造化インタビュー」とは事前にインタビューする項目を明確に定めておいて、その項目通りに回答を得る調査手法です。例えば、アンケート調査票に記載されているような内容をそのまま口頭で質問して、回答を集計していく形式です。
アンケート調査票に記載されているような内容を質問するところは共通ですが、そこから得た回答についてより深掘りしていくのが「半構造化インタビュー」となります。

例:構造化インタビューの場合
質問「所有している掃除機はどこで購入されましたか?」
回答「TV通販で購入しました。」

例:半構造化インタビューの場合
質問「所有している掃除機はどこで購入されましたか?」
回答「TV通販で購入しました。」
質問「なぜTV通販で購入されたのですか?」
回答「普段はネットショップで検討することが多いのですが、たまたまTVで見かけた実演に感動して、すぐに注文してしまいました。」

 
※相手の回答に応じて、より詳しい状況や心理を深掘りしていきます。

②非構造化インタビューとの違い

「非構造化インタビュー」とは事前にテーマだけを決めておいて、インタビューする項目を定めないで回答者から自由な意見や考えを引き出すインタビュー形式です。調査する内容の情報が少なくて「調査項目を明確にできない」「仮説をうまく立てられない」「調査設計するためのヒントが欲しい」という場合に適切なインタビュー手法です。
半構造化インタビューとの大きな違いは「調査項目を明確にしない」ことです。例えば、「家電製品の情報をどこから入手するか?」というテーマだけを決めておき、そこからの回答や質問はインタビュアーと回答者のやりとりに任せる形になります。そのため、非構造化インタビューは、半構造化インタビューよりも回答者から幅広い意見を得られるというメリットがあります。その一方で「話が本来のテーマから大きくずれてしまう」「インタビューが長時間になりやすい」「明確な結論を導き出しにくい」などのデメリットがあります。
 

グループインタビュー、デプスインタビューとの違い

インタビュー調査でよく用いられる手法に、「グループインタビュー」と「デプスインタビュー」があります。
ここではこれらと「半構造化インタビュー」との違いについて解説します。

①グループインタビューとの違い

「グループインタビュー」とは6~8名程度の回答者に対して、質問票に記載してもらいながらインタビュアーの質問や回答者同士の会話から情報を引き出すインタビュー手法です。グループインタビューは進め方によっては、半構造化インタビューとして利用することができます。
ですが、グループインタビューの大きなメリットは、「回答者の集団心理を引き出せる」ことにあります。消費者の行動は往々にして知り合いやメディアなど外部情報に左右されます。グループインタビューでは回答者をグループにすることで、個人の心理的ブロックを外したり、集団心理を引き出すことができます。
そのため、グループインタビューで半構造化インタビュー的特性を強く打ち出してしまうと、グループインタビューの持つメリットを失う可能性があります。グループインタビューを実施する際は、できるだけ自由度の高い回答を得られる調査設計をおすすめします。

②デプスインタビューとの違い

デプスインタビューとは、インタビュアーと回答者が1対1でインタビューを行う調査手法です。デプスインタビューには「回答者を深く理解できる」「他人の目を気にしない環境をつくれる」「回答者の深い事情や心理を聞ける」という特徴があります。デプスインタビューは1人の回答者を深く調査するという特性から、調査手法としては「非構造化インタビュー」と分類されます。
 

半構造化インタビューのメリット

半構造化インタビューは数値として把握できる集計調査と、ユーザー心理などの質的な情報を同時に得られる調査手法です。そのため、半構造化インタビューには以下のようなメリットがあります。

①調査目的からはずれにくい

半構造化インタビューは大まかな調査項目が設定されているため、インタビューが調査目的から脱線することを極力、防ぐことができます。そのため、調査から比較的スムーズに分析結果を導き出せるため、費用対効果の高い調査が期待できるでしょう。

②質的情報を入手できる

半構造化インタビューはインタビューによって回答者の心理をうまく引き出せれば、アンケートのような定量調査では得られない、ユーザーのニーズ(必要としているもの)やウォンツ(欲しがっているもの)を把握できます。ニーズやウォンツは活用次第によっては、革新的な新商品やサービスの開発につなげられる可能性があります。

③調査コストを抑えられる

半構造化インタビューは比較的短い時間で調査できるため、時間や費用面においてコストを低く抑えることができます。また、「適切な仮説立案」や「スキルの高いインタビューア」によって、非常に費用対効果の高い調査を実施できる可能性もあります。
 

半構造化インタビューのデメリット

多くのメリットがある半構造化インタビューですが、一方ではデメリットも存在します。ここではそのデメリットについて解説します。

①調査設計が重要

半構造化インタビューの効果を高めるためには、事前の調査設計がとても重要になります。調査項目と深掘りする内容がうまく想定されていないと、「深掘りする内容がない」「質問者の意図がよく分からない」など、回答者が答えに困る質問が繰り返される場合があります。

②インタビュアーのスキルが重要

回答者からどれだけうまく話を引き出せるかは、インタビュアーのスキルによって大きく左右されます。同じ調査設計に基づいて半構造化インタビューを実施しても、インタビュアーによって得られる回答は全く異なると考えた方が良いでしょう。
 

半構造化インタビューの注意点

半構造化インタビューから的確な結果を導き出すには、以下の注意点を意識することが大切です。

①調査設計をしっかりと行う

半構造化インタビューは目的を明確にすることが重要です。その上で、その目的を達成するために的確な調査設計をしっかりと行いましょう。この目的と調査設計がうまくかみ合わないと、効果的な調査結果を得ることが難しくなります。半構造化インタビューを実施する際は、マーケティング調査に詳しい方か、外部の専門家に協力をお願いして調査設計することをおすすめします。

②インタビュアーの選定

半構造化インタビューでいかに「質的情報」を回答者から引き出せるかは、インタビュアーのスキルに大きく依存します。優秀なインタビューであれば回答者の本音をうまく引き出せますが、スキルが不足しているインタビュアーでは会話が弾まず、ありきたりな回答しか得られないかもしれません。
インタビュアーの選定にあたっては「調査目的を理解している」「コミュニケーションスキルが高い」「マーケティング知識が高い」など、インタビュアーとしての力量を考慮して選定しましょう。
もし、自社に適切な候補者がいないようであれば、当初は外部からインタビュアーを招くのも一案です。社内のメンバーをインタビューに同席させれば、インタビュアーの育成にもつなげられるでしょう。

③誘導質問をしない

半構造化インタビューは調査目的や仮説が明確な場合、インタビュアーが回答を誘導してしまうケースがあります。例えば「TV通販で購入しました。」という回答に対して、「TV通販で購入したのは実演が分かりやすかったからですか?」と実演効果を誘導するような質問です。このような質問は、回答者が自分の心理を深掘りする前に「実演が分かりやすかった」と安易に判断する危険性があります。
インタビュアーはなるべく自由に回答者が考えられる状況をつくることが大切です。もし、回答者が回答に困っているような状況になったとしても、安易に選択肢を提示するのではなく、慌てないで回答を待つように心がけましょう。
 

まとめ

ここまで、「半構造化インタビュー」について解説しました。半構造化インタビューは使い方によってはとても効果的な結果を、効率よいコストで得られる調査手法です。調査設計やインタビュアーについては高いスキルが求められますが、その点をクリアすれば圧倒的な費用対効果を生み出す可能性を秘めています。
マーケティング戦略や商品開発の有効なヒントを得たいとお考えの方は、一度、外部の専門家に相談することをおすすめします。信頼できる専門家であれば、半構造化インタビューの調査設計やインタビュアーなどについて、きっと良いアドバイスを得られるでしょう。
数値データと質的深掘りが得られる「半構造化インタビュー」で、ぜひ自社のマーケティング戦略に革新を起こしてください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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