公開日:2022.12.26

感性評価とは|活用方法や注意点を解説

  • マーケティングリサーチ用語解説集

感性評価とは

感性評価とは、五感と呼ばれる感覚器官を通して生み出される感じ方や、感じる能力である感性により、味、デザイン、操作性、イメージなどを評価して数値でとらえる手法です。感性を通した評価や行動の測定、観察の結果は、学術研究や商品・サービスの開発などに役立てられており、古くから「聞香」や「利き酒」など、人の五感を通した評価が行われてきました。
現在では、視線や瞳孔の動き、脳の生体信号を測定するなど、科学に基づいた消費者心理の分析ができるようになってきたことで、より感性評価の重要性が高まっています。
 

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感性評価の目的

感性評価が注目される背景としては、商品サービスの均質化や価格の均等化が進み、さらに情報化の進展によって、競合商品サービスとの差別化が重要な課題となっていることがあげられます。
学術研究からビジネス領域まで幅広く活用されていますが、ビジネス領域では、顧客が感じる自社商品の使い勝手や使用上の満足感、商品イメージなど、顧客が感性面でどのように評価しているのか、その実情を把握するために用いられ、現行商品の改良や改善、新商品開発のアイディアを発見する機会として期待できます。
 

感性評価の例

感性評価では感覚や知覚により評価を行いますが、その測定および観察方法は様々です。視線計測(アイトラッキング)では視線や瞳孔の動き、ユーザビリティテストでは被験者の実績(課題の達成率、達成に要した時間、課題の失敗率など)、質問紙調査(アンケート)では回答結果を分析することで、感性を通した評価を行います。

視線計測(アイトラッキング)

アイトラッキングの方法

アイトラッキングとは、被験者の視線や瞳孔の動きをトラッキング(追跡)することで、「目の動き=視線」を定量的に観察することができます。被験者が「どこを」、「何を」、「どの順番で」、「どれくらいの時間」見ていたかを測定してデータ化して、その結果から、被験者が注目するポイントや関心の高さなどを推測することができます。
アイトラッキングの方法としては、メガネのように装着して計測するメガネ型や、離れた場所から計測する据置型が広く利用されています。測定したことを視覚する方法としては、被験者の「視線の集中度合い」を色で表示するヒートマップや、被験者の「視線の動き」を追跡し表示・記録するゲイズプロットが広く利用されています。

ヒートマップ(注視量を可視化)

よく見られている箇所が赤色、見られる頻度が減るにつれて表示される色が黄色、緑色へと変化し、サーモグラフィーのようなグラデーションで注視ポイントを表示する方式です。視点を色で区別し、注視点をマッピングしてディスプレイ上に表示することで、被験者の関心度の高さを知ることができます。

ゲイズプロット(視線の軌跡を可視化)

被験者の視線が「どこ」を見ているのか、「注視時間」は、「どのように移動」しているのかを追跡しディスプレイに表示、記録できる仕組みです。被験者の関心の強さ、関心の持ち方の順位を知ることができます。
 
 
 
ゲイズプロット(視線の軌跡を可視化)
 

アイトラッキングが用いられる場面

アイトラッキングは、マーケティングからものづくり現場、社会的行動、医療福祉、学術研究など、さまざまな場面で用いられています。マーケティングに関する場面では、商品本体からパッケージデザインの評価まで、また店内広告や商品陳列棚のレイアウト、POPなどマーチャンダイジングに関わる場面、さらにWebサイトやアプリ、様々な電子機器端末の評価まで多岐に渡る場面で活用されています。
その他にも、社会的な行動としてモノづくりや医療・福祉、教育現場、自動車運転などの行動認識や技術開発のために、さらに人間工学の学術研究にまで広く用いられています。

ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、主に商品やWebサイト、アプリについて、被験者にプロトタイプを試用してもらう手法です。どこがどの程度使いやすいか、使いにくいかといった課題を発見します。
主な実施方法としては、オフライン型とオンライン型があり、前者は、会場で被験者に機器などを操作や試用してもらい、被験者の動きや回答、発言などを基に評価をする方法です。後者は、オンラインツールを使って事前に準備したテストプログラムを一人で実施してもらう方法などがあります。

質問紙調査(アンケート)

アンケートでは、主に尺度法とSD法に基づく設問構成が用いられます。
尺度法とは、分かりやすい評定の段階を設定、例えば「満足、やや満足、どちらとも言えない、やや不満、不満」という5段階で被験者に回答を求める方法のことを指します。
SD法は対局にある形容詞、例えば対となる「満足→不満」の度合いを、5段階または7段階の尺度で回答を求める方法を意味します。
 

感性評価の注意点

感性評価では、被験者の行動測定や観察が難しくなることがあります。アイトラッキングでは、「急に1点を注視、逆に視線が散漫な動きをする」など、想定外の行動を示すことがありますので、適切な分析プログラムを採用するなど、運用面の注意が求められます。またテーマによっては、心身の状態を条件にする等、被験者募集条件の工夫も考えられます。
 

感性評価における被験者募集の重要性

感性評価では、被験者募集(被験者リクルート)が非常に重要です。とくに学術研究においては、被験者が募集条件を満たしていること、結果に影響を与えるようなバイアス(偏り)をできるだけ無くすことが成功のカギになります。
学術研究では、被験者の募集条件が厳密に規定されることが多いですが、個人の属性に加え、心身の状態にとどまらず、研究テーマによってはライフスタイルに関する情報など、踏み込んだ情報が必要となることがあります。
被験者の条件を十分に満たさない感性評価では、必要な結果が得られないことや、第三者から被験者の適性を指摘される可能性がありますので、被験者募集(被験者リクルート)が困難な場合は、専門の会社に協力を求めるという方法もあります。
 

まとめ

感性評価はビジネスから様々な生活場面、さらに学術研究の場にまで利用が広がっています。ビジネス・学術研究問わず、より信頼できるデータを得るためにも、適切な分析プログラムを採用するなど運用面の注意が必要です。
また被験者が募集条件を満たしていることはもちろん、テーマによっては、調査(研究)主体の関係者に近い方といった、バイアス(偏り)がかかる可能性のある方を避けることが重要です。被験者募集条件により必要な人数を確保することが難しい場合は、被験者募集(被験者リクルート)できる会社に相談することをおすすめします。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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