公開日:2023.03.23

【顧客満足度調査】学生・保護者の満足度を上げるためのアンケートとは?

  • 顧客満足度

顧客満足度調査(以下CS調査)は、その目的によって、あるいはBtoCかBtoBか、業種、職種等の対象によっても質問内容が異なります。ここでは学習塾、予備校、習い事、資格取得、語学、趣味や教養等の「教育サービス」の受講者に対する顧客満足度調査のテンプレートについて解説しています。子供を学習塾に通わせている場合は、子供だけでなく親も対象としています。
 
また、調査の目的や実施時の注意点、アンケート項目設定時のポイント、実施の流れ、調査結果の活用方法についても解説しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
 

 
 

教育サービスにおける顧客満足度調査の必要性と課題

CS調査とは、自身が提供する教育サービスが、どのように顧客に評価されているのかを知るための調査です。また教育サービス事業者としての信頼性、顧客との関係性の強さも知ることができます。CS調査の最終的な目的は、企業収益の向上、既存顧客の維持確保と新顧客の獲得のための手段を見出すことです。

教育サービスの現状

教育サービスには、様々なカテゴリーがあります。文科省の教育サービスに関する報告書の中では、大きく「社会教育、職業・教育支援施設」と「学習塾、教養・技能教授業」に区分されています。ここではビジネスとしての顧客満足度を知るための調査なので、公的な支援も関わる前者の教育サービスは対象から外します。
子供の「学習塾、教養・技能教授業」は、大きく学習塾と習い事に区分されます。また社会人の世界は、「教養・技能教授業」(習い事)に相当します。スキルアップのための語学、資格取得、生活を豊かにするための趣味やサイドビジネス講座など、高齢者では健康寿命の延長に合わせた生涯学習もあります。教育サービスは、多様な顧客層に向けたカテゴリーで構成されています。

教育サービスの課題

教育サービスの顧客は、受講者本人だけでなく、子供の親や高齢者を後見する人、従業員の教育を支援する立場の人も含まれます。そのため、受講者と同時に支援者の満足度の向上も重要な課題となります。ここでは「自社の教育サービス」を選んだ理由だけでなく、受講の背景を踏まえた満足度を高める要件の検証、現行サービスの改善と新たなサービスの発見を目的としています。
 
 

アンケート項目を設計するときの注意点

調査目的を明確にする

生活者が教育サービスを受ける背景には、様々な背景と目標があります。「どのような人」が、「どのような目的」で、「どのような教育」を受講するのかです。教育サービスの対象となる年代層の広がり、教育カテゴリーの拡大、さらにITの活用による講義方法の多様化もあって、多様な対応力が問われる状況となっています。どのような顧客の目標や背景に対応する満足度を見るのかなど、目的から外れない調査設計が必要です。

調査対象を明確にする

調査の目的によって、調査対象とする顧客層が変わってきます。学習塾では子供世代とその保護者、習い事では子供世代(保護者含む)と社会人世代の両方が対象になります。そのため、目的にそった顧客層を対象とする調査票の設計が重要です。また調査対象とする満足度は、教育サービスの中の講座内容を評価対象とするのか、教育サービス事業者全体を評価対象とするのかなど、対象を明確にする表現も必要です。

教育サービスを受講する背景を踏まえた項目設計

教育サービスを利用する目的は、学習塾と習い事では目的が異なるケースがほとんどです。ただし学校の学習指導要領の変更でプログラミングやダンスが必修化、それに伴い学業の一環として習い事の枠内での利用も見られます。また学習塾では親が受講料を負担、社会人でも会社負担で教育サービスを受講するケースも見られるなど、費用負担の面で共通する状況もみられます。そのため、目的とする顧客満足度を正確に把握するためには、受講者の背景の違いを踏まえた項目設計が必要です。

アンケート項目は、回答者が回答しやすい順番となるようにする

CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。ここでの「起」は自分が受講したいと思う教育サービス事業者を知るという認知、「承」で何を目指して受講するかという目標と受講の状況を聞きます。「転」で受講する教育サービスを決定するという意思決定行動、続いて「結」の実際に受講した教育サービスの「満足度評価」へとつながって行きます。

適切な回答方式(単一回答、複数回答、自由回答)を選択する

単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。

適切な集計方法を選択する

分析に応じて集計・分析軸を設定します。

第三者によるアンケート項目と調査票を確認する

関係メンバー以外の社内の方に、調査票全体を客観的に検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
 
 

実施する流れ

CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。

① 目的と検証課題の想定
② 目的に対応する回答者の属性、回収目標数を決定
③ 回答者のサンプリング、リスト整理
④ アンケート項目の設計
⑤ アンケート項目にそった集計方法、分析方法を決定
⑥ 調査実施、集計作業
⑦ 調査結果の分析および報告書作成

 
 

調査結果の活用方法

教育サービスの顧客満足度を聞くことで、「自社の教育サービス」の強みと弱み、現在とこれからの受講生(保護者を含む)とのつながりのあり方も知る機会となります。アンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。

認知

顧客が選んだ「自社の教育サービス」をどのような経路で知ったのか、その結果から自身の情報発信効果が検証できます。広告宣伝やHPなど公式サイト、キャンペーンやパブリシティ活動などを含め、自身の情報発信方法を見直す契機ともなります。

教育サービス受講の目標と状況

顧客の立場により、教育サービスに求める成果は様々です。顧客が目指す目標は何か、その目標を達成するための受講状況を知ることで、顧客層ごとに求める教育サービスのイメージが確認できます。このイメージと自身の現状の比較が、強化および改善すべき要件の発見へとつながります。新顧客を惹きつける要件の開発、さらに、現行の教育サービスメニューのバージョンアップに向けた気づきを得られる可能性もあります。これらの展開で、次ステップに向けた顧客の取り込みなど、発展的な貢献が期待できます。

教育サービス事業者の選定(意思決定行動)

「自社の教育サービス」の選定理由から、教育サービス事業者に求められるセールスポイントの一面が見えてきます。顧客を惹きつけるセールスポイントは何か、自身のその充足状態を知る手立てとなります。現在の強みをより強化し、今後に向けた改善ポイントの発見につながって行きます。

顧客満足度評価

現状と今後について、優先的に改善すべき顧客の評価ポイントを知ることができます。また満足度が低い項目は、対象サービスの弱みと同時に顧客の潜在ニーズも表している可能性があります。顧客が目指す目標と、項目別の満足度の相関を見ることで、教育サービスにおける競争力の強化と差別化のポイントを見出す機会となります。さらに、顧客が求める教育サービス事業者のあるべき姿、サービスコンセプトの見直しなどへの活用が可能となります。

顧客満足度評価

現状と今後について、優先的に改善すべき顧客の評価ポイントを知ることができます。また満足度が低い項目は、対象サービスの弱みと同時に顧客の潜在ニーズも表している可能性があります。顧客が目指す目標と、項目別の満足度の相関を見ることで、教育サービスにおける競争力の強化と差別化のポイントを見出す機会となります。さらに、顧客が求める教育サービス事業者のあるべき姿、サービスコンセプトの見直しなどへの活用が可能となります。
 
 

テンプレートの解説

ここでは、教育サービスの「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。ここでは、受講先が複数ある場合には、直近のものについてお答えください。

※「自社の教育サービス」の部分に御社の教育サービス名等を当てはめます。
 

【認知】
Q1.この「自社の教育サービス」は、どこで知りましたか。(お答えはひとつ)

1.テレビ
2.ラジオ
3.雑誌
4.新聞・チラシ
5.教育サービス事業者のHP
6.インターネット検索
7.インターネット広告
8.SNS・ブログ
9.駅や街中の看板
10.学校・勤め先
11家族・友人・知人からの口コミ
12その他(             )

 
この設問では、教育サービスの受講先となる「自社の教育サービス」の情報に触れた主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
 
 

【受講の目標】
Q2.何を目標として受講していますか。(お答えはいくつでも)

1.志望校に合格
2.学校の成績アップ(ダンス・プログラミングなど含む)
3.キャリアアップ(社内外を問わない)
4.サイドビジネスのためのスキル取得
5.趣味のレベルアップ
6.余暇の充実
7.定年後の自己啓発
8.日常から離れた時間づくり
9.人と交流の場をつくる
10.その他(            )

 
この設問では、顧客が目指す目標、教育サービスで達成したいことを聞きます。
 
 

【受講タイプ】
Q3.どこで教育サービスを受講していますか。(お答えはひとつ)

1.学習塾
2.カルチャーセンター(民間経営)
3.専門教室(音楽、語学、書道など)
4.ビジネスプログラム専修教室(ビジネススクール、外部委託の社員教育も含む)
5.通信教育(全カテゴリー・オンライン講座含む)
6.その他(            )

 
この設問では、どのようなタイプの教育サービスを受講しているかを聞きます。
 
 

【受講方式】
Q4.どのような受講方式ですか。(お答えはひとつ)

1.教室・個人で受講
2.教室・集団で受講
3.完全オンラインで受講
4.送付教材で受講
5.教材とオンラインで受講
6.教室とオンラインで受講
7.その他(            )

 
この設問では、受講方式について聞きます。
 
 

【受講料の支払者】
Q5.受講料を支払うのは誰ですか。(お答えはひとつ)

1.受講者本人
2.受講者の親
3.受講者の子供
4.受講者の縁者
5.受講者の勤務先
6.その他(            )

 
この設問では、受講料の支払者について聞いています。
 
 

【選定理由】
Q6.この「自社の教育サービス」を選定した理由を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.知名度が高い塾・教室だから
2.webの情報で上位にランキングされているから
3.著名な講師がいるから
4.読売・朝日などメジャーなメディア系列だから
5. TV番組などでよく目にするから
6. TVCMなどでよく目にするから
7.キャンペーンなど勧誘活動が活発
8.知人などの紹介
9.受講料支払者の指名
10. SNSなどの評判
11.自宅の最寄りで、安心感があるから
12.その他(            )

 
この設問では、教育サービスの受講先として「自社の教育サービス」を選んだ理由を聞きます。教育サービス事業者としてのセールスポイントの一面を知るためです。
 
 

【重視点】
Q7.この「自社の教育サービス」を選ぶ際に重視した点を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.カリキュラムが充実
2.講師陣の充実
3.先進的な教育プログラムを導入
4.先進的な授業機材を導入
5.テキストなど教材の品質
6.教育サービスのブランドと信頼性
7.オープンな成果事例の公開
8.オープンなコミュニケーション環境
9.講義内容のフォロー体制
10.受講料の適切さ
11.受講期間の適切さ
12.受講者の雰囲気
13.教室(施設)の雰囲気
14.教室・施設の立地(利便性)
15.その他(            )
 
【最重視点】
Q8.この「自社の教育サービス」を選ぶ際にもっとも重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)
該当する回答例の番号を記入してください。

(    )

 
これらの設問では満足度を評価する項目は何か、その中でも決定要因となる項目は何かを聞きます。
 
 

【総合的満足度】
Q9.「自社の教育サービス」の総合的な満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.非常に不満

 
この設問では、「自社の教育サービス」の総合的な満足度を聞きます。
 
 

【項目別満足度】
Q10.「自社の教育サービス」を選択した重視点の項目、それぞれについて満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

  非常に満足 やや満足 どちらとも
いえない
やや不満 非常に不満
カリキュラムが充実
講師陣の充実
先進的な教育プログラムを導入
先進的な授業機材を導入
テキストなど教材の品質
教育サービスのブランドと信頼性
オープンな成果事例の公開
オープンなコミュニケーション環境
講義内容のフォロー体制
受講料の適切さ
受講期間の適切さ
受講者の雰囲気
教室(施設)の雰囲気
教室・施設の立地(利便性)

 
この設問では、評価項目のそれぞれについて、満足度を聞きます。
 
 

【継続受講意向】
Q11.今後、この「自社の教育サービス」を受講したいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に継続したい
2.やや継続したい
3.どちらともいえない
4.あまり継続したくない
5.全く継続したくない

 
この設問では、「自社の教育サービス」の受講経験の満足度を背景として、今後の受講者(保護者・会社関係者含む)と事業者の関係について聞きます。
 
 

【他者への推奨意向】
Q12.この「自社の教育サービス」を友人や知人に勧めたいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に勧めたい
2.やや勧めたい
3.どちらともいえない
4.あまり勧めたくない
5.全く勧めたくない

 
この「継続受講意向」と「他者への推奨意向」は、「自社の教育サービス」に対する顧客のロイヤルティの強さを知るための設問です。
 
 

【自由回答】
Q13.「自社の教育サービス」に対するご意見などがありましたら、ご自由にお書きください。(自由回答)

(                          )

 
教育サービスのあり方など、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の学業やスキルアップなど、自由な発想での意見が期待できます。
 
 

【プロフィール】
ご回答者のプロフィールについてお伺いします。
F1.性別(お答えはひとつ)

1.男性
2.女性
 
F2.年齢(お答えはひとつ)
1.20歳未満
2.20代
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代
7.70歳以上
 
F3.職業(お答えはひとつ)
1.学生
2.会社員
3.会社役員
4.自営業
5.公務員
6.団体職員
7.パート・アルバイト
8.専業主婦
9.無職
10.その他(             )

 
これらプロフィールについての設問は、受講者の目標や背景ごとの満足度の違いを把握するためのものです。教育サービスの内容とその背景や満足度の評価項目とのクロス分析に使います。
 
 

まとめ

CS調査は、対象の教育サービスの満足度を聞くことで、今後の教育サービスのあり方、ビジネスモデルの指針を改善するヒントとなります。教育サービスの提供者としてカリキュラムの充実、教育サービスに関連する情報発信、顧客とのコミュニケーション方法など、課題の先取りを読み取る手段を見出す方法としても期待できます。テンプレートを使用することで調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)

”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。

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NPS

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NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、顧客ロイヤリティ(ブランドや商品、またはサービスに対する「信頼・愛着」のこと)を計測するための指標のことです。NPSは事業の業績との相関が非常に高い指標であることから、欧米企業(フォーチュン500)の3分の1が導入しているといわれており、日本でも顧客満足度と並ぶ新しい指標として注目されています。

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