2024.09.12
定性調査の設計方法を事例で解説~売上低迷の要因調査~
企業が新商品を開発し、満を持して市場に投入しても、必ずしも売上目標を達成できるわけではありません。売上目標を下回り、低迷してしまうケースも少なくありません。この……
公開日:2023.06.06
現在、家電業界は変革の渦中にあります。市場は飽和しつつありながらも、新たな動きが見え始めています。顧客の進化するニーズに対応するため、家電メーカーは多様な製品展開やスマート家電の普及、そしてオリジナル性を追求した製品開発などに取り組む必要があります。これには新たな課題と機会が立ちはだかっています。
こうした現状を考えると、家電製品の製造企業にとって顧客満足度調査(CS)は非常に重要です。自社製品が購入者にどのように評価されているのかを把握することで、より良い商品やサービスを提供し、収益向上や新たな顧客獲得を目指すことが可能になります。
そこで今回は、家電の購入者に対するCS調査のテンプレートを紹介します。こちらのテンプレートは、購入者が家電を選ぶ理由や使用時の満足度、ブランドロイヤルティなどを把握することを目的としています。また、購入者の感性を製品に取り込む方法についても考える上での手がかりとなるでしょう。
本コラムでは、こちらのテンプレートの解説を通じて、家電製品のマーケティングとCS調査の重要性について考えます。家電業界の現状と課題を踏まえつつ、顧客満足度調査が企業の成長と競争力強化にどのように寄与するのかについて、考え方を共有していきます。家電業界の未来を見据え、より良い製品と顧客体験を追求するための一助となることを目指しています。
また、こちらのコラムでは調査の目的や実施時の注意点、アンケート項目設定時のポイント、実施の流れ、調査結果の活用方法についても解説しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
CS調査とは、自社の家電製品が購入者にどのように評価されているのかを知るための調査です。どのような種類の家電製品が、どのような目的と理由で購入されているのか、その使用上の満足度、ブランドおよびメーカーと顧客間の関係性であるロイヤルティの強さを知ることができます。CS調査の最終的な目的は、家電販売による自社の収益向上、既存顧客の維持確保と新顧客の獲得のための手段を見出すことです。
国内の家電市場は飽和状態で推移しており、買い替え需要に支えられた成熟市場となっています。その状況下でシンプルな機能性に特化して価格競争力で差別化、逆に高付加価値家電でオリジナリティを追求するなど、多様な展開が見られます。さらに新型コロナウイルス渦により在宅時間が増加、生活者のAV機器や理美容機器、家事に関わる家電などの高性能化や利便性の見直しが進んでいます。その流れもあって、新しい家電需要の流れが生まれています。
成熟した家電市場ですが、生活者の家電に対する認識の変化に伴って、新たな動きが見られます。ひとつはオリジナリティの高い家電製品の開発を展開する新興家電メーカーの台頭、もうひとつはエアコンや給湯器、ロボット掃除機、炊飯器などインターネットを利用したスマート家電(IoT家電)の広がりです。また生活者が家電製品を選択する場合、品質やデザイン、価格などの満足感に加え、使用時の体験感覚や所有していることへの納得感などの感性を重視する傾向が見られます。そのため、先進的なスマート家電やオリジナリティの高い製品の展開と同時に、顧客の感性をどのように製品に取り込んで行くのかが大きな課題となっています。
家電製品は購入の目的や理由により、顧客が重視するポイントが異なります。購入理由や購入目的に対応する満足度なのか、家電製品のハードウェアとしての満足度を見て行くのかなど、調査目的を明確にする必要があります。さらに目的にそった設問の流れの中で、継続利用と他者への推奨意向の評価へ導くなど、満足度評価の先にある展開も重要です。
目的にそった調査を進めるためには、調査対象とする顧客のセグメントや対象家電の明確化など、調査対象を具体的に示す表現が必要です。また満足度を聞く評価項目については、ハードウェアとしての性能なのか、使用上の印象か、またコストパフォーマンスに対する評価なのかなど、質問の対象も明確に表現することが重要です。
ひとつの家電を取り上げても、使用する人の購入理由と目的、さらに家電への「こだわり」や「使用感」など感性としての受け止め方が異なります。購入理由と目的、期待感に加え、顧客の感性の受け止め方を踏まえた項目設計が重要になります。
CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。ここでの「起」は顧客が購入した家電製品は何か、どこでその家電製品を知ったのかという認知、「承」で購入の理由と目的、購入先を聞きます。「転」は購入する家電製品を決定するという意思決定行動、続いて「結」の実際に使用した家電製品の「満足度評価」へとつながって行きます。
単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。
分析に応じて集計・分析軸を設定します。
関係メンバー以外の社内の方に、調査票全体を客観的に検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。
家電製品の顧客満足度を聞くことで、自社および自社製品の強みと弱み、現在とこれからの顧客とのつながりのあり方も知る機会となります。アンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。
顧客は自社の製品をどのような経路で知ったのか、その結果から自社の情報発信効果が検証できます。マスメディアでの広告宣伝やHPなど公式サイト、キャンペーン、店舗、Webの価格比較サイトなどを含め、自身の情報発信方法を見直す契機ともなります。
顧客はどのような理由と目的で「自社の製品」を購入したのか、顧客のニーズを知ることができます。また自社が想定したコンセプトや顧客への訴求ポイントとの整合性を見るなど、多様な活用が期待できます。さらに、購入先を聞くことで、認知経路と販路の関係性を検証する手立てとなります。
顧客の選択理由は、自社が想定した製品のセールスポイントの検証、顧客が受け止める感性の評価などを知る手立てとなります。またメーカーの選択理由から、自社のセールスポイントの検証、顧客との関係のあり方を検討する機会ともなります。
顧客の評価ポイントから、自社製品の改善すべき点を知ることができます。また満足度が低い項目は、自社製品の弱みと同時に顧客の潜在ニーズも表している可能性があります。さらに購入理由や目的と顧客満足度の相関を見ることで、顧客が求める家電製品の機能や役割などの新しいイメージを発見する機会として活用が期待できます。
こちらでは、対象とした家電の「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。
※「製品」の部分に該当の商品名等を当てはめます。
以下の設問では、「製品」の情報に触れた主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
以下の設問では、「製品」の購入パターンについて聞きます。
以下の設問では、顧客が「製品」に求める役割と期待について聞きます。
以下の設問では、顧客が「製品」を選んだ理由について聞きます。
以下の設問では、「製品」の購入先を聞きます。認知経路との相関性を見ることができます。
以下の設問では、検討したメーカーの注目点について聞きます。
以下の設問は、「製品」を選ぶ際に重視した点を聞きます。
上記の設問と合わせ、これらの重視点に関する設問では、満足度の評価で重視する項目は何か、さらに決定要因となる項目は何かを聞きます。購入目的との相関を見ることで、顧客の期待と充足度の関係を検証する手立てとなります。
以下の設問では、自社の製品の家電製品としての総合的な満足度を聞きます。他の設問と総合的な満足度との相関を見ることで、顧客が求める家電製品としての自社の製品の姿、顧客の感性の訴求ポイントの見直しなどへの活用が期待できます。
以下の設問では、評価項目のそれぞれについて、満足度を聞きます。現在の評価項目の順位から、優先的に強化または改善すべき事柄を見極める手立てとなります。
非常に 満足している |
やや満足 | どちらとも いえない |
やや不満 | 非常に不満 | |
総合家電メーカーの信頼性 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
新興家電メーカーのオリジナリティ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
カタログの表示性能 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
先進的な技術の有無 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
使用方法の分かりやすさ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
操作のしやすさ、利便性の高さ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
実際に手に取った感覚 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
機能性やファッション性を反映したデザインのよさ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
使用場所とのマッチングのよさ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
価格の適正さ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
電気代やメンテナンスのランニングコスト | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
省エネや環境への配慮 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
メーカーのアフターサービスの内容や保証期間 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
店舗のアフターサービスの内容や保証期間 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
問い合わせ先の分かりやすさ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
以下の設問では、今回購入した「製品」の満足度を背景として、これからの顧客と自社の製品の関係について聞きます。
以下の「他者への推奨意向」は、自社の製品に対する顧客のロイヤルティの強さを知るための設問です。
以下の設問では顧客が自社の製品に求める役割、顧客が意識する感性とは何かなど、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の生活感覚や、家電の使用現場に求める事柄、自由な発想での意見が期待できます。
以下のプロフィールについての設問は、自社の製品の使用状況や選定理由、満足度についてのクロス分析に使用します。自社の製品に関する満足度の状況を、より具体的に表現するためのものです。
F2.年齢(お答えはひとつ)
1.20歳未満
2.20代
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代
7.70歳以上
F3.世帯構成(お答えはひとつ)
1.単身世帯
2.夫婦世帯
3.二世代世帯(親・子)
4.三世代世帯(祖父母・親・子)
5.その他( )
F4.職業(お答えはひとつ)
1.学生
2.会社員
3.会社役員
4.自営業
5.公務員
6.団体教員
7.パート・アルバイト
8.専業主婦
9.無職
10.その他( )
CS調査は、自社の製品の満足度を聞くことで、今後の機能性や利便性など開発の方向性を探る機会となります。さらに今日の顧客が重視する感性評価、スマート家電化への対応の可能性など、今後の課題を見出す手立てとしても期待できます。テンプレートを使用することで調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
顧客満足度調査( CS 調査)についてのご相談はこちら>
顧客満足度調査(CS調査)
”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。
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