公開日:2024.05.15

消費者調査とは?概要から種類や方法、マーケティングへの応用までご紹介

  • マーケティングリサーチHowto

消費者調査の概要

消費者調査は、マーケティングリサーチ(市場調査)の一環として、企業が消費者のニーズや嗜好、行動パターンなどを把握するために行われる調査です。この調査を通じて、企業は消費者の声に耳を傾け、それを商品開発やサービス改善に活かすことができます。まずは、消費者ニーズを把握する重要性と、消費者調査を実施するメリットについて詳しく説明します。
 
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消費者ニーズを把握する重要性

消費者のニーズを正確に把握することは、企業にとって非常に重要です。市場の動向や顧客の嗜好は常に変化しており、それに合わせて商品やサービスを改善していく必要があります。消費者調査を通じて、消費者の生の声を収集し、分析することで、潜在的なニーズや課題を発見することができます。
 
例えば、消費動向調査を実施することで、消費者の購買行動や価格感度、ブランド選好などを把握することができます。この情報を基に、商品の価格設定や販促施策の立案、ブランド戦略の構築などを行うことができます。
 
また、新商品の開発においても、消費者ニーズの把握は欠かせません。潜在的な需要を探るために、コンセプトテストやプロダクトテストを実施することで、商品の受容性や改善点を明らかにすることができます。
 

消費者調査を実施するメリットについて

消費者調査を実施することで、企業は様々なメリットを得ることができます。ここでは、ターゲットとペルソナ設定とリスク回避の2つの観点から、消費者調査のメリットについて説明します。
 

ターゲットとペルソナ設定に役立つ

消費者調査を通じて収集されたデータは、ターゲットとペルソナの設定に役立ちます。ターゲットとは、商品やサービスの対象となる顧客層のことを指します。一方、ペルソナは、ターゲットとなる顧客層の中から、典型的な人物像を具体的に描写したものです。
 
消費者調査では、対象者の属性や行動、嗜好などを詳細に把握することができます。この情報を基に、ターゲットを明確にし、ペルソナを精緻化することで、より効果的なマーケティング施策を展開することができます。
 
例えば、アンケート調査を通じて、対象者のライフスタイルや購買行動、メディア接触状況などを把握し、ターゲットとなる顧客層を設定することができます。さらに、この顧客層に対してインタビュー調査を行うことで、よりリアルなペルソナを描き、共通認識化することができます。これによりチャネル選択、広告表現、商品訴求がより魅力的なものとなり、マーケティング効果を最大化することができます。
 

リスク回避に役立つ

消費者調査は、企業にとってのリスク回避にも役立ちます。新商品の開発や新規事業の立ち上げなど、不確実性の高い意思決定を行う際には、事前の調査が欠かせません。
 
消費者調査を通じて、市場の反応や受容性を事前に把握することで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。例えば、新商品のコンセプトテストを実施することで、商品アイデアの評価や改善点の抽出が可能です。また、価格感度調査を行うことで、適切な価格設定を行うことができます。
 
さらに、競合他社の動向や市場シェアなども調査することで、自社の強みや弱み、機会や脅威を分析(SWOT分析)することができます。この情報を基に、適切な経営戦略を立案することで、事業リスクを回避することができます。
 
 

消費者調査の種類と方法

消費者調査には、目的や対象に応じて様々な種類と方法があります。代表的な消費者調査の手法として、アンケート調査、インタビュー調査、ソーシャルリスニングの3つを紹介します。それぞれの特徴や実施方法を理解することで、目的に合った調査を選択することができます。
 

アンケート調査

アンケート調査は、消費者調査の中でも最も代表的な手法です。質問票を対象者に配布し、回答を収集します。郵送、電話、インターネット、会場など、様々な方法で実施されます。大規模なサンプルから定量的なデータを収集でき、統計的な分析により、市場の全体像や顧客セグメントごとの特徴を把握することができます。また、調査の手順が標準化されているため、比較的短期間で結果を得ることもできます。
 
一方で、以下の点に気を付ける必要があります。

  • 回答者の主観や記憶違いによるバイアスが生じる可能性がある。
  • 質問項目が固定されているため、深掘りした情報を得ることが難しいという制約がある。

 
アンケート調査を実施する際は、調査目的に合った質問項目の設計と、適切なサンプリングが重要です。対象者の属性や母集団の特性を考慮し、代表性のあるサンプルを抽出することが求められ、質問の順序や表現にも配慮し、回答者の負担を軽減することも大切です。
 
「アンケート調査とは?意味や特徴、目的、手順について基礎からご紹介」のページはこちら>
 

インタビュー調査

インタビュー調査は、対象者に直接インタビューを行うことで、深い洞察を得る手法です。1対1の対面形式や、グループディスカッション形式で実施されます。
 
インタビュー調査は、対象者の生の声を直接聞くことができ、アンケート調査では得られない、詳細な意見や感情、背景にある要因などを探ることができます。モデレータ(インタビュアー)が柔軟に質問を調整することで、対象者の反応に合わせて深掘りすることもできます。ただし、サンプル数が限られるため、結果の一般化が難しいため注意が必要です。また、モデレータのスキルによって、得られる情報の質が左右される可能性もあります。
 
インタビュー調査を実施する際は、対象者の選定と、インタビューガイドの作成が重要です。目的に合った対象者を選定し、インタビューの流れや質問項目を事前に設計することで、効果的な調査を行うことができます。ただし、モデレータには高いコミュニケーション能力と、対象者の反応を引き出すスキルが求められます。
 
「インタビュー調査結果の効果的なまとめ方」のページはこちら>
 

ソーシャルリスニング

ソーシャルリスニングは、SNSやブログ、口コミサイトなど、インターネット上の消費者の声を収集・分析する手法です。特定の商品やブランド、トピックに関する投稿を抽出し、消費者の反応や評判を把握することができます。自然な状態での消費者の声を収集でき、消費者が自発的に発信した情報を分析するため、リアルな評価や意見を知ることもできます。また、大量のデータを自動的に収集・分析できるため、効率的な調査が可能です。
 
しかし、収集されるデータの質や信頼性が担保されていない場合があり、投稿者の属性や背景が不明確な場合、情報の偏りに注意が必要です。そして、投稿内容の文脈を正しく理解するためには、高度な自然言語処理技術も求められます。
 
ソーシャルリスニングを実施する際は、適切なキーワードの選定と、ノイズの除去が重要です。調査目的に合ったキーワードを設定し、関連性の低い投稿を除外することで、効果的なデータ収集を行うことができます。また、収集されたデータを適切に分類・分析し、インサイトを導き出すことが求められます。
 
 

消費者調査を行う際の注意点

消費者調査を行う際には、調査目的の具体化と設定、最適な調査方法の選択、調査結果の分析と活用など、各段階で注意すべきポイントがあります。ここでは、消費者調査を成功に導くための注意点について詳しく説明します。
 

調査目的の具体化と設定

消費者調査を行う際に最も重要なことは、調査目的を明確に定義することです。漠然とした目的では、適切な調査設計ができません。調査目的は、具体的かつ測定可能な形で設定する必要があります。
 
例えば、「新商品の開発に向けて、顧客ニーズを把握する」という目的であれば、「新商品のコンセプトに対する評価」「求められる機能や性能」「許容できる価格帯」など、具体的な調査項目を設定します。
 

最適な調査方法の選択

消費者調査を行う際は、調査目的に合わせて最適な調査方法を選択することが重要です。調査方法の選択には、調査目的や対象者、予算、期間などを総合的に考慮して行います。
 
例えば、「新商品に関する消費者調査の場合」や「新商品のコンセプトに対する評価を定量的に把握したい場合」は、アンケート調査が適しています。一方、新商品に求められる機能や性能について、その理由や背景などを深掘りしたい場合は、インタビュー調査が適しています。また、新商品の実際の使い方や評判を収集したい場合は、ソーシャルリスニングが適しています。
 
必要に応じて、複数の手法を組み合わせることで、より効果的な調査を行うこともできます。例えば、アンケート調査で得られた結果をもとに、インタビュー調査で深掘りすることで、消費者のニーズや課題をより詳細に把握することができます。
 
最適な調査方法を選択することで、調査目的に合った質の高いデータを収集し、消費者のニーズや課題を的確に把握することが可能になります。これにより、マーケティング戦略の立案や商品開発、顧客満足度の向上など、様々な場面で活用することができます。
 

調査結果の分析と活用

消費者調査で得られたデータは、適切に分析・解釈し、活用することが重要です。単なるデータの羅列では、意味のある知見は得られません。データの背後にある意味を読み解き、インサイトを導き出すことが求められます。

  • 定量調査の結果定量調査の結果は、統計的な手法を用いて分析します。単純集計やクロス集計、因子分析、回帰分析など、目的に応じた分析手法を選択します。分析の結果は、グラフやチャートを用いて視覚的に表現することで、理解しやすくなります。
  • 定性調査の結果定性調査の結果は、テキストマイニングやKJ法など、定性的なデータを整理・分類する手法を用います。インタビューの逐語録を丁寧に読み込み、共通するテーマや課題を抽出します。調査対象者の語りから、消費者の心理や行動の背景にある要因を探ります。
  • 分析の結果分析の結果は、レポートにまとめ、経営陣や関連部署に共有します。レポートには、調査の目的や方法、サンプルの属性、主な発見事項、考察、提言などを盛り込みます。調査結果を踏まえた具体的な施策案を提示することで、調査の成果を最大化することができます。

 
調査結果は、一度きりで終わるのではなく、継続的に活用することが重要です。定期的に調査を実施し、経年変化を追跡することで、市場の変化や顧客ニーズの変化に対応することができます。
 
 

消費者調査の事例

ここでは、消費者調査を活用した具体的な事例を紹介します。

  • 飲料メーカーの事例大手飲料メーカーA社では、新商品開発にあたって、消費者調査を実施しました。まず、アンケート調査を通じて、消費者の嗜好や購買行動、競合商品の利用状況などを把握します。それらをもとに作成した新商品のコンセプトを複数パターン用意し、各コンセプトの評価や改善点、価格感などをターゲットに近い対象者にインタビュー調査することで、最適なコンセプトを絞り込むことができました。
  • 自動車メーカーの事例大手自動車メーカーB社では、顧客満足度向上のために、定期的な消費者調査を行っています。購入後一定期間が経過した顧客を対象に、アンケート調査を実施。車両の品質や性能、販売店の対応、アフターサービスなどについて評価を行ってもらいます。調査結果を分析することで、改善すべき点や顧客ニーズの変化を把握し、商品開発や販売・サービス体制の改善に役立てています。

 
このように、消費者調査は、新商品開発や顧客満足度向上など、様々な場面で活用されています。
 
 

消費者調査のマーケティングへの応用方法

消費者調査で得られた知見は、マーケティング戦略の立案や実行に役立てることができます。ここでは、消費者調査のマーケティングへの応用方法について説明します。
 
まず、ターゲティングへの活用が挙げられます。顧客の属性や行動、嗜好などを把握することで、市場を細分化し、ターゲットとなる顧客層を明確にすることができます。セグメントごとのニーズや特性を踏まえて、商品開発やプロモーション、価格設定などのマーケティング施策を立案することで、効果的なアプローチが可能になります。
 
次に、商品開発への活用です。顧客の潜在的なニーズや不満点を基に、新商品のコンセプト開発や、既存商品の改良を行うことができます。また、競合商品の利用状況や評価を把握することで、自社商品の差別化ポイントを明確にすることもできます。
 
さらに、プロモーション施策への活用も重要です。顧客の情報収集行動や、メディア接触状況を把握することで、効果的なプロモーション・チャネルを選択することができます。また、広告表現やキャッチコピーなどについて、消費者の反応を調査することで、より訴求力の高いクリエイティブを制作することが可能です。加えて、顧客満足度向上への活用も欠かせません。顧客の満足度や不満点、ロイヤルティなどを定期的に把握することで、サービス改善や顧客対応の向上につなげることができます。また、顧客の声を商品開発やマーケティング施策に反映させることで、顧客志向の経営を実現することができます。
 
このように、消費者調査で得られた知見は、マーケティングの様々な領域で活用することができます。顧客理解に基づいた意思決定を行うことで、マーケティング効果を最大化し、企業の成長と発展につなげることが可能です。
 
 

まとめ

消費者調査は、企業にとって欠かせない情報収集手段であり、マーケティングリサーチの中核をなすものです。消費者のニーズや行動、嗜好などを把握することで、経営戦略の立案や意思決定に役立てることができます。
 
マーケターや経営者には、消費者調査に関する知識と、調査結果を活用する力が必要です。定期的に市場の動向を把握し、顧客ニーズの変化に対応することが重要です。また、社内の関連部署と連携し、調査結果を経営に反映させる体制を整備することも求められます。
 
消費者調査は、単なるデータ収集の手段ではありません。企業と顧客をつなぐ重要なコミュニケーションツールであり、イノベーションを生み出す源泉でもあります。
 
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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