公開日:2024.05.20

ホームユーステスト(HUT)プロフェッショナルに聞く 「HUTの全工程解説と注意すべきポイント」

  • リサーチャーコラム

ホームユーステスト(HUT)は、消費者の日常生活の中で商品を試用・試食し、そのフィードバックを収集する重要な調査手法です。アスマークではHUT業務を円滑に進めるためにHUT専門チームを置いて案件を進行しています。
今回、HUTチームで活躍するお二人から、HUTの工程や各工程におけるポイント、またチームの強みや展望についても詳しく伺いました。HUTの舞台裏にはどのような努力と工夫があるのかをご紹介します。
 
 

 
 

社員紹介

パネリスト
 
 望月 俊介(Shunsuke Mochiduki)

 ・所属:実査部HUTG第3チーム
 ・役職:リーダー

 
 
 
 佐藤 優樹(Yuki Sato)
 
 ・所属:実査部HUTG第3チーム
 
 


インタビュアー

 東川 亜紀(Aki Higashikawa)

 ・所属:マーケティングコミュニケーションG 営業推進チーム

 
 
 
 
 

HUTチームについて

チームの役割と主な業務

東川:まず初めにHUTチームの役割と主な業務を教えてください。
 
望月:HUTチームは、ホームユーステストを専門とした実査チームです。
ホームユーステストは、字のごとく、家庭で試用、試食していただき、アンケートにて評価を得る調査手法です。調査内容を基に、WEBアンケートを用いてターゲットとなる対象者をリクルート(募集~対象者抽出)し、「テスト品の発送」「同封書類の作成」「モニター対応」といった細かな部分をハンドリングしながら、データ納品するまでが主な業務となります。WEBアンケートの内容が、お客様の商品開発やマーケティング活動に大きく影響する為、お客様と密にコミュニケーションをとり、ご相談やご提案させていただきながら進めています。
ホームユーステストは、お客様から「現在販売されている商品」「試作品」をテスト品としてお預かりして実施します。お預かりしたテスト品が、正しく評価されるように実査を行うことで、より良い商品として、世に出るお手伝いをすることがミッションと考えています。
 

チーム紹介

東川:では次にHUTチームの紹介をお願いします。
 
佐藤:現在12名のメンバーが在籍しています。少数精鋭でコミュニケーションもとりやすい為、高い団結力を武器に業務にあたっています。また、1人1案件が基本のスタイルの為、各々が業務工程を把握できている分、何かあった際にお互いが業務フォローしやすい環境にもなっています。
まだまだ発足して若いチームのため、判断に迷うことも多いですが、都度助け合いながら進めているので、とてもコミュニケーションは活発です。笑顔も多く、チームの雰囲気は他部署に負けない自信があります!
 
東川:確かにお二人とも上司と部下という関係性ではありますが、とても仲のいい雰囲気ですよね。ちなみに発足して若いチームということですが、HUTチーム発足の経緯も教えてください。
 
望月:元々HUT業務は、ネットリサーチチームの一業務として行っていました。ただホームユーステストの需要が高くなってきたことに加え、柔軟で丁寧というアスマークの特徴が生きるサービスと考えた結果、これまで以上に力を入れていくために、HUTチームを発足するに至りました。
 
東川:柔軟かつ丁寧なサービスはアスマークの強みですよね。HUTチーム発足により、今まで以上にクライアントに寄り添ったサービスを提供できているのかと思います。
 
 

HUTチームの業務の流れ

東川:では次にHUTチームの業務を段階的に教えてください。
 
望月:はい、主な業務としては5つに区分されます。
 
まず、1つ目は「調査設計」「アンケート内容」「仕様書」の確認です。いただいた、「調査設計」「アンケート内容」「仕様書」を確認し、ターゲットとなる対象者をリクルートする為に必要な設問が揃っているかという観点でチェックしていきます。
 
2つ目は「応募アンケート画面の作成~配信」です。先ほど確認した「アンケート内容」に沿って、対象者をリクルートするための「応募アンケート画面の作成」を進めます。実際には画面作成を担当する部署があるため、適宜確認や意図を伝えながら、画面作成をしてもらいます。作成完了後は、実際のアンケート画面をお客様にご確認いただき、認識の齟齬や追加のご要望がないかを細かくヒアリングしながら、アンケート画面を完成させていきます。完成後は、弊社のモニターへ向けて応募アンケートを配信して、対象者の確保を進めます。
 
3つ目は「応募データのチェック~対象候補者データのご納品」です。回答されたアンケートデータについて、ホームユーステストを行うにあたり不適切なモニターがいないかチェックします。不適切な回答や矛盾する回答をしているモニターは不備とし、対象候補者からは除外することで、本調査の回答の質を担保できるよう行っています。最終的な参加対象者の決定に向けた選定では、お客様が選定する場合と弊社で選定する場合があります。弊社で対象者を選定する場合は、データチェック後に、事前に共有いただいている「調査設計」「優先条件」などを踏まえて選定しお客様にご納品しております。
 
4つ目は「対象者の確定~テスト品の発送」です。対象者確定に向けてのやり取りと並行して、試用いただくテスト品の発送準備を行います。「同封書類の内容の精査」「テスト品の梱包方法の決定」なども併せて進めます。実際に試用いただく上での大きなポイントになるため、時間をかけることが多い工程です。対象者が確定後テスト品を発送します。発送後は試用期間にはいる為、問い合わせ対応などのモニターフォローを行っています。
 
5つ目は「試用/試食後アンケート~ご納品」です。試用/試食完了後に、ご家庭で試していただいたテスト品に関しての評価を聴取する「試用/試食後アンケート画面の作成」を行いモニターへ配信します。配信するタイミングは調査設計によって適宜お客様とご相談しています。試用/試食後アンケートの回収後も、応募アンケートと同様に不適切な回答や矛盾する回答がないかをチェックし、最終的にお客様へデータをご納品しています。
 
東川:これらの作業はどのくらいの期間で実施されるものなのでしょうか?
 
望月:そうですね。テスト品の試用期間にもよるのですが、短いものであれば1カ月程度~長いものですと4カ月かけて行う案件もあります。
 
東川:なかなかの長期間ですね。テスト品試用の期間だけではなく、1つ1つの作業が重いのも長期間に及ぶ理由なのでしょうね。
 
 

各工程における注意点

仕様書チェック

東川:先ほどは段階的に業務内容をお話いただきましたが、ここからは各工程の注意点をお伺いできればと思います。
ではまず初めに仕様書について教えてください。
 
佐藤:はい、「仕様書」は、調査の骨組みにあたる部分になります。
お客様と弊社営業が話し合った内容を基に、「ホームユーステストの実施人数」「納品形式」「アンケート形式」等が仕様書へ記載されています。また、テスト品についての詳細も記載されている「サンプル品仕様シート」や「アンケート内容」も併せて確認し、案件進行を含めた調査全体像を具体的にイメージしていくことが求められます。その中で疑問点や齟齬があれば、事前に営業・お客様にお伺いして、スムーズかつ適切に案件進行できるよう心がけています。

 

応募アンケートと対象者選定のポイント

 
東川:応募アンケートや対象者選定における注意点はいかがでしょうか?
 
望月:応募アンケートは、調査の対象者をリクルートするためのアンケートです。その為応募アンケートでは、ホームユーステストに参加してもらいたい条件に合致する方が、最終的に対象候補者として選別される設計になっているかが大きなポイントです。事前にいただく対象者条件を基に、お客様とコミュニケーションをとりながら、齟齬がないようアンケート完成まで進めます。
 
対象者の選定については、事前にいただいている「対象者区分」「優先条件」に沿って行います。調査の肝になる点として、なるべく選定した対象者の属性(性別や年代等)に、大きな偏りがないようにするという点は注意しています。
 
例えば、テスト品がPとQの2種類があり、1人1製品どちらかを試用する調査があるとします。対象者の属性(性別や年代等)が考慮されず、Pは20代が多く、Qは50代が多いとなった場合、アンケート結果にも偏りが発生してしまう可能性が考えられます。その為、「対象者区分」等の指定がない場合でも、「性年代」を均等に選定するといった配慮をすることも多いです。
 

梱包や発送作業

 
東川:続いて梱包や発送作業について教えてください。
 
佐藤:第一に考えるのは、モニターにテスト品が問題なく届くことです。テスト品の種別や大きさ、形状といった部分で、作業は大きく変わります。例えば、衝撃などで崩れるような食品であれば、緩衝材に包んだり、液漏れする可能性があるものは、チャック袋に入れて密封するなど、どうすれば問題なくモニターの手元に届くかテスト品毎に梱包方法を考えています。
 
第二に考えるのは、モニターがこちらの意図に沿って協力できるかです。モニター毎に「P⇒Q」「Q⇒P」それぞれの順番で試用/試食してほしいとなった場合に、「P」「Q」といったラベリングだけでなく、「1製品目」「2製品目」といったラベリングも併せて行います。そういった細かい点も注意することで、お客様が求める試用/試食方法に沿って参加いただけるよう工夫しています。
 
東川:製品数・パターン数が多いと、とても根気のいる作業になりますね。
スケジュール通りに試用いただくことがとても重要であると思うのですが、テスト開始時にテスト品がモニターの手元にあるように何か対処していることはありますか?
 
望月:はい、大きく2つあります。
 
1つは、「発送時のご連絡」です。テスト品を配送業者に引き渡した段階で、モニターへご連絡をしています。「到着予定日」「伝票番号」などを事前にお知らせすることで、モニター自身が配送業者に問い合わせできるようにする等、テスト開始までに受け取っていただく為に対応しています。
 
2つ目は「居住地の確認」です。案件によって、受け取り期間が短いこともあり、遠方にお住まいの方などで、受け取ることが難しいこともあります。その場合は、応募アンケートにて事前に対象者にならないよう設定する等、お客様とご相談させていただくことも多いです。
 
東川:なるほど。テスト品やローテーションが多くなると発送間違いの危険性も高まるとおもうのですが、発送間違いを防ぐための工夫もあるのでしょうか?
 
佐藤:HUT案件では、案件ごとに固有の番号をモニターへ割り振ります。その番号を「伝票番号」「同封書」等にも記載することで、送付物やお届け先に間違いがないようにしています。また、テスト品が複数あったり、ローテーション等がある場合は、必ず同時作業はせず、1つのセクションごとに作業をするようにしています。

試用後アンケートについて

東川:テスト品試用時のアンケートの注意点はいかがでしょうか?
 
望月:実施するアンケートには、「試用/試食後アンケート」以外にも、テスト品を試す前に行う「試用/試食前アンケート」や、毎日回答してもらい日々の変化を聴取するような「日記アンケート」のようなものもあります。ただ、いずれのアンケートでも共通して、文言の表現はしっかり伝わるか、どのタイミングで回答するのか等、回答するモニターの視点を持ちながら、アンケート内容をチェックすることが大切です。
 
また、配信するタイミングもとても重要になります。3日間で試用/試食してから回答して欲しいのに、1日目に配信してしまったり、夜に回答して欲しいのに、お昼頃に配信してしまったりすると、お客様が必要な情報と乖離してしまう可能性があるためです。
 
このアンケート回答が、お客様への成果物となりますので、「お客様の意図」「モニター視点」の両方を常に考えながら進めることが大切だと考えています。答えがない部分も多いですが、面白さでもあると思いながら、日々取り組んでいます。
 
東川:細かな工夫や配慮が必要な作業ですが、面白いと感じてお仕事ができるのは素晴らしいですね。
 

 
 

テスト品試用に関して押さえておくべきポイント

送付状について

 
東川:ホームユーステストの要でもあるテスト品ですが、モニターに正しく試用いただくためのポイント等をお伺いしたいと思います。
まずは試用の案内はどのようにされていますか?
 
佐藤:テスト品を送る際に、送付状を同封しています。送付状は大きく分けると、「送付内容」「実施日程」「試用/試食方法」「試用/試食上の注意」の内容から構成されます。
モニターは届いたテスト品を、送付状に沿って、ホームユーステストを実施していく為、ここでもモニター視点がとても大切です。特に「試用/試食方法」「試用/試食上の注意」は、アンケート結果に直結しますし、正しく参加いただけるよう、細かいニュアンスまで気を配ります。また、スムーズに進行してもらえるように、モニターの気持ちを先読みして、モニターからお問い合わせいただきそうな部分は、事前に記載するようにしています。
 

テスト品の管理について

 
東川:機密情報も含むテスト品ですが、管理方法を教えてください。
 
佐藤:お客様から大切な製品をお預かりする為、管理は徹底しております。テスト品は、到着後に検品を行い、鍵付きの部屋にて保管しています。検品結果や個数は管理台帳に記載し、「到着時」「梱包時」の状態は写真を撮影して保管しています。テスト品は世の中に出る前の製品である事も多いため、テスト品到着後~発送までは、一貫して社外に漏れないよう注意を払っています。
 
東川:食品の場合温度管理等もありそうですがその場合の対応も教えてください。
 
望月:冷蔵・冷凍など保管温度に指定があるものについては、弊社内の冷蔵庫・冷凍庫にて保管をしています。また、案件によっては、テスト品の数が多い場合もありますので、その際は臨時で冷蔵庫・冷凍庫を手配して対応しています。
 
東川:機密情報の管理・温度管理も徹底されているのですね。一方でモニターの手元に届いた後の情報漏れに対する工夫等はありますか?
 
佐藤:送付状に「無断で譲渡したり見せたりしない」「調査中に疑問点や不信点等が生じた場合は家族又は友人等に相談せず、弊社担当までご連絡ください」といった内容を記載しています。また、事前に「テスト品の回収」について、再度許諾をとったり、上市前/後に関わらずテスト品の回収がある場合は、返却期限後に督促のご連絡をして、すべてのテスト品が回収できるように努めています。
 

回収がある場合

 
東川:回収のお話がありましたが、回収のために何かされている工夫はありますか?
 
佐藤:テスト品の回収が必要な場合、まず応募アンケートにて、テスト品回収への協力可否を聴取し、回収に協力できる方のみが対象候補者となるように設計しています。
また、ホームユーステストでは、案件ごとにモニターへ固有の番号を振っています。「テスト品」「同封書類」に、上記の番号をラベリングすることで、回収後はどのモニターから回収されているか含めて管理しています。返送がないモニターには、確認の連絡をとりながら、すべてのテスト品を回収できるように努めています。
 
東川:回収が必要なテスト品に関してはすべてチェックされているのですか?
 
望月:はい、すべて検品統合しています。どのモニターが返却できていないかだけではなく、使用量なども確認しています。使用量に問題がありそうな回答データは集計データから除外したりフラグをたてて納品する等お客様と相談しながら進めています。
 
東川:回収には情報漏れ対策だけでなく、正しく試用できているかのチェックができるというメリットもあるのですね。
 

 
 

さいごに

HUT業務の大変なポイント

 
東川:今までお話聞いてきましたが、HUTは実施期間も長く工程も多いので大変な業務だと思うのですが、ここが一番苦労する、また難しいなと感じていることを教えてください。
 
佐藤:そうですね。やはり工数が多い分関わる人も多くなってくるので、営業さん・パートさん・外注先だったりと、沢山の人とコミュニケーションが必要になってくるので、全体で認識の齟齬が出ないようにするのが難しく感じたりはします。また社内のコミュニケーションの難しさに加え、それらを正しくモニターにも伝えなければいけないのでより大変と感じますね。
 
東川:確かに作業工程や関わる人が多い点を考えるとコミュニケーションがいかに重要かが分かりますね。望月さんはいかがですか?
 
望月:佐藤さんが言った内容と被る部分もありますが、やはり表現の部分ですね。クライアントが想定している試用方法だったり、こういった形で使ってもらった上での結果を得たいというのが前提としてあるので、そのためにはモニターに向けてどう伝えていくのかというところが一番難しいです。アンケートで言えば、設問文や選択肢の表現が違う捉えられ方をしないか?ですとか、同封書類であれば使い方が記載の表現で本当に伝わるか?困ることがないか?というところは、常に気にしていますし、一番肝になるところだとは思っていますね。
 
東川:試用方法の伝え方次第で調査が失敗につながってしまいますから、非常に注意深い対応が求められる部分ですよね。

チームが目指す将来のビジョン

 
東川:では最後にお二人それぞれからチームまたは個人としてのビジョンをいただいてもよろしいでしょうか?
 
望月:はい、現在HUTチームは3チーム制で動いており、最近ではチーム間での連携も一層活発になってきています。ただ、今後たくさんのお客様にご依頼いただく為にも、よりチームの垣根を越えて、フォローしあえる体制構築が必要だと感じています。
まだまだ若いチームでもありますので、もう1つ上のステップとして、様々な角度からお客様のご要望に応えられるチームを目指していきたいと思います。
抜群の笑顔と団結力、ユーモア等も武器にしながら、これからもチーム一丸となって邁進してまいります!
 
佐藤:まだ自分も入社歴が浅いので、将来のビジョンというとちょっと重くなってしまうかもしれませんが、HUTチームに入って感じていることとして、ホームユーステストは沢山の業務を多岐に渡って行うので、コミュニケーション能力が必要になってくると思います。
チームみんなが非常にコミュニケーションも取れていて、気を遣えたり、様々なことに気づける方が多くいる為、そういうところを自分も大事にしていきたいと思っています。
また、業務外の話ではありますが、目の前にゴミがあったら拾えるような人たちが多くいらっしゃるので、チームとしてやはり人柄が良い人が多いと思っています。
人柄は業務にも反映されると思いますので、安心してお客様からもご依頼いただけると思っています!
 
東川:お二人の人柄や関係性も良く、団結力の高さをとても感じました!チームの今後の発展も楽しみにしています。
 

 
 

対談を終えて

HUTチームのお二人のお話を伺い、ホームユーステストのプロセスがいかに綿密で多岐にわたるものであるかを再認識しました。各工程における細やかな配慮と工夫、そしてクライアントやモニターとの丁寧なコミュニケーションが、HUTの成功を支えていることがよくわかりました。特に、チーム内の連携と強固な団結力が、高品質なサービス提供の基盤となっている点は印象的でした。HUTチームの今後の成長と、さらに多くのクライアントに信頼されるサービスの提供を期待しています。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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