公開日:2024.10.03

カスタマージャーニーを活用したインタビュー調査とは?【定性調査】

  • マーケティングリサーチHowto

顧客を知り、顧客の求めるものを形にする。これは、あらゆるビジネスにおいて普遍的な成功法則と言えるのではないでしょうか。しかし、顧客は時に自分自身でも気づいていない潜在的な欲求を抱えており、それを捉えることは容易ではありません。従来のアンケート調査やインタビューだけでは、表面的な情報しか得られず、顧客の真のインサイト(行動の根底にある、深層心理や本質的な欲求)を捉えきれないケースも少なくありません。
 
そこで注目されているのが、「カスタマージャーニー」を活用した定性調査です。カスタマージャーニーとは、顧客がある商品やサービスを知ってから購入、利用、さらにはリピートに至るまでの体験を時系列で可視化したものです。顧客の行動、感情、思考を詳細に洗い出すことで、従来の調査方法では見逃してしまっていたインサイトや行動の背景にある文脈を明確化できます。
 
本記事では、カスタマージャーニーを定性調査で活用するシーンや活用方法、メリット・デメリット、得られる結果まで解説します。
 
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カスタマージャーニーとは何か?

図 カスタマージャーニーとは
図1 カスタマージャーニーとは

 
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスと出合い、購入、利用し、その後の関係を築くまでのあらゆる接点を可視化したものです。顧客の行動を時系列で追うことで、それぞれの段階における顧客の心理や行動の要因を深く理解することができます。
 
近年、デジタル化の進展により顧客との接点は多様化し、顧客行動は複雑化しています。そのため、従来の一方的な情報発信によるマーケティング活動では、顧客の心を捉えきれなくなってきました。カスタマージャーニーを把握することは、複雑化した顧客行動を理解し、それぞれの接点において最適な顧客体験を提供するための重要な手がかりとなります。
 
 

定性調査の事前課題でカスタマージャーニーを取り入れる

定性調査の質を高める1つの方法として、限られた時間の中でいかに効率よく質の高いヒアリングをすることが挙げられます。その効率化を図るために、対象者へ事前課題をお願いすることがあります。
 

事前課題とは

この事前課題は、実査(リサーチの実施)の前に調査対象者へ、日記やカスタマージャーニーマップ、マインドマップの作製などのタスクをお願いすることです。実査前にタスクの結果を回収し、事前に分析したり、インタビュー調査では、そのタスクに対するアジェンダ(議題)があったりします。
 
これを実施することで、調査対象者が事前に記憶を辿っていただいたり、考えを整理するきっかけになったり、考えを深めていただいたりと、調査に奥行きを作ることができ、うまく活用できれば、有意義な調査を行うことができます。
 

事前課題でカスタマージャーニーの作成を依頼するシーンとは

事前課題として、カスタマージャーニーの作成をお願いするシーンは以下となります。

●商品・サービスの認知のきっかけは何かを把握
●購入までの意識の変遷に影響を与えた事を把握
●各商品・サービスの検討状況確認
●商品・サービスの中止理由明らかにする
●購入決定におけるコンタクトポイントを探査

 
この中で、特に多いと感じているのが、「商品・サービスの認知のきっかけは何かを把握」です。既に使っていると、あたかも昔から知っているようなイメージを持たれてしまうのですが、本当の認知のきっかけが何で、どんなインプットをされたか、それから何かのプロモーションがあり、そのプロモーションのあとに認知されたのかどうか、ということを把握するときに、このカスタマージャーニーを事前課題にします。
 
定性調査の設計方法を事例で解説~売上低迷の要因調査~ はこちら>
 
 

インタビュー前にカスタマージャーニーを調査対象者に記入してもらう

調査対象者に記入してもらうカスタマージャーニーマップには、タイプがいくつかあります。一例として、下図となります。
 

図 カスタマージャーニーマップのタイプ
図2 カスタマージャーニーマップのタイプ

 
課題によって使い分ける必要があり、例えば左上のAタイプであれば、長いスパンのときに活用するのがおすすめです。10代くらいからスキンケアを始めて、20代、30代、40代、50代、その時々の行動や気持ちなど、長いスパンで見ていくときが活用時です。
 
また、インタビュー予定の対象者にカスタマージャーニーへ記入してもらう際、「カスタマージャーニーマップを記入してください」とは伝えず、「消費やサービスをしったキカッケから購入までの経緯のお気持ちを時系列でお書きください」といった形で指示書のもと、お願いすることがほとんどです。
インタビュー調査とは?種類や手順、メリット、事例について基礎からご紹介 はこちら>
 
 

カスタマージャーニーを事前課題で活用するメリット・デメリット

カスタマージャーニーを事前課題で活用するメリット・デメリットは、以下が挙げられます。
 

表1 カスタマージャーニーを事前課題で活用するメリット
項目 内容
知ったきっかけから現在までを対象者にリマインドしてもらう 既に使っている場合、あたかも昔から知っていたような、そんな意識にとらわれるかと思いますが、本当の知ったきっかけを思い出すことで、「あぁそうだった」と思うことができます。また、隠れていた出来事を思い起こしてもらうことができます。
グループインタビューなどでは、他の対象者の刺激を受ける前に可視化することができる 発言の強い人に引っ張られ、調査対象者が盛り上がるのですが、実はそうじゃない経験をしてきている方がいるというところを、ちゃんと引き出すことができます。

 

表2 カスタマージャーニーを事前課題で活用するデメリット
項目 内容
事前に調べたりされてしまうことがある 事前調査を依頼することで、事前に調べたりされてしまう可能性があります。「ご自分のお考えでお書きください」などのようにお願いするなど、回避するには工夫が必要です。
インタビュー前に意識を強めてしまう インタビュー前に意識を強めてしまいます。意識と実態、カスタマージャーニーだけを知るという場合は、問題がない。一方で、その後新商品のコンセプトを見せたい場合などは良くない場合があります。

 
これらのメリット・デメリットを踏まえ、調査目的や対象者に合わせて、カスタマージャーニーを活用するかどうかを判断する必要があります。
 

Tips:留意点
書き出して欲しいことをわかりやすく指示書に記載
指示書を作成した後に、誰かに試しに書いていただいて、ちゃんと書くことが可能かどうか、書きにくいところはないか、などを試すことが重要です。
 
どこまで伝えて記載してもらうかを検討
例を書かないと書けないこともあるかと思いますが、どこまで伝えるかは検討する必要があります。どんな言葉を書くかについて指示書を与えなくないケースもあり、その場合は例を用意するなど工夫が必要です。

 
 
 

カスタマージャーニーをもとにヒアリングすることで得られる結果

カスタマージャーニーをもとにヒアリングすることで、以下3点を得ることができます。

・対象者のインサイトまでも明らかにすることができる
・コンタクトポイントの状況も把握することができる
・対象者の行動と気持ちの関連性を明らかにすることができる

 
上記のように、事前にカスタマージャーニーマップを見ることができるので、コンタクトポイントの状況を把握することができ、仮設などに盛り込むことができるので、インタビューの効率化に繋がります。
 
 

まとめ

カスタマージャーニーを活用した定性調査は、顧客の深層心理や行動の背景にある文脈を理解するために非常に有効な手段です。
 
本記事で紹介した内容を参考に、ぜひカスタマージャーニーを活用した定性調査を実践し、顧客理解を深め、より効果的なマーケティング戦略の立案に役立ててください。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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