公開日:2024.10.07

顧客の深層心理に迫る!定性調査に日記・コラージュを取り入れる効果と実践方法

  • マーケティングリサーチHowto

企業が顧客のニーズを捉え、魅力的な商品やサービスを開発するためには、顧客の深層心理を理解することが欠かせません。しかし、インタビューなどで直接質問をするだけでは、顧客自身も気づいていない無意識の行動や心理まではなかなか見えてきません。そこで有効なのが、日記やコラージュといったアクティビティを取り入れた定性調査です。これらの手法を用いることで、顧客の行動や心理をより深く理解し、商品開発やマーケティング戦略に活かすことができます。
 
本記事では、日記やコラージュを活用した定性調査の効果や実践方法について解説し、顧客理解を深めるためのヒントを提供します。
 
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定性調査における事前課題の選び方

顧客のニーズを深く理解し、より良い商品やサービスを生み出すためには、定性調査が欠かせません。この定性調査の質を高める方法として、限られた時間の中でいかに効率よく質の高いヒアリングをすることが挙げられます。その効率を高めるために、対象者へ事前課題をお願いすることがあります。
 

事前課題とは

この事前課題は、実査(リサーチの実施)の前に調査対象者へ、日記やカスタマージャーニーマップ、マインドマップの作製などのタスクをお願いすることです。実査前にタスクの結果を回収し、事前に分析したり、インタビュー調査では、そのタスクに対するアジェンダ(議題)があったりします。
 
これを実施することで、調査対象者が事前に記憶を辿っていただいたり、考えを整理するきっかけになったり、考えを深めていただいたりと、調査に奥行きを作ることができ、うまく活用できれば、有意義な調査を行うことができます。
 
 

日記を活用した定性調査

日記は、その時の毎日の出来事や感想などを書いた記録です。毎日何かを行ったということを記憶に一応留めますが、おそらく次の日にはその気持ちの上に上書きされていくような状況が起きています。そのため、その時々の生活者の行動やニーズの変化、気持ちの波などを毎日把握するのに日記は有効です。
 
特徴は、その日に書いて記録に留めるので、正確な行動や気持ちが把握できることです。また、インタビュー前に対象者が実際の生活の中で、記録を書いていただくことによって、そのインタビューでお話いただく元となります。これは重要なことで、日記などを行わないインタビューでは、フラットな状況で伺える反面、顕在化したことのみでの話になってしまい、インタビュー内容の質として、もの足りないものになってしまう可能性があります。もちろん、他のグループインタビューの対象者のお話による刺激で、記憶を引き出されることもありますが、他社にゆだねる形ではなく、自分自身で思い出していただくことが大事だと考えております。
 

事前課題で日記の作成を依頼するシーンとは

事前課題として、日記の作成をお願いするシーンは以下となります。

  • 詳細な行動を把握したい(食生活/買い物/趣味/サービス/体調など)
  • 1日の時系列の中で(**)のタイミングを確認したい
  • 生活の中での時間の割り振りを把握したい

 

日記を定性調査に取り入れる際のポイント

日記を定性調査に取り入れる場合、3日以上かつ平日と休日で書いていただくことがポイントです。曜日によって生活スタイルが異なることがあるためです。この日記を書いていただくことで、効率よくインタビューができるだけでなく、対象者の傾向、どういうところにポイントを絞ってヒアリングをしなくてはいけないか、など見えてきます。
 
そして、日記のタイプとしていくつかある内の1つが下図です。
 

飲み物日記のイメージ
図 飲み物日記のイメージ

 
この日記のタイプでは、右側に朝からの時系列を細かく書いております。その時々によって、ご自身が行動したこと、次に誰と行動をしたか、それからどんな場所にいったか、その時使った情報などをご自宅で書いていただいた形になります。
 

日記のタイプ

先ほど日記の1タイプを紹介しましたが、テーマや課題によって作り直すことが多く、例えば下図のようなタイプがあります。
 

日記のタイプの例
図 日記のタイプの例

 
そして、記入例も用意するのですが、バイアスをかけてはいけません。キーワードとなるような言葉は抜いたり、説明する文章量を調整したりするなど必要となりますので、注意しましょう。
 

日記から得られること

収集した日記から以下のようなインサイトを明らかにすることができます。

  • 思わぬ事実の発見があることで、仮設を多く立てることが可能となる
  • 対象者の無意識の行動も可視化することで、インサイトを引き出すことができる
  • 食生活日記など、多くのバリエーションを知ることができる

 
 

コラージュを活用した定性調査

コラージュは、コラージュ療法という言葉もあり、心理療法の一分野であり、芸術療法に属する方法です。ありとあらゆる性質とロジックの素材(新聞の切り抜き、壁紙、書類、雑多な物体など)を組み合わせて、その人が考えていること、それから、感じていることを解き明かしていきます。それは、過去の経験と現在の印象について語り、嘆き、その感情の動き打ち明ける、様々なインサイトを引き出すための要素として使われます。
 
コラージュ法は、対象者自身が言葉では上手く説明できないイメージや意識を、視覚情報(絵・写真)に置き換えて解釈をする定性分析手法です。対象者のイメージを写真素材で可視化して分析することで、マーケティング活動の最低化をはかることができます。この写真素材というのは、ご自身と撮影した写真やWeb上からダウンロードした写真、雑誌から切り抜いた写真など様々です。
 

事前課題でコラージュの作成を依頼するシーンとは

事前課題でコラージュの作成を依頼するシーンは、『顧客の意識の裏にある背景情報を知りたい』というときです。具体的には、以下のシーンです。

  • 顧客のペルソナを明らかにしたい
  • 価値観を明らかにしたい
  • インサイトを探査したい
  • 新規事業の為に多くの仮説を立てたい
  • 対象者のイメージを可視化したい

 

コラージュを作成していただくときのポイント

コラージュを作成していただくときのポイントを解説します。まず、コラージュのイメージが下図となります。
 

コラージュのイメージ
図 コラージュのイメージ

 
コラージュを作成依頼するときには、丁寧な指示書がポイントです。日記同様バイアスをかけないように言葉の選択を注意しつつ、コメントについては、「・・・」といった形にします。このコメントというのは、上図で吹き出しがあると思いますが、その吹き出しのことになります。
 
また、他の注意点としては、プラスの謝礼が必要となり、さらに日程としてプラスのお時間を差し上げる必要があります。例えば、とある雑誌を切り抜いて作成をお願いしたいような場合は、雑誌をお送りし、切り抜いていただくことになるので、時間がかかります。そのため、急な調査で急いで結果が欲しい場合、コラージュは向いておらず、例えば、テーマを共有し、写真を数枚送っていただくような形が代替案となります。対象者のリテラシーも考慮する必要があります。例えば、高齢者の方でPC操作が不慣れな場合は、切り貼りしてもらう形式、若年層でPC操作に慣れている方の場合は、パワーポイントで作成していただき、データをいただくなど臨機応変に対応が必要です。
 

コラージュから得られること

コラージュを定性調査に取り入れることで得られることが主に以下3つあります。

  • 写真があることでイメージを可視化できる
  • 対象者の言葉の持つ構成要素を様々、明らかにすることができる
  • ペルソナを作成する際に、見ていない人にも伝えやすい

最終的にどんな人であるかというペルソナを作成するときに、そのペルソナを見ていない人にもコラージがあるため、伝えやすく、ペルソナを明らかにすることで、次のアクションへ繋げていくことができるようになります。
 
 

まとめ

日記やコラージュを活用した定性調査は、顧客の深層心理や行動を理解するための有効な手段です。これらの手法を適切に用いることで、顧客のニーズをより的確に捉え、顧客満足度の高い商品やサービスの開発、マーケティング戦略の立案に繋げることができます。
 
インタビューと組み合わせることで、より多角的な視点から顧客を理解し、企業の成長に貢献することができます。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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