2022.10.18
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公開日:2024.11.06
オンラインインタビュー調査行っていく中で、私たちは新たな課題と可能性に直面しています。特にコロナ禍以降、対面でのインタビューが難しくなり、オンラインでのインタビューの形態が伸び、知見が蓄積されていきました。
本記事では、これまでのオンラインインタビュー調査を通して得た注意点や、向いている調査や向いていない調査について触れ、未来構想を紹介します。これにより、オンラインインタビューをより効果的に進めるためのヒントを提供できればと考えています。
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●通信による影響
オンラインインタビューの重要な課題の一つは、通信環境による影響です。音声が遅れたり、画面共有がスムーズにいかなかったりすることがあります。特に、天候が悪いときに通信状況が悪いと感じました。こうした場合、音声が遅延し、会話のテンポが崩れ、参加者との意思疎通が難しくなります。また、画面共有が途切れると視覚的な情報が十分に伝わらず、調査の質に影響を及ぼすことがあります。
このため、通信負荷を減らす工夫として、参加者には不要なアプリを閉じてもらうようお願いしたり、事前に共有する資料をメールで送付したりするなどの対応を行っています。特に、動画をご視聴いただく場合、画面共有だと通信状況的にスムーズに共有できない場合があるので、その場で画面共有するか、メールなどで共有するかなど、状況に応じて適宜判断しております。さらに、インタビュー前に接続テストを行うことで、問題が発生する可能性を事前に減らす努力もしています。
また、それでも安定しない場合には、電話を使って音声のみを確保するなど、複数の対処法を用意して臨機応変に対応しています。
●グループインタビューの動画資料
グループインタビューの際、参加者がどの部分の動画を見ているのかが分からないことが課題だと考えています。各参加者が今どの場面を視聴しているのか、また、そのときの表情や反応がどの場面に関連しているのかを把握するのが難しいことが理由です。
●差し込み問題
インタビュー中に突発的な質問を追加する、いわゆる「差し込み」は、オンラインで行う際に注意が必要です。差し込みを行う際には、インタビューの流れを乱さないことが重要ですが、オンライン環境では調整が難しく、タイミングを誤るとスムーズな進行が妨げられることがあります。
そのため、バックルーム上で優先順位を相談していただき、モデレーターに質問を投げ入れるようにするなど、工夫することでタイムマネジメントなどの問題を軽減しています。具体的には、質問を追加する際には、まずバックルーム上で、スタッフ同士で優先順位を相談していただき、その後、モデレーターに伝えるようにしています。
●調査対象者から本音を引き出し始めるスピードに変化
調査対象者(以下、「対象者」と呼ぶ)がご自宅にいらっしゃることでリラックスされている部分から、インタビューの始めの方からスムーズに本音を話し伺うことができるようになりました。通常通り、打ち解けやすいようにアイスブレイクの質問なども設計しておりますが、オフラインと比べて、オンラインの方が割とスッと伺えるように感じています。
また、男性の場合「この商品は、こういう意図で開発しているんだよね」といった、第三者の目線でお話いただく方が多いような気がしているのですが、オンラインではご自身の意見として伺えるような気がしています。
●対象者の暮らしぶりがわかる
オンラインでのインタビューでは、対象者の生活環境を垣間見ることができ、より具体的な暮らしぶりを把握することができます。これにより、対象者の背景や生活スタイルに基づいた質問・理解がオフラインと比べ、より深まります。例えば、対象者の背後に見えるインテリアなどを通じて、個々の趣味嗜好や生活習慣がわかり、それがインタビューで活かすことができます。
●物理的にお伺いが難しかった方へのインタビュー
これまで物理的に難しくお伺いができなかった方に意見をお伺いできるのは、オンラインの魅力の一つだと改めて実感しました。例えば、なかなかお伺いが難しい、山の付近にご在中の方に伺ってみると、その地形による考え方を知ることができ、商品やサービスの開発や改善のキッカケに繋がることがあります。また、車椅子に乗っている方や義足の方、酸素ボンベから吸引が必要な方などの外に出づらい方は、オフラインでは難しかったのですが、オンラインではスムーズに伺うことができました。
これらのことから、オンラインインタビューでは、多様な視点からの情報収集が行いやすくなり、より調査の価値を提供しやすくなりました。
●言葉で表現できないとき
たとえば「どういうデザインが良いでしょうか?」と尋ねた時に、言葉でとっさに表現することが難しいことがあります。その際に、「お家にあるものでお考えのデザインに近しいもの見せください」といったふうに伺って、お見せいただけることで、目に見えるものとして、ご回答いただくことが可能になるのは、オンラインの良いところです。
●ユーザビリティ調査
ユーザビリティ調査では、オンライン環境で対象者のスマホ操作や表情などの反応を観察しやすく、使いやすさに関するフィードバックを得やすくなりました。
オンラインでユーザビリティ調査を行う前は、「ユーザビリティ調査をオンラインで行うのは難しそう」という印象だったのですが、スマホの画面を共有する技術があることによって、むしろオンラインの方が「よくユーザーのことを知れる」ということが分かりました。また、画面上に対象者のスマホ画面が共有されることで、同時に録画され、改めて見ることができるので便利です。さらには、スマホ画面の共有をしていただいている最中、対象者の表情を近くで見ることができるため、得られる情報量が増えていると実感しています。
●試飲・試食調査
試飲・試食調査は、なんといっても対象者の表情をオフラインの時より見えやすいのがポイントです。対象者の表情をオフラインの時より近くで見ることができていると感じており、その反応がよりわかりやすいので、商品に対してどのように感じているのか、認識しやすくなりました。例えば、味わった瞬間の表情の変化や、満足そうな表情から、対象者がどのように感じているのかを把握できるため、言葉だけでは伝わりにくい感情の変化を読み取ることが可能です。
また、「普段食べているように食べて見せてください」とお願いすることで、その方が実際にどんな器を使って、どのように食べているのかが、オンラインではわかり、オフラインでは難しいので、オンラインインタビュー調査のメリットの1つになります。
●その他の調査
コンセプト調査やパッケージ調査も画面共有によって、良く見えるので、嬉しいポイントです。例えば、パッケージ調査で「パッケージを開けてください」とお願いすると、『どうやってパッケージを開くのか』がわかりますし、「食べ方を見せてください」とお願いすると、『食べ物をどうやって掴むのか』や『口への入れ方』が画面を通してわかるので、オンラインインタビュー調査に向いています。
●体験型の調査
オンラインインタビュー調査を体験型の調査を行う際、「事前に体験していただけている」といったところで、お話を伺うことは可能です。しかしながら、初めての体験では無くなっていたりするなどの場合もあり、調査の精度に影響を与える可能性があるので、『体験型の調査』は向いていないと考えています。
●大きいモノ(例:洗濯機や冷蔵庫など)に関する調査
お送りさせていただく大きさの限度があり、洗濯機や冷蔵庫といった大型製品はお送りができないので、オンラインインタビュー調査は難しいです。
●ワークショップ
ワークショップ形式の活動では、参加者同士の直接的な交流や共同作業が求められるため、オンラインでは難しいです。オンライン環境では、参加者が自由に意見を出し合ったり、その場で共同作業を行ったりする際に、タイムラグや技術的な制約が生じやすく、対面でのワークショップと比べて活発な議論が難しい場合があります。また、物理的な道具を使った共同作業など、リアルな場でのやり取りが必要な場合には限界が感じられます。
オンラインインタビュー調査を行ってきた中で、システムの改善によって色々と可能なことが増えていると実感しています。特に、通信環境やインタビューシステムの改良により、調査の質を維持しながら効率的に進めることができるようになりました。また、参加者のリモート環境に対する対応力も向上しており、これまで以上にスムーズにインタビューを実施できるようになっています。今後も技術の進化により、さらに調査の幅が広がることが期待されます。
また、オンラインとオフラインの調査にはそれぞれに『良さ』があり、引き続き状況に応じて使い分けることが重要だと感じています。オンライン調査は、地理的な制約を受けずに多くの対象者にアプローチできる点などが強みです。一方、オフライン調査では、対面ならではのコミュニケーションの円滑さなどの強みがあります。そのため、どちらか一方に偏るのではなく、調査の目的や内容に応じて柔軟に使い分けることが、より効果的なインサイトの獲得につながります。
そして、オンラインインタビュー調査が発展した先に、ミニ訪問調査といった可能性もあると考えています。キッチンやお風呂など、狭い範囲に絞ることで、物理的に見ることや、質問すること、協力を得ることが可能です。そして、このような限定的な訪問調査ができると、参加者の負担も軽減され、より多くの方々に協力してもらいやすくなると考えています。また、特定の場所にフォーカスすることで、調査テーマに深く関連する詳細なデータを収集することが可能ではないか、とも考えております。
オンラインインタビュー調査を進める中で、通信環境の影響や動画の扱い、差し込み質問のタイミングなど、いくつかの課題に直面しましたが、これらの課題に対しては、通信負荷を軽減するための工夫やバックルームでの質問の優先順位の調整などを行い、対応してきました。このような工夫を重ねることで、調査の質を向上させてきたと感じています。
また、オンラインインタビューは、ユーザビリティ調査や試飲・試食調査、コンセプト調査、パッケージ調査などでオフラインと比べて効果的です。一方、体験型の調査や大型の製品に関する調査、ワークショップ形式の調査ではオフラインの方が適しているという特徴があります。それぞれの強みを生かし、調査の目的に応じて柔軟に手法を選択することが重要です。
そして、今後のシステムなどの改善によりオンラインインタビューの幅は広がると考えられます。オンラインとオフライン、それぞれの『良さ』を活かし、調査の目的や状況に応じた最適な手法を選択することが求められるでしょう。
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