公開日:2019.12.05

クラスター分析で分かること|初めての方にも分かりやすく解説

  • データ集計・分析・活用

マーケティングで良く用いられる「クラスター分析」。言葉は聞いたことがあるけど、難しくて内容が良くわからないという方が多いのではないでしょうか。
クラスター分析はデータを統計・分析する数学的手法のため、その解説には数学用語がたくさんでてきます。これは数学になじみがない人にとっては外国語も同然。数学用語を見ただけで、「私には無理…」と感じてしまうでしょう。
ですが、クラスター分析はマーケティングにおいて、とても優れた分析手法です。この分析手法をうまく活用できれば、今まで単なる数字の集まりだったデータから、貴重なマーケティング情報を手に入れられるようになります。

そこで今回の記事では、初めての方でも理解できることを目指して、できるだけ難しい言葉を使わずクラスター分析の優れた点を分かりやすく解説します。詳細はあまり気にしないで、大まかなイメージとしてクラスター分析を理解していきましょう。
 
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クラスター分析とは

そもそも、「クラスター分析」とは何でしょうか?簡単に言うと「データを分析して、いくつかのグループに分けること」です。

日頃、私たちが生活している世界には、「全く同じもの」はほとんど存在していません。最も分かりやすい例が「人」。世界に多くの人がいますが、顔、体形、価値観の全てが同じということはなく、誰もが個性を持っています。一方、多くの人には共通点があり、私たちは「似ている」「似ていない」という共通点に高い関心を持っています。この共通点があることで、私たちはいろいろなグループ分けができ、社会を効率的に運営できています。

その分かりやすい例が属性です。「性別」「年齢」「居住地域」など、特性を定義し、その定義に基づいてグループ化する方法です。属性には多くの人が共通認識を持ちやすく、グループごとの違いが分かりやすいため、マーケティングではよく用いられるグループ分けです。
しかし、私たちが持つ共通点の中には、属性のようにはっきりと分類できないものがあります。例えば、私たちの心理。心理を視覚化することは難しく、属性のように明確には分けられません。ですが、その心理は私たちの行動に、とても大きな影響を及ぼしています。商品やサービスの購入を判断するのも心理ですし、購入した商品やサービスに満足するのも心理です。

この心理にも共通点は存在しています。もし、私たちの心理に共通点がなければ、ビジネスにおいて「流行」や「ヒット商品」は存在しなくなります。私たちの行動を突き動かしている内面に何かしらの共通点もしくは関連性があるからこそ、私たちはどこかで「似たような」行動を取っています。

この人間心理のような、分かりづらい「似ている」「似ていない」をデータとして分析し、グループ分けする統計的な分析手法が「クラスター分析」です。クラスター分析はデータ同士の関係性を数値化し、その近さによってデータをグループ化します。

クラスター分析とは何かを要約すると、以下の通り。

・データ同士の近さを数値化する。
・近さの数値に応じて、データをグループ化する

 
このクラスター分析によるグループ化が、使い方によって大きな価値を生み出します。
 

クラスター分析で分かること

クラスター分析を利用すると、大量のデータにどのような関係が存在するかが分かります。
例としてショップのユーザー分析を考えてみましょう。売上を伸ばしたいが、具体的に何をすればよいのか分からないということがよくあります。ショップの人的パワーや資金には限りがありますので、できれば効率的にマーケティング活動を展開したいと考えています。そこでマーケティング調査を実施し、周辺環境やユーザーの様々なデータを集めたとします。ですが、単純集計では集めたデータが売上とどのような関係があるかは分からないため、「〇〇」という意見が多いと、ひとくくりで分析されてしまいます。

ここでクラスター分析を用いると、売上データと関係性が高いデータをピックアップできます。分かりやすく言うと「売上データの動きと近い動きをするデータ」もしくは「売上データと反対の動きをするデータ」が分かります。
加えてそれらの関係性が高いデータをいくつか組み合わせると、数値を元にしたユーザーのグループ化ができます。その関係性が高いデータを読み取ることで、売上に貢献するユーザーのクラスターが明確になってきます。

ショップの例で言うと、購入金額と関連性が高いユーザーが以下のグループに分類されたとします。

・商品やショップの見た目を重視するグループ 構成比約60%
・価格やお買い得感を重視するグループ 構成比約20%
・新しさや話題性を重視するグループ 構成比約10%

 
このようにグループ化されれば、売上アップのためにどこに重点を置くべきかが明確となるのではないでしょうか。
クラスター分析はデータをグループ化することで、組織が実施するマーケティングに明確な方向性を打ち立てられます。今まで知ることができなかった「隠れていた真実」。それを明らかにすることが、クラスター分析の最大の魅力です。
 

クラスター分析の種類

クラスター分析には大きく分けると「階層クラスター分析」「非階層クラスター分析」の2種類があります。それぞれの特徴について解説します。

①階層クラスター分析

階層クラスター分析とは、分析対象となるデータの関係性を、トーナメント表のように分かりやすく表す分析手法です。
 
 
 

 
 
上図のようにそれぞれの要因がどのような近さになっているかを、直感的に理解できるのが特徴です。階層は下でつながるほど関係性が高く、上でつながるほど関係性が低くなります。
階層クラスター分析のメリットは、展開するマーケティング施策に合わせてグループ分けできることです。例えば、赤い線を基準にすれば2グループ、青い線を基準にすれば4グループに分けられます。グループ分けの根拠を数値データで説明できるため、関係者への説明に説得力が増し、共通認識を持ちやすくなります。

一方、階層クラスター分析のデメリットは、大きいデータ量を扱えないことです。階層クラスター分析は視覚化することに大きな特徴があります。そのため、元となるデータ量が大きすぎるとトーナメント表が大きくなりすぎます。また、階層化するためには非常に多くの計算が必要で、データ量が増えるとPCスペックが計算に追いつかなくなってしまいます。目安としては、計算するPCスペックによりますが、グループ分けしたい要因が30~100程度くらいでしょう。

②非階層クラスター分析

非階層クラスター分析とは大量のデータについて、事前に分けたいグループ数を設定して分類していく分析手法です。
 
 
 

 
例えば12個のサンプルを3つのグループに分けるとします。対象データを非階層クラスター分析すると、その関係性は上図の〇印のような位置関係になります。これを3つのグループにまとめると、赤、青、緑に分かれます。また、このグループ分けについては、関係が高い項目を把握できます。その項目を分析すれば、ユーザー心理を把握できるかもしれません。

非階層クラスター分析のメリットは、大きなデータであっても分析できることです。例えば、ユーザーの購買心理をアンケートするケースを考えてみましょう。ユーザーの心理的要因は、属性ほど明確に分類できません。そのため、どの要因(=心理)がグループ分けに大きく関係しているかを、事前に把握することはとても困難です。このような場合、非階層クラスター分析を用いる前提であれば、アンケートに多くのユーザー心理に関する質問を設定しておきます。もちろん、ユーザーから回答してもらえるボリュームが前提となりますが、幅広く回答してもらうほど重要な要因を取りこぼす可能性は小さくなります。

属性に基づくデータは多くの人が入手可能ですが、心理など抽象的なデータをベースにした分析結果は簡単に入手できません。ですが、多くの購買行動は属性ではなく個人の「心理」によって決定されています。この「隠された真実」を持つことはマーケティング活動を展開する上で、とても大きな優位性となります。これこそが、「非階層クラスター分析」を用いる最大のメリットと言えます。
一方、非階層クラスター分析にはデメリットがあります。技術的な難しい課題もありますが、最も意識しなければならないのは「分析者の技能」を大きく問われることです。

・非階層クラスター分析の数学的理解
・マーケティング理論の理解
・調査対象マーケットの理解
・人間心理に関する理解

 
これらに加えて、分析者の勘やセンスによって、分析結果解釈のクオリティは大きく変わります。これらの技能を身につけるのは、相応の労力、時間、経験が必要になります。実際問題としては、ある程度専門的に職務経験を積まないと、優秀な分析者になることは難しいでしょう。
可能であれば、早い段階からプロフェッショナルに相談することをおすすめします。
 

クラスター分析の具体例

実際のアプローチとしては、ステップ1として因子分析を実施し、ライフスタイル等の意識項目を相関の強い要素に分類します。
ステップ2としてクラスター分析を実施し、各クラスターの特徴を把握します。

例えば、下記の「日常生活や暮らし方についての考え方」の調査を例にご説明します。
 
 
 

 

ステップ1:因子分析

因子分析により、元々20項目あった項目を以下の5因子(因子軸)へ分類します。

因子1:刺激発見重視
因子2:こだわりスタイル重視
因子3:ゆとりマイペース重視
因子4:トレンド重視
因子5:季節伝統重視

 

ステップ2:クラスター分析

5因子(因子軸)をもとにA~Fの6クラスターに分類し、クラスターを分析軸にしてクロス集計・その他分析を実施します。以下がクラスター分析の結果です。
 
クラスター分析の結果

クラスター 構成比 特徴
A.ライフスタイルこだわり層 7.00% 住環境に関心が高い。生活では自己啓発を重視したこだわりのスタイルをもち、良いものを長く愛用。ファッションは個性的でクールなものを好む。
B.おしゃれ・ファッションリーダー層 10.00% 美容に関心が高く、トレンドや提案によわく衝動買いタイプ。ファッションは女性らしいものを好む。
C.洗練上質・こだわり層 14.75% 生活はこだわりのスタイルを重視し、住環境にこだわりがあり、食もおいしさや楽しさを重視する。 ファッションは洗練された上質のものを好む。
D.トレンドフォロワー層 24.25% 生活に刺激や話題の新しいことを求めており、情報収集・発信と感度が高い。美容やファッションへの関心が比較的高い。 ファッションは自分磨きで洗練されたものであり、汎用性のあるものを好む。2番目に多いクラスター。
E.アンチトレンド・堅実層 18.50% 生活はゆとりのあるマイペースな生活を重視する。ファッションは、汎用性重視でシンプルなものを好む。
F.低感度・無関心層 25.38% 特に際立っている特徴がない一般的なマジョリティ。

 

クラスター分析の手順

クラスター分析は「マーケティング活動にとって重要なデータを入手する」のが目的です。クラスター分析は目的を達成するための、分析手法にすぎません。そのため、分析作業だけなく、調査活動全体をうまく設計することがとても大切になります。

①調査設計

まずは調査すべき内容について、しっかりと目的を設定しましょう。その目的に応じてどのような調査手法が適切なのか、どのような内容を調べていくのかを決めていきます。
例えば売上とユーザー心理の関係を調べたいのであれば、それに適したアンケートの対象者、実施方法、質問内容を決めていきます。

②データ集計・分析

アンケート等で集めたデータを集計し、クラスター分析を行います。ここで、データの関係性によってグループ分けが行われます。ただし、ここでのグループ分けはあくまで数値による関係性です。

③クラスターの解釈

クラスター分析でグループ分けができたら、その分類にどのような意味、理由、背景があるかを解釈します。関係性が高い項目、属性などからユーザー像を思い描き、その人たちの購買動機などを推察していきます。
この解釈によって、数値によって分けられたグループに、ユーザー心理などの意味付けがされます。そうすると、「価格重視派」「見た目優先派」「バランス派」などのマーケティングでよくみられるグループに設定されます。

④アクションプランの立案・実施

ユーザー心理に基づく「隠れた真実」を入手したら、具体的なアクションプランを立案して実行します。マーケティング活動の基礎となる情報や考え方が共有されることで「グループごとのアクションプラン」や「重点を置くべきポイントの明確化」が図れます。そして、従来よりも効果の高いマーケティング活動が期待できるようになります。
 

クラスター分析の注意点

クラスター分析には技術的な注意点がいくつかありますが、ここではより基本的な問題点について解説したいと思います。それは「信頼できるプロフェッショナルに相談すること」です。

非階層クラスター分析の項目でも解説しましたが、クラスター分析で良い分析結果を出すためには、とても多くの技能が求められます。実際の分析作業においても、かなりの部分をプロフェッショナルの方にお任せしなければならないでしょう。だからこそ、どなたに分析を依頼するかは、分析結果と直結する重要な選択となります。

分析依頼にあたっては担当者とよく情報交換して、依頼先をしっかりと見極めていきましょう。ポイントとしては、難しい内容を分かりやすく説明してくれる方は、優秀な分析者であるケースが多いと感じています。このような方は専門的な視点と依頼者側への理解の両方を持っていることが多いので、ぜひ、参考にしてください。
 

まとめ

ここまで、クラスター分析に関する解説を行いました。いろいろと難しいところはありますが、クラスター分析を上手に活用すれば、通常では入手できない「隠れた真実」を見つけ出せます。この真実は活用方法によって、マーケティング活動に大きな成果をもたらします。
クラスター分析によって、マーケティング活動に劇的な成果を上げた事例は多くあります。もし、興味を持たれたのであれば、一度、マーケティングリサーチの専門家に相談することをおすすめします。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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因子分析とは

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多くの項目をいくつかの『因子(潜在変数)』に要約してまとめる分析手法です。まとめることで特に影響の強い『因子』を把握することができます。例えば、「国語・数学・理科・社会・英語」⇒『文系・理系』にまとめるイメージです。

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