公開日:2019.12.05

PSM分析とは?具体的な方法やメリット・注意点などを紹介

  • データ集計・分析・活用

PSM分析とは、商品・サービスに対する“価格帯”を解析する分析手法です。しかし、具体的にどのようなシーンで活用すべきか?具体的な分析方法は?と迷う方も多いでしょう。
 
本記事では、PSM分析の具体的な方法やメリット、使用における注意点を解説します。
 
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PSM分析とは

PSM分析とは、「Price Sensitivity Measurement(価格感度メーター)の略」で、商品・サービスに対する適正価格を解析する分析手法です。PSM分析で知ることができるのは下記の5つです。

  • 上限価格
  • 妥協価格
  • 理想価格
  • 下限価格
  • 許容可能価格帯

 

上限価格

「上限価格」とは、商品に対して「これ以上高い価格なら買わない」と感じる価格です。売値が高ければ1商品当たりの利益率は高くなりますが、高すぎると購入率の減少に繋がります。 

妥協価格

「妥協価格」とは、「ちょっと高いけどこの程度なら買っても良い」という、購入者側の妥協ラインです。購入者の心理的にも納得感がある中で、販売側の利益率も高めに担保できる価格のため、このラインを維持できると、自社の中でも強い商品となるでしょう。

理想価格

「理想価格」とは、消費者にとって一番理想的な価格です。消費者が購入するのに躊躇しない価格と言っても良いかもしれません。しかし、理想価格はあくまでも「消費者側」の理想なため、たくさん売れたとしても薄利多売になる可能性もあります。

下限価格

「下限価格」とは、品質を疑われない最低ラインの価格です。例えば、類似商品の中でもあまりにも安すぎる商品は「質が悪いかも」という理由で敬遠されてしまいます。ブランドイメージを損なう可能性もあるため、下限価格をしっかり把握しておく必要があるのです。

許容可能価格帯

「許容可能価格帯」とは、上限価格〜下限価格の価格帯で設定されます。設定されたそれぞれの価格を把握することで、論理的に新商品の価格決定や、既存商品の価格の見直しを行うことが出来ます。
 

PSM分析をかけたアウトプット

PSM分析
 

通常のアンケートとの違い

アンケートでは、通常「この商品が◯◯円なら買いますか?」といった設問になります。
 
しかし、回答者は実際に商品購入を予定していないため、実際よりも「買う」を選択しやすい傾向にあります。そのため、回答と実際の行動が乖離してしまうことで、蓋を開けて見たら全く売れなかった、というケースが発生してしまうのです。
 
一方、PSM分析とはいわゆる受容性調査のひとつで、「どの程度の価格帯なら消費者が自社商品を受け入れられるのか」を調べることを目的としています。4種類の質問項目を設定することで、より回答者の思考を購入時に近づけられるため、「◯◯円なら買いますか?」と聞かれた場合よりも、より現実に近い思考でユーザーに回答してもらうことができます。
 

CVM分析との違い

CVM分析とは、アンケート上にいくつかの価格帯を表示し、それぞれの価格帯ごとでの購入意向を評価してもらう手法です。CVM分析も受容性調査のひとつですが、CVM分析は「設定した価格帯でどれほどの購入率が見込めるか」を調査します。
 
例えば、設問①として「〇〇という商品が2,000円の場合、購入したいですか?」を設定します。この設問の回答によって、次の設問が分岐します。
 
「はい」と回答した場合は「3,000円の場合、購入しますか?」となり、「いいえ」と回答した場合は「1,000円の場合、購入しますか?」と続きます。
 
これらの回答を集計することで、価格帯ごとの購入意向率を定量で炙り出せるため、売上予測を見立てる際に活用できる分析手法です。
 
 

PSM分析のメリット

ではPSM分析には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。大きく2点ご紹介します。
 

商品の許容価格を知ることができる

商品の価格設定では、販売者側の意向が強くなりがちです。原価や売上目標を考えると、どうしても購入者の思考を置き去りにしてしまいますが、PSM分析を行うことで、商品に対する市場の本音を知ることが出来ます。購入者はどこまでの価格を許容してくれるのか、というラインを確認することで、市場のニーズとかけ離れた価格設定の防止に繋げられます。
 

調査項目の内容や結果の解釈が容易

PSM分析は、簡単なアンケートを作成し結果を集計の後グラフ作成を行うだけ、と非常にシンプルな手法のため、専門知識がなくても比較的簡単に分析することが出来ます。作成されたグラフからの読み取りも簡単なので、分析に時間がかかることもありません。具体的な方法を後述しますので、ぜひ参考にしてみてください。
 
 

PSM分析の注意点

一方で、PSM分析を行う際には、念頭におくべき注意点もあります。大きく4つご紹介します。
 

実現不可能な価格が算出されてしまう場合がある

PSM分析で得られるのは、あくまでも「購入者にとっての最適価格」です。そのため、その価格には開発コストや販売にかかる人件費など、販売者側の事情は含まれていませんので、算出された価格のままでは実現不可能な場合もあります。ゆえに、PSM分析の結果を参考にしながら、コスト観点を考慮し最終調整が必要になる、という点を覚えておきましょう。
 

購入率は予測できない

PSM分析を行うことで、より購入者の意向を加味した価格設定が可能です。しかし、PSM分析で弾き出した価格だったとしても必ず購入されるとは限らず、かつ「購入率」の予測も出来ません。そのため、購入率から売上予測を立てたい場合には、前項で触れたCVM分析を活用してみると良いでしょう。
 

調査対象者の選定に注意が必要

PSM分析とは理想的な価格帯を分析するものですので、該当商品の相場を理解している相手を調査対象にする必要があります。
 
例えば、自社の新商品の価格設定のために行うPSM分析を、自社商品の利用経験がない相手に行った場合、適正価格からズレた結果になる可能性もあります。そのため、PSM分析は「誰に対して」実施するのかを、しっかり検討するようにしてください。
 

消費者が価格感を想像できるものである必要がある

どんな商品でもPSM分析が有効とは限りません。PSM分析ではユーザーが商品を購入することをイメージして価格を選択するため、商品自体の価格感がまったく想像できない場合には、PSM分析は避けるべきです。
 
例えば、これまで市場になかった商品やサービスに対して「どの価格なら買うか」と言われても、判断に迷ってしまうでしょう。新たなサービスリリースへ向けたPSM分析を実施したいのであれば、既存の類似商品を事例に出すなどして、購入者がイメージしやすいようフォローすることをおすすめします。
 
 

PSM分析の活用シーン

具体的にどのような場面でPSM分析が有効なのか、3つのシーンをご紹介します。
 

新製品の価格設定

自社で新たな製品を開発した場合を想定してみましょう。
 
まず、開発までのコストや製品に必要な材料費や人件費を加味し、原価を割り出します。そこにどの程度利益を乗せて販売すべきかを検討するタイミングで、PSM分析の導入です。
 
PSM分析では、「上限価格」「妥協価格」「理想価格」「下限価格」「許容可能価格帯」を知ることができるため、原価と理想価格を考慮しながら、販売者も購入者も納得できる販売価格を確定させるといった流れになります。
 

既存の商品の価格の見直し

PSM分析は価格見直しのタイミングにも活用できます。なかなか販売数が伸びない商品があった場合、何が課題なのかを割り出すためにPSM分析を利用してみましょう。分析の結果、理想価格と大きくかけ離れている場合には、価格見直しに踏み切る重要なデータとなります。
 

セール・キャンペーン価格の設定

PSM分析で注視するのは「理想価格」だけではありません。PSM分析の「下限価格」は、言い換えると消費者が考える安さの限界値と捉えられます。つまり、商品の価値を損なわないギリギリのラインです。この価格を下回ってしまうと、商品への安心感や品質イメージの低下につながるリスクがあります。そのため、セールやキャンペーンを実施する際には、この下限価格を下回らないよう調整することで、商品価値を損なわないような価格設定をするようにしましょう。
 
 

PSM分析の方法とポイント

では具体的にPSM分析とはどのように進めていくのかを解説します。
 

質問項目の作成

まずは、下記のような価格に関するフリー設問4問を作成します。

  • この商品はいくらぐらいから「高い」と思うか
  • この商品はいくらぐらいから「安い」と思うか
  • この商品はいくらぐらいから「高すぎて買えない」と思うか
  • この商品はいくらぐらいから「安すぎて品質が疑わしい」と思うか

 
PSM分析で使用する項目は基本的にこの4つです。意図が伝われば、文章のニュアンスは変えてもOKです。
 

PSM分析用調査票の作成

上記の質問項目に、フリー記述式の解答欄を設けましょう。
 
Q1.商品Aを購入する場合、いくらぐらいから「高い」と思いますか。
(    )円
Q2.商品Aを購入する場合、いくらぐらいから「安い」と思いますか。
(    )円
Q3.商品Aを購入する場合、いくらぐらいから「高すぎて買えない」と思いますか。
(    )円
Q4.商品Aを購入する場合、いくらぐらいから「安すぎて買いたくない」と思いますか。
(    )円
 
この際、どんな商品・サービスなのかを、回答者がイメージできるよう、商品に関する具体的な内容を補足してください。
 
これでPSM分析用調査票は完成です。
 

調査結果の集計

アンケートが回収できたら、Excelを使って表を作り集計します。
 
X軸に質問内容(高い・安い・高すぎる・安すぎる)を設定、Y軸に回答で得られた金額を入れます。Y軸は回答の数だけ増やしていきましょう。
 
表に整理したあとは、このデータを使い累積度数分布表を作成し、その後下図のようなグラフを作成します。

PSM分析をかけたアウトプット

PSM分析
 
4種類の線が交わる箇所が「上限価格」「妥協価格」「理想価格」「下限価格」です。そして、下限価格〜上限価格が許容可能価格帯となります。
 
 

まとめ

PSM分析とは?という説明から、具体的な方法・メリット・注意点まで幅広く解説しました。
 
PSM分析自体は簡単に実施できますが、より効果的に使いこなすためには、「何のために」「誰に対して」行うかをしっかり精査して実施するようにしましょう。
 
また、分析結果は「価格」という定量データが導かれますが、「なぜそのような価格になったのか」を深堀することで、消費者の心理的なニーズまでを紐解くことも可能です。PSM分析を実際に活用してみると、市場の希望が強く現れることで、実際の許容可能範囲よりも低めの価格帯になってしまうケースは少なくありません。
 
分析機会を増やすことで、より効果的に使いこなせるようになるため、ぜひ、PSM分析を有効活用して、自社商品の価格戦略に役立ててください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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