2020.03.06
KJ法とは
KJ法とは KJ法(ケージェイほう)は、1960年代に文化人類学者の川喜田二郎氏(東京工業大学名誉教授)により開発された広く普及しているデータ収集法、整理……
公開日:2022.10.05
カスタマージャーニーマップを直訳すると、顧客の旅の地図となります。
この言葉は、顧客があたかも旅をするかのように買い物をする様子を表現しています。
企業がカスタマージャーニーマップを作れば、顧客の「買い物の旅」の予測がつくのでマーケティングの戦略を練りやすくなります。
このコラムでは、カスタマージャーニーマップがどのようなもので、どのような目的をもって作られるのか解説します。
また、カスタマージャーニーマップの作り方と、これを作るメリットもあわせて紹介します。
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旅をするとき、まずはどこで何をするのかを決めて、次に交通手段や泊まる場所や料金などを調べ、さらに旅程を決めて宿を予約して、それから出発すると思います。買い物も旅と同じように、段階を経る行動を取ります。
一般的にですが、顧客は、何かを「買いたい」と思ったら、どのような商品・サービスがあるのかを調べます。そしてそれを売っているリアル店舗やネットショップを訪れ品定めをします。それから商品・サービスの価値と価格が折り合えば購入にいたります。これはシンプルな例にすぎませんが、それでもこれだけの段階を経ます。そして実際はもっと複雑な行動を取ったり、検討の途中で色々思い悩んだりします。
カスタマージャーニーマップは、顧客が購入に至るまでの一連の行動と、行動の裏側にある、抱えている悩み、感情や思考の変化を、時系列に1枚の絵にしたものです。ではなぜ1枚の絵が必要になるのか。カスタマージャーニーマップを作る目的を解説します。
企業やマーケティング担当者がカスタマージャーニーマップを必要にするようになったのは、顧客の好みや購買方法などが多様化したためです。
企業やマーケティング担当者は顧客をつかみづらくなっています。
そこでカスタマージャーニーマップを作って、顧客それ自体と顧客の行動を把握しようと考えました。
カスタマージャーニーマップを作る目的には、少なくとも次のものがあります。
●購買の一連の行動を見える化して見込み客の心理をつかむため
●適切なタイミングを探してコミュニケーションを取るため
●見込み客に行動変容を起こさせ次のステップに進んでもらうため
●仮説を立てるため
●マーケティング・チーム内の認識を統一するため
●課題や施策をみつけやすくするため
1つずつ確認していきます。
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動を分解し、行動の一つ一つを1枚の絵に描いていって作ります。これにより顧客の行動一つ一つを視認できるようになります。完成したカスタマージャーニーマップを見たマーケティング担当者たちは「顧客がここでこの行動を取ったのはなぜか」と考えることができます。この考察は、顧客の心理を探るために行います。
顧客をつかむためには顧客の心理を理解する必要があり、カスタマージャーニーマップはその作業に役立ちます。
顧客は例えば、「買いたいと思う」→「商品・サービスを調べる」→「店を訪れる」→「品定めをする」→「価値と価格が折り合ったときに買う」
という行動を取ります。企業は顧客のそれぞれの行動に応じたコミュニケーションを取ることで、顧客との接点を増やすことができます。
顧客とのコミュニケーションは多ければ良いという訳ではなく、「それぞれの行動に応じたコミュニケーション」である必要があります。
例えば、まだ買う気持ちが固まっていないのに、販売員が強く商品をすすめると顧客は離れていってしまいます。
カスタマージャーニーマップがあれば、それぞれの段階に応じた適切なコミュニケーションを考えることができます。
顧客は段階を踏んで購入にたどり着きます。もちろん衝動買いでは、「買いたい」からすぐに「買う」に移りますが、それが起きることはまれです。
したがって企業は、あたかもすごろくの駒を進めるように、見込み客を次のステップに進めていかなければなりません。
つまり見込み客に行動変容を起こさせなければなりません。
カスタマージャーニーマップを作れば、「ここから次のステップに進んでもらうには何が必要か」と考えることができます。
カスタマージャーニーマップは「顧客はこのように動くだろう」と考えて作っていくので、仮設の一種といえます。
仮説を立てることで戦略が決まり、結果が出たときに実際と仮説との齟齬を調べることで改善案を出すことができます。
カスタマージャーニーマップはビジュアル・ツールですので、これを見ればすぐに、顧客が購入に至るまでの全体像を理解することができます。
ですので、カスタマージャーニーマップを作れば、マーケティング・チームの全メンバーが「この工程では客はこう動く」と認識できるようになります。
それによって見当違いな提案や無駄な行動が生まれにくくなるので、マーケティングが効率的かつ適切に進んでいくでしょう。
カスタマージャーニーマップを作れば、顧客がどこで離脱するかがわかります。その結果から課題を明確にすることができます。課題が明確になれば、解決する施策を考えることができます。
カスタマージャーニーマップの作り方はいろいろありますが、ここでは最もオーソドックスな方法を紹介します。
1つずつ解説します。
カスタマージャーニーマップのゴールは「見込み客に買ってもらう」ことなのですが、そのほかのゴールも設定できます。
例えば、「リピーターになってもらう」「当社へのロイヤリティを高めてもらう」「購入頻度を高めてもらう」「離脱した客に戻ってきてもらう」「ブランドイメージを高める」といったゴールも有効です。
ゴールが違えば、そこにたどり着く道や方法も異なってくるので、カスタマージャーニーマップを作るときはまずゴールを決めましょう。
ゴールが決まっても、顧客によってそこにたどり着く方法(ジャーニー)が異なります。そしてたどり着く方法が異なるとマップも違ってきます。
ゴールが決まったら、次はどのような顧客のジャーニーをマップにするのか考えていくことになります。想定する顧客像のことをペルソナといいます。
例えば、ペルソナを20~30代と設定したら、その年代の人たちはインターネット通販(EC)でものを買うことに慣れているので、この行動を検討するべきでしょう。
一方、ペルソナを60~70代と設定すれば、リアル店舗で購入することを検討することになります。
ペルソナによってカスタマージャーニーマップは全く変わってきます。
このとき注意したいのは、定性調査を行うことです。この点については、後段の「カスタマージャーニーマップ活用にあたっての注意点」の章で詳しく解説します。
カスタマージャーニーマップを作るとき、以下のテンプレートがよく使われます。
認知 | 情報収集 | 検討 | 購入 | |
顧客の行動 | ||||
顧客との接点 | ||||
顧客の思考 | ||||
課題 | ||||
対策 |
横の列(認知→情報収集→検討→購入)は顧客の行動で、基本的に顧客は左から右へと進んでいきます。
縦の列の内容(顧客の行動、顧客との接点、顧客の思考、課題、対策)は、顧客の行動1つひとつについて検討していきます。
このテンプレートの空欄に要素を盛り込んでいくとカスタマージャーニーマップができあがっていきます。
これが完成すると、顧客の心理が見えてきたり、顧客に行動変容を起こさせる施策のアイデアが出てきたりするわけです。
カスタマージャーニーマップを作るメリットを考えてみます。
カスタマージャーニーマップを作るメリットは3つあります。
1つ目のメリットは顧客目線が持てることです。
カスタマージャーニーマップを作ることを決めた時点で、そのマーケティングは「顧客の行動ありき」になるでしょう。なぜなら「顧客がこうしたら、我々はどう動くべきか」という思考になるからです。
2つ目のメリットは複雑な顧客の心理と行動をしっかり把握できることです。
マーケティング・チームは「この段階の顧客はどのような心理にあって、どのような行動を取るか」といった議論を重ねることになるので、カスタマージャーニーマップ作りは、顧客を理解する取り組みといってよいでしょう。
それらの意見を1つひとつ丁寧にカスタマージャーニーマップのテンプレートに落とし込んでいくと、顧客の複雑な心理と行動を描き出すことができます。
3つ目のメリットは顧客へのアプローチや顧客とのコミュニケーションに一貫性が生れることです。
カスタマージャーニーマップのゴールは1つなので、各段階で、そのゴールに到達するためのアプローチやコミュニケーションが取れるようになります。
例えば、カスタマージャーニーマップを作り、そのゴールに「ブランドイメージを高める」と記されてあれば、開発部門はコストをかけて高付加価値の商品をつくるでしょうし、販売員はスーツを着込んで接客するでしょう。
つまり、ブランドイメージを高めたいのに、開発部門が薄利多売用の商品を作ったり、販売担当者が頻繁にバーゲンをしたりするといったちぐはぐな行動が起きなくなります。
カスタマージャーニーマップを活用するときの注意点は次のとおりです。
カスタマージャーニーマップを企業の希望やマーケティング担当者の憶測で作ってしまうと、実際には実現しづらいマップになってしまう可能性があります。例えば、インターネット通販を自由に使えるペルソナであるにも関わらず、無理矢理リアル店舗でのみ購入させるようなマップを描くことは無理があります。きちんと情報収集してデータに基づいたマップを作っていきましょう。
既存の定量データは、カスタマージャーニーの全体を描写するのに役立ちます。
しかし定量データでは発掘できない知見があります。それは顧客や見込み客たちの感情、考え方、行動の動機などです。これらを知るには、定性調査が必要です。カスタマージャーニーマップ作りで役立つ定性調査の1つに、インタビュー調査があります。企業が顧客や見込み客に直接「感情、考え方、行動の動機」を尋ねることができます。
具体的には、既存の定量データを利用して、カスタマージャーニーの各フェーズでのアクションに対する仮説を作成しておき、そのアクションについて突っ込んだ質問をします。ある行動について「なぜ、そのような行動を取ったのですか?」のような具体的な質問を投げかけます。
顧客や見込み客に「突っ込んだ」質問を投げかけると意外な回答が得られ、それがカスタマージャーニーマップをよりリアルなものにします。
カスタマージャーニーマップ作りは、リサーチや情報収集を含めると大変な作業になるので、どうしても完成したときの達成感が強くなってしまいます。
そのためカスタマージャーニーマップを作ることが目的になってしまうことがあります。
しかしカスタマージャーニーマップはあくまでマーケティング・ツールなので、これを使って戦略を練ることが重要になります。
客は変化するものなので、一度作ったカスタマージャーニーマップを定期的に見直していく必要があります。
例えば、頑(かたく)なに「買い物はお店(リアル店舗)でしかしない」といっていた人が、1回ネット通販を使っただけでその便利さに感心してヘビーユーザーになることは珍しくありません。
顧客の行動はときに些細なきっかけで劇的に変わることがあるため、1つのカスタマージャーニーマップを永続的に使うことはできません。
「半年」「1年」「大規模キャンペーンを実施する前」といったように時期を決めてカスタマージャーニーマップをアップデートしていってはいかがでしょうか。
顧客を旅人にみたて、顧客が歩く道を地図にしよう、という発想は見事だと思います。なぜなら顧客自身も買い物で迷うことがあるからです。商品でもサービスでも買い方でも支払い方法でも、これだけ種類があると買い物行動が複雑化してその全容を把握することが困難になります。
カスタマージャーニーマップ作りは、把握しづらい買い物行動の全容をつかもうとする作業になります。そのため100点満点のマップを作ることは難しいかもしれません。
しかし80点や90点のカスタマージャーニーマップができれば、それでもマーケティング戦略の確度は高まるはずです。カスタマージャーニーマップ作りは顧客研究といえます。
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ペルソナとは
一人の顧客が全ての理想的な条件を満たすことは無いため、既存顧客の情報やインタビュー、調査データなどの実在する情報から、架空の理想の顧客「像」を描きます。これがペルソナです。
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