2024.04.24
意識調査とは
意識調査は、個人の意識や心理を詳細に把握するために実施される調査方法です。この調査は、消費者の購買動機、満足度、ブランドに対する認識など、単純なデータ分析だけで……
公開日:2022.10.12
みなさんは「キュウリが1本45円」と聞いて、この価格を高いと思いますか?それとも安いと思いますか?
普段からキュウリをよく買われる方であれば即答できるでしょう。ですが、キュウリを自分で購入されない方は、高いのか安いのか全く判断できないのではないでしょうか。このように一つの数値が大きいか小さいかを判断するには、その数値と比較する別の数値が必要です。比較すべき数値があるからこそ、現在の数値を客観的に評価できるようになります。
例えばキュウリの場合、昨日の価格が「47円」だったとします。この時、昨日との比較であれば、1本45円は「安い」と判断できます。ですが、それはあくまで2日間の比較であり、私たちが考える「通常と比べて」という感覚とは大きく異なるでしょう。
私たちが通常考える「高いか安いか」「大きいか小さいか」の比較には、ある程度の期間を考慮した「基準となる価格」が必要となります。その基準となる数値が「ノーム値」です。「ノルム値」とも言われます。
この記事では、マーケティング分析で重要となる「ノーム値」について、分かりやすく解説します。
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ノームとは英語表記すると「norm」。「標準・一般水準・平均水準」を意味する言葉です。normは名詞ですが、これが形容詞になると「normal」。こちらの言葉は、みなさんもよく使われるのではないでしょうか。
マーケティングにおいては、同じ内容のアンケート結果を集計し、算出された「標準値」を意味します。
アンケートなどで得られる数値は、その数値だけではどのような意味を持っているか判断できません。例えば、顧客満足度を調査して「45%」という数値が算出されたとします。残念ながらこの数値だけでは、顧客満足度が高いのか低いのかを知ることはできません。
仮に、このアンケートを過去10年間実施していたとします。この10年間の顧客満足度平均値が「50%」であれば、今回の「45%」は標準よりも低いと判断できます。このように標準となるノーム値を持つことで調査結果を適切に判断し、マーケティングに活用していけることがノーム値を使用するメリットです。
ノーム値の算出方法は、代表的なものとして「平均値」と「偏差値」があります。それぞれの算出方法について解説します。
平均値は対象となるデータを合算し、データ数で割ったものです。
調査年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
顧客満足度(%) | 43 | 59 | 57 | 42 | 57 | 56 | 41 | 58 | 43 | 64 |
上記の表の場合、10年間の顧客満足度平均から算出すると、ノーム値は「52%」となります。もし、2022年の顧客満足度が45%であれば、標準よりも低いと判断できます。
平均値をノーム値とするメリットは、算出が簡単なことです。計算がすぐできますし、対象データとノーム値の比較も感覚的に理解できます。ただし、平均値には不自然に値が違うデータ(異常値)が発生すると、標準値の扱いが難しくなるというデメリットがあります。例えば、説明のためのオーバーな例としてですが、上記の表で2016年に5%という明らかに低すぎる結果が出たとします。すると過去10年の平均が46%と大きく下がり、それ以降のデータ比較に大きな影響を及ぼします。
受験時に使用される偏差値も、平均値ほどではないものの、ノーム値に用いられます。偏差値を利用するメリットは、平均値が変化してもそれぞれのデータが全体のどのくらいの位置にあるかを把握できることです。
調査年 | 2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 平均値 |
顧客満足度(%) | 43 | 59 | 57 | 42 | 57 | 56 | 41 | 58 | 43 | 64 | 52 |
偏差値 | 39 | 59 | 56 | 38 | 56 | 55 | 37 | 57 | 39 | 65 |
偏差値は50が平均点となりますので、偏差値を見れば平均との関係が一目で分かります。
データを比較する際に便利なノーム値ですが、算出する場合は以下の注意が必要です。
ノーム値を算出する元となるデータは、同じ設問文や回答方法から得たものを使用しましょう。アンケートは設問文や回答方法によって、調査結果が大きく異なる場合があります。例えばサラリーマンの小遣いを聞く場合、「小遣いはいくらですか?」と「自由に使えるお金はいくらですか?」では、回答結果が大きく変わる可能性があります。
ノーム値は多くのデータと比較する基準となる数値です。基準値の信頼度を保つためには、同じ条件下でデータを集める必要があります。毎回、同じ調査方法、設問形式で調査することが必須となります。
アンケートの設問文や回答方法が同じでも、調査対象者が変わると調査結果は大きく変わります。特に性別、年齢、居住地域、職業など、調査結果に大きく影響する項目を変更してしまうと、ノーム値の信頼性が大きく下がってしまいます。
調査を始める際は、対象者をどのように設定するのか、しっかりと決定しておきましょう。
ノーム値は元となるサンプルが長期間にわたるほど、信頼性が高くなります。例えばキュウリの価格についても、直近1週間より過去3年間の平均価格の方が「通常」の感覚に近くなります。ノーム値を算出するには、ある程度のデータ数が蓄積するまで同じ調査を実施しましょう。もしデータ数が少ない状態でもノーム値の算出はできますが、その精度は低いことを理解してください。
あくまで目安ですが、対象データが10~20個以上集まれば相応の信頼性は保てると思われます。ですが、調査内容によっても必要なデータ数は変わりますので、ケースバイケースで考えていきましょう。
ノーム値を持つと様々なデータを、色々な方面から分析できるようになります。ここでは、ノーム値の活用方法について解説します。
例えば、顧客満足度アップキャンペーンを実施した場合を想定してみましょう。
顧客満足度ノーム値が52%に対して施策実施後の調査結果が58%であれば、キャンペーンはある程度成功したと考えられます。加えて、顧客満足度以外の項目について調べれば、ノーム値より高い数値が出ている項目は、顧客満足度との関係性が高いと考えられます。そのような場合、その関係性が高い項目をより強化することで、次の施策アイデアにつなげることができます。
時系列でノーム値とデータを比較すると、マーケットやユーザーニーズの大きな変化を把握できる場合があります。
例えば、長い間安定していた顧客満足度が、ここ3年間連続してノーム値を下回ったとします。もし、自社のマーケティング施策をそれほど変化させていないのであれば、自社とは異なる要因について大きな変化が起きていると推測できます。
この変化を素早く読み取ることができれば、早急に原因を追究して、新たなるマーケティング施策に活かせるかもしれません。このように、信頼性の高いノーム値があればこそ、異常値の察知が素早くなり、より的確なマーケット適応を可能にします。
ノーム値はマーケティングリサーチで多くのデータを分析する際に欠かせない、とても重要な指標となります。信頼度の高いノーム値を得るには相応のデータ数やコストが必要ですが、正しい指標を持つことはマーケティング施策のパフォーマンス向上につながります。
ぜひ自社にとって必要なノーム値は何かを検討し、ノーム値づくりにつながる調査を検討してみましょう。
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