2020.03.06
ユーザビリティテストとは
ユーザビリティテストとは モノの購買活動が実店舗からオンラインベースとなった昨今、WEBやアプリ、ソフトウェア上における使用性パフォーマンスの優位性は非常……
公開日:2023.01.12
RFM分析とは、顧客を「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」という3つのポイントで分類し、マーケティング施策へとつなげる分析手法です。
みなさんは企業にとって最も重要な資産は何だと思いますか?江戸時代の話で、ある呉服屋が火事に見舞われたとき、真っ先にしたことが顧客台帳を井戸に投げ込むことだったそうです。その理由は、火事の後に商売を再開するには、最も重要だったのが商品やお金ではなく「顧客台帳(顧客リスト)」だったからとか。それほど商売にとって重要な顧客リストですが、価値を生み出すためには具体的なマーケティング施策へとつながる適切な情報収集と分析が必要です。
この分析手法をうまく確立できれば、顧客リストの価値は飛躍的に高まりますので、今回の記事では、顧客リストの分析手法として広く知られている「RFM分析」について解説します。
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RFM分析とは、顧客を「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つの要素でグループ分けする分析手法です。
最終購入日(Recency)とは、顧客が最後に商品を購入した日です。一般的には最終購入日が近い人ほど再購入してもらえる可能性が高いという傾向があります。
購入頻度(Frequency)とは、顧客がこれまでに商品を購入した累計回数です。業界により購入頻度の特性は異なりますが、一般的には購入頻度が高いほど再購入につながる可能性が高くなります。
購入金額(Monetary)とは、顧客がこれまでに購入した商品の総額となります。一般的には購入金額が高いほど、企業にとっての重要度が高まります。RFM分析では、これらの代表的な要素を組み合わせることで、「継続購入している継続顧客」「最近は購入していない休眠顧客」などに分類します。分類の方法は企業ごとのマーケティング戦略によって異なりますが、代表的な分類としては以下の8パターンの考え方があります。
このように顧客をRFMの要素でグループ化することで顧客特性が明確となり、それぞれの特性に合わせたマーケティング施策へとつなげていくことが、RFM分析の利用目的となります。
RFM分析のメリットは、購入に大きく影響する要素によって顧客セグメントを作成できることです。これにより顧客の重要度や特性が明確になり、企業のマーケティング戦略に応じた具体策を立案しやすくなります。
ここではRFM分析によって分類した顧客セグメントの活用例を紹介します。
例として「最終購入日」と「購入頻度」によって、以下のような顧客セグメントを作成したとします。
これらの顧客に合わせたマーケティング施策としては、以下のようなアプローチ方法が考えられます。
優良顧客へのマーケティング施策は、「購入金額」を高めることが目標と設定できます。その目標を達成するためには、優良顧客を「特別扱い」することで、より企業やブランド、商品と深いつながりをつくることが大切です。例としてはプレミアム会員としての特別サービス、限定商品の体験イベントや先行販売などが考えられます。
かつて優良顧客だったユーザーが離れていったとしたら、そこには「競合商品」や「ライフステージの変化」など、何かしらの問題が起きているはずです。このような顧客については、離れていった原因を明らかにすることが大切です。かつて優良顧客だったということは、見方を変えれば再度、優良顧客となる可能性が高いとも言えます。ある程度コストがかかったとしてもインタビューなどで個別状況を確認し、問題点の解決を図っていくべきでしょう。
一度購入したけれどリピートされなかった顧客は、商品やサービスに充分な魅力を感じなかったと考えられます。この顧客がリピートしなかった原因には、自社の商品やサービスが大きな問題点を抱えているかもしれません。アンケートやインタビューなどで原因を追究し、商品やサービスの改善に活かしていく施策を考えていくべきでしょう。ただし、この顧客層が優良顧客となるまでには、それなりの期間とコストがかかると思われます。リスクとリターンのバランスを考えた施策が求められるでしょう。
新規顧客は将来的なビジネスの発展にとって、とても重要な存在です。この顧客をいかにリピーターにできるかが、企業やブランドの発展に大きく影響します。この顧客については、商品やサービスとの接点を増やす施策が有効です。人は商品やサービスの購入を繰り返すと、親近感を抱く心理効果が働きます。まずは、リピートしてもらうことを優先して、クーポンやポイントサービス、リピートキャンペーンなどで購入を後押しする施策が有効的でしょう。また、メルマガやSNSフォローなどで情報のつながりをつくる施策も考えていくと良いでしょう。
企業やブランドの長期的な発展は、いかに優良顧客を「ロイヤルカスタマー」へと育てていくかが大切なポイントです。「ロイヤルカスタマー」とは単なる優良顧客ではなく、購入金額の大きさとともに「企業やブランドに共感や信頼を寄せている顧客」です。顧客が企業やブランドに高いロイヤルティを感じていると、強い一体感を得るようになります。そのため、企業やブランドから離れにくくなるとともに、多くの人に情報を拡散することも期待できます。
ロイヤルカスタマーを育成するには、RFM分析でセグメント化した優良顧客が何を求めているかを把握することが重要です。優良顧客を対象にアンケートなどの定量調査とインタビューなどの定性調査を組み合わせて、ロイヤルカスタマーへと至る「カスタマージャーニーマップ」の作成などにつなげていきます。
RFM分析を行う手順は、以下の3ステップとなります。
RFM分析を行うには、以下のデータが必要となります。
これらのデータを収集するためには、顧客管理システムなどを導入した方が良いでしょう。小売ビジネスであればPOSシステム、通販ビジネスであれば販促システムなどを活用しましょう。また、より詳細な分析を行うためには、顧客管理システムを利用して以下のようなデータを収集することをおすすめします。
もし必要な情報が不足している場合は、顧客にメールや商品に同梱したハガキなどでアンケートを実施するという方法も考えられます。RFM分析に限らず、正しくデータを分析するには正確なデータが必要です。
収集したデータを集計し、その結果から分析を行います。データの集計には顧客管理システムやエクセル、集計ソフトなどを利用します。データ分析を行う際に重要なポイントの一つが、「最終購入日」「購入頻度」「購入金額」をどのようにランク付けするかです。
例えば、最終購入日を何段階に分けるのか、各段階の期間をどのように設定するかには、決まった方法はありません。設定するランクが少ないと的確な分析が難しく、ランクが多くなると分析にかかる手間が大きくなってしまいます。一般的には各要素を3~5ランクに分類するケースが多いでしょう。ですが、3要素を5ランクに分類すると、単純計算で125グループができてしまいます。設定にあたっては分析者が様々な状況や仮説を考慮して、自社にとって適切なランク数に分類していきましょう。
顧客セグメントが完了したら、それぞれの顧客に対するアクションプランを立案していきます。アクションプラン立案に際しては、「顧客の重要度」「実行に要するコスト」「将来的なリターン」を充分に考慮して進めていきましょう。また、大切なポイントなのが、RFM分析とアクションプランを繰り返していくことです。RFM分析で得られた結果は、時間やアクションプランの効果によって大きく変化する可能性があります。一時的な分析で留まるのではなく、PDCAを継続できる環境づくりを意識していきましょう。
RFM分析はとても理解しやすく、効果的な分析手法です。しかし、決して万能な分析手法というわけではありません。RFM分析には以下のような課題があることを理解しておきましょう。
RFM分析は一般的にリピート購入される購買モデルを想定している分析手法です。そのため、特殊な購買モデルの業界にはなじまない可能性があります。例えば、ベビー用品などは同一商品をリピート購入するケースが少なくなり、商品ベースの「購入頻度」が高くなることはほとんどありません。また、季節性が高い商品の場合、購入期間が限られるため、「最終購入日」による分析が難しくなることも考えられます。
商品の売れ行きが時期によって大きく変動する場合、RFM分析では適切な結果を得にくくなる場合があります。例えば、セール販売や大規模なキャンペーンなどで短期間に連続購入した顧客は、「最終購入日」や「購入頻度」での評価が著しく高くなる可能性があります。
顧客の引っ越しなどライフステージの変化は、その詳細をRFM分析から読み取り予測することはできません。このようなケースでは、顧客にメールや商品に同梱したハガキなどでアンケートを実施するなど顧客を個別に調査して、必要なフォロー策の実施が求められるでしょう。
RFM分析は、購入頻度が著しく低い商品の分析には適していません。例えば、住宅や自動車など、一度購入したら長期間リピートされにくいと、適切な分類が難しくなるケースがあります。
RFM分析の課題を解決するためには、それ以外の分析手法を適切に用いることが有効です。ここではRFM分析の課題を補える分析手法を紹介します。
RFM分析は比較的理解しやすい分析手法ではありますが、それでもランク分けの数によっては複雑な作業が要求されます。RFM分析よりもよりシンプルで、分かりやすく簡単に分析できる手法が「デシル分析」です。デシル分析とは、顧客を「購入金額」の高い順に10のランクに分けて、購入比率や売上高構成比を算出する分析手法です。この比率や構成比によって、売上貢献度が高い優良顧客層を抽出します。デシル分析では各グループの売上比率が分かりやすいため、グループの重要度を素早く判断できる特性があります。
RFM分析に購入アイテム(Item)を加味した分析手法がMRFI分析です。MRFI分析ではRFM分析で分類した顧客セグメントに購入アイテムを組みあわせて分析を行います。
MRFI分析は顧客のより詳細な購買行動が把握できるようになります。例えば、顧客の購買履歴に応じておすすめ商品を紹介するといったことが考えられ、顧客ごとによりマッチしたマーケティング施策が立案しやすくなります。
RFMC分析とは、RFM分析にカテゴリーを組み合わせた分析手法です。例えば、ベビー用品などは子供の成長とともに購入する商品が変化し、同一商品では顧客の購買行動を的確に把握するのが難しくなります。そこで単一商品ではなく「商品カテゴリー」を用いて分析することで、顧客の購買行動を予測、顧客に合わせたマーケティング施策を立案しやすくなります。
ABC分析とは、商品ごとの売上によってABCの3ランクに分類して、売れ筋を分析する手法です。ABC分析では売上累積構成比80%前後までをAランク、90%前後までをBランク、残りをCランクとして、売れ筋でリピート仕入れする商品や販売終了とする商品の見極めに使用されるケースがあります。
経済学者のヴィルフレド・パレートは「ある特定の要素2割が全体の8割の成果を生み出している」というパレートの法則を考案しています。これはABC分析でもよく用いられる考え方で、上位20%のAランク商品が約80%の売上を占めるという一つの目安になる場合があります。
マーケティングでよく用いられる言葉に、「パレートの法則」、「1:5の法則」、「5:25の法則」があります。
これらはあくまで経験則によるもので、絶対的な法則ではありません。ですが、3つの法則が強調しているのは「既存顧客強化は、新規顧客効果よりもはるかに投資効率が高い」ということです。企業やブランドが狙うべきターゲットは、当然、時々のマーケティング課題によって異なります。
しかし、限られた経営資源で大きな成果を生み出すには、基本的に既存顧客、なかでも優良顧客をどのように育てるかが最も重要なポイントとなります。だからこそ企業やブランドは、「顧客リスト」について明確な顧客ランクを設定する必要があります。それぞれの顧客がどのランクに位置するのか分からなければ、顧客にマッチしたアプローチができなくなります。
そのためにも、自社で顧客データの把握が難しい場合は、専門の会社に相談してみることをおすすめします。RFM分析は比較的汎用性が高く、大きなコストを必要としないで顧客セグメントが行える手法です。企業やブランドが顧客ランク設定の初期段階で用いる手法としては、多くのケースで最適解となる可能性が高いでしょう。
RFM分析は売上と連動しやすい要素をベースとして、的確に顧客を分類しやすい分析手法です。この分析手法をうまく用いれば、顧客特性に応じたマーケティング施策が立案しやすくなります。その一方で、RFM分析に伴うランク分けや課題点の抽出は、分析者の技能に頼る側面が大きくなる傾向があります。
また、準備として必要な顧客データの把握も重要です。RFM分析を行う際は、社内の優秀なメンバーを用いるか、外部の専門家に協力を仰ぐと、より効果的に分析できるでしょう。顧客リストはある意味、企業にとって最も大切な資産の一つと言えます。この資産をより価値あるものにできるかは、RFM分析等により、どれだけ具体的なマーケティング施策につなげられるかにかかっています。企業やブランドが長期的な発展を遂げられるよう、ぜひRFM分析などの分析手法を有効的に活用していきましょう。
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