公開日:2025.03.21

市場調査とは?マーケティングリサーチとの違いや成功へのポイントなどを紹介

  • マーケティングリサーチHowto

市場環境が急速に変化する現代において、企業が持続的な成長を遂げるには、的確な市場理解が重要です。その市場把握を行う効果的な手法が「市場調査」です。
 
しかし、「市場調査」という言葉を聞いたことはあるけれど、「市場調査って実際にどうやって進めるの?」「マーケティングリサーチとは何が違うの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
 
そこで、この記事では市場調査とマーケティングリサーチの違いとともに、市場調査の活用シーンや調査手法、成功のポイントについて解説します。

 
 

市場調査とは?

市場調査とは、企業が製品やサービスを提供する市場について、情報を収集・分析し、現状把握を行う調査です。具体的には、市場規模、顧客ニーズ、競合状況、業界トレンドなど、多岐にわたる情報を収集します。
 
市場調査の主な目的は、企業の意思決定をサポートすることです。例えば、新製品の開発方針、市場参入、マーケティング戦略の策定など、重要な意思決定を行う際に、客観的なデータを提供することで、適切な判断をうながします。
 
市場調査で得られる情報は、下表のような企業の課題解決に役立ちます。

表 市場調査で可能な課題解決内容
課題解決 内容
顧客ニーズの把握 顧客が何を求めているのか、潜在的なニーズは何かを把握し、製品開発やサービス展開の戦略策定につなげます。
競合分析 自社および競合他社の強み・弱みを分析し、競争優位性を確立するための戦略立案に役立てます。
市場機会の発見 新たな市場や顧客層を発見し、事業拡大のチャンスをつかみます。
リスク軽減 市場の変化やトレンドを予測し、リスクを回避するための対策を講じます。

 
 

マーケティングリサーチとは?

マーケティングリサーチとは、企業のマーケティング活動における意思決定を支援するために、市場、顧客、競合などに関する情報を体系的に収集・分析する活動を言います。より具体的には、製品開発、価格設定、プロモーション、販売チャネルなど、マーケティングの各要素に関する意思決定を、データに基づいて行うために実施されます。
 
マーケティングリサーチの主な目的は、以下の通りです。
顧客理解の深化:顧客のニーズ、購買行動、嗜好などを詳細に把握し、顧客満足度向上やロイヤルティ向上につなげます。
市場機会の特定:未開拓の市場や顧客層を発見し、新たなビジネスチャンスを創出します。
マーケティング効果の測定:実施したマーケティング施策の効果を測定し、改善点を見つけ出します。

 
 

市場調査とマーケティングリサーチの違い

市場調査とマーケティングリサーチは、どちらも市場に関する情報を収集・分析する活動ですが、その目的と活用シーンには明確な違いがあります。これらの違いを理解することは、より効果的なマーケティング戦略を立案する上で重要です。
 
ここでは、市場調査とマーケティングリサーチの目的、活用シーン、具体的な調査手法などの違いについて解説します。
 

市場調査とマーケティングリサーチは目的が違う

市場調査の目的を一言でいえば、「現状把握」です。つまり、特定の市場が過去から現在までどのように変化してきたのか、そして現在の市場がどのような状況にあるのかを的確に把握することにあります。一方、マーケティングリサーチの目的は、「市場動向の予測」です。市場の現状や新たな変化を分析することで、今後、市場がどのように変化していくのかを予測することに重点を置きます。
 
つまり、市場調査は「現状把握」、マーケティングリサーチは「市場動向の予測」を目的としているのです。
 

市場調査とマーケティングリサーチを活用するシーンが違う

市場調査とマーケティングリサーチは、目的が異なるため、活用されるシーンも異なります。
 
市場調査は、主に下表のようなシーンで活用されます。

表 市場調査で活用シーン
活用シーン 内容
新規市場への参入 新しい市場に進出する際に、市場規模や競合状況、顧客ニーズなどを把握し、参入の可否や戦略を検討します。
市場トレンドの把握 市場全体の動向や変化を把握し、長期的な事業戦略や製品開発に役立てます。
競合分析 競合他社の動向や戦略を分析し、自社の競争優位性を確立するための戦略立案に活用します。

 
 
一方、マーケティングリサーチは、より具体的なマーケティング課題を解決するために、下表のようなシーンで活用されます。

表 マーケティングリサーチで活用シーン
活用シーン 内容
新製品開発 新製品(新商品、新サービス)のコンセプト評価、ターゲット層の特定、価格設定など、製品開発の各段階で顧客ニーズや市場動向を把握し、製品開発に反映させます。
広告・プロモーションの効果測定 広告やプロモーションの効果を測定し、費用対効果の高いマーケティング施策を立案・実施します。
顧客満足度調査 顧客の満足度や不満点を把握し、製品やサービスの改善、顧客ロイヤルティ向上につなげます。
ブランドイメージ調査 自社のブランドイメージを把握し、ブランド戦略の立案や改善に役立てます。

 
 
このように、市場調査は市場全体の大きな流れを把握するために、マーケティングリサーチは個別のマーケティング活動を最適化するために活用されます。

 
 

市場調査やマーケティングリサーチで用いられる調査

市場調査やマーケティングリサーチを効果的に行うためには、目的に合わせた適切な調査手法を選択することが重要です。これらの調査は、大きく「定量調査」と「定性調査」に分けられ、それぞれ異なる特性と強みを持ちます。この他に、既存のデータや資料を活用する「デスクリサーチ」も、効率的な調査を行う上で重要な手法の一つです。
 
ここでは、これらの代表的な調査手法について、それぞれのメリット・デメリットとともに、調査手法の選び方について解説します。
 

定量調査

定量調査とは、数値データを用いて市場の傾向や事実を客観的に把握するための調査手法です。統計的な分析に適しており、大規模なサンプルから信頼性の高いデータを収集できます。
 

 
 
定量調査の代表的な手法は以下の通りです。
 
 
ネットリサーチ(WEBアンケート)
インターネットを通じてアンケートを実施する方法です。時間や場所の制約が少なく、効率的に多くの回答を収集できます。比較的低コストで実施できるため、定量調査の中でも広く活用されています。

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会場調査(CLT: Central Location Test)
特定の会場に調査対象者を集め、製品やサービスを評価してもらう方法です。実際に製品やサービスを体験してもらうことで、より詳細な評価を得られます。新製品の評価やパッケージデザインの評価などに適しています。

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ホームユーステスト(HUT: Home Use Test)
調査対象者に製品を自宅で使用してもらい、一定期間後に評価を収集する方法です。実際の使用環境での評価を得られるため、製品の使い勝手や効果を詳細に把握できます。食品や日用品などの調査によく用いられます。

ホームユーステスト

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定性調査

定性調査とは、数値化できない消費者の心理や行動の背景にある要因を深く理解するための調査手法です。消費者の言葉や行動から、潜在的なニーズやインサイトを探ります。
 

 
 
定性調査の主な手法は以下の通りです。
 
 
グループインタビュー(FGI: Focus Group Interview)
複数の調査対象者をグループに分け、特定のテーマについて自由に議論してもらう方法です。多様な意見やアイデアを収集し、新たな発見を得るのに適しています。

グループインタビュー(FGI)

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デプスインタビュー(IDI: In-Depth Interview)
調査対象者と1対1でじっくりと話を聞く方法です。個人の価値観や経験、感情などを深く掘り下げ、本音を引き出していくことで、詳細な情報を収集できます。

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エスノグラフィ調査
調査対象者の生活環境に入り込み、行動や発言を観察・記録する方法です。日常生活における自然な行動や思考パターンを把握することで、潜在的なニーズやインサイトを発見できます。

エスノグラフィ調査(訪問観察調査)

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アスマークでは、エスノグラフィ調査(訪問観察調査)のサービスを提供しております。この調査は、生活者の行動を「見る」「観察する」ことに重きを置く『定性調査』です。

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デスクリサーチ

デスクリサーチとは、既存の公開情報や資料を収集・分析することで、市場や競合に関する情報を得る調査手法です。インターネット、書籍、業界レポート、統計データなど、多様な情報源を活用します。
 
デスクリサーチの主な目的は、以下のようなものが挙げられます。
情報収集の効率化:新たに調査を実施するよりも、時間やコストを削減できます。
調査の事前準備:定量調査や定性調査を実施する前に、基礎情報や仮説を収集します。
市場全体の把握:市場規模、成長率、トレンド、競合状況など、マクロな視点から市場を把握します。
 
定量調査や定性調査と組み合わせて実施することで、より精度の高い市場理解につながります。例えば、デスクリサーチで得られた情報をもとに、インタビューやアンケートの質問項目を作成したり、調査結果の解釈を深めたりすることが可能です。
 

市場調査やマーケティングリサーチで実施する調査手法の選び方

市場調査やマーケティングリサーチを成功させるためには、主に調査目的・納期・予算から逆算して調査手法を選ぶことが大切です。
 
何か調査するとき、『ただ情報を取得すること』が目的ではなく、『何かの意思決定をするために』調査を行います。その目的を達成することが可能な調査手法を選択する必要があります。もし市場の動向を調査したい場合は、同じ質問の調査を繰り返すようなアンケート調査が候補に挙がります。
 
そして、「納期」も気にする必要があります。調査目的を達成するデータや知見が必要な時期に余裕があれば、日記調査など、ある程度期間が必要な調査も候補として挙げることができますが、近々に迫っている場合は、選択できる調査が狭まります。
 
最後に「予算」。調査目的を達成するには大規模な調査を希望しても、その費用が想定の予算を上回る場合、検討せざるを得ません。もし、「予算」内で収めようとすると、少しミニマム(≒コンパクト)になる調査へ切り替えざるを得ない状況もあるでしょう。
 
 
こういった状況が考えられますので、調査目的・納期・予算から逆算し、現状で最適な調査手法を選択しましょう。
 
 

定量調査と定性調査のメリット・デメリット

市場調査やマーケティングリサーチでは、定量調査と定性調査の特性を理解し、目的に応じて適切に活用することが重要です。それぞれのメリットとデメリットは以下の通りです。
 

定量調査
メリット
・数値データに基づいた客観的な分析が可能
・統計的な処理により、傾向や相関関係を把握しやすい
・大規模なサンプルサイズで実施することが多く、結果の信頼性が高い
・効率的なデータ収集が可能
 
デメリット
・回答者の深層心理や背景にある要因を把握しにくい
・自由回答形式が少ないため、柔軟な意見収集が難しい
・質問項目の設計が結果を大きく左右する

 
 

定性調査
メリット
・回答者の深層心理や背景にある要因を深く理解できる
・自由な意見や感想を収集し、新たな発見につながる
・柔軟な質問設計が可能で、調査中に質問内容を変更できる
 
デメリット
・結果が回答者の主観に左右されやすく、客観性に欠ける場合がある
・少数のサンプルサイズで実施するため、結果の一般化が難しい
・データ分析に時間と労力がかかる

 

定量調査と定性調査を組み合わせて相乗効果を得る

定量調査と定性調査は、それぞれ異なる視点から市場をとらえるため、両者を組み合わせることで、より深く多角的な分析が可能になります。
 
例)定量調査→定性調査
例えば、定量調査で「顧客満足度が低い」という結果が出た場合、その原因を特定するために定性調査を実施します。それにより、グループインタビューやデプスインタビューを通して、顧客が具体的にどのような点に不満を感じているのか、その背景にある要因は何かを把握することが可能です。
 
例)定性調査→定量調査
例えば、グループインタビューで「若年層は環境に配慮した製品を求めている」という意見が多く聞かれた場合、アンケート調査でその傾向が他の層にも当てはまるのか、どの程度の割合で支持されているのかを検証できます。
 
このように、定量調査と定性調査を組み合わせれば、以下のような相乗効果を期待できます。
 
課題の発見と深掘り:定量調査で広範な課題を把握し、定性調査でその原因を深掘ります。
仮説の検証と具体化:定性調査で得られた仮説を定量調査で検証し、具体的な数値データで裏付けます。
顧客理解の深化:定量調査で顧客全体の傾向を把握し、定性調査で個々の顧客の心理や行動を深く理解します。
 

市場調査やマーケティングリサーチの流れ

市場調査やマーケティングリサーチは、一般的に以下のような流れで実施されます。

市場調査やマーケティングリサーチの流れ
図 市場調査やマーケティングリサーチの流れ

 
STEP1 調査目的の明確化
まず、何を明らかにしたいのか、どのような情報を得たいのか、具体的な調査目的を設定します。目的があいまいなまま調査を進めてしまうと、期待した結果を得られない可能性が高まります。
 
STEP2 調査計画の立案
調査目的を達成するために、適切な調査対象者、調査方法、調査項目、調査期間、予算などを検討し、調査企画を立て、具体的な調査計画を立てます。
 
STEP3 調査の実施
調査計画に基づいて、アンケート調査や郵送調査、会場調査、インタビュー調査など、適切な調査方法でデータを収集します。
 
STEP4 データの集計・分析
収集したデータを集計し、統計的な手法や分析ツールを用いて分析します。データ分析を通じて、調査目的を達成するための考察や結論を導き出します。
 
STEP5 調査結果の報告
分析結果をまとめ、レポートを作成します。レポートには、調査の目的、方法、結果、考察、提言などを分かりやすく記載します。
 
STEP6 結果の活用
調査結果をもとに、マーケティング戦略の策定、製品開発、販売促進など、具体的なアクションプランに落とし込みます。
 
 
上記の流れを意識することで、より効果的な市場調査やマーケティングリサーチを実施できます。
 
 

市場調査やマーケティングリサーチを成功させるためのポイント

市場調査やマーケティングリサーチを成功させるためには、下表のポイントを意識することが大切です。

表 市場調査やマーケティングリサーチを成功させるためのポイント
ポイント 内容
目的の明確化 調査の目的があいまいなまま進めた場合、結果の活用が難しくなる可能性が高くなります。そのため、意思決定ができるような、具体的な目的を決めましょう。
質の高いデータ収集 調査対象者の選定、質問項目の設計、調査環境の整備などを注意深く行わない場合、偏ったデータになったり、必要回答数に達しなかったりする可能性が高くなります。そのため、回答者への回答負荷を考慮したり、調査目的に応じた調査対象者を厳選したりするなど取り組みましょう。
適切な分析と解釈 得られた数値データだけではなく、回答の背景や文脈を踏まえた考察ができないばあい、間違った結論を導いてしまう可能性が高くなります。そのため、定量調査と定性調査を組み合わせて行ったり、プロのリサーチャーに依頼したりすることを検討しましょう。
専門家の活用 高度な市場調査やマーケティングリサーチを行う場合、専門の調査会社に依頼することも検討しましょう。専門の調査会社に所属するリサーチャーなどは、豊富な知識と経験に基づいて、より効果的な調査を設計・実施し、精度の高い分析結果を提供してくれます。

 
 

市場調査の事例

ここでは、定量調査と定性調査を組み合わせた、市場調査の事例を紹介します。
 

事例1:食品メーカーA社のスーパーフード市場調査
食品メーカー A社は、海外で人気のスーパーフードを国内市場に導入するにあたり、市場の成長性や競合状況を分析するために市場調査を実施しました。
 
まず、デスクリサーチを行い、政府機関や業界レポートを活用して食品市場全体の成長率や健康食品市場の規模を分析しました。さらに、競合ブランドの市場シェアや成長戦略についても調査しました。
 
次に、定量調査として、健康志向の高い20〜40代の消費者を対象にネットリサーチ(WEBアンケート)を実施。スーパーフードの認知度や興味関心、購買意欲について数値化しました。
 
その結果を踏まえ、定性調査としてグループインタビューを実施し、消費者がスーパーフードをどのように日常に取り入れているのか、現在の食生活との親和性について伺いました。
 
調査の結果、市場は安定的に成長しており、特に若年層の関心が高いことが判明しました。また、競合ブランドが限られているため、価格やブランド戦略次第で市場に参入できる可能性があることが分かりました。さらに、消費者は「簡単に食べられる形態」を求めており、パウダーやスナック形態の需要が高いことも判明しました。これらの調査結果をもとに、スーパーフード事業への新規参入を決定しました。

 

事例2:自動車メーカーB社のEV市場調査
自動車メーカーB社は、今後の電動車(EV)開発計画を策定するにあたり、市場の成長性と消費者ニーズを把握するための調査を実施しました。
 
まず、デスクリサーチによって、政府のデータや業界レポートを分析しました。さらに、世界的なEV市場の成長率や各国の補助金政策を調査し、競合メーカーのEV市場シェアや販売戦略についても把握しました。
 
次に、定量調査として、現在の自動車所有者を対象にネットリサーチ(WEBアンケート)を実施。EVへの関心や購入意向、価格許容範囲、充電インフラに対する懸念点についてデータを収集しました。
 
その後、定性調査として、既存のEVユーザーに対するデプスインタビューを実施し、購入の決め手や使用時の不満点について詳しく伺いました。
 
調査の結果、EV市場は今後10年間で大幅に拡大すると予測されるものの、「価格の高さ」と「充電インフラの整備不足」が普及の大きな課題であることが分かりました。また、消費者の購入意向は高いものの、「充電時間の長さ」や「航続距離」に対する不安が依然として大きいことも分かりました。さらに、競合メーカーは政府の補助金政策を活用し、低価格モデルの投入を進めていることも分かりました。これらの調査結果をもとに、新しいEVモデルの開発では「充電時間の短縮」と「低価格化」を重視する方針を決定しました。さらに、補助金適用を前提とした価格戦略を策定し、市場参入の準備を進めました。

 
 

マーケティングリサーチの事例

ここでは、定量調査と定性調査を組み合わせた、マーケティングリサーチの事例を紹介します。
 

事例1:飲料メーカーC社の新製品コンセプト評価
飲料メーカーC社は、新しい炭酸飲料を市場投入する前に、ターゲット層の反応を評価し、最適なコンセプトを決定するためのマーケティングリサーチを実施しました。
 
まず、定性調査として、20〜30代のターゲット層を対象にグループインタビューを実施し、炭酸飲料に求める味やデザイン、健康志向の要素について意見を収集しました。また、競合製品の強み・弱みを分析し、自社商品の差別化ポイントを把握しています。
 
次に、定量調査(会場調査)として、複数の試作品を用意し試飲テストを実施しました。味や炭酸の強さ、甘さ、後味などとともに、商品名やパッケージデザインの印象についても評価してもらい、最も好評だった組み合わせを特定しました。
 
調査の結果、ターゲット層は「フルーツフレーバー×微炭酸」を好む傾向が強いことが判明しました。また、定性調査で「健康志向も重要」という意見が多かったため、低カロリー版を同時展開する戦略を策定しました。これらの調査結果をもとに、消費者の嗜好に合わせた製品改良を行うとともに、広告や販促施策のターゲット戦略を最適化し、効果的なマーケティング展開を進めました。

 

事例2:化粧品メーカーD社の広告効果測定
化粧品メーカーD社は、デジタル広告の効果を測定し、ブランド認知度の向上と購買意欲の変化を分析するための調査を実施しました。
 
まず、定量調査(ブランドリフト調査)によって、広告の接触前後で消費者のブランド認知度、好感度、購買意向を比較するとともに、広告の視聴時間やクリック率、コンバージョン率などのデータを収集し、広告のパフォーマンスを数値化しました。
 
次に、定性調査(デプスインタビュー)によって、広告を視聴した消費者に対して意見を集め、クリエイティブ要素(映像・コピー・色彩)に対する感情的な反応を分析しました。
 
調査の結果、広告を視聴した消費者のビジュアル要素に対する評価は高かったものの、メッセージがあいまいであり、購買意欲の向上には十分につながっていないことが判明しました。また、デプスインタビューでは「成分や効果をもっと明確に伝えたほうが良い」という意見が多く寄せられました。これらの調査結果をもとに、D社は広告のコピーやナレーションを改善し、製品の成分や効果をより強調する内容へとクリエイティブを修正することで、ターゲットにより響く広告へと最適化を図りました。

 
 

まとめ

この記事では、市場調査について詳しく解説しました。
 
市場調査で得られる情報は、企業の事業戦略や意思決定に大きな影響を与えます。的確なデータに基づいた戦略を立てることで、企業は市場での競争優位性を確立し、ビジネスの成長を加速させることが可能です。
 
ぜひ、市場調査で得られた情報を積極的に活用し、ビジネスの成長につなげていきましょう。
 
市場調査についてのご相談はこちら>
 
 

執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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