2024.08.16
定点調査とは?基本からメリット・デメリットや活用事例、注意点をご紹介
ビジネスの世界では、刻々と市場や顧客のニーズが変化し、企業はその流れに応じたマーケティング活動を求められます。そのような環境下で、企業が市場や顧客に関する情報を……
公開日:2024.12.20
近年、消費者の購買行動が目まぐるしく変化しており、それに伴って多くの企業が競争の激化に直面しています。また、商品やサービスの選択肢が増え続ける中で、自社の強みをどのように活かし、他社と差別化するかが、これまで以上に重要な課題となっています。
特に現在は、モノと情報が飽和し、競合が別カテゴリーにも存在するという状況です。その中でビジネスチャンスを見つけ出すためには、単に市場に注目するのではなく、自社でしか提供できない独自の価値を徹底的に分析し、その価値を最大限に活用することが重要です。自社の「良さ」に立ち返り、消費者満足に対する真の眼差しを持つことが、企業の真価を発揮する鍵となるかもしれません。
そこで今回は、これらの課題を解決するために「コレスポンデンス分析」と「回帰分析」の二つの事例を題材に、具体的なソリューションをご紹介します。これらの分析手法を活用することで、自社のブランドポジションを把握し、商品やサービスの満足度要因を深く理解することが可能となります。
本記事を通じて、皆様が課題に応じた分析手法を理解し、ビジネスチャンスを広げる一助となれば幸いです。
まずはコレスポンデンス分析についてご紹介します。
皆様の中で、以下で悩んだことはないでしょうか。
このような悩みに対して、自社と競合のブランドポジションを正しく把握することが重要です。
そこで活用できる手法がコレスポンデンス分析です。このコレスポンデンス分析は、ブランドなどの『比較対象』と基準する『評価項目(イメージ)』などの関係性(類似性)を2次元のマップ上に表現する分析手法となります。イメージとしては下図となります。
上図のように表現してあげることで、解析結果が視覚的にわかりやすく表現できるので、競合他社とのイメージ比較(ポジショニング)などに使用されます。
ここで、1つ調査事例からコレスポンデンス分析の具体的な話をします。
上記のような事情がある中、「新たな顧客獲得のため、定番品の上位ブランドとして、質のよさ・贅沢感を打ち出した商品を販売した」というような状況がありました。
その中で、「この質のよさ・贅沢間を打ち出した新商品の発売により狙ったイメージ戦略が構築されているのか把握をしたい」という目的があったため、コレスポンデンス分析を行いました。
コレスポンデンス分析の調査設計
まず、コレスポンデンス分析の調査設計についてです。
コレスポンデンス分析では、基本的に下図のような『マトリクス表』というものを使用します。
具体的に、自社ブランドと競合ブランド(5~10ブランド程度が理想)に対応するイメージ項目を用意します。イメージ項目は、例えば、『定番』であったり、『信頼できる』であったりするような項目になります。このブランドに対するイメージ項目を20個以内で用意できるのが理想です。この2点を表頭または表側のどちらかに配置して、複数回答とすることで、コレスポンデンス分析の調査設計の準備は完了です。
ここで注意が必要なのが、イメージはそのブランドを知っていないと回答ができないため、認知の設問を入れて、知っているブランドのみ回答してもらうような設計が必要となります。
また、もう一点重要なことがあります。それは、『仮説』です。より良い結果を出すためには、『仮説』を考えることが重要になります。例えば、「ブランドBと自社のイメージが被っているのでは?」「ブランドCと自社の路線は違うのでは?」といったような仮説があった場合には、比較すべきブランドとして、ブランドBとブランドCを入れる必要があります。また、高級志向の商品にシフトしているが、「まだ定番というイメージが抜け切れていないのでは?」「安っぽいイメージがまだあるのでは?」といった仮説があった場合には、「高級感がある」「安っぽい」「定番ブランド」といった選択肢を入れる必要があります。
このように仮説を調査設計の際に考えることで、よりそのコレスポンデンス分析を行う上での設計の精度が上がっていくので、設計を行うフェーズから「どういった結果が想定されるのか?」といったことをしっかり考慮していきましょう。
次は、コレスポンデンス分析の結果を見ていきましょう。先ほどのマトリクス表から得られたデータを下図のような集計表を用いて、専用の統計ソフト、例えばExcel統計、SPSSといった統計ソフトを使い、コレスポンデンス分析の結果を算出します。
この集計表では、ブランドごとに、どのくらいのイメージが回答されたか、割合(%表)と回答人数(n表)を出力します。
※コレスポンデンス分析は、%ではなく、n(回答人数)を使用します。
そして、このn表から、統計ソフトを使って算出すると下図のような結果を得ることができます。
これらから、今回の事例における結果として、「自社ブランドはAと同じイメージで『定番』『昔からある』『古臭い』イメージ」といったイメージがあるということが分かりました。一方で、新発売新商品の発売によって目指していた、質の良さであったり、特別感であったりするポジションに関しては近しいブランドの企業が、現状このポジションは開いているということが分かりました。
つまり、今回の結果をまとめると以下のことがわかり、「目指しているポジションは獲得できていないが、ここを強化することで、他のブランドとも差別化ができるのではないか?」といったような結論を導き出すことができます。
これがコレスポンデンス分析の特徴となります。
続いて、回帰分析についてです。こちらも以下のような悩みを抱えたことはないでしょうか。
・商品のリピート要因・満足度の要因がわからない
・商品・サービスのどの要素を伸ばせば良いか分からない
・おいしさは、どの味がよくておいしいと評価しているのかがわからない
重回帰分析は、その要因がどれだけ結果に寄与しているのかを把握することができるような分析手法です。そのため、こういった何の要因がどの結果に寄与しているのかを把握する目的で回帰分析という分析手法を用いることができます。
例えば、特性項目評価として美味しい、香りが良い、風味が良いといった項目があった時に、「これらの要素の中でどの要素が、どれだけ購入意向に影響を与えているのか」を統計的に把握することができるようになる分析手法が回帰分析になります。このイメージが下図です。
「結果として購入意向に高い影響を与えている要因は何なのか」というものを把握することができるようになるため、今後、「味」に力を入れていくのか、「食感」に力を入れていくのか、といった力を入れるべき方針を定めることができます。
こちらも、1つ調査事例から回帰分析の具体的な話をします。
上記のような事情があり、このお悩みに対して重回帰分析を行いました。そのため、重回帰分析の目的は、「現ユーザーの、継続購入意向に影響する因子を把握し、購入意向に影響が大きい要素を把握する」になります。
回帰分析の調査設計
まず、調査の設計についてです。重回帰分析は、目的変数と説明変数を設定する必要があります。
目的変数は、最終的にコントロールしたい結果にあたる要素です。一方で説明変数は、目的変数に影響を与える原因の候補となる要素のことを指します。
そのため、今回のケースでは以下となります。
目的変数: 購入意向
説明変数:購入意向に影響を与える原因の候補となる要素
説明変数の「購入意向に影響を与える原因の候補となる要素」の例として、甘さが控えめ、味の種類の豊富さ、価格が手ごろ、といった項目があります。
これらの項目に関して、「とても購入したい」~「全く購入したくない」といったような形で、5段階もしくは7段階の尺度で項目を下図のように作成します。
また、こちらもコレスポンデンス分析と同様、これらの項目を作る時には仮説を立てることが重要です。
仮説がない場合、「本来重回帰分析を行った結果、○○が大きな要因だったのに、そもそも項目に入れていなかったためにあまり差が出なかった」、「結局何の要因が購入意向に影響を与えていなかったのか、わからなかった」ということになってしまう可能性があります。そのため、調査を設計するフェーズで、どういった要素が購入意向に影響を与えていそうかをしっかりと仮説を立てることが重要になります。
回帰分析の結果
これらから得られたデータに対して、『ローデータの置換』を行うことで、重回帰分析をする準備が完了します。この『ローデータの置換』は、どう結果を見たいかで、ローデータの置換方法と使う手法も変わります。
①『項目の満足度の点数が1点上がると総合満足度の点数にどれだけ影響があるか』を見たい場合
とても満足…5点、全く満足していない…1点と設定し、ローデータを置換し、重回帰分析を行います。
②『満足していない項目が満足されるようになると、総合満足度にどれだけ影響があるか』を見たい場合
とても満足、満足…1点、満足以外(どちらともいえない、あまり満足していない、まったく満足していない)…0点と設定し、ローデータを置換し、ロジスティック回帰分析を行います。
先ほどの5段階尺度では、「とても購入したい」が1となり、「全く購入したくない」は5になっています。そこで、分析を行う際は「とても購入したい」を5にし、「全く購入したくない」を1に置換する必要があります。このデータの逆置換作業を行った後、①『項目の満足度の点数が1点上がる場合』の方法で重回帰分析を行った結果が下図となります。
この結果から、統計的に購入意向に影響を与えていたのは「甘さが控えめ」「炭酸が強い」「すっきり」の3つの変数であることが分かりました。つまり「これら3つの満足度を上げることで、購入意向も上がるのではないか」というような推察を得ることができます。
ここで注意したいのが、「満足度のスコア」です。重回帰分析では、「満足度のスコア」も合わせて確認することが必要になります。例えば、「炭酸が強い」や「すっきり」の満足度のスコアが競合品や他の項目より低い場合には、この2つを優先して改善するといった判断をすることができます。また、「甘さが控えめ」が他の項目より満足されている場合は、「残すべきではないか」といったような判断をすることができます。
コレスポンデンス分析・重回帰分析の事例を出しそれぞれ説明してきましたが、大前提、「『●●の分析がしたい』がスタートになるのではなく、スタートは『何を明らかにしたい・知りたいのか』を考えること」がスタートになります。そのため、例えば、「多変量解析をすることがゴールではなく、結果から何か示唆を得ることがゴールになる」ので、今回の分析を行ってどういった結果から示唆を得たいのか、というところを調査設計の段階でしっかりと明確に整理しておくことが必要となります。
また、クロス集計で得られた結果の方が、回帰分析やコレスポンデンス分析で得られた結果より有用なこともあるので、そのケースにおいてどういった分析手法が最も適切なのかという点に関して、十分に検討する必要があります。
さて、本記事は以上となります。これまで、ご紹介させていただいた内容をもとに、分析手法について理解を深め、ビジネスチャンスを広げていきましょう。
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