2020.02.28
海外市場調査の始め方や進め方
企業の売上を支える国内消費者の数は年々減少しており、2050年には消費人口の数が現在の3分の2になると言われています。成長市場を狙って海外進出を考え……
公開日:2024.09.10
近年、商品やサービスがあふれる中、企業にとって、顧客の心を掴む魅力的な商品開発は重要な課題の一つと言えるでしょう。しかし、優れた機能やデザインを備えていても、ユーザーのニーズとずれた商品では、市場での成功は難しいのが現実です。そこで重要になるのが、ユーザーの潜在的なニーズを捉え、商品開発の指針となるコンセプト作りです。
本記事では、共感を得るコンセプト作りのポイントとコンセプト調査による検証方法について、事例を交えながら解説していきます。
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ユーザーの心を掴むコンセプト作りの法則は2つあると考え、解説していきます。
1つ目の法則は「リアルな事実をベースにする」ことです。
例えば、デモグラフィック的な「20代女性」とターゲット設定するだけでは、現代の多様な価値観を持つユーザーに響くコンセプトは作れません。年齢や性別などの表層的な属性だけでなく、ユーザーの行動や心理、社会背景などを深く分析し、「今、ユーザーが本当に求めているもの」を見極めることが重要です。
2つ目の法則は、「共感を得るコンセプトのインサイト」を見つけることです。インサイトは、行動や心理の奥底にある、無意識の欲求や動機を指します。このインサイトにフィットする共感を得るコンセプトを作ることが必要です。
ここでは、「敏感肌向けスキンケア商品」のコンセプト設計を例に、具体的な進め方を見ていきましょう。
まず、定量調査を行ってみると、若い女性に「敏感肌」で悩んでいる方が多かったとします。さらに、敏感肌は肌荒れもするので、普通のスキンケア商品が買えないということも分かったとします。これらのことから、「敏感肌」で悩んでいる方への商品開発をしていくという視点を持って、考えたところ、「スキンケア商品で敏感肌を改善していきましょう」と謳えばいいのではないかと仮設を立てました。
ですが、このままでは、デモグラフィック的な大勢の敏感肌用という方向け、という謳い方となり、市場には需要はありそうですが、ターゲット像としては漠然としています。
そこで、「実態と意識」という部分でヒアリングを行いました。すると、20代から30代の若い女性が、その前の年代よりも丁寧な生活を送ることを心がけていたり、敏感肌に対して、それほど困っていなかったりということが見えてきました。より具体的なところでは、環境の変化に気づくデリケートな自分の肌を素敵と思っており、改善したいわけではございませんでした。「デリケートな自分の肌に寄り添ってくれるスキンケアが欲しい」というニーズが見えてきました。
これらのインサイトに基づき、以下のようなコンセプトが立案されました。
項目 | 内容 |
---|---|
タイトル | デリケートなあなたの肌に寄り添うスキンケア ポイント:「デリケートだと思っている自分の肌に寄り添ってくれる」というところで、興味関心を惹くようなタイトルを作る |
ターゲット | 自分の肌に寄り添う、自称「敏感肌」の方 |
実際のインサイト | 日々のスキンケアは、丁寧にしているつもりでも肌が揺らぐことがある。肌変化は季節の変わり目や疲れ、ストレスなどが影響しているサイン。そんな時に、いつものお手入れで翌日には整っていてほしい。 ポイント:インタビューをする際、「コンセプトで共感することはありますか?」というところの話よりも、「インサイトのどんな部分で共感を得て、その商品特徴が良いと思うのか?」という繋がりを発言から拾うことが重要 |
ベネフィット | 環境変化に敏感でデリケートなあなたの肌に寄り添い、オールインワンでお肌を整えます ポイント:実際のインサイトに合ったベネフィットを考えることが重要で、インサイトという点とベネフィットという点が繋がっているイメージができると良いです。 |
商品特徴 | (インサイトとベネフィットを叶える商品特徴) |
この事例から皆様にお伝えしたいことは、コンセプトはリアルな事実をベースとして、共感を得るコンセプトのインサイトを抽出して、考えて作るということです。
コンセプトを立案したら、実際にユーザーに受け入れられるかどうかの検証が必要です。そこで行われるのが「コンセプト調査」です。
企業のマーケティング活動の中で、マーケティングプロセスごとに様々な課題が発生します。例えば、ニーズを明らかにしたい、ターゲットがどのような人か知りたい、コンセプトがターゲットにマッチするか確認したい、などです。そのため、プロセスごとに課題は異なり、必要なマーケティングリサーチは使い分けていく必要があります。
コンセプト調査については、リニューアルを除けば、主に上市前の開発や評価・検証時点で必要となります。市場がレッドオーシャンなのか、競争相手のいない未開拓市場なのかなど、製品の上市フィールドも鑑みて、定量調査・定性調査をハイブリッドに使い分けていく必要があります。
また、「アイデアの創出、アイデアのスクリーニング、コンセプト開発」をSTEP1、「コンセプト評価・検証」をSTEP2と考えるのも重要です。いずれも定量調査・定性調査で実施が可能ですが、もしステップを踏むことができない場合は、定量調査の自由回答のところからインサイトを抽出する、という代替え策も可能です。
では、ここから具体的にコンセプト調査に関する課題別に行うべき調査例を紹介します。
課題例 | 定量調査 | 定性調査 |
---|---|---|
コンセプトを作成したい | ☑ | ☑ |
コンセプトが複数できてしまい、どれに絞ったらよいか迷う | ☑ | ☑ |
コンセプトの評価がどの程度であれば受容されると判断すべきか迷う | ☑ | |
最終的なコンセプトが、メインターゲットに受容されるか知りたい | ☑ | ☑ |
例えば、上表の「コンセプトが複数できてしまい、どれに絞ったらよいか迷う」という課題ですが、よくあることではないでしょうか。3~4案くらいまでは、ワークショップなどを用いて、社内で絞るのがベターです。ある程度絞ることができましたら、定量調査や定性調査を行い、受け入れられるコンセプトがどれなのか、さらに絞っていきます。
そして、定量調査の場合、主にネットリサーチで魅力度や使用意向、新規性や共感性などの評価をとります。定性調査の場合は、定量調査の結果の追求、ブラッシュアップなどを目的に、グループインタビューなどで調査し、最終形に仕上げていきます。
コンセプト調査におけるコツを4つ下表で紹介します。
コツ | 内容 |
---|---|
提示数 | 集中力と記憶力の観点から、3案程度に絞り込むことを推奨します。商品やテーマによって異なるので、最終ジャッジの目安でお考えいただければと思います。 |
提示順 | 有力な案より提示しましょう。社内で有力と思う案から提示していただければと思います。複数案を提示する場合、最初の提示物の残像が頭に残ります。また、調査以外にも言えることだと思いますが、最初に見たものは評価の基準となることが多いです。そのため、特に優先度がない場合などは提示順にローテーションをかけることを必須としていただくようにお願いしております。 |
データの見方 | インサイトと、どのくらいリンクしているのかの流れをみるのがキモです。うがった判断指標を持たずに、対象者の潜在的な思い、インサイトの部分に注目しましょう。 |
リトライ・再検討を行う | 調査を行う中で、コンセプト案がすべて響かなかったということが往々にしてあります。調査で得られたインサイトやペルソナの視点で、提示品に関するベネフィットを再度磨き上げることが大切です。そして、再度サンプルや手法を変えて調査に臨むことも大切です。調査をハイブリッドに行う中で、準備にかかるコストや工数への懸念はありますが、ユーザーのインサイトを量的・質的、両側面で把握することで、売れる確度の高いコンセプトに仕上げることができます。 |
先ほどご紹介した、「敏感肌」向けスキンケア商品のコンセプトをイメージして検証方法をご紹介します。
まず、ご紹介するのは、初期段階のコンセプト評価を定量的に把握する検証となります。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 初期段階のコンセプト評価をデータとして定量的に把握する |
対象者 | 自称敏感肌(5段階評価でTOP3に該当) ※「TOP3に該当」とは、「敏感肌」項目に対し「とてもあてはまる/あてはまる/どちらともいえない」を回答した方が該当します。 |
調査手法 | 定量調査 |
P案 | 敏感肌に悩むあなたのための「敏感肌専用」のオールインワン日常のスキンケアで敏感肌を改善 |
Q案 | 環境変化に敏感で、デリケートなあなたの肌に寄り添うオールインワン日常のスキンケアで翌日には整う肌へ |
※今回提示用にP案とQ案の文章は、短文にあえてまとめております。主流としては、もう少し文量が多い文章となります。
上表のP案とQ案は、目的を達成するために行った定量調査で複数のコンセプト案を提示し、スコアを取り、この2案を導き出しました。この前提のもと、検証段階における定性調査の事例を紹介します。
定性調査では、定量調査に近しい対象者へグループインタビュー形式で調査を行いました。
線を引く内容ですが、今回は自分事と思う点を直線、購入意欲が高まったという点を波線でそれぞれ用意しています。モデレータと相談の上で、導いた指標をもとにラインを引いてもらい、インタビューで掘り下げることが重要なポイントです。今回の場合は、「敏感肌の女性が自分に共感する点」と、「実購入、実際に買いたい、という意欲が高まった点」を引いていただいたという流れになります。
「コンセプト調査の調査票作成のポイント【テンプレート付】」はこちら>
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ココで注意することとしまして、定性調査となるので、票の数ではなく、ペルソナとの共感ポイントなど質的な判断がキモとなります。また、今回の事例は、あくまで一例となり、フェーズごとで適した手法は異なります。コンセプトをセンテンスごとに吟味したり、製品や日記でコンセプトのヒントを得たり、するなどです。課題に応じてリサーチャーやモデレータにご相談いただくのが良いです。
今回は、ユーザーの心を掴む商品コンセプトの作り方と、その検証方法について解説しました。
商品開発において、ユーザー視点のコンセプト作りは必要不可欠です。今回の内容を参考に、ユーザーのインサイトを捉えた魅力的な商品を生み出していきましょう。
コンセプト調査に関するご相談はこちら>
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