公開日:2023.02.28

顧客満足度調査(ITシステム・サーバーの運用・メンテナンス事業者向け)のテンプレートと解説

  • 顧客満足度

「顧客満足度調査(以下、CS調査)は、目的やBtoCかBtoBか、業種、職種等の対象によって質問内容が異なります。ここでは、「ITシステム・サーバーの運用・メンテナンスサービス」を提供する企業に所属する経営企画、営業、マーケティング部などの方々が実施するCS調査のテンプレートについて解説します。
 
この調査を行うときのターゲットは以下の方々を想定しています。

・メンテナンスをアウトソーシングしている中小企業の経営者や業務担当者(経理、人事、営業、マーケティング担当等)
・インフラ運用・保守業務をアウトソーシングしているシステム担当者

 
また、調査の目的や注意点、実施の流れ、調査結果の活用方法についても説明しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
 

 
 

顧客満足度調査とITシステム・サーバーの運用・メンテナンス事業者の競争力向上

CS調査とは、自社が提供している製品やサービスが、どのように顧客に評価されているのかを知るための調査です。また企業としての信頼性、顧客との関係性の強さも知ることができます。CS調査の最終的な目的は、企業収益の向上、既存顧客の維持確保と新顧客の獲得のための手段を見出すことです。
ビジネス場面において、ITの活用が不可欠となっている今日、情報システムの障害は重大な損失を生じるリスクとなります。このビジネスの生命線とも言えるITシステムの正常な稼働を維持するために、ITシステムのメンテナンス(保守)は顧客にとって必須事項となっています。またITに関わるメンテナンスは、専門的な知識とスキルが必要であることから、外部に委託するアウトソーシングというサービスが主流になって来ています。
アウトソーシング需要の増加に伴い、このサービスを提供する事業者間の競合が激しくなっています。事業者としての競争力を高めるためには、顧客満足度の向上が重要な課題となります。ここでは顧客満足度を高めるために必要な要件、現行サービスの改善と新たなサービスを見出す手立ての発見を目的としています。
 
 

アンケート項目を設計するときの注意点

目的を明確にする

ITシステムのメンテナンスの目的は、業種業界を問わずシステムの正常な稼働を維持することです。しかし、そのシステムを構成するハードウェアやソフトウェア、システム構成などは、企業ごとに異なります。また、アウトソーシングを利用する理由も、顧客の経営環境によって様々です。顧客の満足度を高めるには、それぞれの環境条件に合わせたメンテナンス方法が必要です。そのため、アンケート項目を考える際には、メンテナンス品質だけでなく、アウトソーシングを利用する背景についても考慮する必要があります。例えばメンテナンス品質、適正な経費負担、社内リソース活用などの観点が挙げられます。

調査対象を明確にする

ITシステムのメンテナンスにおいては、調査対象をサーバー単体のメンテナンスなのか、サーバーを中心にしたITシステム全体なのか、または特定の機器やシステムなのかを明確にする必要があります。この点が不明瞭な場合、回答者は何について回答すべきかを理解できず、戸惑うことになります。

顧客の経営環境(企業規模・事業種・IT対応体制)を踏まえた項目設計

利用する顧客の経営環境によっては、ITシステムのメンテナンスに対する満足度の理由が異なる場合があります。業種(製造業、販売業、サービス業など)や企業規模によって、メンテナンスの方法に差異が生じるためです。したがって、どのような状況下で満足度を評価するのか、目的に合わせた項目設計が重要です。

アンケート項目は、回答者が回答しやすい順番となるようにする

CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。「起」は顧客が対象サービスを知るという「認知」、「承」は顧客がなぜ対象サービスを導入したのか、どのような事業者を選んだのか、ITと顧客自身の経営環境の実情を反映した理由を聞きます。「転」は導入決定という意思決定行動、続いて「結」の実際に導入した結果となる満足度評価へとつながって行きます。調査の指針と一連の流れが調和するようなアンケート項目の設計、調査票の作成が重要です。

適切な回答方式(単一回答、複数回答、自由回答)を選択する

単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。

適切な集計方法を選択する

設問の目的に応じた分析方法を選択します。

第三者によるアンケート項目と調査票を確認する

関係メンバー以外の社内の方に、客観的な検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
 
 

実施の流れ

CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。
① 目的と検証課題の想定
② 目的に対応する回答者の属性、回収目標数を決定
③ 回答者のサンプリング、リスト整理
④ アンケート項目の設計
⑤ アンケート項目にそった集計方法、分析方法を決定
⑥ 調査実施、集計作業
⑦ 調査結果の分析および報告書作成

 
 

調査結果の活用方法

対象サービスの顧客の満足度を聞くことで、顧客が自社に期待するメンテナンス品質、顧客の経営環境への適応性の評価、自社に欠けているサービス要素などを知ることができます。自社の強みと弱み、顧客との関係性の強さを知る手だとなります。アンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。

認知

顧客がどのような経路で対象サービスを知ったかを調べ、自社の情報発信効果を検証することができます。もし仮説との大きな差異があれば、自社の広告宣伝、公式サイトやパブリシティ活動を見直すきっかけになります。

顧客の経営環境と実情と課題

顧客がアウトソーシングする理由を調査することで、顧客の満足度を高めるためのサービス提案を検討することができます。例えば、ハードウェアのメーカー保証期間が終了したため、メンテナンス専門要員を確保できない、自社専門要員のスキル不足、システム変更やIT投資効率の見直しが必要など、ビジネスチャンスが示されることがあります。また、事業者を選んだ理由を調査することで、自社と顧客の関係性の一面を見直すこともできます。

導入決定(意思決定行動)

顧客のサービス導入理由から、メンテナンスに求められるサービス内容を確認できます。また、必要とされていないサービスの検証も可能になります。主要な導入理由に対応する情報発信やサービスメニューの拡充など、事業全般に渡る活用が期待できます。さらに、継続契約の意向を確認することで、顧客との関係性を把握することができます。

顧客満足度評価

顧客満足度調査を通じて、現在のサービス提供状況や今後の改善すべきポイントを把握することができます。また、満足度が低い項目は、対象サービスの弱点と同時に、顧客の潜在的なニーズを表している可能性があることに留意することが重要です。そのため、低評価を受けた項目については、顧客とのコミュニケーションを深め、改善策を検討することが必要です。
 
 

テンプレートの解説

ここでは、対象としたITシステムのメンテナンスの「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。
 

【認知】
Q1.この●をどこでお知りになりましたか。(お答えはいくつでも)

1.ニュースや専門誌などマスメディア
2.ベンダー(ハードウェア・システム)公式サイト
3.ベンダーからの情報
4.インターネット広告
5.インターネット検索
6.業界での評判
8.その他(   )7.取引先の推奨

 
・この設問では、「ITシステムのメンテナンス」に関連する情報に触れる主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
 
 

【導入の状況】
Q2.この●を導入した目的を教えてください。運用とのセット契約も含みます。(お答えはひとつ)

1.サーバーのメンテナンス
2.サーバーをコアとするシステム全般のメンテナンス
3.クライアント側のシステム全般のメンテナンス
4.特定のシステム領域のメンテナンス
5.その他(   )

 
・この設問では、アウトソーシングするメンテナンスの対象範囲を聞きます。
 
 

【導入の経緯】
Q3.この●を導入したきっかけを教えてください(お答えはいくつでも)

1.システム更新による新規ベンダーとの契約
2.ベンダーの保証期間終了に伴う代替として
3.自社メンテナンスで障害が発生
4.メンテナンス技術の向上のため
5.メンテナンス人材が不足
6.IT運用効率の検討
7.人的リソースの再編
8.事業予算の再編
9.その他(   )

 
・この設問では、顧客がアウトソーシングを導入したきっかけ、なぜアウトソーシングが必要なのか、顧客ニーズを聞きます。
 
 

【事業者の選定】
Q4.この事業者を選んだ理由を教えてください(お答えはいくつでも)

1.営業対応(要求事項、要求内容変更などの対応姿勢)の態度
2.提案内容(業務仕様)
3.提案予算の透明性
4.自社における過去の実績
5.取引関係など業務上の関係
6.同業他社での実績
7.信頼性の高さが評判
8.ベンダーの指定(ITシステム導入条件)
9.その他(   )

 
・この設問では、アウトソーシング先の選定理由を聞きます。ITシステムのメンテナンスで、顧客がアウトソーシング先に求めるニーズの一面を知るためです。
 
 

【重視点】
Q5.この●を選ぶ際に重視した点を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.提示予算
2.提示導入所要期間
3.平時のメンテナンス業務仕様
4.障害・トラブル時のメンテナンス業務仕様
5.メンテナンス情報共有体制
6.メンテナンス品質の向上提案
7.最新のメンテナンスツールを提供
8.最新のメンテナンス情報システムを提供
9.最適なメンテナンスマニュアルを共有
10.仕様変更への対応要件
11.その他(   )
 
【最重視点】
Q6.この●を選ぶ際にもっとも重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)

 
該当する回答例の番号を記入してください。
(   )

 
・これらの設問では満足度を評価する項目の優先順位、その中でも決定要因となる項目は何かを聞きます。
 
 

【総合的満足度】
Q7.●の総合的な満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらとも言えない
4.やや不満
5.非常に不満

 
・この設問では、ITシステムのメンテナンス全体の総合的な満足度を聞きます。項目別の満足度との相関を見ることで、顧客が求めるサービスの姿、サービスコンセプトの見直しなどへの活用が可能となります。
 
 

【項目別満足度】
Q8.●について、次の項目それぞれについて、満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

  非常に満足 やや満足 どちらともいえない やや不満 非常に不満
提示予算
提示導入所要期間
平時のメンテナンス業務仕様
メンテナンス情報共有体制
メンテナンス品質の向上提案
最新のメンテナンスツールを提供
最新のメンテナンス情報システムを提供
.最適なメンテナンスマニュアルを共有
仕様変更への対応要件
その他(   )

 
・この設問では、今後の強化ポイントと同時に改善ポイントも判断することができます。さらに満足度の低い項目は、顧客の潜在的なニーズを示す可能性もあります。サービス内容によって評価要素は異なりますので、対象のサービスに合わせて評価項目を決定します。
 
 

【継続契約意向】
Q9.今後、この●の契約を更新したいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に更新したい
2.やや更新したい
3.どちらとも言えない
4.あまり更新したくない
5.全く更新したくない

 
・この設問では、サービスの満足度を背景として、これからの顧客と事業者の関係について聞きます
 
 

【ご意見・ご要望】
Q10.●に対するご意見などがありましたら、ご自由にお書きください。(自由回答)

 
・サービスやベンダー(事業者)のあり方など、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の現場感覚や、サービスに求める事柄、自由な発想での意見が期待できます。
 
 

【企業概要】
■企業概要について教えてください。
F1.どの業種に該当しますか。

1.製造業
2.建設業
3.情報通信業
4.運輸業,郵便業
5.卸売業,小売業(ECサイト含む)
6.金融業,保険業
7.不動産業,物品賃貸業
8.宿泊業,飲食サービス業
9.生活関連サービス業,娯楽業
10.教育,学習支援業
11.医療,福祉
12.その他(   )
 
F2.資本金を教えてください。
1. 100万円未満
2. 100万円~1,000万円未満
3. 1,000万円~5,000万円未満
4. 5,000万円~1億円未満
5. 1億円以上
 
F3.従業員数を教えてください。
1 .20人未満
2. 20人~50人未満
3. 50人~100人未満
4. 100人~300人未満
5. 300人以上
 
F4.会社設立後の年数を教えてください。
1. 3年未満
2. 3年~10年未満
3. 10年~20年未満
4. 20年~50年未満
5. 50年以上
 
【プロフィール】
■プロフィールについて教えてください。
F5.部署を教えてください。

1.総務
2.人事
3.財務・会計
4.営業
5.製造・調達
6.研究・開発
7.企画・広報・マーケティング
8.情報システム部門
9.その他(            )
 
F6.役職を教えてください。
1.役員クラス
2.部長クラス
3.課長クラス
4.係長・主任クラス
5.一般社員
6.契約社員・派遣社員
7.その他(            )
 
F6.役職を教えてください。
1.役員クラス
2.部長クラス
3.課長クラス
4.係長・主任クラス
5.一般社員
6.契約社員・派遣社員
7.その他(            )
 
F7.担当業務を教えてください。
(             )

 
・これらプロフィールについての設問は、顧客が属する業界や事業環境ごとに異なる満足度を把握するためのものです。満足度の評価項目とのクロス分析に使います。
 
 

まとめ

CS調査は、顧客のITシステムメンテナンスサービスの満足度を聞くことで、今後の製品やサービスの改善に導く手段となります。さらに、課題の先取りを読み取る手段として、より付加価値の高い方策を検討する手立てとしての活用が期待できます。テンプレートを使用することで、調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)

”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。

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ポートフォリオ分析(CSポートフォリオ)とは

ポートフォリオ分析(CSポートフォリオ)とは・・・製品やサービスの『満足度』と『重要(期待)度』からマッピングし『優先的改善項目』を把握する分析手法です。ブランドの「重要度」を横軸に、「満足度」を縦軸に取り、改善項目への優先度をポジショニングから視覚的に把握することができ、『重点改善項目』『重点維持項目』『維持項目』『改善項目』の4象限に大別されます。

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