公開日:2024.07.01

市場調査とマーケティングリサーチの違いとは?調査の種類、目的の違いを解説

  • マーケティングリサーチHowto

市場調査とマーケティングリサーチは、ビジネスにおいて重要な役割を果たしています。これらは、顧客のニーズや市場の動向を把握し、効果的なマーケティング戦略を立てるための重要な情報となります。しかし、市場調査とマーケティングリサーチは同じように見えるものの、その目的や手法には違いがあります。
 
この記事では、市場調査とマーケティングリサーチについて、その種類や目的の違いを解説します。
 
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市場調査とマーケティングリサーチについて

「市場調査」と「マーケティングリサーチ」について、それぞれの定義と概要を解説します。
 

市場調査とは

市場調査とは、企業が市場の動向や競合他社の状況、消費者のニーズや嗜好などを把握するために行う調査です。この調査では企業が市場環境を理解するために、市場全体に関わる幅広い情報を収集・分析します。これにより、企業は市場における自社のポジションを客観的に評価し、具体的なマーケティング施策の参考情報として活用できます。
 
市場調査では、主に市場規模、成長の可能性、市場のセグメント、顧客の動態、購買行動、そして市場のトレンドなどを分析します。市場調査は、新製品の市場投入前、既存製品の改善、競争環境の分析など、様々なビジネスシーンで活用されます。
 

マーケティングリサーチとは

マーケティングリサーチは、企業が消費者ニーズや市場トレンドを深く理解し、効果的なマーケティング戦略を策定するために行います。マーケティングリサーチを実施することで、製品開発、広告、販売促進、ブランド戦略など、マーケティング全般にわたる意思決定を支援することができます。
 
マーケティングリサーチでは、消費者の購買動機や潜在ニーズなどを把握するために、市場調査よりも詳細な調査を実施します。
 
 

市場調査とマーケティングリサーチの違いとは

市場調査とマーケティングリサーチは、どちらも企業の意思決定を支える重要な活動ですが、その目的には違いがあります。ここでは、それぞれの調査について、その具体的な目的の違いを解説します。
 

市場調査の目的

市場調査の目的を一言でいえば、「現状把握」です。つまり、特定の市場が過去から現在までどのように変化してきたのか、そして現在の市場がどのような状況にあるのかを的確に把握することにあります。
 
市場調査は、主に市場全体の規模や成長率、競合企業の動向、顧客の属性やニーズ、市場トレンドなど、市場に関わる情報を分析する調査です。これにより、企業は自社が参入、あるいは参入を検討している市場の全体像を客観的に把握することが可能です。
 
また、市場調査で得られた情報は、主に短期的なマーケティング施策に活用されます。例えば、新しい製品を開発する際の基礎データとしたり、販売する商品の効果的な広告キャンペーン展開の参考情報としたりします。
 

マーケティングリサーチの目的

マーケティングリサーチの目的は、「市場動向の予測」です。市場の現状や新たな変化を分析することで、今後、市場がどのように変化していくのかを予測することに重点を置きます。マーケティングリサーチでは、顧客ニーズの深掘り、競合商品との比較分析、自社商品やサービスの市場における評価、販売促進施策の効果測定など、多岐にわたる情報を分析します。これにより、顧客の潜在ニーズや購買行動の変化などをいち早く察知し、将来の市場動向を予測することが可能です。
 
また、マーケティングリサーチで得られた情報は、主に中長期的なマーケティング戦略の策定に活用されます。例えば、開発部門の中長期的な開発方針、企業や特定ブランドのブランディングなど、未来の市場環境を見据えた上で、企業が持続的に取り組むべき課題の意思決定に用いられます。
 
 

市場調査とマーケティングリサーチの成功要因

市場調査とマーケティングリサーチは、適切にデータを収集・分析することで、ビジネスの成功に役立てることが可能です。しかし、成功に役立つ調査結果を導くには、調査の計画段階から分析・活用に至るまで、様々な要因が影響します。
 
ここでは、市場調査とマーケティングリサーチそれぞれを成功させる要因について解説します。
 

市場調査の成功要因

市場調査を成功させるためには、以下表の要因が重要となります。

要因名 説明
明確な調査目的の設定 調査を開始する前に、何を明らかにしたいのか、その目的を明確に定義することが重要です。目的があいまいなまま調査を進めてしまうと、必要なデータを収集できなかったり、分析するポイントに迷ってしまったりする可能性があります。
適切な調査手法の選択 調査目的に応じて、最適な調査手法を選択します。例えば、市場全体の規模や動向を把握したい場合は、統計データの分析や業界レポートの調査が適しています。また、顧客ニーズを深く理解したい場合は、アンケート調査やインタビュー調査が適しています。複数の調査手法を組み合わせることで、より多角的な視点から情報を収集・分析することができます。
信頼性の高いデータ収集 調査結果の信頼性を確保するには、適切なデータ収集が大切です。アンケート調査であれば、サンプル数を十分に確保し、偏りのない回答を収集する必要があります。また、インタビュー調査では、適切な対象者や経験豊富なインタビュアーの選定など、質の高い回答を得るための工夫が必要です。
客観的なデータ分析 収集したデータを客観的に分析し、市場の現状を的確に把握することが重要です。データ分析には、統計的な手法を用いるだけでなく、市場分析の専門家による知見を取り入れることも効果的です。また、分析結果を可視化することで、意思決定者への情報伝達をスムーズに行えます。
調査結果の活用 市場調査は、調査結果を具体的なアクションにつなげることで、初めてその価値を発揮します。調査結果に基づいて、新製品の開発や広告プロモーション計画の策定など、具体的な施策を実行していくことが重要です。

 

マーケティングリサーチの成功要因

マーケティングリサーチを成功させるためには、以下表の要因が重要となります。

要因名 説明
顧客視点の徹底 マーケティングリサーチは、顧客の購買動機や潜在ニーズに対する理解を深めることが目的です。そのため、調査設計から分析、結果の活用まで、常に顧客視点を意識する必要があります。
具体的な調査目的の設定 市場調査と同様に、マーケティングリサーチにおいても、具体的な調査目的を設定することが重要です。例えば、「新製品のターゲット顧客層を特定する」「既存製品の顧客満足度を向上させる」「競合製品との差別化ポイントを見つける」など、目的を明確にすることで、適切な調査範囲や手法を選定できます。
適切な調査対象者の選定 調査対象者を適切に選定することは、調査結果の精度を左右する重要な要素です。ターゲット顧客層に合致した属性を持つ調査対象者の選定は、より信頼性の高いデータ収集に直結する要因でもあります。また、調査対象者の選定方法(ランダムサンプリング、層化サンプリングなど)も慎重に検討する必要があります。
多角的な調査手法の活用 マーケティングリサーチは市場の未来予測を行うため、できるだけ多面的な情報が必要です。そのためには、状況に応じて複数の調査手法を実施するのが効果的です。複数の調査手法を組み合わせることで、より多角的な視点から顧客理解を深めることができます。

 
 

市場調査やマーケティングリサーチで用いられる調査について

市場調査やマーケティングリサーチは、ビジネスの場において、ほぼ同義として扱われることがほとんどです。市場調査やマーケティングリサーチをサービスとして提供する会社も「市場調査会社」「マーケティングリサーチ会社」など両方の呼び名で呼ばれています。ここでは、市場調査とマーケティングリサーチは同義として調査分類について説明します。
 
市場調査には、定量調査、定性調査、その他調査の3つがあります。これらの調査は、さらにさまざまな調査手法に落とし込むことができます。たとえば、定量調査ではネットリサーチという方法があり、定性調査にはインタビュー調査があるといった具合です。これらについて要点を以下に解説します。
 

定量調査

定量調査とは、アンケートや統計データを通じて、消費者の行動や意識を数量的に把握する調査方法です。統計的な分析によって、全体の傾向やパターンを明確にします。代表的な定量調査は、ネットリサーチ、会場調査(CLT)、ホームユーステストがあります。
定量調査の一覧はこちら>
 

定性調査

定性調査とはインタビューなどを通じて、消費者の深層心理や動機を探る調査方法です。数値では捉えきれない意見や感情を分析し、対象者の潜在ニーズ把握を図ります。代表的な定性調査は、グループインタビューやデプスインタビュー、エスノグラフィ調査があります。
定性調査の一覧はこちら>
 

その他調査

その他の調査手法には、AIを用いた最新のリサーチソリューション、アイトラッキング調査、既存データを活用する二次データ分析(購買データなど)などがあります。
その他調査の一覧はこちら>
 
 

定量調査、定性調査、その他調査の代表的な調査方法について

先ほども触れた通り、定量調査には、ネットリサーチやホームユーステストなどの調査があります。これらを調査分類ごとに簡単に以下に解説します。

定量調査
  1. ネットリサーチ(WEBアンケート)ネットリサーチは、その言葉の通りとなり、Web上でアンケートを行う調査となります。低コストかつ短期間で、大規模な調査が可能なのが特徴的です。
    「ネットリサーチ(WEBアンケート)」について解説しているページはこちら>
  2. 会場調査(CLT)会場調査(CLT:Central Location Test)は、あらかじめ用意した会場で、調査対象者から製品や広告などについての評価を聴取する調査となります。調査対象者が実際に製品や広告などについて触れる点や製品の温度管理、提供方法などの条件を同一に実施できるなどが特徴です。
    「会場調査(CLT)」について解説しているページはこちら>
  3. ホームユーステスト(HUT)ホームユーステストは、消費者が自宅で製品を実際に使用し、その使用感や満足度についての情報を収集する調査です。この調査も実際に調査対象者に製品を触れてもらえます。また会場調査(CLT)との異なる点として、日常生活でどのように使用されるかも調査できる点が挙げられます。
    「ホームユーステスト(HUT)」について解説しているページはこちら>

 

定性調査
  1. グループインタビュー調査対象者を6人程度集め、モデレーターと呼ばれる司会者が調査テーマについて質問を行い、自由に発言してもらうことでさまざまな意見や情報を聴取する調査です。モデレーターによって、適切な質問で、話題について深掘りしていくことで、調査対象者の深層心理を引き出していくことが特徴的です。
    「グループインタビュー(FGI)」について解説しているページはこちら>
  2. デプスインタビューこちらも、グループインタビュー同様、モデレーターが調査対象者に質問をしていきます。グループインタビューと異なる点は、1対1の面談式で質問をしていくことにあります。この方法から、ユーザービリティや購買行動プロセスの理解、デリケートな内容の際にはデプスインタビューが適しております。
    「デプスインタビュー」について解説しているページはこちら>
  3. エスノグラフィ調査エスノグラフィ調査は、調査対象者の自宅や職場などを直接訪問して、生活者の行動を見たり、観察したりする調査です。アンケートなどの言葉ではなく、行動そのものを観察する調査となるのが最大の特徴となり、例えば、家具の使い方を実際に目で確かめて、思っていなかった使い方などに遭遇する可能性があります。
    「エスノグラフィ調査」について解説しているページはこちら>

 

その他調査
  1. アイトラッキング調査「目の動き=視線」、つまり「どこを」、「何を」、「どの程度」見ていたかを定量的に測定し、「見る」行動のプロセスを可視化する調査になります。
    「アイトラッキング調査」について解説しているページはこちら>
  2. AIを利用したリサーチソリューション調査プロセスの中にAIを利用する調査のことです。例えば、アスマークでは、Neuro AI(D-Planner)というAIの仮想脳で、人がクリエイティブを見た際の脳活動(反応)を予測し、その予測された脳活動とアンケートデータや実測データを学習させることで、定量的に多角的な予測できるソリューションを提供しております。主な用途は、CMや動画コンテンツのコンセプト実証・コマ(時系列)毎の評価などになります。
    「Neuro AI (D-Planner)」について解説しているページはこちら>

 
これらの調査を市場調査やマーケティングリサーチでは活用します。一つの調査を行ったり、複数の調査を組み合わせたりして、情報を収集し分析を行います。
 
 

まとめ

ここまで、市場調査とマーケティングリサーチの違いについて解説してきました。
現代社会では、消費者ニーズの多様化が加速しており、企業はこれまで以上に顧客一人ひとりのニーズに合わせたマーケティング戦略の展開が求められています。その一方で、ビッグデータ分析やAI技術の発展により、多様なニーズを分析し、個人に最適化されたマーケティング施策を実施することが可能になりつつもあります。市場調査やマーケティングリサーチは、これらの最新技術を活用することで、より精度の高い情報収集と分析を行うことが可能です。今後、企業は常に最新の情報を収集し、専門家の知見を借りながら、消費者ニーズに合致したマーケティング施策を展開することが求められます。
 
市場調査とマーケティングリサーチを適切に活用し、変化する市場環境に柔軟に対応することで、企業の持続的な成長と成功を図っていきましょう。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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市場調査を成功させるために:基本理論と実践的アプローチ

市場調査を成功させるために:基本理論と実践的アプローチ

市場調査は、企業が市場において競争力を持つためにとても重要な活動です。市場調査によって、競合他社との差別化や顧客満足度の向上など、事業成長につながる戦略を立てられます。しかし、的確な市場調査を行うためには、調査目的の設定や調査手法について、しっかりと理解することが大切です。

この記事では、市場調査を成功させるために、必要な基本理論と実践的アプローチについて解説します。

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初めてのアンケート調査

初めてのアンケート調査

アンケート調査とは、定型の質問票を用いて多数の方に回答してもらう定量調査のことを指すのが一般的です。マーケティングリサーチの中でも実施頻度の高い調査方法です。

一方、調査票を用いないインタビュー形式の調査は定性調査と呼ばれ、言葉や情報をアウトプットとし、アイデア出しやテーマの深掘りの際に用いられます。これらはアンケート調査に含まないことが一般的です。アンケート調査は数的データとして結果を出すことが出来るため、客観的な裏付けやエビデンスとしても活用することができます。街頭調査や郵送調査などオフラインで実施する方法に加え、インターネットを利用したオンラインアンケートの実施も増加しています。調査手法によってそれぞれ特徴があるので、目的に応じて使い分けることが重要です。

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Q:市場調査とマーケティングリサーチの違いは何でしょうか?

A:市場調査とマーケティングリサーチの違いは、目的です。市場調査の目的は一言でいえば「現状把握」です。特定の市場が過去から現在までどのように変化してきたのか、そして現在の市場がどのような状況にあるのかを的確に把握することにあります。一方で、マーケティングリサーチの目的は、「市場動向の予測」です。市場の現状や新たな変化を分析することで、今後、市場がどのように変化していくのかを予測することにあります。

Q:マーケットリサーチとマーケティングリサーチの違いは何でしょうか?

A:マーケットリサーチは「市場調査」のことになり、市場調査とマーケティングリサーチの違いは、目的です。市場調査の目的は一言でいえば「現状把握」です。特定の市場が過去から現在までどのように変化してきたのか、そして現在の市場がどのような状況にあるのかを的確に把握することにあります。一方で、マーケティングリサーチの目的は、「市場動向の予測」です。市場の現状や新たな変化を分析することで、今後、市場がどのように変化していくのかを予測することにあります。

Q:リサーチと調査の違いは何でしょうか?

A:リサーチ(Research)は、直訳すると『調査』や『研究』といった意味があります。そのため、『調査』と類似する部分があります。異なる点は、使われる場面やニュアンスです。例えば、企業が『リサーチ』という言葉を使う場合は、「マーケティングリサーチ」を指すことが多いでしょう。

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