公開日:2023.06.30

ドラッグストアの顧客満足度調査テンプレート:顧客の声を活用して競争力を高める方法

  • 顧客満足度

ドラッグストアは、私たちの日常生活において欠かせない存在となっています。医薬品をはじめとする健康や美容の製品を提供するだけでなく、日用雑貨や食品などの品揃えも豊富であり、便利なワンストップショッピングが可能です。そのため、多くの人々がドラッグストアを利用しています。

しかし、ドラッグストア業界は競争が激化しており、他の小売業態との差別化が求められています。同業他社の増加やスーパーマーケット、コンビニエンスストアの医薬品販売の広がりなど、新たな課題も浮上しています。ドラッグストアが今後も成長し続けるためには、顧客満足度の向上が不可欠です。

顧客満足度調査(CS調査)は、ドラッグストアが自店のサービスや商品に対してどのように評価されているかを明らかにするための重要な手段です。この調査を通じて、利用者の期待や満足度、コミュニケーションのあり方や顧客との関係性などを把握することができます。さらに、調査結果を活用することで、企業収益の向上や既存顧客の維持確保、新たな顧客の獲得など、成果を上げるための具体的な施策を見つけ出すことができます。

このコラムでは、ドラッグストアの顧客満足度調査のテンプレートについて解説します。どのような項目を含めるべきか、効果的な質問の例などをご紹介します。顧客の声を聞き、それを基に改善策を講じることで、ドラッグストアが顧客にとってより良い場所となるためのヒントを見つけることができるでしょう。
また、調査の目的や実施時の注意点、アンケート項目設定時のポイント、実施の流れ、調査結果の活用方法についても解説しています。解説したテンプレートは無料でダウンロードできます。
 

 
 

ドラッグストアの競争に勝つための鍵:顧客満足度調査の重要性と課題解決

CS調査とは、自店(ドラッグストア)が購入者にどのように評価されているのかを知るための調査です。利用目的や利用状況から自店に対する期待感と満足度、さらに顧客とのコミュニケーションのあり方や関係性の強さも知ることができます。CS調査の最終的な目的は、企業収益の向上、既存顧客の維持確保と新顧客の獲得のための手段を見出すことです。

ドラッグストアの現状

2022年のドラッグストア店舗数は1.8万店舗(経済産業省)、スーパーマーケットは2.3万店舗(全国スーパーマーケット協会)です。コンビニエンスストアの5.6万店舗(経済産業省)には及ばないものの、ドラッグストアはスーパーマーケットと同様に身近な存在へと成長しています。
ドラッグストアは、医薬品を含むHBC(ヘルス・アンド・ビューティケア)領域をコアとしながら日用雑貨や食品の安売りを目玉商品として集客、店舗数を拡大してきました。さらに冷凍食品や日配品、生鮮食品まで品揃えを充実させ、日常生活品のワンストップショッピングを可能にするまでのビジネスモデルへと発展しています。

ドラッグストアの課題

他の小売業態との差別化で発展してきたドラッグストアですが、店舗数の増加に伴い同業態の中での競争が激しくなっています。また医薬品を取り扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストアが広がりを見せており、これまでのビジネスモデルの展開だけでは競争力が維持できない状況となっています。そのためドラッグストアという業態において今後の成長を果たすためには、小売業店舗として独自の顧客満足度向上が大きな課題となっています。。
 
 

アンケート項目を設計するときの注意点

調査目的を明確にする

ドラッグストアの顧客は、それぞれに利用目的や店を選ぶ理由があります。そのためCS調査の目的をどこに置くのか、例えば店全体、品揃えや価格設定などドラッグストアとしての評価なのか、また日常的な店としての利用目的に沿った評価なのか、調査目的を明確にする必要があります。さらに継続利用と他者への推奨意向の評価へ導くなど、満足度評価の先にある展開も重要です。

調査対象を明確にする

調査の目的によって、年齢や家族構成、職業など調査対象とする顧客層が変わってきます。また、顧客の利用目的や利用状況により、店舗に対する満足度に違いが生まれてきます。調査目的に沿った顧客の満足度を知るためには、どのような事柄について質問しているのか、どのような回答を求めているのか、具体的な言葉で調査内容を回答者に示す必要があります。

様々な業態を踏まえた項目設計

生活者の日常的な買い物は、ドラッグストアだけでなくスーパーマーケット、コンビニエンスストアも利用するのが一般的です。そのため、ドラッグストアを利用するメリットや利便性など、他の業態に比べての強み、弱みが顧客満足度の評価に直結します。他の業態との比較を踏まえた項目設計を組み立てることで、より現実的な顧客満足度を知る手立てになると期待できます。

アンケート項目は、回答者が回答しやすい順番となるようにする

CS調査では、起承転結の一連の流れがあります。ここでの「起」は顧客がどこでそのドラッグストアを知ったのかという認知、「承」はドラッグストアで購入している商品など利用状況を聞きます。「転」は日常で利用しているドラッグストアを含む小売店の使い分け意識、ならびに現在利用しているドラッグストアを選定した理由など意思決定行動を聞いて行きます。「結」では実際に利用しているドラッグストアの「顧客満足度」を評価してもらいます。

適切な回答方式(単一回答、複数回答、自由回答)を選択する

単純集計、属性クロス集計、質問間クロス集計などの分析方法を考慮した、適切な回答方式を選択します。

適切な集計方法を選択する

分析に応じて集計・分析軸を設定します。

第三者によるアンケート項目と調査票を確認する

関係メンバー以外の社内の方に、調査票全体を客観的に検証してもらう必要があります。回答者が回答しやすい表現になっているのか、その確認が大切です。
 
 

実施する流れ

CS調査の実施は、次のような流れで進めるのが基本です。

① 目的と検証課題の想定
② 目的に対応する回答者の属性、回収目標数を決定
③ 回答者のサンプリング、リスト整理
④ アンケート項目の設計
⑤ アンケート項目にそった集計方法、分析方法を決定
⑥ 調査実施、集計作業
⑦ 調査結果の分析および報告書作成

 

調査結果の活用方法

自店の顧客満足度を聞くことで、小売り業態の中のドラッグストアとして自店の強みと弱みを知る手立てとなります。さらに、現在とこれからの顧客とのつながりのあり方も知る機会ともなります。ここではアンケート調査の一連の流れにそって、活用方法を例示します。

認知

顧客は自店をどのような経路で知ったのか、その結果から自社の情報発信効果が検証できます。マスメディアでの広告宣伝や地域に焦点を絞った新聞のチラシやキャンペーン、価格の安さをアピールする価格比較サイトなど、自身の情報発信方法を見直す契機となります。

利用状況

顧客は自店でどのような商品を購入しているのか、その金額と購入頻度を見ることで、HBC(ヘルス・アンド・ビューティケア)をコアとするドラッグストアとしてのビジネスモデルの適合性を見ることができます。また自店を利用する理由と購入商品の相関から、顧客が自店に求める役割や期待の一端を知る機会ともなります。

ドラッグストアの選定理由(意思決定行動)

自店の選定理由から、顧客が感じている自店を利用するメリット、期待感を知ることができます。これらは、自店が持つ強みとして捉えることができます。さらに顧客のスーパーマーケットやコンビニエンスストアとの使い分け意識を合わせて聞くことで、自店のビジネスモデルを見直す機会にもなります。ドラッグストアとして、もしくは小売業態全般に共通する強みなのかを検証する手立てとしての活用も期待できます。

顧客満足度評価

顧客の満足度を測る項目と自店の利用状況、選定理由との相関を見ることで、具体的な自店の強みと弱みが確認できます。顧客の評価ポイントから、自店の強みと改善すべき弱みを知ることができます。また満足度が低い項目は、自店の弱みと同時に顧客の潜在ニーズも表している可能性があります。ドラッグストアとしてのビジネスモデルを強化するのか、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの利点の導入を検討するのか、今後の展開の方向性を探る要件を発見する機会として活用が期待できます。
 
 

テンプレートの解説

ここでは、対象としたドラッグストアの「総合的な顧客満足度を知るためのテンプレート」を紹介します。設問は、起承転結の流れにそって構成しています。

※「当店」の部分に該当の店舗名等を当てはめます。

【認知】
Q1.「当店」はどこで知りましたか。(お答えはひとつ)

1.新聞・チラシ
2.近隣や街中の広告看板
3.店舗
4.テレビ
5.ラジオ
6.価格比較サイト
7.インターネット広告(ホームページ含む)
8.インターネット検索
9.SNS・ブログ
10.家族・友人・知人からの口コミ
11.その他(                 )

 
この設問では、自店の情報に触れた主な場面はどこか、認知経路について聞きます。
 
 

【利用状況】(1)
Q2.「当店」では、どのような商品を購入していますか。(お答えはいくつでも)

1.医療機関で処方された医薬品
2.一般の医薬品(かぜ薬、胃腸薬、目薬など)および医療用品
3.家庭用医療機器および健康関連機器(血圧計やヘルスメーターなど)
4.化粧品(有名ブランド)
5.化粧品(一般化粧品)
6.健康食品
7.食品(調味料、レトルト食品、冷凍食品などの加工食品)
8.食品(牛乳、ヨーグルトなど日配品)
9.食品(魚、肉、野菜などの生鮮食品)
10.日用品・生活雑貨
11.その他(                 )

 
この設問では、どのような商品を購入しているのかを聞きます。
 
 

【利用状況】(2)
Q3.どれくらいの頻度で「当店」を利用しますか。(お答えはひとつ)

1.ほぼ毎日
2.週に2~3回程度
3.週に1回程度
4.月に2~3回程度
5.月に1回程度
6.月に1回未満

 
この設問では、どれくらいの頻度で利用しているのかを聞きます。
 
 

【利用状況】(3)
Q4. 「当店」での1回あたりの平均的な購入金額はどれくらいですか(お答えはひとつ)

1.1,000円未満
2.1,000~3,000円未満
3.3,000~5,000円未満
4.5,000~10,000円未満
5.10,000円以上

 
この設問では、1回あたりの平均的な購入金額を聞きます。
 
 

【意思決定】
Q5.「当店」を選んだ理由を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.自宅に近い
2.通学や通勤のコース沿い
3.知人や友人の口コミ
4.家族で利用している
5.品揃えの豊富さ
6.PB(プライベートブランド)がある
7.価格の安さ
8.特売商品の種類や特売回数の多さ
9.医薬品を含めワンストップで買い物可能
10.商品構成や陳列の分かりやすさ
11.売り場及びレジの人の流れ
12.照明や商品レイアウトなど店内の雰囲気
13.ポイント付与や割引など多様なキャンペーン
14.アプリの利用でお得、便利な買い物
15.厚労省基準適合の健康サポート薬局
16.接客態度
17.新聞のチラシを見て
18.駐輪場・駐車場がある
19.その他(                 )

 
この設問では、自店を選んだ理由を聞きます。顧客の自店に対する印象、期待するメリットを知るための質問です。
 
 

【重視点】
Q6.「当店」を選ぶ際に重視した点を教えてください。(お答えはいくつでも)

1.医療機関の処方医薬品の取り扱い
2.医薬品の品揃え
3.家庭用医療・健康機器や医療用品の品揃え
4.化粧品全般の品揃え
5.健康食品の品揃え
6.食品全般の品揃え
7.日用品・生活雑貨の品揃え
8.リーズナブルな価格設定
9.特売商品の種類と実施タイミング
10.病気や健康相談への対応姿勢
11.美容相談への対応姿勢
12.商品全般の説明の対応姿勢
13.ポイント付与や割引などの顧客サービス
14.ネット通販などECへの対応
15.支払い方法の多様さ(ポイント決済など含む)
16.特売や商品案内など情報発信状況
17.陳列やポスター、POPなどの見やすさ
18.店舗内の雰囲気
19.店舗へのアクセスの便利さ
20.その他(                 )

 
この設問は、自店の利用に際して重視した点を聞きます。
 
 

【最重視点】
Q7.「当店」を選ぶ際にもっとも重視した点を教えてください。(お答えはひとつ)

該当するQ6の回答例の番号を記入してください。
記入欄(   )

 
これらの設問では満足度を評価する項目は何か、その中でも決定要因となる項目は何かを聞きます。
 
 

【最重視点】
Q8.「当店」の総合的な満足度を評価してください。(お答えはひとつ)

1.非常に満足
2.やや満足
3.どちらともいえない
4.やや不満
5.非常に不満

 
この設問では、自店の総合的な満足度を聞きます。店の選定理由や利用状況との相関を見ることで、顧客が求めるドラッグストアのあるべき姿やコンセプトの見直しなどへの活用が可能となります。
 
 

【項目別満足度】
Q9.「当店」を選択した重視点の項目、それぞれについて満足度を評価してください。(お答えはそれぞれひとつ)

非常に
満足している
やや満足 どちらとも
いえない
やや不満 非常に不満
医療機関の処方医薬品の取り扱い
医薬品の品揃え
家庭用医療・健康機器や医療用品の品揃え
化粧品全般の品揃え
健康食品の品揃え
食品全般の品揃え
日用品・生活雑貨の品揃え
リーズナブルな価格設定
特売商品の種類と実施タイミング
病気や健康相談への対応姿勢
美容相談への対応姿勢
商品全般の説明の対応姿勢
ポイント付与や割引などの顧客サービス
ネット通販などECへの対応
支払い方法の多様さ(ポイント決済など含む)
特売や商品案内など情報発信状況
陳列やポスター、POPなどの見やすさ
店舗内の雰囲気
店舗へのアクセスの便利さ

 
この設問では、評価項目のそれぞれについて、満足度を聞きます。現在の満足度の評価に基づいて、今後の強化ポイントと同時に改善ポイントも判断することができます。さらに満足度の低い項目は、顧客の潜在的なニーズを示す可能性もあります。。
 
 

【継続利用意向】
Q10.今後、「当店」を利用したいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.非常に利用したい
2.やや利用したい
3.どちらとも言えない
4.あまり利用したくない
5.全く利用したくない

 
この設問では、現在の満足度を背景として、今後の顧客の関係について聞きます。
 
 

【他者への推奨意向】
Q11.「当店」を友人や知人に勧めたいと思いますか。(お答えはひとつ)

1.強く勧めたい
2.やや勧めたい
3.どちらともいえない
4.あまり勧めたくない
5.全く勧めたくない

 
この「継続購入意向」と「他者への推奨意向」は、自店と顧客のロイヤルティの強さを知るための設問です。
 
 

【自由回答】
Q12. 「当店」に対するご意見などがありましたら、ご自由にお書きください。(自由回答)

(                          )

 
ドラッグストアとしての品揃えや顧客とのコミュニケ―ションのあり方、HBC(ヘルス・アンド・ビューティケア)関連商品を提供する店舗としての課題など、顧客の自由な意見を聞きます。アンケート項目では思いつかない顧客の生活感覚や、ドラッグストアに求める事柄、自由な発想での意見が期待できます。
 
 

【プロフィール】
ご回答者のプロフィールについてお伺いします。
F1.性別(お答えはひとつ)

1.男性
2.女性
 
F2.年齢(お答えはひとつ)
1.20歳未満
2.20代
3.30代
4.40代
5.50代
6.60代
7.70歳以上
 
F3.世帯構成(お答えはひとつ)
1.単身世帯
2.夫婦世帯
3.二世代世帯(親・子)
4.三世代世帯(祖父母・親・子)
5.その他(          )
 
F4.職業(お答えはひとつ)
1.学生
2.会社員
3.会社役員
4.自営業
5.公務員
6.団体教員
7.パート・アルバイト
8.専業主婦
9.無職
10.その他(     )

 
これらのプロフィールは、自店の利用状況や店の選定理由、満足度についてのクロス分析に使用します。自店に関する満足度の状況を、より具体的に表現するためのものです。
 
 

まとめ

CS調査で自店の満足度を聞くことで、マーチャンダイジングの開発の方向性を探る機会となります。またドラッグストアという固有の業態が、小売業態全体の中でどのように顧客に評価されているのか、店のコンセプトのあり方を検証する機会としての活用が期待できます。テンプレートを使用することで調査の効率性が向上し、より精度の高いデータを収集することができます。テンプレートは無料でダウンロードしていただけます。ぜひご利用ください。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)

”顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。

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NPS

NPS

NPSとは、「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、顧客ロイヤリティ(ブランドや商品、またはサービスに対する「信頼・愛着」のこと)を計測するための指標のことです。NPSは事業の業績との相関が非常に高い指標であることから、欧米企業(フォーチュン500)の3分の1が導入しているといわれており、日本でも顧客満足度と並ぶ新しい指標として注目されています。

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