公開日:2024.08.16

定点調査とは?基本からメリット・デメリットや活用事例、注意点をご紹介

  • マーケティングリサーチHowto

ビジネスの世界では、刻々と市場や顧客のニーズが変化し、企業はその流れに応じたマーケティング活動を求められます。そのような環境下で、企業が市場や顧客に関する情報を時系列でとらえ、変化の流れを分析する手法が「定点調査」です。
 
この記事では、定点調査の基本から、メリット・デメリット、具体的な活用事例や注意点について解説します。
 
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定点調査の基本

定点調査は、特定のテーマや対象を長期間にわたり追跡することで、時間経過による変化やトレンドを把握する手法です。定点調査から有益な情報を得るには、その基本を理解して適切な調査を実施することが大切です。
 
ここでは、定点調査の基本的な概念と、定点調査から明らかになることについて解説します。
 

定点調査とは何か?

定点調査とは、同一の調査対象に対して、一定期間ごとに同じ質問項目を用いて繰り返し調査を行う手法です。これにより、時間の経過に伴う変化や傾向を捉え、時系列データに基づいた分析を行います。
 
この定点調査は、市場調査や顧客満足度調査など、様々な分野で活用されています。例えば、特定商品における消費者意識の変化、広告プロモーションの効果測定、企業やブランドイメージの推移などを把握するのに効果的です。
 
定点調査の特徴は、単発調査では得られない、時系列情報を収集できる点にあります。単発調査は、特定時点における状況把握には適していますが、時系列での変化をとらえることはできません。
 
その一方、定点調査は同じ質問を繰り返し行うことで、時系列的な変化を把握でき、その要因や影響を分析することが可能です。
 

定点調査で明らかにできること

定点調査は、時系列データの収集と分析を通じて、様々な変化や傾向を把握できます。それにより明らかにできる代表的な情報は、以下の通りです。
 

  • 市場や顧客の変化

    市場動向や顧客ニーズは常に変化しています。定点調査を活用すれば、これらの変化を時系列で追跡し、その要因や影響を分析することが可能です。例えば、特定商品に対する消費者の購買意欲やブランドイメージの変化などを把握できます。

  • マーケティング施策の効果測定

    新商品発売や広告プロモーションなど、マーケティング施策の効果を、定点調査によって時系列で測定できます。この際、マーケティング施策の実施前後でどのような変化が生じたかを分析すれば、施策の有効性を客観的に評価し、改善につなげることが可能です。

  • 将来予測

    定点調査で得られた時系列データに基づいて、将来の市場動向や顧客行動を予測できます。データ変化の傾向やパターンを把握することで、企業は将来を見越したマーケティング戦略を立案することが可能です。

  • 問題点の早期発見

    定点調査で時系列データを分析すれば、潜在的な問題やリスクを早期に発見するのに役立ちます。例えば、顧客満足度の低下やブランドイメージの悪化などの兆候をいち早く捉え、適切な対策を講じられます。

 
 

定点調査の方法

定点調査には、大きく分けて「パネル調査」と「トラッキング調査」の2つの方法があります。定点調査を実施する際は、それぞれの特徴やメリット・デメリットを考慮して、最適な方法を選ぶことが重要です。
 
ここでは、「パネル調査」と「トラッキング調査」について解説します。
 

パネル調査

パネル調査とは、同じ調査対象者グループ(パネル)に対して、一定期間ごとに繰り返し調査を行う手法です。パネル調査の大きな特徴は、同じ対象者から継続的にデータを収集することで、個々人の変化を追跡できる点にあります。
 
例えば、消費者の価値観や購買行動、接触メディア接触が、ライフステージやライフスタイルの経過とともに、どのように変動するかを分析することが可能です。企業はパネル調査を通じて消費者の長期的な行動パターンや意識の変化を把握することで、戦略的な意思決定に役立てられます。
 
一方で、パネル調査は長期間にわたるため、対象者の疲労や関心の低下、調査対象者の脱落によって調査精度が低下するリスクがあります。これらの課題を克服するためには、調査対象者のモチベーションを維持し、適切なサンプル管理を行うことが大切です。

「消費者パネルとは?概要からデータの種類、メリット、成功事例まで解説」はこちら>

 

トラッキング調査

トラッキング調査とは、毎回異なる調査対象者に対して、一定期間ごとに同じ質問項目を用いて繰り返し調査を行う調査手法です。トラッキング調査は特定の指標や行動データを定期的に収集し、時間経過に伴う変化の継続的な追跡に焦点を当てています。
 
例えば、特定商品の認知度や普及率、企業やブランドのイメージに関するデータを一定期間ごとに集めることで、マーケティング施策の効果やブランド認知度の変動を評価することができます。
 
トラッキング調査は、リアルタイムに近い形で市場や顧客の変化を把握できるため、迅速な意思決定を効果的にサポートすることが可能です。また、マーケティング施策の調整や改善にも役立ちます。
 
しかし、トラッキング調査では毎回異なる調査対象者を調査するため、個人の意識や行動の変化を追跡することはできません。さらに、データの変動要因を分析する際は、その根拠となる情報を得られないことも多く、慎重さが求められます。
 
 

定点調査のメリット・デメリット

定点調査は、市場や顧客の変化をいち早く把握し、企業の戦略的な意思決定をサポートできる調査手法です。しかし、定点調査にはその性質上、特有の課題や制約も存在します。
 
ここでは、定点調査のメリットとデメリットについて、解説します。
 

メリット

定点調査は、時系列データの収集と分析を通じて、企業のマーケティング活動に様々なメリットをもたらします。特に、以下の3点が大きなメリットです。
 

  1. データ比較の精度が高い

    定点調査は同一の質問で定期的にデータを収集するため、時系列での比較を高い精度で行えます。これにより、データの変動を的確に把握でき、誤った解釈を避けることが可能です。

  2. 長期的視点で分析できる

    定点調査を活用すれば、一時的なトレンドや短期間の変動に惑わされることなく、時間の経過による大きな変化や全体的な傾向を捉えられます。これにより、持続的に市場動向や消費者行動の傾向を理解し、戦略的な意思決定を行うための基礎情報として利用することが可能です。

  3. 変化の原因や影響を分析しやすい

    定点調査では、時系列データに基づいて、変化の過程を追跡し、その原因や影響を分析することが可能です。例えば、特定のマーケティング施策が、市場や顧客にどのような影響を与えたのかを、施策前後の情報比較によって、比較的、容易に把握することができます。

 

デメリット

定点調査には多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも存在します。
 
まず、最大の課題はコストと時間の負担です。長期間にわたり同じ調査を繰り返すため、調査に関わる人員や予算の継続的な投入が必要です。また、同一の調査対象を維持することが難しく、サンプルの変動がデータの一貫性に影響を与える可能性があります。
 
次に、調査対象者の状況変化に対応しにくい点が挙げられます。定点調査では、同じ質問や実施方法に基づいてデータ収集するため、調査対象者の状況や環境が大きく変化した場合、それを調査内容に反映することが困難です。そのため、急激な市場変動や新しいトレンドに対応する際には、追加の調査や方法の再考が必要になる場合があります。
 
さらに、調査対象者の疲労や関心の低下も、重要な問題です。長期にわたる調査では、参加者が調査に対して飽きたり、関心を失うことで回答の質が低下したりするリスクがあります。これにより、データの信頼性が低下する可能性があるため、参加者のモチベーションを維持する工夫が必要です。
 
 

定点調査の活用事例

  • 消費者行動の追跡調査

    ある食品メーカーは、新製品の市場投入後、その商品の消費者に対する認知度や購買意欲の変化を追跡するためにパネル調査を実施しました。毎月、同じ消費者グループに対して商品の認知度、購買経験、満足度についてアンケートを行い、そのデータを蓄積しています。これにより、製品が市場でどのように受け入れられているかを時系列で把握し、広告戦略や販売促進活動の効果を評価できました。

  • テレビCMの効果測定

    家電メーカーが新製品のテレビCMを放映する際、その効果を測定するために、トラッキング調査を実施しました。CM放映前、放映中、放映終了後と、定期的に消費者の新製品に対する「認知度」や「購入意欲」、「CMの好感度」などを調査することで、CMの効果を定量的に評価し、その後の広告戦略に活かしました。

  • 従業員満足度の経年調査

    ある大手メーカーは、従業員の満足度向上施策の効果を測定するために、パネル調査を実施しました。施策導入前、導入後3ヶ月、6ヶ月、1年後と、定期的に「従業員の会社に対する満足度」や「仕事へのモチベーション」、「職場環境への評価」などを調査しています。これにより、施策の効果を検証し、従業員満足度向上のための継続的な取り組みを推進しました。

 

定点調査の注意点

定点調査は、時系列データに基づいた分析を可能にする調査手法ですが、その特性上、いくつかの注意点があります。主な注意点は以下の3つです。
 

  1. 調査設計の重要性

    定点調査では、一度、調査設計を行ってしまうと、途中で質問項目や調査対象を変更することが難しくなります。そのため、調査開始前に、将来の変化も見据えた上で、慎重に調査設計を行うことが大切です。

  2. パネル維持の工夫

    パネル調査の場合、同じ調査対象者に繰り返し調査を行うため、パネルの脱落や回答意欲の低下などが発生します。パネルを適切に維持・管理し、脱落を防ぐためには、定期的なコミュニケーションやインセンティブの提供など、調査対象者のモチベーションを維持する工夫が大切です。

  3. 調査間隔の設定

    調査間隔は、調査目的や予算、調査対象者の負担などを考慮して、適切な設定が必要です。例えば、調査間隔が長すぎると、市場や顧客の変化を的確に把握できなくなります。また、調査間隔が短すぎると、回答率の低下や調査予算の拡大につながる可能性があります。

 
 

まとめ

ここまで、定点調査について解説しました。
 
定点調査は、時系列データの収集と分析を通じて、市場や顧客の変化を深く理解し、企業の戦略的意思決定を支援する効果的な調査手法です。変化の激しい現代社会において、市場動向や顧客行動の予測につながる定点調査は、企業においてとても重要な調査手法になりつつあります。
 
その一方で、定点調査には、調査設計の難しさやパネル維持の課題など、克服すべき点も存在します。これらの課題に対して適切な対策を講じれば、定点調査から得られる情報を、企業の成長に役立てることが可能です。
 
ぜひ、この記事で紹介した内容を参考に、定点調査を効果的に活用して、ビジネスの成功へとつなげていきましょう。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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