公開日:2024.05.01

グループインタビューの進め方|基本から実施、データ収集まで

  • マーケティングリサーチHowto

市場調査において、消費者の深層心理や動機などの数値化しづらい情報を得るには、定性調査を実施する必要があります。その中でも、グループインタビューは複数の参加者が集まり、自由な議論や表情、反応を通じて、深い洞察や情報を引き出す点で優れたマーケティングリサーチにおける調査手法の1つです。
 
この記事では、グループインタビューの基本とともに、消費者から有益な情報を得るための進め方について解説します。
 
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グループインタビューの基本

グループインタビューは複数の参加者が集まり、グループ内でディスカッションを交わす調査手法です。通常、4~6名程度のグループに対して、モデレーターと呼ばれる司会者が進行役を務めながら、テーマについて自由に議論してもらいます。参加者の具体的なエピソードや事例からテーマに関する意見交換を行い、少しずつ参加者の本音や深層心理、潜在的ニーズなどを深掘りします。
 

目的の明確化

グループインタビューを企画する際は、「なぜ調査を行うのか」という目的を明確にすることが重要です。調査目的がハッキリすることで、「『誰に』『何を』『どうやって』調査するのか」という方向性が決まります。
 
特に、定性調査では参加者の意見や感情、動機といった抽象的な情報を深く掘り下げることが大切です。そのため、「消費者の意見を聞きたい」という漠然とした目的では、調査の焦点が定まらず、必要な情報を得るのが難しくなります。
 
関係者全員が共通の認識を持つことで、より質の高い情報を得られるように取り組みましょう。
 

成功のための事前準備

グループインタビューの目的が明確になったら、事前準備として「調査設計」と「対象者のスクリーニング」を行います。

調査設計

調査設計で行うことは、調査目的に基づいた解決すべき課題の特定です。次に、その課題を解決するために必要な情報と対象となるターゲットを設定します。さらに、ターゲットのニーズや価値観に関する仮説を立てることで、ヒアリングポイントを具体的にします。

スクリーニング

調査設計がある程度作成できたら、次に行うのは対象者のスクリーニングです。調査すべきターゲット像に最も近い対象者を選び出し、グループインタビューに招待します。
 
このステップでより適切な対象者を選ぶには、幅広い調査モニターを有する調査会社を活用することが効果的です。多数の調査モニターから、より調査目的に適した対象者を選べるため、調査結果のクオリティアップを期待できます。
 
 

効果的な環境とフローの設計

グループインタビューは、参加者を特定の環境に招待し、限られた時間内で実施する必要があります。そのため、短い時間で最大限の成果を得るためには、参加者がリラックスして本音を語れる環境を整えることが大切です。
 
また、しっかりとしたインタビューフローを設計しておけば、参加者から効率的に意見を引き出せます。
 
ここでは、グループインタビューを成功に導くための環境作りとフローの設計について解説します。
 

会場とオンライン環境の選定

グループインタビューでは、会場の雰囲気が参加者の気分やモチベーションに影響を与えます。そのため、参加者がリラックスできる適切な環境選定が重要です。インタビューの内容や規模、撮影や録音環境などを考慮して会場を選びましょう。
 
もし、自力での会場確保が難しい場合は、調査会社のインタビュールームを利用するのも効果的です。特に、会社名を明かさずに調査を行う場合は、参加者が先入観や気遣いを抱きにくく、良質な意見を収集しやすくなります。
 
インタビュー専用のルームを使用することで、クライアントがマジックミラー越しにインタビューの様子を見学することが可能です。調査レポートからだと、読み取りにくい対象者の仕草や発言の間なども知り得ることができます。
 
また、オンラインでグループインタビューを行う場合は、参加者のPCやインターネット環境の確認が大切です。ネット接続の問題でインタビューに遅れや中断が発生すると、参加者の心理状態に大きな影響を及ぼしてしまいます。また、参加者のPC性能によっては、ビデオ通話アプリが正常に動作しない可能性があります。
これらの注意点を踏まえ、適切な会場やオンライン環境の選定を行いましょう。
 

インタビューフローの設計

インタビューフローとは、グループインタビューで「『どのような質問』を『どのような順番』で行うのか」を事前に設計したものです。インタビューフローを作成する際は、インタビューの目的や対象者、時間などを考慮して、効果的に情報収集できるフローにすることが重要です。
 
適切なインタビューフローを用意することで、参加者と円滑なコミュニケーションが図れ、必要な情報を的確に収集できます。そして、進行がスムーズであれば、参加者のモチベーションや興味を維持しやすくなります。
 
また、インタビューフローを設計する際は、参加者の緊張感や精神的な壁を取り払う流れを意識することが大切です。
人間は初対面の相手や、普段と異なる環境に置かれると、無意識に自分の本音を隠そうとしてしまいます。インタビューフローの設計は、このような人間心理を踏まえたうえで、質問の順序、話題の選定、休憩のタイミングなどを考慮しましょう。
 
 

実施とデータ収集

会場やオンライン環境、インタビューフローの準備が整ったら、いよいよグループインタビューの実施です。
 
グループインタビューは、「当日、どれくらいスムーズに進行できるか」が、成功の鍵となります。ここでは、インタビューを成功させ、価値あるデータを収集するための方法について解説します。

モデレーターの役割と進行テクニック
モデレーターの役割

モデレーターは、グループインタビューの進行役として、参加者が自由に意見交換できる環境を整え、活発な議論を促進する重要な役割です。アンケート調査は統計学を基にした考察が求められますが、インタビュー調査の場合は、参加者から自然な発言を引き出すために心理学の概念が必要とされます。そのため、モデレーターは心理学に長けた人物であることが多く、専門の話法・技法などを用いてインタビューを進行していきます。モデレーターは、インタビューの目的に沿った情報を効率的に収集するために以下のようなフォローアップを行います。

  • インタビューの目的と流れを明確に説明する。
  • 参加者が安心して意見を共有できる雰囲気を作り出す。
  • 全ての参加者が発言できるようにバランスを取る。
  • 話題が逸脱しないように議論を適切にコントロールする。

 

進行テクニック

また、参加者から自由な意見を引き出すために、以下のようなテクニックを使用します。

  • アイスブレイク最初に自己紹介や簡単な質問をして、場の雰囲気を温めます。この際、参加者同士の共通点に関する話題を提供すると、参加者同士に仲間意識を芽生えさせられます。
  • アクティブリスニング「傾聴姿勢」と呼ばれる技法で、参加者の話に対し、視線やリアクションによって共感を示します。ただ、話を聞くのではなく、相手が伝えたい本質の読み取りを目指します。
  • オープンプエンド質問参加者に対して具体的な答えを限定しない質問です。「○○についてどう思うか?」などのように、抽象的で自由に答えられる問いかけを行います。
  • フォローアップ質問参加者の発言を掘り下げる質問です。「カフェめぐりが好き」という発言があったら、「お気に入りのカフェはありますか?」と、その内容を掘り下げていきます。参加者の「行動」や「感情」を明らかにすることで、潜在的なニーズや価値観を深掘りします。
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    これらのテクニックを駆使することで、モデレーターはグループインタビューから、有益なデータや洞察を引き出せます。
     
     

    参加者相互作用の活用

    グループインタビューの大きな特徴は、参加者同士の相互作用を生み出せる(グループダイナミクス)ことです。複数の参加者が集まり、テーマについての議論や意見交換が行われることで、新たな気づきや価値観の共有、アイデアの創出が促進されます。
     
    参加者の相互作用を促進するためには、モデレーターが議論しやすい環境を整えることが大切です。適切な質問やトピックの提供、グループディスカッションの調整などを通じて、参加者同士のコミュニケーションを促進しましょう。また、参加者全員に積極的に発言の機会を与えることが重要であり、多様な意見が出るよう配慮することも大切です。
     
     

    結果の分析と応用

    グループインタビューで収集したデータは、記録したままでは羅列された情報に過ぎません。それらから意味ある情報やインサイトを引き出すのが、結果分析と応用というステップです。
     
    ここでは、グループインタビューで収集した情報の分析と、そこから実践的なインサイトを抽出する方法について解説します。
     

    情報の整理

    グループインタビューで得た情報を整理することは、有益な洞察やパターンを発見しやすくし、データから意味ある結論を導くための重要なステップです。情報の整理を行うことで、膨大な情報の中から重要ポイントを見つけやすくなり、効率的な分析が可能となります。
     
    情報を整理する方法には、以下のようなものがあります。

    • 議事録の作成インタビューの内容を要約した議事録を作成します。
    • キーワード抽出インタビューの中で頻繁に発せられたキーワードを抽出します。
    • マインドマップの作成インタビューの内容を、中心となるキーワードから関連する言葉やイメージをつないで放射状の図に整理します。
    • カテゴリー分けインタビューの内容を類似の意見やトピックを元に分類します。
    • コーディングインタビューの内容をテーマやキーワードに基づいてラベル付けして整理します。

     
    整理した情報は、カテゴリーごとにデータの傾向や共通点を把握し、統計的手法などを用いて詳しく分析を行います。
     

    インサイトの抽出

    インサイトとは、情報やデータの中から導き出される深い洞察や理解のことです。インサイトは、単なる事実や数値データ以上の意味や価値を持ち、問題解決や意思決定において重要な役割を果たします。
    インサイトの重要性は、単なるデータの集積ではなく、それをビジネスや研究において実際に活用できることです。インサイトは、製品開発、マーケティング戦略、顧客満足度の改善など、多岐にわたる分野での意思決定を導くために用いられます。
     
    インサイトを抽出するには、以下のような分析視点が必要です。

    • データから繰り返し現れるパターンやテーマを見つける。
    • 異なるデータの関連性を探り、因果関係を推測する。
    • データの意味する内容を物語として組み立て、法則性や価値観を導き出す。

     
    このように、多角的な視点から洞察を行うことで、調査目的に合致したインサイトを抽出します。
     
     

    まとめ

    グループインタビューは、多様な意見や深い洞察を集めるための有効な調査手法です。この記事では、その進め方からデータの分析、インサイトの抽出までを詳しく解説しました。
     
    グループインタビューを成功させるには、綿密な準備と適切なノウハウが必要です。特に、モデレーターの役割とインサイトの抽出には、専門的なスキルを要求されます。もし、社内での知識や経験に不安がある場合は、外部の専門家に相談することで、より良い結果を得られるでしょう。
     
    グループインタビューを通じて得られる貴重な分析やインサイトをビジネスに活かし、新たな価値を創造していきましょう。
     
     

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    執筆者
    アスマーク編集局
    株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
    アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
    監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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    アスマークのグループインタビュー

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    定性調査として実施されているインタビュー調査。生活者・消費者のインサイトから、何らかの意思決定やアクションへ繋げることを目的として行います。しかしながら、実際にインタビューを企画・実施・活用する場面では、様々な悩みを持つ企業が少なくありません。一度は「失敗」をしてしまった方も、いらっしゃるのではないでしょうか。そこで本資料では、調査目的に沿った有意義なインタビューを行い次のアクションに繋げるためのポイントを、様々な「失敗談」をベースに考察・提起しております。

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