公開日:2024.09.19

KJ法とは?メリットやデメリット、やり方・手順を簡単解説

  • マーケティングリサーチHowto

新しいアイデアを生み出したり、複雑な問題を解決したりする時、どのようにすれば良いのか迷ってしまうことはありませんか?そんな時に役立つのが、KJ法です。KJ法は、一見、ばらばらに見える情報やアイデアを整理し、新たな気づきや解決策を見出すための手法です。
 
マーケティングリサーチの世界でも情報整理、発想法として早くから活用されております。例えば、定量調査では、自由回答の整理や回答の構造理解、傾向の把握に活用できます。また、定性調査のグループインタビューにおいては、調査対象者から発話された、ある事柄の印象やイメージ、理由などについて、一つ一つの発話ワード、想起ワードを収集し、その場でモデレーター(司会進行役)が支援し、円滑に進めることで、調査対象者と共に構造を整理することが可能です。
 
この記事では、KJ法の基本から具体的な手順、メリット・デメリット、さらには活用法について、解説します。
 
目的に合わせた、グルイン・デプスインタビューの使い分けとは?「定性調査基礎講座」設計編 無料動画視聴はこちら>
 
 

KJ法とは?

KJ法は、情報を整理・構造化することで、新たな気づきを得るための手法であり発想法です。複雑な問題や膨大なデータを整理するために開発され、様々な分野で活用されています。特に、情報を視覚的に整理することで、新しい発見や解決策を見つけるのに効果的です。
 

KJ法の概要

KJ法では、ブレインストーミングなどで集めたアイデアや情報をカードに書き出し、それらをグループ化して情報を分類します。これにより、複雑な問題や大量の情報が整理され、その傾向や特徴を理解しやすくなります。
 
また、カードを使用することで情報が視覚化されるため、思考を整理しやすくなり、隠れていた関係性や新しいアイデアを見いだすのにも効果的です。
 
さらに、KJ法は一人でじっくり考えたい時や、チームで協力して問題解決に取り組む時、定量調査や定性調査で情報整理をしたい時など、様々な場面で役立ちます。KJ法は柔軟性や自由度が高いため、決まったルールにとらわれず、自由にアイデアを出し合えるという特徴もあります。
 

Tips:川喜田二郎氏により開発
KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏がフィールドワークのデータを整理・分析するために開発した手法です。KJ法は、川喜田氏のイニシャルから命名され、現在も幅広く利用されています。

 
 

KJ法の前にブレインストーミング(ブレスト)を実施

KJ法を効果的に活用するには、十分な量のアイデアや情報が必要です。そのために役立つのが、ブレインストーミング(ブレスト)です。ブレストは、自由な発想でチームメンバー全員のアイデアを引き出す手法であり、KJ法の情報整理をスムーズに進める基盤となります。
 
ここでは、ブレストの基本的な考え方から具体的な進め方、そして成功させるためのポイントについて解説します。
 

ブレインストーミング(ブレスト)とは?

ブレストとは、複数の参加者が自由にアイデアを出し合い、短時間で多くのアイデアを引き出すための手法であり発想法です。ブレストの特徴は、批判や評価を一切行わず、参加者全員が自由な発想で意見を出し合える環境を作ることにあります。また、他の参加者の意見に刺激を受けて、新たな発想が生まれることも多く、アイデアの連鎖が起こりやすいのも特徴です。そのため、定性調査のグループインタビューの場においても、『複数の調査対象者がアイデアを出し合い、新たな発想が生まれる可能性があること』や、『ファシリテーター(司会進行役)によって調査対象者が自由に意見を出し合える環境を作ること』など、重要な要素がこのブレストには詰まっています。
 
また、アイデア創出だけでなく、チームのコミュニケーション促進や問題意識の共有にも役立ちます。KJ法で扱うアイデアの質と量を高めるためにも、効果的なブレストを事前に実施することは、とても重要です。
 

ブレインストーミング(ブレスト)のやり方

ブレストは、以下のようなステップで進められます。
 

  1. テーマ設定
    ブレストのテーマを明確に設定します。テーマは具体的で、参加者がイメージしやすいものを設定します。
  2. ファシリテーター選定
    ブレストを円滑に進めるためのファシリテーターを選びます。ファシリテーターは、時間管理や発言の促進、アイデアの記録などを行います。
  3. 参加者招集
    ブレストの参加者を招集します。多様な視点を取り入れるために、できるだけ異なる考え方や価値観を持つ人々を集めることが望ましいです。
  4. ルール説明
    ブレストのルールを参加者に説明します。自由に発言すること、質より量を優先すること、他の人の意見を積極的に活用すること、批判的な発言をしないことなどを確認します。
  5. アイデア出し
    設定した時間内で、参加者が自由にアイデアを出し合います。付箋やホワイトボードなどを活用して、アイデアを可視化しましょう。
  6. アイデア整理
    出てきたアイデアをグループ化したり、関連性を見つけたりして整理します。KJ法につなげるためにも、アイデアをカードに書き出すと便利です。
  7. 振り返り
    ブレスト全体を振り返り、良かった点や改善点を確認します。記録を残しておくと、次回のブレストに活用できます。

 

ブレインストーミング(ブレスト)を成功させるためのポイント

ブレストを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
 
まずは、参加者全員が積極的にアイデアを出し合い、自由な発想を促す環境をつくることが大切です。そのためにも、他の参加者の意見に対しては、批判や否定をしないという共通理解を形成しましょう。どんな意見でも受け入れる寛容な姿勢こそが、創造性を刺激し、新たな発想を生み出すベースとなります。
 
また、異なるバックグラウンドを持つ人々が集まることで、予想外のアイデアやユニークな解決策が生まれる可能性が高まります。ブレストで生まれたアイデアは、付箋やホワイトボードなどを可視化すると、参加者同士の理解を深め、議論を活性化させる効果を期待できます。
 
さらに、適切な時間管理も重要なポイントです。一説には、人間の集中力は90分間が限界と言われています。ダラダラと長引かせずに、集中力を維持できる適切な時間配分を心がけましょう。そして、何よりもブレストは、楽しむことが大切です。参加者がリラックスした雰囲気の中で、自由にアイデアを出し合い、チームワークを高めることが、より良い結果につながります。
 
 

KJ法のやり方

ブレインストーミングで集めたアイデアを、いよいよKJ法で整理していきます。KJ法は、一見、難しそうに思えるかもしれませんが、一つ一つのステップをていねいに進めることで、誰でも簡単に実践できます。
 

KJ法のイメージ
KJ法のイメージ

 
ここでは、KJ法の基本的な手順を、具体的なステップに分けて解説します。
 

  1. アイデアを書き出そう
    KJ法の最初のステップは、ブレインストーミングで集めたアイデアを一つ一つカードに書き出すことです。この作業は、KJ法の基盤となる大切なプロセスなので、ていねいに進めていきましょう。
     
    書き出しに用意するのは、付箋やカード、そしてペンです。一枚のカードには、一つのアイデアだけを簡潔にまとめて書き込みます。できるだけ長文にならないよう、キーワードや短いフレーズで表現しましょう。また、書き出す際には、アイデアの良し悪しを判断したり、取捨選択したりする必要はありません。ブレインストーミングで生まれたアイデアを、そのままの形でカードに書いてください。
     
    すべてのアイデアを書き終えたら、カードをよく見て書き込んだ内容を確認します。誤字脱字がないか、意味が明確に伝わるかなどをチェックし、必要であれば、加筆修正を加えましょう。
     
  2. アイデアをグループごとに分けよう
    カードへの書き出しが完了したら、次はそれらのアイデアをグループごとに分けていきます。この作業は、KJ法の核となる部分であり、参加者の直感と洞察力が試される場面でもあります。
     
    まずは、すべてのカードを広げ、一つ一つその内容をじっくりと確認しましょう。もし、似たような内容や関連性がありそうなもの、共通点を感じられるものがあれば、自由にカードを組み合わせます。この時、論理的な理由付けは必要なく、直感で「これは同じグループだな」と感じたものを組み合わせましょう(グルーピングしていきましょう)。
     
    グループ分けを進めていると、途中で新しいグループが生まれたり、既存のグループが統合されたりすることがあります。その際は、あまり厳密に考えず、自由にカードを動かします。グループの数や大きさに制限を設けず、自然な流れに従って進めるのが良いでしょう。
     
    アイデアのグループ分けが進んだら、それぞれのグループに名前やラベルをつけます。ラベルは、グループの共通点や要素を簡潔に表現できるものが理想的です。これにより、グループ全体の特徴を一目で把握できるようになります。
     
    このようなグループ分けのプロセスを通じて、情報の整理が進み、複雑な問題の全体像が少しずつ明確になっていきます。
     
  3. グループ同士の関係性を図解化しよう
    アイデアをグループ分けしたら、次はグループ同士の関係性を視覚的に表現する「図解化」のステップです。この作業を通じて、アイデア間のつながりや構造がより明確になり、新たな発見や洞察が得られるようになります。
     
    まずは、グループ化(グルーピング)したカードを広い場所に並べ、グループ間の関連性について自由に話し合いましょう。あるグループが別のグループの原因となっているのか、それとも結果なのか。あるいは、対立する関係にあるのか、互いに補完し合う関係にあるのか。様々な視点からグループ同士の関係性を検討していきます。
     
    関係性が見えてきたら、紙やホワイトボードにグループを配置し、矢印や線を使って関連性を示します。この時、中心的なテーマやコアとなるアイデアを中央に置き、そこから派生する形で関係性を図解化すると分かりやすくなります。
     
    グループ同士のつながりがどのように影響し合っているかが明確になると、全体の構造や流れが見えやすくなります。この図解化を通じて、関連性が希薄だったアイデア同士に新たなつながりを発見することもあります。
     
  4. 図解化した関係性を文章化(叙述化)しよう
    KJ法の最終ステップは、図解化したグループ同士の関係性を文章化(叙述化)することです。図解によって視覚的に整理された情報をもとに、それぞれのグループの意味やつながり、全体のストーリーを明確にしていきます。
     
    文章化では、図解で表現されたグループ間の関係性や構造を、論理的な文章で説明していきます。各グループの内容を要約し、グループ同士がどのようにつながり、影響し合っているのかを具体的に記述しましょう。
     
    また、文章化する際は、中心的なテーマや問題に対して、どのグループがどのように影響しているのかを示すと、その関係性が明確になります。さらに、必要に応じて、具体的な事例やエピソードを交えると、文章に深みと説得力を与えられます。

 
 

KJ法のメリット

KJ法は、その独特なプロセスを通じて、様々なメリットをもたらします。アイデアを整理し、新たな視点を見出すだけでなく、チームワークの向上や問題解決能力の強化にもつながります。
 
ここでは、KJ法を活用することで得られる具体的なメリットについて解説します。
 

メリット 内容
アイデアを可視化できる KJ法の最大のメリットは、頭の中にあるアイデアを可視化できることです。これにより、アイデア同士の関連性や全体像が把握しやすくなり、新たな気づきや発見につながります。
様々な意見や情報を論理的に整理できる KJ法は多様な意見や情報を、グループ化や図解化を通じて論理的に整理できます。また、視覚化によって全体像を把握することで、複雑な情報の中から重要なポイントや隠れたパターンを発見しやすくなります。
少数の意見も可視化できる KJ法では少数の意見でも、カードに書き出すことで可視化され、議論の対象となります。これにより、少数意見が重要なヒントや革新的なアイデアに発展する可能性が広がり、バランスの取れた解決策が生まれやすくなります。
簡単に実施できる KJ法は紙とペン、そして自由な発想があれば、特別な道具やスキルを必要とせずに始められます。また、KJ法のプロセス自体が直感的で分かりやすく、初心者でも取り組みやすい点も魅力です。
課題や問題点を可視化できる KJ法では、アイデアや情報を整理していく中で、どの要素が問題の根本にあるか、どこに課題が集中しているかを理解できます。これにより、複雑な問題でも全体像を視覚的に把握でき、解決策の方向性を定めやすくなります。

 
 

KJ法のデメリット

KJ法は、多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。これらのデメリットを理解しておくことで、KJ法をより効果的に活用し、起こりうる問題を事前に回避することができます。
 
参加者にアイデアが依存する
KJ法のデメリットは、見いだせる洞察が参加者のアイデアに大きく依存することです。そのため、活発な議論や多様な視点がないと、画期的なアイデアや解決策を見出すことが難しくなります。
 
 

KJ法の活用

KJ法は、その柔軟性と汎用性から、様々な場面で活用できます。ビジネスシーンでのアイデア創出や問題解決をはじめ、教育現場や日常生活においても効果的に活用することが可能です。
 
ここでは、KJ法の具体的な活用事例として、定量調査と定性調査への応用について解説します。
 

定量調査へKJ法を活用

KJ法は数値データを中心とする定量調査においても、効果的に活用できます。特にアンケート調査などで得られた自由回答の分析に、KJ法はとても有効です。
 
自由回答は、回答者の生の声を捉えられる貴重なデータですが、多種多様な意見や情報が含まれることで、分析が難しいという側面があります。しかし、KJ法を活用すれば、これらの自由回答をグループ化、図解化することで、回答の傾向やパターンを視覚的に把握できます。
例えば、新商品のアンケート調査で得られた自由回答をKJ法で分析すれば、顧客が商品に求めるニーズや改善点、潜在的な不満などを浮かび上がらせることができます。
 
また、KJ法は、定量調査の結果を解釈し、その背景にある要因を探る際にも役立ちます。数値データだけでは見えてこない、回答者の心理や行動のメカニズムを、KJ法を通じて深掘りしていくことも可能です。
「アンケート初心者向け」セレクト4選 無料資料ダウンロードはこちら>
アンケートの調査票の作り方 無料資料ダウンロードはこちら>
 

定性調査へKJ法を活用

定性調査は、インタビューや観察などを通じて、人々の行動や意識の背景にある深層心理や価値観を探求する調査手法です。KJ法は、この定性調査で得られた質的なデータを分析し、解釈する際にとても役立ちます。
 
インタビューなどで得られた発言内容をKJ法で整理すれば、発言に隠された意味や関連性、背後にある価値観などを浮かび上がらせることが可能です。これにより、調査対象者の真のニーズや課題を深く理解し、より効果的な施策やサービスの開発につなげられます。
 
例えば、消費者インタビューの調査データにKJ法を活用すれば、消費者の潜在的なニーズや期待、商品に対するイメージなどを明確にできます。また、顧客満足度調査においても、顧客ニーズの関係性を視覚化し、サービス改善のポイントや新たな顧客体験の創出につながるヒントを得ることが可能です。
 
さらに、KJ法は、調査結果を分かりやすく可視化し、関係者間で共有するのにも役立ちます。図解化された情報は、直感的に理解しやすく、議論を活性化させる効果も期待できます。
失敗しない、定性調査の「インタビューフロー設計」 無料資料ダウンロードはこちら>
調査設計・聞き方の失敗例から学ぶ「インタビュー調査のコツ」 無料資料ダウンロードはこちら>
 
 

まとめ

ここまで、KJ法の概要から具体的な手順、そして活用事例までを解説しました。KJ法は、複雑な情報を分かりやすく視覚化し、新たなアイデアや解決策を見出すのに効果的な手法です。
 
そして、定量調査や定性調査をはじめ、様々な分野で活用できます。特に、新商品開発やマーケティング戦略の立案、顧客満足度向上のための施策検討など、ビジネスの課題解決において大きな力を発揮します。
 
ぜひ、KJ法を活用して、あなたのビジネスにおける課題解決や新たな価値創造に役立ててみてください。
 
調査についてのご相談はこちら>
 

執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

アスマークの編集ポリシー
 
 

グループインタビュー(FGI)

グループインタビュー(FGI)

グループインタビュー(FGI)とは、調査対象者を6人程度集め、モデレーターと呼ばれる司会者が調査テーマについて質問を行い、自由に発言をしてもらうことでさまざまな意見・情報を収集する調査手法です。消費者と直接対面することが最大の特徴で、消費者の生の声を収集することができます。また、グループ形式であるため、その相互作用で意見が活発になりやすく、多くの意見を収集しやすいというメリットもあります。

> 詳しく見る

 

デプスインタビューの概要とメリット・デメリット

デプスインタビューの概要とメリット・デメリット

デプスインタビューとは、対象者とインタビュアーによる1対1の面談式で実施する調査方法です。パーソナル・インタビューとも言います。 商品やサービス等の選択・購買理由などをより深く掘り下げて探ることができます。 特に、ペルソナ、ラダリング、ジャーニーマップ作成を目的とする場合はデプスインタビューが適しています。こちらでは、デプスインタビューのメリット・デメリットをはじめ、特徴やお客様アンケートを紹介しています。

> 詳しく見る

 

失敗しない、定性調査の「インタビューフロー設計」

失敗しない、定性調査の「インタビューフロー設計」

下記に当てはまる方にお薦めの資料です。
・インタビューフローの作成で悩んだことがある
・インタビュー調査を失敗したことがある
・これからインタビュー調査を設計する予定がある

> 詳しく見る

 

調査設計・聞き方の失敗例から学ぶ「インタビュー調査のコツ」

調査設計・聞き方の失敗例から学ぶ「インタビュー調査のコツ」

定性調査として実施されているインタビュー調査。生活者・消費者のインサイトから、何らかの意思決定やアクションへ繋げることを目的として行います。しかしながら、実際にインタビューを企画・実施・活用する場面では、様々な悩みを持つ企業が少なくありません。一度は「失敗」をしてしまった方も、いらっしゃるのではないでしょうか。そこで本資料では、調査目的に沿った有意義なインタビューを行い次のアクションに繋げるためのポイントを、様々な「失敗談」をベースに考察・提起しております。

> 詳しく見る