公開日:2024.06.11

モデレーターとは?意味やファシリテーターとの違い、役割とスキルを丁寧に解説

  • マーケティングリサーチHowto

モデレーターという言葉を聞いたことはありますか?会議やディスカッションの場で、議論を円滑に進めるための司会進行役のことを指します。しかし、単に議論を先導するだけでなく、参加者の意見を引き出し、建設的な対話を促進する役割も担っています。
 
この記事では、モデレーターの意味や語源、ビジネスシーンでの使い方について解説します。他にも、よく混同されるファシリテーターとの違いや、モデレーターに求められる役割とスキルについても詳しく説明していきます。モデレーターについて正しく理解し、効果的な議論を進めるためのヒントを得ましょう。
 
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モデレーターとは

モデレーターとは、会議やディスカッションにおいて、参加者の発言を促しながら議論を整理し、目的に沿って話し合いを進行させる役割を担う人のことです。司会者やインタビュアーとも呼ばれます。ここでは、モデレーターの意味や語源、使い方について詳しく見ていきましょう。
 

モデレーターの意味

モデレーターとは、議論や会話の調停役(間を取り持つ役)を務める人を指します。参加者の意見を公平に扱いながら、話し合いが脱線せず、目的に向かって進むようにコントロールします。また、参加者の多様な意見を引き出し、お互いの理解を深められるように働きかけるのもモデレーターの重要な役割です。
 
企業の会議や座談会、グループインタビューなどの場で、モデレーターは参加者の意見を整理しながら議論を活性化させ、有意義な結論を導き出すことを目指します。立場の異なる参加者の間に立ち、中立的な姿勢で議論をリードすることが求められます。また、司会することをモデレーションといいます。
 

モデレーターの語源

モデレーターの語源は、ラテン語の「moderare」に由来します。「moderare」には、「調整する」「制御する」という意味があります。つまり、モデレーターとは本来、議論を適切にコントロールし、参加者間の意見の調和を図る役割を表しているのです。
 
英語の「moderate」には、「適度の」「穏健な」といった意味もあります。モデレーターには、議論を過激な方向に行き過ぎないように、バランスの取れた穏やかな雰囲気を保つことも期待されていると言えるでしょう。
 

モデレーターという言葉の使い方・例文

モデレーターという言葉は、ビジネスシーンで広く使われています。特に、複数の参加者による会議やディスカッションの場で、議論の進行役を指す際によく用いられます。以下に、モデレーターを使った例文をいくつか挙げます。
 
「今日の会議では、山田さんがモデレーターを務めて議論を進行してくださいます。 」
「経営戦略を話し合う際は、社長自らがモデレーターとなり、部長の意見を引き出していました。」
「座談会では、専門家がモデレーターとなって参加者の対話を促し、多角的な意見を共有しました。」
 
また、マーケティングリサーチの分野では、デプスインタビュー(IDI)やグループインタビュー(FGI)において、モデレーターが重要な役割を果たします。モデレーターは参加者の心理を読み取りながら、深い洞察を引き出すためのインタビューを行います。定性調査におけるモデレーターの存在は欠かせません。
 
より詳しく解説している「モデレーター」についてはこちら>
 
 

モデレーターとファシリテーターの違い

モデレーターとよく混同されるのが、ファシリテーターという役割です。両者は議論を促進するという点で共通していますが、その目的やアプローチには違いがあります。ここでは、ファシリテーターの意味を確認した上で、モデレーターとの異なるポイントを詳しく見ていきましょう。
 

ファシリテーターの意味

ファシリテーター(Facilitator)とは、ミーティングなどにおいて、参加者の自発的な発言を促し、グループの相互理解を深めることを目的とする役割です。ファシリテーターは、参加者一人ひとりの意見を尊重しながら、対話を通じて合意形成を図ります。
 
ファシリテーターの語源は、ラテン語の「facilis」(容易な)に由来し、「容易にする」「促進する」という意味があります。つまり、ファシリテーターは参加者が自由に意見を述べやすい環境を作り、建設的な議論を促進する役割を担っているのです。
 
これらの行動、つまりミーティングなどで円滑に進むよう行動することを「ファシリテーション(Facilitation)」といい、ファシリテーターと合わせて覚えておきたい言葉になります。
 

モデレーターとファシリテーターが異なるポイント

モデレーターとファシリテーターは、議論を円滑に進めるという点で似ていますが、次のようなポイントで異なります。

  1. 目的の違いモデレーターは議論の方向性を適切にコントロールし、結論を導き出すことを目的としています。一方、ファシリテーターは参加者の自発的な発言を引き出し、相互理解を深めることを重視します。
  2. 立ち位置の違いモデレーターは議論の進行役として、話題の選定や発言の整理など、議論全体をリードする立場にあります。対して、ファシリテーターは参加者の対話を促進する支援者として、中立的な立場を保ちます。
  3. アプローチの違いモデレーターは議論の目的に沿って話し合いを進め、時には直接的に意見を求めることもあります。一方、ファシリテーターは参加者の自発的な発言を引き出すために、開かれた質問を投げかけたり、意見の背景にある思考を探ったりします。
  4. 適した場面の違いモデレーターは結論を出すことが求められる会議やディスカッションに適しています。ファシリテーターは、アイデア出しのためのブレインストーミングや、参加者の相互理解を深めるワークショップなどで力を発揮します。

 
ただし、モデレーターとファシリテーターの役割は完全に分離されているわけではありません。状況に応じて、両者のスキルを使い分けることが効果的な場合もあるでしょう。実際に、マーケティングリサーチの現場においては、モデレーターとファシリテーターは同義として扱われることも多いです。
議論の目的や参加者の特性を見極め、適切なアプローチを選択することが重要です。
 
 

モデレーターの役割と必要なスキル

モデレーターは、議論を円滑に進めるだけでなく、参加者の意見を引き出し、深い洞察を得ることが求められます。ここでは、モデレーターの具体的な役割と、それを果たすために必要なスキルについて解説します。
 

モデレーターの役割
進行管理

モデレーターは、議論の時間配分を管理し、話し合いが脱線しないようにコントロールします。また、参加者の発言についても、バランスを取ることが重要になっていきます。
 

参加者の意見を分析する

モデレーターは、参加者の発言内容を注意深く聞き、背景にある思考や感情を読み取ります。表面的な意見だけでなく、その奥にある本質的な意図を汲み取るよう努めています。
 

参加者の深層心理に秘める思いを引出す

モデレーターは、参加者が言葉にしづらい本音や葛藤を引き出すために、適切な質問を投げかけます。参加者の心理的な壁を乗り越え、本当の”思い”を引き出すことが重要です。
 

参加者の意見をまとめる

モデレーターは、参加者から出された多様な意見を整理し、論点を明確にします。議論の結果を要約し、参加者全員で共有できるようにまとめる役割も担います。
 

モデレーターの必要なスキル

優れたモデレーターになるためには、単に議論を進行するだけでなく、参加者の発言の本質を見抜き、深い洞察を引き出すことが求められます。ここでは、モデレーターに必要な5つの重要なスキルを詳しく解説します。
 

抽象化と具体化を使いこなすスキル

モデレーターは、参加者の発言を抽象化し、共通点や差異点を見出す能力が必要です。同時に、抽象的な概念を具体的な例に落とし込むスキルも重要です。
 

深層心理を引出すための深堀スキル

モデレーターは、参加者の表面的な発言だけでなく、その背後にある本当の思いや価値観を引き出すための質問力が求められます。相手の心理的な壁を乗り越え、深層心理に迫る深堀スキルが不可欠です。
 

マーケティング知識から発言内容をまとめ、活かすスキル

モデレーターは、マーケティングに関する幅広い知識を持ち、参加者の発言内容をマーケティングの観点から整理・分析する力が必要です。得られた洞察をビジネスに活かすためのスキルが重要です。
 

コミュニケーションスキル

モデレーターには、参加者との信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを図るためのスキルが欠かせません。心理学の知見を活用し、参加者の心理状態に合わせて柔軟に対応することが求められます。
 

分析スキル

モデレーターは、参加者の発言内容を的確に分析し、本質的な課題や機会を見出す分析力が必要です。データだけでなく、参加者の非言語的な表現からも重要な情報を読み取るスキルが求められます。
 
 
これらのスキルは、経験を積むことで徐々に身につけていくことができます。自己研鑽を重ね、常に参加者の視点に立って考える姿勢を持つことが、優れたモデレーターへの道につながるでしょう。
 
 

まとめ

モデレーターは、議論やインタビューを円滑に進行するだけでなく、参加者の深い洞察を引き出すことで、ビジネスに役立つ知見を得ることができる重要な役割です。そして、定性調査やグループインタビュー、ビジネスミーティングなど、様々な場面で活躍が期待されています。企業がマーケティング戦略を立てる上で、モデレーターから得られる深い洞察は欠かせません。
 
これからモデレーターを目指す方は、必要なスキルを身につけるために、経験を積み、自己研鑽を重ねることが大切です。参加者の視点に立ち、真摯に向き合う姿勢を持つことが、優れたモデレーターへの第一歩となるでしょう。
 
モデレーターの重要性がますます高まる中、その役割を担う人材の育成が急務となっています。この記事が、モデレーターを目指す方や、モデレーターの活用を検討している企業の一助となれば幸いです。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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