2024.09.19
KJ法とは?メリットやデメリット、やり方・手順を簡単解説
新しいアイデアを生み出したり、複雑な問題を解決したりする時、どのようにすれば良いのか迷ってしまうことはありませんか?そんな時に役立つのが、KJ法です。KJ法は、……
公開日:2024.05.29
近年、顧客満足度やロイヤルティ向上が企業にとって重要な課題となっています。企業が持続的な成長を実現するためには、顧客の声に耳を傾け、そのニーズを的確に把握することが大切です。
そのような状況下で、近年、注目を集めているのがNPS®(Net Promoter Score:ネット・プロモーター・スコア)です。NPS®は顧客ロイヤルティを数値化し、定量的に測定できる指標として、世界中の企業で広く導入されています。
この記事では、NPS®の基礎知識から、分析方法や活用方法などについて解説します。
顧客満足度調査(CS調査)の業種・業界別テンプレート一覧はこちら>
現在、NPS®は既存顧客との関係性を強化し、将来の収益確保を図るための指標として、多くの企業に採用されています。ここでは、NPS®の基本概念とともに、顧客満足度との違いや具体的な計算方法について解説します。
NPS®は、ロイヤルティマーケティングの権威であるフレッド・ライクヘルド氏によって提唱されました。ライクヘルド氏は業績につながる顧客行動を研究し、「お薦めしたいか」という質問が業績との関連性が最も高い要素であると分析しました。この分析結果をもとにライクヘルド氏は、顧客の行動にフォーカスした指標としてNPS®を開発しました。
NPS®は、顧客に対して「あなたはこの企業(商品/サービス)を親しい人にどの程度お薦めしますか?」というシンプルな質問を行い、その回答に基づいて、顧客を以下の3つのグループに分類します。
その上で、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPS®となります。
NPS®と顧客満足度(Customer Satisfaction)は、どちらも顧客の感情を評価するための指標です。しかし、その目的と評価方法には重要な違いがあります。
顧客満足度は、「この商品(サービス)にどれだけ満足していますか?」という質問によって、直近の体験に基づく顧客の感情を捉えます。そのため、その評価は現時点での優位性や問題点の把握には適していますが、将来的な購買行動との関連性はそれほど高くはありません。
一方、NPS®は企業(商品/サービス)に対する顧客ロイヤルティに焦点を当てた指標です。これは、企業(商品/サービス)と顧客の心理的な親密さを測定することができ、顧客満足度よりも将来的な購買行動を予測しやすいと考えられています。
NPS®の計算は、顧客に「あなたはこの企業(商品/サービス)を親しい人にどの程度お薦めしますか?」という質問をし、0~10までの11段階で回答してもらいます。その回答結果に基づき、顧客を以下の3つのグループに分類します:
NPS®は推奨者の割合から批判者の割合を引いたもので、以下の式で計算します。
NPS® = 推奨者の割合(%) – 批判者の割合(%)
例えば、1000人の顧客が質問に回答し、そのうち500人が推奨者、200人が中立者、300人が批判者だった場合、NPS®は次のように計算されます:
NPS = (500÷1000×100) – (300÷1000×100) = 50 – 30 = 20
このスコアは、-100から+100までの範囲で表され、高いスコアほど顧客ロイヤルティが高いことを示します。
NPS®の果たす役割は、顧客ロイヤルティの測定だけではありません。企業はNPS®の分析を通じて顧客の声を深く理解し、改善点を特定することで、より緊密な顧客ロイヤルティを築くことができます。
ここでは、NPS®分析の重要性と分析方法について解説します。
NPS®分析は、自社のNPS®を測定することで、顧客ロイヤルティを定量的に把握できます。また、「推奨する理由」の自由回答によって、定性的なデータも収集することが可能です。これらのデータを組み合わせて多角的に分析することで、企業は自社の取り組むべき改善点を特定できるようになります。
NPS®分析には、主に以下のようなメリットがあります。
NPS®は-100から+100の範囲でスコアが算出されます。スコアがプラスの場合は「推奨者」が「批判者」より多いことを示し、マイナスの場合は「批判者」が「推奨者」より多いことを意味します。
もちろん、高スコアは評価が高いことを意味しますが、プラスだから良くてマイナスだから悪いという単純な評価ではありません。NPS®のスコアは「時系列」または「競合や業界平均」との比較により、その意味するところをより深く分析することが重要です。
例えば、1年前のスコアが「+5.0」で今年のスコアが「+1.0」であれば、スコア自体はプラスでも顧客ロイヤルティが低下していることが分かります。また、自社のスコアが「-10.0」で業界平均が「-20.0」であれば、相対的に高い顧客ロイヤルティを得ていると評価できます。
NPS®の持つ意味を的確に把握するには、継続的な調査を実施するとともに、競合のNPS®をリサーチすることが重要です。これにより、自社のスコアが市場や業界でどのような位置にあるのか理解でき、顧客ロイヤルティ向上に向けた適切な戦略を立案することが可能になります。
NPS®の調査では、顧客への簡単なアンケートによって、定量データと定性データの両方を取得することが可能です。これらのデータを基に定量分析と定性分析を組み合わせることで、効果的なNPS®分析を行えます。
ここでは、NPS®分析における定量分析と定性分析の具体的な手法について、解説します。
NPS®の定量分析には、以下のような手法があります。
批判者 | 中立者 | 推奨者 | |
---|---|---|---|
収益性が高い | 離反候補者層 | 最優良顧客候補者層 | 最優良顧客層 |
収益性が低い | 非協力者層 | 無関心・低関与層 | 広報担当者層 |
NPS®スコアは「批判者」「中立者」「推奨者」、収益性は「高い」と「低い」によって分類します。
例えば、高級車を対象としたNPS®分析の場合、「広報担当者層」は顧客ロイヤルティが高くても、車を購入する購買力が足りていないケースが考えられます。その顧客に対して「低金利カーローン」や「サブスクリプション」を展開すれば、「最優良顧客層」へと導くことが可能です。
低 各要素の満足度 高 | ||
---|---|---|
高 推奨度との相関 低 | 優先改善項目 | 重点維持項目 |
注意観察項目 | 基本維持項目 |
アンケート調査の際に、NPS®とともに「品揃え」「使いやすさ」「コストパフォーマンス」などの分析したい要素についても質問を行います。その上で、各要素と推奨度(NPS®)の相関関係を算出し、その値によって4つのグループに分類します。
例えば、「使いやすさ」が優先改善項目、「品揃え」が基本維持項目に該当した場合は、「使いやすさ」を優先して改善すべきと分析できます。
認知 | 情報収取 | 来店 | 試着 | 購入 | |
---|---|---|---|---|---|
顧客行動 | インフルエンサーの 投稿閲覧 |
ブランドサイト 閲覧 |
店舗来店 品揃えと価格を確認 |
サイズや着心地 コーデを確認 |
商品購入 |
推奨度との相関 | 40 | 60 | 70 | 50 | 60 |
NPS® | 25 | 55 | 40 | 35 | 55 |
差 | 15 | 5 | 30 | 15 | 5 |
例えば、婦人服のカスタマージャーニーにおいて、上記のような分析結果になったとします。この場合、来店段階の重要度が高いのに対して、顧客ロイヤルティが低くなっていることが分析できます。そこから、来店時のサービス改善が優先順位の高い課題だと認識することが可能です。
NPS®の定性分析には、以下のような手法があります。
例えば、顧客のコメントを「価格」「品質」「カスタマーサービス」などのカテゴリーに分類することで、どのカテゴリーでどのような改善が必要かを把握できます。カテゴリー分析は問題の具体的な原因を特定することで、効果的な改善策の立案に役立てられます。
ポジティブ・ネガティブ分析では、ポジティブな単語とネガティブな単語の比率や、カテゴリーごとにどのような単語が多いかを分析します。これにより顧客が何をプラスとして評価しているのか、どこに不満を感じているのかを把握することが可能です。
利用例としては、ポジティブな言葉に「使いやすい」が多ければ、そこを強調したPRを展開したり、ネガティブな言葉に「価格が高い」との指摘があれば、価格戦略の見直しを検討するといった具体的な改善策を導き出すことができます。
企業はNPS®を多角的な視点から分析することで、顧客ロイヤルティに関するインサイトを得ることが可能です。これらのインサイトを適切に活用すれば、企業の成長に寄与する様々な効果を期待できます。
ここでは、NPS®分析結果の具体的な活用方法について解説します。
NPS®分析から得られるインサイトは、以下のような活用方法があります。
NPS®分析に基づく戦略立案のポイントは、顧客の声を詳細に分析し、具体的な行動計画に落とし込むことです。
まず、「推奨者」と「批判者」のフィードバックをもとに、顧客満足度を向上させる要因と課題を明確にします。それらの要因を優先順位付けし、短期的に解決する要因と、長期的に改善する要因を踏まえて、マーケティング計画を立案します。また、NPS®を競合他社や業界平均と比較することで自社のポジショニングを評価し、差別化戦略を構築することも大切です。
これらの戦略を適切に組み立てることで、マーケティング戦略の全体的な一貫性を確保し、具体的なアクションプランを策定します。
NPS®を活用して顧客ロイヤルティ向上の戦略を成功させた事例の一例が、クレジットカードサービスを展開する企業です。同社は顧客満足度とロイヤルティの向上を目指し、NPS®を導入しました。
同社のNPS®調査によると、顧客がクレジットカード紛失時の対応に強い不満を持っていることが判明しました。そこで、この企業は以下の施策を実行しました。
これらの施策の結果、NPS®が向上し、「顧客解約率の減少」や「平均利用金額のアップ」を実現しました。
NPS®は企業の成長戦略に役立つ指標ですが、その分析にはいくつかの課題があります。ここでは、NPS®分析における主要な課題とそれに対する効果的な解決策を解説します。
NPS®分析にはいくつかの課題が存在します。まず、NPS®そのものは単一の数値指標であるため、そのスコアだけで具体的な改善点を特定するのは困難です。そのため、有益な分析結果を導くためには、定性データを組み合わせた調査が必要です。
また、NPS®単体ではその意味を十分に理解することが難しいという課題もあります。スコアの良し悪しを判断するには、過去の調査結果や競合他社、業界平均と比較することが重要です。このように他のNPS®との比較によって、初めて自社の立ち位置や改善の必要性を把握できます。
さらに、日本人の傾向として、回答が中間のスコア(7や8)に偏りやすいという特性があります。これは文化的背景に起因するもので、日本人には極端な評価を避ける傾向があるためです。
NPS®はシンプルな質問で効率的に情報収取できる調査手法ですが、このような課題に注意する必要があります。
NPS®分析の持つ課題は、調査内容や実施方法を工夫することで、解決や改善することが可能です。主な解決策や改善方法は、以下の通りです。
ここまで、NPS®分析について詳しく解説してきました。
NPS®はシンプルな質問でありながら、顧客ロイヤルティを測定し、業績につながる重要な指標を得られる調査手法です。NPS®分析をマーケティング戦略の参考情報とすることで、顧客ロイヤルティを的確に把握した戦略を立案することができます。
しかし、NPS®から具体的改善策につながる情報を得るには、調査設計や分析手法に関する相応のノウハウが求められます。このような際には、NPS®に関する専門家の協力を得て、自社の課題や目標に合った調査設計を行うことが大切です。
この記事で紹介した内容を参考に、ぜひ自社でNPS®分析を活用してみてください。
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顧客満足度調査(CS調査)
顧客満足度調査(略してCS調査)とは、自社の商品ユーザーやサービス利用者から評価・改善点などのアドバイスをいただくための調査です。
顧客が満足する商品・サービスを提供し続け、既存顧客の満足度を維持するだけでなく、新規顧客獲得に結びつけるためにも非常に重要な役割を果たします。また、サービス業などでは顧客体験の向上にむけた人材育成のために、現状把握や満足度の高い接客ノウハウの収集を目的として行うこともあります。CS活動の最終的なゴールは、単に満足度を向上させるだけでなく、顧客の「継続購買」や「推奨行動」といった「エンゲージメント」につなげることにあります。
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