
2025.02.20
社会調査におけるコーディング(≒アフターコーディング)とは?
社会調査※1では、アンケートやインタビューを通して大量のデータが集まります。これらのデータを分析し、有益な情報を得るためには、データを分類・整理することが重要で……
公開日:2025.02.10
本記事は、先日公開した「【アメリカ・中国・日本】動画の見せ方、FAの回答場所によって回答傾向は国ごとで異なる?」の続編となります。
引き続き、 グローバル市場において、調査手法や設問設計によってどんな影響を与えるか検証するため、今回は、大きく以下2点についての検証結果を紹介します。
・選択肢数の違いによる影響比較
・注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか?
まず「選択肢数の違いによる影響比較」や「注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか?」について調査するために、実際に行った概要が下表となります。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
調査目的 | 日本・米国・中国におけるアンケート回答実態を比較、回答精度を検証する。 海外調査において気を付けるべきポイントについての具体的事例を提示できるようにする。 |
|
調査概要 |
① マトリクス設問の回答傾向の違いを確認 →海外の方が両極につきやすいのか?ダミー設問の正答率は?など |
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② 動画設問の離脱率検証 →埋め込みの場合とURLリンクの場合で、離脱率に差があるのか? |
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③ 改ページ前にFAがあるケース、別ページでFAがあるケースで、記載の量や内容に差がでるのか? | ||
④ 選択肢数の違いによる影響比較 →日本と比べて、海外は選択肢が多いと選択率が落ちるのか? |
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⑤ 注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか? | ||
⑥ その他、調査品質に関わるデータに関して | ||
調査手法 | Webアンケート | |
対象者条件 | 性別 | 男性、女性 |
年齢 | 20~60代 | |
地域 | 全国 | |
その他条件 | スマートフォンまたはPCでアンケートを回答していること | |
回収数 | 本調査 | 800サンプル |
割付 |
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調査期間 | 2023年5月16日(月)~ 2023年5月19日(木) | |
調査機関 | 株式会社アスマーク(旧マーシュ) |
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選択肢数の違いによる影響を比較するため、まず下図のように2種類の設問パターンを用意しました。
左のQ11では、選択肢数が15個なのに対し、右のQ12では、選択肢数が30個となっています。
この設問をQ11の方を回答していただいた方をグループ①、Q12を回答していただいた方をグループ②としました。
また、順番の影響も見るため、ランダマイズをかけずに実施したので、上から旅行、読書、映画鑑賞といった順番は変化せず回答いただきました。
その結果が下図です。
この図は、上から15個までの部分で比較した図となります。
上部はグループ①の結果となり、中部はグループ②、下部(黄色の部分)はグループ①とグループ②の差分を算出した数値になります。
例えば、「旅行」を選択した人はそれぞれ以下となり、ここから読み取れるのは、若干グループ①の方が2%多く選択されたことがわかります。
グループ①全体「選択肢15個」:58.3% |
グループ②全体「選択肢30個」:56.3% |
⇒差分(①~②): 2.0% |
この選択肢15個の中で見ても、後半にいくと、その差の開きが多かった選択肢が増えてくるというのが、「差分(①~②)の全体」の数値を左から右に見ていくと、わかります。
また、一番下に「最も大きな差」という項目がありますが、これは「差分(①~②)」の各国の中で、一番大きな差を出力した数値となります。
これを見てみると、「グルメ・食べ歩き」が9.8pt、「筋トレ・ダイエット」が5.2pt、「散歩・ウォーキング」が8.7ptなど5ptを超える選択肢が多く見受けられ、 後半の選択肢が選ばれにくかった可能性が考えられます。
また、上記は選択肢15個の中で言えるとことについて解説しましたが、右端にある「選択肢30個で計算した平均」にも注目してみましょう。
これは、項目の通り選択肢30個での数値となります。
そして、この左にある「平均」は選択肢15個で計算した平均となり、グループ②の15個の平均と30個の平均は、それぞれ5.2、7.3でした。
選択肢が倍になっているにも関わらず、平均は1.5倍以内に収まりました。
つまり、選択肢が15個増えても2~3個しか選ばれる数が増えていないのであれば、選択肢が選ばれる確率自体が減少したのではないかと考えられます。
※この調査において、「後半の選択肢があまり興味のないものが多かったのでは?」という疑問もあるかと思います。
事前に得たデータを基に、人気のあるものをピックアップし、それを前後に均等に振り分けていくようなやり方で選択肢を用意したので、その前半・後半の選択肢で興味・関心に大きな差が生まれないよう調整した中での結果となります。
そして、3か国それぞれの「差分(①~②)」を見てみると、9~14の選択肢において、5ptを超える差分がある選択肢数は以下となります。
日本:4つ |
米国:2つ |
中国:2つ |
やや日本の方が、より選択が減りそうな印象を受けますが、断定はできません。
続いて、グループ②のデータをより詳細化したものが下図となります。
左から右へと30個の選択肢が並んでおり、上の方ではそれぞれの選択率を棒グラフで表しています。
この棒グラフからも前半の方が選択する可能性が高そうなのが見てとれます。
この要因として、画面のスクロールが発生して、視認性が落ちるということが、1つ言えることだと考えています。
※例えば、「スポーツ観戦」など、前半で提示されていたらもっとスコアが伸びたことが予想されます。
以上のことから、選択肢を用意する際には「ランダマイズをする」、「選択肢は本当に必要なものだけにする」ということに注意しましょう。
ちなみに、3か国で比較すると、「米国」や「中国の20~30代女性」で興味をもっている内容が多い傾向がみられることがわかります。
上図では下部分の2か所に赤で囲っている部分がありますが、それをみることで、他の項目と比べ、オレンジが多いことがわかり、「興味をもっている内容が多い」ということがわかります。
注釈を読むのか調査するため、まず下図のような設問を用意しました。
上図の左はPCでの画面、右はスマホの画面となり、青文字で「※この注釈を読んだ方は、その他の自由記述欄に 読んだ と記入してください。」と記載がある設問となります。
この調査結果が下図となります。
この図では、「全体」、「国別」、「デバイス×国別」、「アンケート回答時間」に分けて、選択率を記載している図となります。
まず、「全体」と「国別」を見てみると、「読んだ」を記載があったのは約40%となり、注釈に従ったのは中国>日本>米国の順となりました。
つまり、注釈に従ったのは、「中国」が一番多かったことがわかりました。
その「中国」について、「デバイス×国別」で見てみると、PCは約63%記載があったのに対し、スマホは約25%と約38%の差があり、他国と比べ顕著な差が見られました。
また、今回の場合、設問文と選択肢の内容から何を答えるべきなのかイメージできてしまい、注釈が読まれにくかった可能性も考えております。
そのため、「多くの方が読まないで回答をしている」や「文章を読まない」という話ではないと考えています。
ここまで、「選択肢数の違いによる影響比較」や「注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか?」について、検証結果を紹介してきました。
「選択肢数の違いによる影響比較」では、後半の選択肢が選ばれにくかった可能性があり、選択肢を用意する際には「ランダマイズをする」、「選択肢は本当に必要なものだけにする」ということに注意した方が良いことを示唆しました。
また、国別で見ると、今回のテーマと異なりますが、「米国」や「中国の20~30代女性」で興味をもっている内容が多い傾向がみられることがわかりました。
そして、「注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか?」では、注釈を読んで、従ったのは「中国」が1番であることがわかりました。
また、その「中国」では、PCが約63%の記載、スマホが約25%の記載となり、他国と比べデバイスによる違いが顕著なことがわかりました。
ぜひ、この記事の結果を参考にして、調査の質を高めていきましょう。
次回は「【アメリカ・中国・日本】調査品質(負担を感じる内容など)は国ごとで異なる?」について紹介します。
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調査票設計もローカライズをすべきではないか?と疑問に持ちます。例えば『日本人は「どちらでもない」などの中間回答の割合が多いのではないか?』や、『注釈を読む/読まないなどの割合は、国別で差があるのではないか』などの仮説がありました。
そこで今回は、本調査レポートの企画~設計を行うリサーチャーが、3か国におけるアンケート回答実態を実際の調査事例から比較解説します。
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