公開日:2025.02.17

【アメリカ・中国・日本】調査品質(負担を感じる内容など)は国ごとで異なる?

  • 定量調査

本記事は、先日公開した「【アメリカ・中国・日本】選択肢数の違いや注釈を読む・読まないは国ごとで異なる?」の続編となり、この検証シリーズも今回が最後となります。
 
引き続き、 グローバル市場において、調査手法や設問設計によってどんな影響を与えるか検証するため、今回は 「その他、調査品質に関わるデータに関して」についての検証結果を紹介します。
 

 
 

調査概要について

まず「その他、調査品質に関わるデータに関して」について調査するために、実際に行った概要が下表となります。
 

表 調査概要
項目 内容
調査目的 日本・米国・中国におけるアンケート回答実態を比較、回答精度を検証する。
海外調査において気を付けるべきポイントについての具体的事例を提示できるようにする。
調査概要 マトリクス設問の回答傾向の違いを確認
 →海外の方が両極につきやすいのか?ダミー設問の正答率は?など
動画設問の離脱率検証
 →埋め込みの場合とURLリンクの場合で、離脱率に差があるのか?
改ページ前にFAがあるケース、別ページでFAがあるケースで、記載の量や内容に差がでるのか?
選択肢数の違いによる影響比較
 →日本と比べて、海外は選択肢が多いと選択率が落ちるのか?
注釈をちゃんと読むのか?海外の方が読まないのではないか?
その他、調査品質に関わるデータに関して
調査手法 Webアンケート
対象者条件 性別 男性、女性
年齢 20~60代
地域 全国
その他条件 スマートフォンまたはPCでアンケートを回答していること
回収数 本調査 800サンプル
割付 図 割付
調査期間 2023年5月16日(月)~ 2023年5月19日(木)
調査機関 株式会社アスマーク(旧マーシュ)

 

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その他、調査品質に関わるデータに関して

調査品質に関して調査するため、下図の設問を用意しました。
 

図 調査品質を確認するための設問
図 調査品質を確認するための設問

 
この設問に回答いただくことで、アンケートの回答に対する考えや行動がわかります。そして、ここでは、一番下に「ここでは「あまりあてはまらない」をお選びください」というトラップ用のダミー設問を用意し、しっかり読んで、理解し、ちゃんと回答できるかどうかをチェックします。
 
その回答結果(トラップ用のダミー設問は除く)が下図です。
 

図 トラップ用のダミー設問以外の傾向
図 トラップ用のダミー設問以外の傾向

 
ここで注目していただきたいのは、左のほうで赤い点線で囲っている「設問文の注釈もしっかり読んで回答している」の72.8%という数値です。
一方で、先日の記事で「約40%が注釈に従った」といった内容を紹介しました。そのため、これらのことから、読む必要を感じる注釈でなければ読まれないと理解したほうが良いことが考えられます。
 
続いて、除いていたトラップ用のダミー設問についての結果が下図です。
 

図 トラップ設問でのご回答率
図 トラップ設問でのご回答率

 
指示の通り「あまりあてはまらない」を選んだのは8割強、2割弱が誤答となりました。
そのため、一部項目をしっかりと読んでいない方がいるということがわかります。
また、誤答に関して、「米国」の誤答率が他の国と比べ最も高い約27%となりました。
そして、ここでも中国は、PC回答とスマホ回答で誤答率に差がみられました。
 
そして、他にわかることとして、回答所要時間が短かった人ほど誤答率が高く、5分未満のケースでは3割以上が誤答となりました。
 

負担を感じる内容とは?

次に、品質関連の項目として、「負担に感じる内容」について尋ねました。
その結果が下図です。
 

図 負担に感じる内容に関する棒グラフ×クロス集計
図 負担に感じる内容に関する棒グラフ×クロス集計

 
この図から、日本は「質問数が多い」や「選択肢の数が多すぎる」、米国は「スマートフォンで回答しにくい画面デザイン」が他の国と比べ多いことがわかります。
また、中国はどの項目も基本的に選択率が低く、「特にない」が他の国と比べ多いです。
そんな中、相対的に見てみると、「あいまいなことを聞く質問」が高いことに気づきます。
 
この図からでは、わかりづらい部分があると思うため、コレスポンデンス分析を実施し、下図のように可視化しました。
 

図 負担に感じる内容に関するコレスポンデンス分析
図 負担に感じる内容に関するコレスポンデンス分析
 
このコレスポンデンス分析は、マーケティング活動の一環として、自社ブランドのポジショニングを把握するために使われたりする分析方法ですが、今回は国ごとの「負担に感じる内容」の傾向を把握するために用いた形になります。
 
そして、この結果を表形式にまとめたものが下記になります。

表 国ごとの「負担を感じる内容」
国名 負担を感じる内容
日本 ・表形式設問でチェック項目が多い質問がある
・選択肢の数が多すぎる など
⇒ボリューム系のものに負担を感じている
米国 ・スマートフォンで回答しにくい画面デザイン
・自由回答タイプの質問が多い など
⇒回答へのスムーズさを重視している
中国 ・あいまいなことを聞く質問がある
・回答に時間がかかる など
⇒回答へのスムーズさを重視しているが、米国とはやや性質が異なる

 
ここで注意が1つ必要です。
この散布図からでは、それぞれのn数がわからないため(相対的なプロットなため)、データの解釈が難しいことにあります。
そのため、クロス集計表とあわせてデータを読み解く必要があります。
 

負担を感じずに回答できるボリュームとは?

今度は、「負担を感じずに回答できるボリューム」を調査するため、下図のような質問をしました。
 

図 負担を感じずに回答できるボリュームを調査するための設問
図 負担を感じずに回答できるボリュームを調査するための設問

 
質問数や回答時間、選択肢数について数値を入力してもらう設問となっており、その結果が下図です。
 

図 今回の調査の負担感調査結果の性年代別グラフ
図 今回の調査の負担感調査結果の性年代別グラフ

 
結論、国ごとにやや違いがみられ興味深い結果となりました。具体的に、米国は丁寧に回答できる質問数の平均が36問と、他の国より多い結果となりました。
一方で、途中で離脱する人が一番多いのがアメリカという結果なので、最後まで回答してくれる方は、許容範囲の広い方が多く残るということかもしれませんし、こういう方ではないと最後まで残らないので、回収は難しい傾向にあるかもしれません。
また、中国は選択肢数が多くても丁寧に回答できる比率がやや他の国と比べ高い傾向にありました。
 
ここでも注意が必要です。例えば、アメリカで質問数の平均が36問となりましたが、そのボリューム感が『絶対』ということではありません。
精度を考えると、適切なボリューム感にする必要があるのは間違いないと思いますので、「海外だから多くて大丈夫」ということではないことに注意しましょう。
 

今回の調査の負担感

下図のように今回のアンケートの負担感についても伺いました。
 

図 今回の調査の負担感調査結果のグラフ
図 今回の調査の負担感調査結果のグラフ

 
今回の調査は、15問くらいの調査(途中マトリクス設問も含む)となりましたが、負担に感じなかった計は7割半を超え、負担に感じた計は1割強となりました。
そのため、調査設計として良い設計だと考えており、巨大マトリクスなどがなければ、もっと負担を感じないようになってくるとも考えます。
 
また、その内訳を国別で見てみると、日本と比べ、米国や中国は「負担と感じずに回答できた」の選択率が多い傾向にありました。
これは、先ほどの「負担に感じずに回答できるボリューム」に関する調査の米国や中国の許容度が日本よりも高いことから、関連するデータだと考えます。
 
このデータをもう少し細かく見ていきましょう。
下図は、国ごとに性年代別で比較した図となります。
 
 

図 今回の調査の負担感調査結果の性年代別グラフ
図 今回の調査の負担感調査結果の性年代別グラフ

 
日本と比べると中国や米国の場合、年齢が上がると「負担を感じるに回答できた」という選択率が増えるという傾向がみえました。
そのため、グローバル市場への調査に対して、年齢ごとに「負担を感じる」程度というのが異なることを意識して、設問内容や設問数、選択肢数を検討する必要があります。
 
 

まとめ

ここまで、「その他、調査品質に関わるデータに関して」について、検証結果を紹介してきました。
 
「アンケートの回答に対する考えや行動」の調査結果からは、読む必要を感じる注釈でなければ読まれないと理解したほうが良いことが考えられることと、トラップ設問に対して「米国」の誤答率が他の国と比べ最も高い約27%となったことがわかりました。
 
続いて「負担に感じずに回答できるボリューム」の調査結果からは、アメリカや中国の方が、日本と比べ許容度が高いことが見えてきました。
また、精度を考えると適切なボリューム感にする必要があることに注意が必要なことを示唆しました。
 
そして、「今回の調査の負担感」からは、やはりアメリカや中国の方が日本と比べ許容度が高いことが見える傾向がみられたのと、年齢が上がるにつれ許容度が高くなる傾向がみられました。
 
これらの結果からも、グローバル市場への調査は、その国の特性を理解しつつ、慎重に設計をする必要があることがわかります。
 
ここまで、以下全4回に分け、グローバル市場において、調査手法や設問設計によってどんな影響を与えるか検証をしてきました。

 
この検証を簡単にまとめると以下の表となります。
 

表 検証結果のまとめ
検証項目 内容
マトリクス設問 ・日本と比べ、中国とアメリカの方がチェック数の低下傾向が大きい
・巨大マトリクスはそもそも使わない方が良い
両極選択肢の選択 ・7段階評価において、両極を選びやすいのはアメリカ
・7段階評価において、「どちらともいえない」を選びやすいのは日本
動画 ・アメリカは、『URLリンクパターン』の離脱率約30%と群を抜いている
・中国は、『URLリンクパターン』の離脱率約15%が離脱
・海外調査ではURLリンクは非推奨がオススメ
FA ・意見と理由FA(自由回答)の組み合わせは同一ページがオススメ
選択肢数 ・選択肢をランダマイズしない場合、前半の方が選択する可能性が高い傾向がある
・選択肢を用意する場合は、「ランダマイズ」「選択肢は本当に必要なものだけにする」
注釈 ・注釈に従ったのは『中国>日本>アメリカ』の順
・中国のデバイス別では、PCは約63%、スマホは約25%と、他国と比べ顕著な差があった
トラップ設問 ・「米国」の誤答率が他の国と比べ最も高い約27%となった
負担を感じる内容 ・日本と比べ中国とアメリカの方がより許容度が高い傾向にある
・精度を考えると適切なボリューム感にする必要がある
負担を感じずに回答できるボリューム ・日本と比べ中国とアメリカの方がより許容度が高い傾向にある
・日本と比べ中国とアメリカの方がより年齢が上がるにつれ許容度が高くなる

 
いずれも興味深い結果が出たと考えており、これらの検証結果が調査の質を高めていく参考となれば幸いです。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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