公開日:2024.10.15

定性調査手法のトレンドと成功させるためのポイント

  • マーケティングリサーチHowto

今日のビジネス環境は、かつてないスピードで変化しています。情報技術の進化やグローバル化など、企業を取り巻く状況はめまぐるしく変化し、それに伴い消費者の価値観やライフスタイルも多様化・複雑化しています。従来型の市場調査では、アンケート調査や統計データの分析が中心でしたが、このような変化の激しい時代においては、消費者の深層心理や行動原理を深く理解することが不可欠です。
 
そこで注目されているのが「定性調査」です。定性調査とは、インタビューや観察などを通して、数値化できない消費者の意識や行動に関する情報を収集する調査手法です。限られた数の対象者から得られる情報は、統計的な分析には向いていませんが、行動の裏にある心理や、まだ顕在化していないニーズを深く理解する手がかりとなります。
 
本記事では、そんな「定性調査」について、調査手法の傾向やオンラインインタビュー、重要なことについて紹介していきます。
 
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定性調査手法別の傾向

従来の定性調査といえば、対面式のグループインタビューが主流でした。しかし、近年はオンラインでの調査の普及に伴い、その手法も大きく進化しています。具体的には、下図『日本マーケティング・リサーチ協会の経営業務実態調査による調査手法別の売上構成比』をご覧ください。
 

調査企画の手順
表 従来型調査手法別 売上構成比1

 
参考元 経営業務実態調査の第43回(2017年度) 経営業務実態調査から第49回(2023年度)経営業務実態調査の各PDF
 
この図から、売上の構成比として量的調査(以下、定量調査という)の割合が減少傾向にあり、質的調査(以下、定性踏査という)の割合が増加傾向にあることがわかるのですが、よりコンパクトにし、グラデーションを付けたのが、下図です。
 

従来型調査手法別 売上構成比2
表 従来型調査手法別 売上構成比2

 
こうすると、定量調査が減少傾向にあり、定性調査が増加傾向にあることがわかります。これには、定量調査と定性調査を組み合わせる需要もあると考えております。定量的なデータには、ログデータや購買データ、位置情報、SNSデータ、ビッグデータなどあり、消費者の行動や興味関心を分析するための貴重な情報源となりますが、このデータだけでは、なぜその商品を選んだのか、なぜその行動をとったのか、といった行動の背景にある心理や理由はわかりません。
 
そこで、定量的なデータと定性調査を組み合わせることで、より深い消費者理解が可能になるため、「消費者の生の声を伺おう」といったニーズが発生し、定性調査が増えてきていると考えております。
 
そして、定性調査をよりフォーカスしていくため、定性調査を100%とした場合の定性調査手法別の売上構成比を下図用意しました。
 

調査企画の手順
表 アドホック調査の質的調査内訳による売上構成比(質的調査を100%とした場合)

 
この表から、グループインタビューとデプスインタビューの傾向がより分かります。グループインタビューの割合は減少傾向にあり、デプスインタビューは増加傾向にあります。なお、この表は定性調査を100%とした場合の表となり、数値が大きく見えるかと思うので取扱いや感じ方には十分に注意が必要です。実際の構成比は最初に紹介させていただいた「表 従来型調査手法別 売上構成比1」をご参照ください。
 
また、ここで簡単に定性調査の各手法について下表にて、簡単に紹介します。
 

表 調査手法ごとに簡単解説
調査手法 内容
グループインタビュー(FGI) 調査対象者を6人程度集め、モデレーターと呼ばれる司会者が調査テーマについて質問を行い、自由に発言をしてもらうことでさまざまな意見・情報を収集する調査手法です。
デプスインタビュー(IDI) 対象者とインタビュアーによる1対1の面談式で実施する調査手法です。
オンラインインタビュー インターネットを介してオンラインで行うインタビューです。従来の対面で行われていたインタビュー調査やエスノグラフィ調査などをオンライン上で実施することで、地方在住の方など出現率の低い調査対象者に実施することが可能です。また、会場費や交通費などの必要経費を削減することが出来るのでコスト面での負担も大いに軽減できます。
エスノグラフィ調査 対象者の自宅・職場等を直接訪問して、生活者の行動を「見る」「観察する」調査手法です。
MROC MROCは、Marketing Research Online Communityの略称となり、対象者同士のコミュニケーションという刺激から、知りたい事を聞く調査ではなく、 知るべき事を見つける調査手法です。

 

Tips:各従来型調査手法別 売上構成比に関する参考資料一覧
 
●第43回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_43.pdf
 
●第44回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_44.pdf
 
●第45回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_45.pdf
 
●第46回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_46.pdf
 
●第47回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_47.pdf
 
●第48回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_48.pdf
 
●第49回経営業務実態調査
https://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_49.pdf

 
 

オンラインインタビュー

ここで、定性調査の中でもイマドキな、オンラインでのインタビュー調査について、紹介します。この調査は、時間や場所の制約を受けずに実施できるため、従来よりも広範囲の対象者から情報を収集することが可能です。また、オンラインならではの特性として、自宅などリラックスできる環境でインタビューを受けることができるため、より本音に近い意見を引き出しやすいというメリットもあります。
 
さらに、オンラインインタビューでは、従来のインタビュー形式にとらわれない柔軟な設計が可能になっています。例えば、インタビュー中に商品を試用してもらったり、日常生活の様子を撮影した動画を共有してもらったりするなど、よりリアルな行動や意識を捉えるための工夫が凝らされています。
 
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定性調査で重要なこと

定性調査は、その性質上、調査設計や分析の仕方によって結果が大きく左右される可能性があります。そのため、調査を成功させるためには、クライアント企業とリサーチ会社が密に連携し、目的や課題を共有することが何よりも重要です。
 
企業が定性調査に求めることは、単なる現状把握や意見収集に留まりません。「インサイト」という言葉が一般的になったように、企業は消費者の行動や意識の奥底にある、まだ言葉になっていない潜在的なニーズや欲求を明らかにしたいと考えています。そのため、クライアント企業は、リサーチ会社に対して、現状の課題や調査の目的を明確に伝えるだけでなく、どのような商品やサービスを開発したいのか、どのような未来を描いているのか、といったビジョンも共有することが重要です。
 
リサーチ会社は、クライアント企業から提供された情報を基に、最適な調査対象者の選定、インタビュー内容の設計、分析方法などを検討し、調査結果から意味のある示唆を導き出す役割を担います。
 
 

まとめ

本記事では、定性調査の手法とその重要性について、トレンドと共に解説してきました。
 
変化の激しい現代社会において、企業が生き残っていくためには、常に変化を察知し、消費者のニーズを先取りしていくことが重要です。そういった中で、定性調査は消費者の深層心理や行動原理を理解することに関して、活躍する調査になります。従来の手法にとらわれず、オンラインインタビュー調査などを活用しながら、調査設計を行うことで、より精度の高い情報を収集し、新たなビジネスチャンスへとつなげることが可能になります。
 
消費者の本音や潜在ニーズを引き出し、ビジネス戦略に反映させるために、定量データとの組み合わせも含めて、今後さらに重要性を増していく定性調査を活用し、消費者理解を深めていくことが求められるでしょう。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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