公開日:2024.09.25

サンプルサイズとは?計算方法やサイズの決め方など基本から解説

  • マーケティングリサーチHowto

調査やアンケートにおいて、限られた時間や予算の中で、調査対象全体を調べることは難しい場合がほとんどです。そこで、重要になるのが、サンプルサイズです。適切なサンプルサイズを設定できれば、調査結果の信頼性を高めながら、調査にかかる時間やコストを節約できます。
 
この記事では、サンプルサイズの重要性とともに、適切なサンプルサイズの決め方について解説します。
 
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サンプルサイズとは

サンプルサイズとは
図 サンプルサイズとは

 
サンプルサイズとは、調査や研究において、母集団(調査対象全体)から抽出する標本の大きさ、つまり実際に調査を行う対象の数のことです。例えば、全国の高校生の意識調査を行う場合、母集団は全国の高校生全体となります。しかし、実際に全ての高校生を対象として調査することは、現実的ではありません。そこで、このような場合は、一部の高校生を選び出して調査します。この選ばれた高校生たちが標本であり、その人数がサンプルサイズです。
 
適切なサンプルサイズの設定は、調査結果の信頼性に大きく影響する要素です。サンプルサイズが小さすぎると、調査結果が偏り、母集団全体の傾向を正確に反映できない可能性があります。逆に、サンプルサイズが大きすぎると、調査に時間やコストがかかりすぎるため、効率が悪くなります。そのため、サンプルサイズは、調査の目的や予算、許容できる誤差などを考慮して決定することが大切です。多くの場合は、統計学的な計算を用いて、必要なサンプルサイズを計算します。
 

サンプルサイズに関わる統計用語の簡単解説

ここで、サンプルサイズを理解するために必要な統計用語について解説します。
 

表 サンプルサイズを理解するために必要な統計用語一覧
統計用語 内容
母集団 母集団とは、調査や研究において分析の対象となる全体の集まりを指します。例えば、日本に住んでいる高校生を調査する場合、日本に住んでいる全高校生が母集団に該当します。
母集団のサイズ 母集団のサイズとは、調査対象となる全体の人数や個体数のことを指します。例えば、ある都市の全住民を対象に調査を行う場合、その都市の人口が母集団のサイズになります。
サンプル(標本) サンプル(標本)とは、調査や研究において、母集団から抽出された一部の個体や要素を指します。サンプルは、母集団全体を直接調査することが難しい場合に、その代表として選ばれ、母集団の特性を推測するために使用されます。
サンプルサイズ(標本サイズ) サンプルサイズ(標本サイズ)とは、母集団から抽出されるサンプルの数を指します。サンプルサイズが適切であれば、調査結果の信頼性や精度が向上します。逆に、サイズが小さすぎると誤差が大きくなり、結果が母集団全体を正確に反映しない可能性があります。
割付 割付とは、調査を実施する際に、事前に定めたセグメント毎にサンプルの数を配置する手法を指します。例えば、「『均等割付』の方法を用いて、20代から50代の各年代にわたる男女から、それぞれ均等に100名ずつ、合計800名のアンケート回答を得る計画を立てる」といった流れになります。

 
 

サンプルサイズとサンプル数

マーケティングリサーチや統計において、よく耳にする「サンプルサイズ」と「サンプル数」。どちらも調査対象の一部を表す言葉ですが、その意味合いは異なります。この違いを正しく理解することは、調査結果の解釈や分析において、とても重要です。
 
ここでは、サンプルサイズとサンプル数の違いとともに、それぞれの概念が調査結果にどのように影響するかを解説します。
 

サンプル数とは

サンプル数とは、調査や実験において、母集団から抽出されたサンプル(標本)のグループの数、言い換えれば、標本抽出を何回行ったかを表します。
 
例えば、全国の大学生の意識調査を行う際に、各都道府県から1,000人ずつ学生を抽出して調査するとします。この場合、サンプル数は都道府県の数となる47です。それぞれの都道府県から抽出された1,000人の学生たちは、一つのサンプルグループを形成します。
 
サンプル数は、調査の設計や分析において、とても重要な要素です。特に、複数のグループ間で比較する場合や、地域差、年齢差、性別などの影響を考慮したい場合には、サンプル数を増やすことで、より詳細な分析が可能になります。ただし、サンプル数を増やすことは、調査にかかる時間やコストの増加にも繋がります。そのため、調査の目的や予算、そしてサンプルサイズとのバランスを考慮しながら、適切なサンプル数を設定することが大切です。
 

サンプルサイズとサンプル数の違い

調査や実験において、サンプルサイズとは、抽出された標本の大きさ、つまり、1つのグループに含まれる個体数を指します。例えば、ある高校の生徒の意識調査において、3年生から50人を抽出して調査する場合のサンプルサイズは50です。
 
一方、サンプル数は、標本抽出を何回行ったか、つまり、いくつのグループに分けて調査を行ったかを表します。先ほどの高校の例で、1年生、2年生、3年生からそれぞれ50人ずつ抽出して調査を行う場合、サンプル数は3です。それぞれの学年から抽出された50人の生徒たちは、一つのサンプルグループを形成します。
 

表 ある高校の生徒の意識調査例のサンプルサイズとサンプル数のイメージ
学年 抽出数 サンプルサイズ サンプル数
1年生 50人 50 3
2年生 50人 50
3年生 50人 50

 
つまり、サンプルサイズは1グループ内の個体数を表し、サンプル数はグループの数を表すという違いがあります。サンプルサイズとサンプル数はそれぞれ異なる概念であり、調査設計や結果の解釈において、適切に区別して扱うことが大切です。
 
 

サンプルサイズは適切な設計が必要

調査や研究において、サンプルサイズの適切な設計は、その結果の信頼性と正確性に直結する重要な要素です。サンプルサイズが小さすぎると結果に偏りが生じやすく、母集団を正確に反映できない可能性があります。その一方で、サンプルサイズが大きすぎると調査に関わるコストや時間が増大し、調査の費用対効果が大きく低下します。
 
そのため、サンプルサイズは、統計的な有効性や調査費用を考慮しながら、適切に設定することが必要です。
 

割付によるサンプルサイズの考え方

割付によるサンプルサイズの設計は、調査や実験において、異なる条件やグループにサンプルを正しく割り当てるための重要なプロセスです。
 
例えば、新薬の効果を検証する実験では、被験者を新薬投与群と偽薬投与群に分けますが、それぞれのグループに適切な数のサンプルを割り当てる必要があります。この際、各グループ間でサンプルサイズに偏りがあると、結果の信頼性を損なう可能性があります。例えば、新薬投与群のサンプルサイズが極端に少ないと、偶然の結果によって新薬の効果が過大評価や過小評価される可能性が高まります。そのため、基本的には各グループに均等な数のサンプルを割り当てる「均等割付」を行うのが望ましいです。ただし、母集団における特定の属性(性別、年齢層など)の割合が偏っている場合には、均等割付では偏りが生じる可能性があります。このような場合には、母集団の構成比に合わせてサンプルサイズを調整する「層別割付」が有効です。また、割付を行う際には、それぞれのグループにおいて、統計的な信頼性を得られる十分なサンプルサイズを確保することが重要です。そうすることで、より客観的で信頼性の高い結論を導き出すことができます。
 
 

サンプルサイズを決めるまでのステップ

適切なサンプルサイズの決定は、調査や実験から信頼性の高い情報を得るための重要な要素です。代表的なサンプルサイズ決定のステップは、以下の通りです。
 

  1. 調査や実験の目的を明確にする
    これから実施する調査や実験で何を明らかにしたいのか、どのような結論を導き出したいのかを明確に定義します。これにより、調査結果に必要な精度や信頼度を判断できます。
  2. 母集団を定義する
    調査対象となる集団全体(母集団)を定義します。例えば、全国の大学生、特定の商品利用者、特定の疾患を持つ患者など、具体的な範囲を定めます。
  3. 必要な精度と信頼性を設定する
    調査結果について、許容できる誤差範囲(精度)と、結果が偶然ではないと確信できる確率(信頼性)を設定します。一般的には、誤差範囲は5%以内、信頼水準は95%が目安とされます。
  4. 統計的手法を選択する
    調査や実験の分析方法に応じて、適切な統計的手法を選択します。これにより、サンプルサイズの計算に必要な情報が決まります。
  5. サンプルサイズを計算する
    設定した精度、信頼性、統計的手法に基づいて、必要なサンプルサイズを計算します。専用の計算ツールや統計ソフトを利用すれば、比較的簡単に計算できます。
  6. 実現可能性を検討する
    計算されたサンプルサイズが、時間やコスト制約の中で実現可能かどうかを検討します。必要に応じて、精度や信頼性を調整します。
  7. サンプル抽出方法を決定する
    母集団から偏りなくサンプルを抽出する方法を決定します。無作為抽出や層化抽出など、状況に応じた適切な方法を選択します。

 
これらのステップを踏むことで、調査や実験の目的に合致し、統計的な信頼性を確保できるサンプルサイズを決定できます。
 
 

サンプルサイズの計算方法

サンプルサイズの計算は、統計的な信頼性と精度を確保することが大切です。計算には、主に以下の要素が関わっています。
 

  • 信頼水準
    信頼水準(信頼度、信頼係数とも言う)とは、調査や実験の結果が、どの程度の確率で母集団の正しい値を捉えているかを示すものです。一般的には95%や99%といった高い信頼水準が設定され、区間推定において95%信頼区間といった表現もされます。信頼水準が高いほど、必要なサンプルサイズは大きくなります。
  • 誤差範囲
    誤差範囲とは、調査や実験の結果が母集団の正しい値からどの程度ずれている可能性があるかを示すものです。通常、±3%や±5%が設定されます。誤差範囲が小さいほど、調査の精度が高まりますが、必要なサンプルサイズも大きくなります。
  • 標準偏差
    標準偏差は、データのばらつき具合を表す指標です。母集団の分布が不明な場合、0.5(1/2)を使うことが一般的です。標準偏差が大きいほど、データのばらつきが大きく、必要なサンプルサイズも大きくなります。
    これらの要素を基に、サンプルサイズ(n)を計算するための式は以下のようになります。

    サンプルサイズ(n)を計算するための式
    図 サンプルサイズ(n)を計算するための式

    ※Zは信頼水準に対応するZ値、pは標準偏差(一般的には0.5を使用)、eは誤差範囲です。参考までに、一般的な信頼水準95%、誤差範囲±5%、標準偏差0.5の場合、必要なサンプルサイズは385となります。

 
 

出現率調査とは

アンケート調査の信頼性を確保するためには、あらかじめ設定したサンプルサイズを満たすだけの回答を集めることが必要です。しかし、アンケートの内容によっては、そもそも対象者がどの程度集められるのか、見当もつかない場合があります。
 
例えば、「20代女性で、週に3回以上コンビニを利用する人」を対象とした調査を実施したいとします。この場合、何人の20代女性にアンケートを実施すれば、必要なサンプルサイズを回収できるのか、正確に推測することは難しいでしょう。このような時、本調査の前に、対象者がどれくらいの割合で存在するのかを調べるのが「出現率調査」です。
 
出現率調査では、ある程度の人数に対して、簡単なスクリーニング調査を行います。これにより、調査対象となる条件を満たす人が、母集団全体の中でどれくらいの割合で存在するのかという出現率を推定できます。
 
本調査の前に出現率調査を行うことで、以下のメリットが得られます。
 

  • アンケート対象者数の推測
    出現率に基づいて、サンプルサイズを回収するために必要なアンケート対象者数を推測することができます。
  • 効率的な本調査実施
    出現率を把握できれば、アンケート対象者を過剰に増やしたり、サンプルサイズを回収するための追加調査などを防いだりすることができます。これにより、不要な時間やコストの発生を抑え、限られたリソースの中で効率的かつ効果的な調査を実施できます。

 

出現率とは

出現率とは、特定の属性や行動が、母集団の中でどれだけの割合で発生しているかを示す指標です。調査においては、母集団の中で特定の属性や行動が確認された割合を出現率として計算し、これを母集団全体に適用して推測を行います。
 
例えば先ほどの「20代女性で、週に3回以上コンビニを利用する人」を対象とした調査を実施したいと想定します。この場合、出現率調査で20代女性1,000人のうち300人が「週に3回以上コンビニを利用する」と回答した場合、その出現率は30%と推定されます。
 
 

まとめ

ここまで、サンプルサイズについて、解説しました。サンプルサイズは、統計的な信頼性と費用対効果を両立させるための重要な指標です。小さすぎると結果の信頼性が低くなり、大きすぎると時間やコストが膨らんでしまいます。
 
適切なサンプルサイズを設定するためには、調査や実験の目的、許容できる誤差範囲、信頼水準などを考慮し、統計的な手法を用いて計算する必要があります。また、事前の出現率調査により、効率的にサンプルサイズを回収するための取り組みも重要です。
 
今回の解説を通して、サンプルサイズに関する理解を深め、統計的に信頼性があり、かつ効率的な調査や実験を実施していきましょう。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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