公開日:2024.12.11

社会調査におけるインターネット調査とは?

  • マーケティングリサーチHowto

現代社会において、情報技術の急速な進展は私たちの日常生活のみならず、社会調査の手法にも大きな変革をもたらしています。この社会調査とは、行政期間や大学、自治体、地域コミュニティなどの様々な組織や団体で行われており、政策の立案や住民が抱えている問題の把握などに活用されている調査方法になります。そんな社会調査において、インターネットの普及により、従来の紙ベースや対面での調査方法に代わる新たなアプローチとして、インターネット調査が注目を集めています。
 
この記事では、社会調査におけるインターネット調査の役割や特徴などについて、詳しく解説します。
 

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社会調査とは?

社会調査とは、社会現象や人々の行動、意識を体系的かつ科学的に収集・分析する手法です。アンケートやインタビュー、観察など多様な方法を用いてデータを集め、統計的手法によって分析することで、社会の実態や傾向を明らかにします。
 
ここで得られた調査結果は、政策立案や企業戦略、学術研究など幅広い分野で活用されています。
 
社会調査の主な意義は、客観的なデータに基づいて社会問題を理解し、解決策を提案することにあります。また、調査結果は意思決定の参考情報となり、より良い社会を築くための重要な基盤となります。
 

 
 

社会調査におけるインターネット調査とは?

インターネット調査とは、インターネットを通じて調査対象者に質問をし、回答を収集する調査方法です。Webサイト上のアンケートフォームやメール、SNSなどを利用して行われ、近年、インターネットの普及に伴い、社会調査においても重要な役割を担うようになってきました。
 
インターネット調査は、社会調査の様々な分野で活用されています。例えば、学術研究では社会現象の分析や世論調査、行動調査などに、市場調査では製品開発や顧客満足度調査、市場動向調査などに利用されています。
 
現在、インターネット調査は社会調査において欠かせない手法であり、その重要性は今後ますます高まっていくと考えられます。
 

インターネット調査の特徴

インターネット調査は、WEB調査、オンラインサーベイ、インターネットリサーチなど様々な呼び方がありますが、主に量的調査(定量調査)として用いられます。アンケート画面をWeb上に作成し、調査対象者がインターネットを通じてアクセスし回答します。
 
従来の郵送調査や訪問調査と比べて手間が少なく、コストを抑えつつ迅速にデータを収集できる点が大きな特徴です。また、リアルタイムでのデータ集計や分析が可能なため、「安く、素早く、手軽に」調査を実施できることから、量的調査(定量調査)の中で最も活用されている手法の一つとなっています。
 

インターネット調査のクローズ型とオープン型とは?

 
インターネット調査は、誰を調査対象とするかで大きく「クローズ型」と「オープン型」の2つの形式に分けられます。それぞれの形式の特徴を理解し、調査の目的に合った手法を選択することが重要です。
 
クローズ型調査とは、あらかじめ特定の調査対象者を定めておき、その人たちだけにアンケートを実施する形式です。例えば、企業が保有する顧客リストや、調査会社に登録しているモニターなどを対象に調査を行います。この形式では、対象者を絞り込むことで、特定の属性の意見や行動を深く分析できるというメリットがあります。また、回答者の質を担保しやすいため、信頼性の高いデータを得られるのも大きな利点です。
 
一方、オープン型調査とは、不特定多数のインターネットユーザーを対象にアンケートを実施する形式です。WebサイトやSNSなどでアンケートを公開し、誰でも自由に回答できるため、広範囲の意見を収集し、社会全体の動向を把握できます。また、クローズ型ではリーチしづらい新規顧客や潜在顧客など、様々な属性の人たちから意見を聞ける点もメリットです。
 
クローズ型とオープン型のどちらを選択するかは、調査の目的や対象者、予算などを考慮して決定する必要があります。特定の属性の意見を深く分析したい場合や、信頼性の高いデータを得たい場合は、クローズ型が適しています。一方、広範囲の意見を収集したい場合や、新規顧客や潜在顧客の意見を聞きたい場合は、オープン型が適しています。
 
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、調査目的に最適な形式を選択しましょう。
 

Tips:2つのアプローチ
社会調査には、大きく分けて量的調査と質的調査の2つのアプローチがあります。この記事で解説しているインターネット調査は「量的調査」に含まれます。一方で、質的調査の調査方法として、インタビュー調査があり、グループインタビューやデプスインタビューなどがあります。
詳しくは、下記コラムで紹介しております。

<関連コラム> 社会調査における量的調査と質的調査とは?
この記事では、社会調査の基本的な知識として、量的調査と質的調査の特徴や違い、さらに両者を組み合わせることで得られる相乗効果について解説します。

 
 

インターネット調査のメリット

インターネット調査は、従来の調査手法と比較して多くのメリットがあり、近年、社会調査において広く活用されています。主なメリットは以下の点が挙げられます。

図 インターネット調査のメリット
図 インターネット調査のメリット

 

  1. 低コスト
    インターネット調査は、調査票の印刷・郵送費や調査員の派遣費用、会場費などが不要となるため、従来の調査方法に比べて大幅にコストを削減できます。
  2. 迅速な実施
    インターネットを通じて調査票を配信し、回答を回収するため、短期間で調査を実施できます。集計作業も自動化できるため、結果を迅速に得ることが可能です。
  3. 広範囲な対象者へのアクセス
    インターネット環境があれば、地理的な制限を受けずに、全国、あるいは世界中の調査対象者へアプローチできます。特定の地域に絞った調査も容易に行えます。
  4. レアな対象者へのリーチ
    インターネット調査では、従来の調査方法ではアクセスが難しかった、特定の条件を満たすレアな対象者(特定の趣味を持つ人や、特定の疾患を持つ患者など)にも、比較的簡単にリーチできます。
  5. 多様な機能による精度の向上
    調査内容を回答によって分岐させたり、選択されたものだけを表示させたりするなど、多様な機能を活用できます。これにより、未回答や矛盾、回答ミスなどを最小限に抑え、データの精度を高めることが可能です。
  6. 豊富な表現力
    画像、動画、Webサイトなどをアンケート中に見せられるため、回答者に具体的なイメージを与えながら、より質の高い回答を得ることが可能です。
  7. 画像データの収集
    アンケートの回答だけでなく、モニターが撮影した画像を収集することも可能です。例えば、商品の使用状況や生活の様子などを画像で把握できれば、より深い分析を行えます。

 
 

インターネット調査のデメリット

インターネット調査は多くのメリットを持つ反面、いくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解した上で、適切な対策を講じる必要があります。

図 インターネット調査のデメリット
図 インターネット調査のデメリット

 

  1. 回答者の偏り
    インターネット調査は、インターネットを利用できる環境にある人に限定されるため、回答者に偏りが生じる可能性があります。近年では、インターネット普及率の拡大に伴って偏りは解消されつつあるものの、高齢者層などの意見が反映されにくい傾向があります。
  2. 意識や行動の深掘りが難しい
    インターネット調査は、選択式の設問が中心となるため、回答者の意識や行動について、その理由や背景などを深掘りしづらいという側面があります。自由記述式の設問も可能ですが、複雑な心理や行動を深く理解するには不向きです。
  3. 回答の信憑性
    インターネット調査では、回答の信憑性を担保することが難しい場合があります。なりすましや虚偽の回答、いたずら目的の回答などが含まれる可能性もあり、データの質を低下させる可能性があります。
  4. セキュリティの問題
    インターネット調査では、個人情報や回答内容などの重要なデータを取り扱うため、セキュリティ対策をしっかりと行う必要があります。データの漏洩や改ざんを防ぐために、適切なセキュリティシステムを導入することが重要です。

 
 
これらのデメリットを克服するためには、他の調査手法を併用したり、調査設計を工夫したりするなどの対策が必要です。
 
 

インターネット調査の流れ

インターネット調査は、主に以下の流れに沿って進められます。

図 インターネット調査の流れ
図 インターネット調査の流れ

 

表 インターネット調査の流れ
STEP 内容
①マーケティング課題の理解と整理/調査企画 まずは、調査の目的を明確化します。どのような課題を解決したいのか、どのような情報を収集すれば課題解決につながるのかを具体的に検討します。その上で、課題に対する仮説を立て、それを検証するための調査計画を立案します。※サンプルサイズなども決定します。
②調査票のFIX 調査計画に基づき、具体的な質問項目を作成し、調査票を完成させます。質問文は、分かりやすく簡潔で、誤解を招かないように作成することが大切です。
また、選択肢を設ける場合は、網羅的で偏りがないように設定することが重要です。質問の順番や構成も考慮し、回答者がスムーズに回答できるよう配慮します。
③画面作成~配信・回収 作成した調査票をWebアンケートの形式に変換し、回答しやすい画面を作成します。その後、対象者へアンケートURLを配信し、回答を回収します。配信方法は、メールやSNSなど、対象者に合わせて選択します。
④データチェック・納品 回収した回答データをクリーニングし、不備がないかチェックします。その後、生のデータである「ローデータ」を納品します。必要に応じて、CSVやExcelなどの形式でデータを加工します。
⑤集計 収集したデータを基に、集計作業を行います。単純集計やクロス集計、回帰分析などを行い、データの傾向や特徴を把握します。集計結果は、表やグラフなどを用いて分かりやすく可視化します。
⑥レポーティング 集計結果を分析し、当初に設定した仮説が正しかったのか、あるいは間違っていたのかを検証します。その結果を踏まえ、課題解決に向けた提言や考察をまとめ、レポートを作成します。

 
これらの流れを踏まえ、それぞれの段階で適切な対応を行うことで、インターネット調査を効果的に実施し、信頼性の高いデータを得ることが可能です。
 
 

インターネット調査の費用

インターネット調査の費用は、調査内容や規模によって大きく異なります。主な要素としては、対象者数、設問数、調査対象者の属性、調査期間、依頼するサービス内容などが挙げられます。

例えば、当社(アスマーク)のモニター会員向け調査の場合、対象者100名に5問のアンケートであれば、4万円程度で実施できます。また、年齢や性別、ライフスタイルなどの条件設定を行った場合、対象者150名に8問のアンケートで、23万円程度という価格です。
詳しくは、下記ページで紹介しております。

<関連ページ> ネットリサーチ(WEBアンケート)の料金・費用
この記事では、アンケート設計の基本から、回答率をアップさせるための具体的なポイントまでを、分かりやすく解説します。

 
このように、調査対象者を絞り込むほど、また設問数が多いほど費用が高くなる傾向があります。さらに、単純集計やクロス集計、レポート作成などのサービスを依頼する場合も、追加費用が発生します。
 
 
インターネット調査の費用を抑えるためには、以下のポイントを検討しましょう。

  • 回答者を調査に必要な属性および人数に絞り込む
  • 設問数は必要な情報だけに絞り、設問数をできるだけ減らす
  • 複雑な条件分岐などを極力避ける
  • Googleフォームなどの無料ツールを活用する(ただし、無料ツールは機能が限られているため、注意が必要)

 
 

インターネット調査の注意点

インターネット調査を効果的に行い、信頼性の高いデータを得るためには、いくつかの注意点に留意する必要があります。
 
まず、調査の目的を明確にしましょう。何を明らかにしたいのか、どのような情報を収集したいのかを具体的に定めることで、本当に必要な質問項目に絞り込みます。
 
また、近年ではパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末など、様々なデバイスからインターネットにアクセスすることが一般的です。そのため、より多くの回答を得るには、スマートフォンやタブレット端末からも回答しやすいように、アンケート画面を設計しましょう。
 
特に、スマートフォンは画面が小さいため、誤操作が起きにくいUI(ユーザーインターフェース)になっているかの確認が重要です。ボタンのサイズや配置、フォントの大きさなどを工夫し、ストレスなく回答できる画面設計を確認してください。
 
さらに、調査対象者が理解しやすいように、質問文は分かりやすく簡潔な言葉で記述する必要があります。専門用語や略語の使用は避け、誰にでも理解できる言葉を使うように心がけましょう。もし専門用語を使う場合は、注釈などを加えて分かりやすく説明することが重要です。
 

Tips:アンケートの回答率アップのためのポイント
インターネット調査の注意点を押さえた上で、『設問の順番は論理的に構成する』、『回答する負担を減らす(調査項目数の調整)』、『謝礼を用意する』など行うことで回答率アップが見込めます。詳しくは、下記コラムで説明しています。

<関連コラム> アンケート設計の作り方とは?基本から回答率アップのポイントまでを解説
この記事では、アンケート設計の基本から、回答率をアップさせるための具体的なポイントまでを、分かりやすく解説します。

 

 
 

まとめ

ここまで、社会調査におけるインターネット調査について、その特徴やメリット・デメリットなどを解説しました。
 
今や、インターネット調査は、アンケート調査において最もポピュラーな手法の一つです。低コストで迅速に、広範囲のデータ収集が可能など、社会調査にも多くのメリットをもたらしています。その一方で、インターネット調査には、特有のデメリットも存在します。そのため、インターネット調査を成功させるには、メリット・デメリットの両方を理解し、適切な対策を講じることが大切です。
 
社会調査でインターネット調査を活用して、社会の実態を深く把握し、価値ある成果を得ていきましょう。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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