公開日:2024.12.03

VOCとは?マーケティングに活用した事例やメリットを紹介

  • マーケティングリサーチHowto

現代のビジネスにおいて、顧客の声を把握し、そのニーズに応えることは、企業の成長に欠かせない重要な要素です。顧客の声は、VOCと呼ばれ、商品やサービスの改善、顧客満足度の向上、そして企業の収益増加につながる貴重な情報源となります。
 
この記事では、VOCの基本的な概念から、マーケティングへの活用方法、成功事例などについて、解説します。

 
 

VOCとは?

VOCとは、「Voice of Customer」の略で、日本語では「顧客の声」を意味します。顧客が商品やサービスに対して抱く、あらゆる意見や感想、要望、期待、不満などがその対象です。従来、企業は売上データや市場調査といった定量的なデータに基づいて、意思決定を行うことが主流でした。しかし、現代においては、顧客(ユーザー)一人ひとりの生の声を収集し、そのニーズを深く理解することが、競争優位性(や差別化)を築く上で重要な要素となっています。
 
VOCは、アンケート調査やインタビュー、カスタマーサポートへの問い合わせ、ソーシャルメディア上の口コミなど、様々な形で収集されます。近年では、CoV(Customer’s View)と呼ばれる、顧客の行動履歴や購買データなどもVOCとしてとらえられ、分析に活用されるケースが増えています。
 
VOCを分析して得られた情報は、以下のようなシーンで活用されます。
 

表 VOCを分析して得られた情報の活用シーン
シーン 内容
商品企画(製品企画、サービス企画) 新商品の開発や既存商品の改良に、顧客の要望を反映させる。
顧客満足度向上 顧客の声に基づいてサービスを改善し、顧客ロイヤリティを高める。
プロモーション施策 顧客のニーズに合った効果的なプロモーションを展開する。

 
このように、VOCは企業のマーケティング活動において、とても重要な情報源となっています。
 
 

VOCをマーケティングに活用するメリット

VOCをマーケティングに活用することで、企業は以下のようなメリットを期待できます。

  1. 顧客ニーズの把握
    VOCを通して、顧客が本当に求めているもの、期待していること、不満に感じていることを深く理解できます。この情報を基に、顧客ニーズに合致した商品開発やサービス改善、マーケティング戦略を展開することが可能です。
  2. 顧客満足度の向上
    顧客の声を収集し、その意見を反映することで、顧客満足度を高められます。顧客は、自分の意見が商品やサービスに反映されていると感じると、企業への愛着や信頼感を抱き、リピーターへとつながる可能性が高まります。また、顧客の声は、ポジティブな声だけではなく、ネガティブな声も収集することが重要です。そうすることで、課題を見つけやすくなり、明確にすることができます。
  3. マーケティング施策への活用
    VOCを分析することで、効果的なマーケティング施策を立案できます。例えば、顧客がどのような情報チャネルで商品を知ったのか、どのような広告メッセージに共感したのかを把握できれば、より効果的な広告配信やコンテンツ作成が可能になり、マーケティング効果の向上に貢献します。
  4. 競争優位性の獲得
    顧客の声を積極的に収集・分析することで、競合他社に先駆けて顧客ニーズをとらえ、他社にはない独自の価値を提供し、競争優位性を構築できます。
  5. ブランドイメージの向上
    顧客の声に真摯(しんし)に耳を傾けることで、顧客との良好な関係を築けます。また、顧客とのエンゲージメントを高めれば、ブランドイメージが向上し、企業の長期的な成長につながります。

 
 

VOCをマーケティングに活用するまでの流れ

VOCをマーケティングに活用するには、適切な手順を踏むことが大切です。一般的な流れは以下の通りです。
 

図 VOCをマーケティングに活用するまでの流れのイメージ
図 VOCをマーケティングに活用するまでの流れのイメージ

 

表 VOCをマーケティングに活用するまでの流れの説明
STEP 内容
①目的の設定 まず、VOCを活用することで、どのような目的を達成したいのか明確化します。例えば、「顧客満足度を向上させたい」「新商品の開発に活かしたい」「ブランドイメージを向上させたい」など、具体的な目標を設定することが重要です。
②収集方法の決定 設定した目的に合わせて、適切なVOC収集方法を選択します。アンケート調査、インタビュー、ソーシャルメディアのモニタリング、カスタマーサポートへの問い合わせ分析など、様々な収集方法があります。
③VOCの収集 決定した方法に基づいて、顧客の声を収集します。この際、顧客が率直な意見を述べやすい環境をつくる、プライバシーに配慮するなど、様々な側面に注意を払う必要があります。
④VOCの分析 収集したVOCを分析し、顧客のニーズや不満、潜在的な要望などを明らかにします。テキストマイニングや感情分析などの手法を用いれば、大量のデータを効率的に分析できます。
⑤施策への反映 分析結果に基づいて、マーケティング戦略や商品開発、顧客対応などにVOCを反映させます。例えば、顧客の不満を改善したり、要望の多い機能を追加したりすることで、顧客満足度向上を目指します。
⑥効果測定 VOCを活用した施策の効果を測定し、アクセス数の増加、コンバージョン率の向上、顧客満足度スコアの上昇など、設定した目的に沿った指標で効果を評価します。
⑦PDCAサイクルの構築 上記の流れをPDCAサイクルとして継続的に運用し、VOCを収集・分析・活用することで、顧客ニーズの変化に対応したマーケティング活動を行います。

 
これらの手順を踏むことで、VOCをマーケティングに効果的に活用し、顧客中心のビジネス展開を実現できます。
 

VOCをマーケティングに活用するための収集方法

VOCを収集する方法は多岐にわたり、それぞれに特徴があります。VOCの収集方法を決める際は、目的や状況に合った選択をすることが重要です。
 
ここでは、代表的なVOC収集方法を5つ紹介します。
 

①アンケート
アンケート調査は、多くの顧客から効率的に情報を収集できる方法です。オンラインツールなどを活用すれば、手軽にアンケートを実施・分析できます。顧客満足度調査や新商品に関するニーズ調査など、幅広い目的に利用できます。

メリット
多数の顧客から定量的なデータを取得できる、比較的手軽に実施できる
デメリット
回答者のバイアスがかかりやすい、自由回答の分析に手間がかかる

 

②インタビュー
顧客に直接インタビューを行うことで、より深い情報を収集できます。顧客ごとのニーズや潜在的な要望を把握し、顧客の行動や心理を理解するのに役立ちます。

メリット
顧客の生の声を深く理解できる、質の高い情報を得られる
デメリット
費用と時間がかかる、サンプル数が限られる

 

③SNS
TwitterやInstagramなどのソーシャルメディアは、顧客の声をリアルタイムで収集できる貴重な情報源です。商品やサービスに対する意見、口コミ、評判などを把握できます。

メリット
リアルタイムな情報収集が可能、拡散力が高い
デメリット
情報の真偽を見極める必要がある、炎上リスクへの対応が必要

 

④メール・問合せフォーム
顧客からの問い合わせや意見は、貴重な情報源です。メールや問い合わせフォームを通して寄せられた意見は、顧客の具体的なニーズや不満を把握するのに役立ちます。

メリット
顧客の具体的な問題点を把握できる、個別対応が可能
デメリット
顧客からの能動的なアクションがないと情報を収集できない

 

⑤電話/コールセンター(コンタクトセンター)
顧客との電話対応は、直接的なコミュニケーションを通してVOCを収集できる方法です。顧客の感情や状況を把握し、迅速な対応を行うことで、顧客満足度向上に繋げられます。

メリット
顧客と直接コミュニケーションが取れる、状況に応じた対応が可能
デメリット
コストがかかる、オペレーターの対応品質にバラつきが生じやすい

 
これらの方法を適切に組み合わせることで、多角的な視点からVOCを収集でき、より深い顧客理解に繋げられます。

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VOCをマーケティングに活用するときの収集方法で発生しやすい課題

VOCは、顧客からの貴重な意見を収集できる効果的な手法です。しかし、そこで集められるデータには、様々な課題が発生しやすいのも事実です。
 
主な課題は、以下の通りです。
 

図 VOCの収集方法の課題
図 VOCの収集方法の課題

 

  1. 収集バイアス
    VOCはその収集方法によって、特定の属性や意見を持つ顧客からの回答に偏ってしまう可能性があります。例えば、メールや電話で寄せられた意見は、商品やサービスに強い関心を持つ顧客や、不満を抱えている顧客に偏りやすい傾向があります。
  2. 回答率の低さ
    アンケート調査などで回答率が低い場合は、収集したデータが母集団全体を反映できていない可能性があります。このような場合、分析結果の信頼性は低下します。
  3. 表面的・形式的な意見
    一般的に、顧客は調査に対して、本音を隠したり、社会的に望ましい回答をしたりする傾向があります。また、質問の仕方や調査環境が適切でないと、顧客が真意を伝えきれない場合があります。
  4. ノイズの混入
    ソーシャルメディアなどからVOCを収集する場合、大量なデータにノイズが混入し、必要な情報を見つけるのが困難になることがあります。例えば、感情的な意見や不確かな情報、誹謗中傷などが含まれたデータは、分析の精度を下げてしまう要因となります。
  5. 分析の難しさ
    収集したVOCを分析するには、高度なスキルや専門知識が必要となる場合があります。特に、自由回答形式のアンケートやインタビューでは、意味のある情報を見出すのは、かなりのスキルを求められます。

 
これらの課題を克服するためには、複数の収集方法を組み合わせたり、専門家のサポートを受けたりするなど、情報の精度を上げる工夫が必要です。
 
 

VOCをマーケティングに活用するための分析方法

収集したVOCをマーケティングに活用するには、適切な分析方法を用いることが重要です。分析方法によって得られる情報や洞察の内容が異なるため、目的に合った手法を選択する必要があります。

  1. VOC分析
    VOC分析とは、顧客の声を収集・分析することで、顧客のニーズや期待、不満などを明らかにするプロセスです。顧客満足度向上、商品開発、サービス改善、マーケティング戦略立案など、様々なビジネス活動に役立ちます。VOC分析では、アンケートやインタビュー、カスタマーサポートの記録、ソーシャルメディア上の口コミなど、様々なデータを用います。これらのデータを分析することで、顧客の行動パターンや心理、潜在的なニーズなどを把握できます。
  2. ソーシャルリスニング
    ソーシャルリスニングとは、ソーシャルメディア上の投稿やコメントを収集・分析することで、顧客の声を把握する手法です。近年、多くの企業がソーシャルリスニングツールを導入し、マーケティング活動に活用しています。ソーシャルリスニングでは、自社ブランドや商品、競合に関する意見を収集し、顧客の反応を分析します。これにより、ブランドイメージや評判、顧客のニーズ、市場トレンドなどを把握できます。
  3. その他の分析方法

    • テキストマイニング:大量のテキストデータからキーワードやトピックを抽出する手法
    • 感情分析:テキストデータに含まれる感情(喜び、怒り、悲しみなど)を分析する手法
    • 統計分析:数値データを分析し、傾向や相関関係を明らかにする手法

 
これらの分析方法を組み合わせることで、VOCからより深い洞察を得られ、マーケティングに活用できます。
 
 

VOCをマーケティングに取り入れるときの注意点

VOCは、顧客理解を深め、マーケティング戦略を成功させるための強力なツールです。しかし、VOCを効果的に活用するには、いくつかの注意点を理解しておく必要があります。

  1. 収集するVOCの質
    VOCの中には、偏った意見や感情的な意見、信憑性の低い情報なども含まれている可能性があります。そのため、VOCを収集する際には、信頼性の高い情報源から、客観的なデータを集めるように心がけましょう。
  2. 分析の精度
    収集したVOCを分析する際には、適切な手法を用いる必要があります。単純な集計や分析だけでは、表面的な情報しか得られない可能性があります。目的に応じた分析手法を活用し、VOCに隠された顧客の本音(言葉の裏側や、さらに奥の意見など)を引き出すことが重要です。
  3. 顧客の声を軽視しない
    VOCで得られた顧客の意見を無視や軽視すると、顧客満足度が低下し、ブランドイメージを損なう可能性があります。
  4. プライバシーへの配慮
    VOCを収集・分析する際には、顧客のプライバシーに十分配慮する必要があります。個人情報保護法などを遵守し、顧客の同意を得た上でデータを取得・利用しましょう。
  5. 継続的な取り組み
    顧客のニーズや市場のトレンドは常に変化します。そのため、VOCを継続的にモニタリングし、マーケティング戦略に反映していく必要があります。

 
 

VOCをマーケティングに活用し成功させるためのポイント

VOCをマーケティングに活用し、成功を収めるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
 
まず、VOCの活用はマーケティング部門だけの取り組みではなく、全社を挙げて取り組むことが重要です。顧客の声を収集・分析した結果を、商品開発やサービス改善、顧客対応など、あらゆる部門で共有・活用できれば、顧客中心主義の企業文化を育むことが可能です。
 
また、VOCの分析結果は、具体的な行動に結び付けることが重要です。顧客の声を参考に、商品やサービスを改善したり、マーケティングメッセージを修正したりして、顧客満足度向上を目指しましょう。
 
さらに、VOCの収集・分析を効率的に行うためには、適切なツールを活用することも重要です。アンケート調査やソーシャルリスニング、テキストマイニングなどは、とても効率的に分析できるツールが開発されています。目的に合ったツールを導入することで、VOC活用をスムーズに進められます。
 
これらのポイントを踏まえ、VOCを戦略的に活用することで、顧客満足度向上、売上増加、ブランドイメージ向上など、マーケティングにおける様々な成果を期待できます。
 
 

VOCをマーケティングに活用した事例紹介

現在、多くの企業が顧客の声を収集・分析し、マーケティング戦略に活かしています。ここでは、VOCをマーケティングに活用した事例を3つ紹介します。

  1. コーヒーチェーン店A社
    コーヒーチェーン店A社は、モバイルアプリ、アンケート、ソーシャルメディアなどを通じて積極的にVOCを収集して、商品開発やサービス改善に活かしています。例えば、顧客からの要望が多かったモバイルオーダー&ペイ機能を導入したことで、顧客体験を向上させ、売上増加に繋げました。
  2. 通販サイトB社
    通販サイトB社は、顧客レビューを積極的に活用して、顧客満足度を高めています。顧客からのレビュー内容を分析し、プライベートブランドの商品開発やレコメンド機能に活用しています。
  3. コンテンツ配信C社
    コンテンツ配信C社は、視聴履歴や評価などのデータを分析し、顧客一人ひとりにパーソナライズされたコンテンツをレコメンドしています。また、ソーシャルメディア上のVOCを分析することで、顧客の嗜好やニーズを把握し、コンテンツ制作にも活かしています。

 
 

まとめ

ここまで、VOCの概要やマーケティングへの活用方法、成功事例などについて解説しました。
 
今後、顧客ニーズは、ますます多様化していくと考えられます。そのような時代において、いかに素早く、的確に顧客ニーズをとらえ、マーケティングに反映できるかが、ビジネス成功の重要なポイントです。
 
VOCの活用は、顧客の意見を把握し、顧客満足度を高めるための重要な活動です。VOCを収集・分析することで、顧客の真のニーズを理解し、商品開発、サービス改善、マーケティング戦略などに活かせます。
 
ぜひ、VOCを積極的に活用し、顧客とのエンゲージメントを高め、ビジネスを成功に導きましょう。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

 
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