公開日:2023.08.03

市場調査会社の役割と最適な選定方法

  • 調査企画・設計

企業や組織のマーケティングや商品開発において、市場や顧客に関する情報はとても重要です。しかし、それらの情報を効率的に収集し、効果的に活用するには、専門的知識を持つスタッフや調査実施に関するノウハウが欠かせません。
これらの市場調査に関する業務を請け負い、企業や組織に代わって調査を行うのが市場調査会社です。市場調査会社は貴重な市場データを入手できるメリットがある一方で、世の中に多数存在し、選び方がよく分からないという問題点があります。
そこで、この記事では市場調査会社の役割や最適な選定方法、市場調査の最新トレンドについて解説します。
 

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市場調査会社の定義と重要性

市場調査会社とは、企業や組織に対してマーケットに関するデータや情報を提供する専門的な会社です。市場調査会社はマーケット調査、データ分析、現地調査などの手法を活用し、マーケット情報を提供することで企業や組織の意思決定をサポートします。
 
 

市場調査会社の役割と重要性

市場調査会社は市場調査の情報を提供することで、依頼された企業や組織(クライアント)の成長と競争力を向上させるという重要な役割を果たします。そこで、市場調査会社は専門的な知識や経験、豊富なデータに基づいて、以下のような分析や考察を行います。
 

● 市場の規模やトレンド、ニーズや競合状況の把握
● 市場におけるクライアントの強みや弱み、事業機会やリスクの明確化
● 市場調査の分析結果に基づく、クライアントのマーケティング戦略立案や製品開発サポート
● マーケティング施策効果や顧客満足度の測定
● 新規事業におけるマーケットポテンシャルや事業リスクの評価

 
 
現在は「モノ余りの時代」と言われ、ほとんどの市場で購買の決定権を消費者が握っています。そのため、市場で受け入れられる製品やサービスを販売するには、購買決定者である消費者のニーズやウォンツを的確に把握することが大切です。
このような背景の元、クライアントのマーケティング戦略における市場調査会社の重要性は、今後もますます高まっていくと考えられます。
 
 

市場調査の種類と手法

市場調査には様々な手法や種類があり、それぞれに特徴やメリットがあります。そのため、調査を実施する際は、その内容に応じて適切な種類や手法を選択することが大切です。
ここでは、市場調査の手法と種類について、その特徴やメリットを解説します。
 
 
定量調査と定性調査
 
 
 

 
 
 
市場調査の種類は、大きく分けると「定量調査」と「定性調査」に分かれます。
 
定量調査とは調査データを数値として把握することを目的とした調査です。定量調査は客観的で比較可能な数値データを得られることで、以下のようなメリットが発生します。

● 統計として高度な分析が行える
● データを比較しやすい
● 客観的な説得力が高い

 
 
 
定性調査とは数値では把握しづらい情報を、「言葉」や「行動」によって得る調査です。定性調査ではユーザーの心理を深掘りし、数値では把握しづらい感覚的な情報の把握を行います。
定性調査で得られる主なメリットは以下の通りです。

● 購買動機などユーザーの心理的要因を把握できる
● ユーザーのニーズやウォンツを把握できる
● 新たな発見やヒントを見つけやすい

 
 
パネル調査とアンケート調査
 
 
 

 
 
 
市場調査には、多くの手法があります。ここでは、調査実施される頻度が高い、代表的な調査手法を2つ紹介します。
 
一つ目の代表的な調査手法は、パネル調査です。パネル調査とは、あらかじめ選ばれた特定の属性や条件を持つ人々に対して、定期的に同じ内容の質問を行う市場調査です。
パネル調査は同じ対象者から長期的にデータを収集することで、ユーザーニーズの時系列変化や、精度の高い調査結果が得られるなどのメリットがあります。また、同じ対象者に調査を行うため、2回目以降は調査対象者選定のコストが大幅にカットできるのも大きな利点です。
 
もう一つの代表的な調査手法は、アンケート調査です。アンケート調査はアンケート用紙などを介して、市場データを収集します。
アンケート調査のメリットは、多くの対象者からデータを収集できることです。それにより統計学的な有意性ができるため、説得力の高い分析や推察が行えるようになります。また、アンケート用紙の質問内容や回答形式の自由度が高いため、クライアントの要望に合わせた調査を設計しやすいのも特徴です。
 
 

市場調査会社選定の評価基準

市場調査に関するノウハウが不足している企業や組織でも、市場調査会社を上手に利用することでマーケティングや製品開発に役立つ市場情報を入手できるようになります。しかし、市場調査会社はとても多数存在しているため、どの調査会社を選べば良いか迷うケースもあるでしょう。
そこで、ここでは市場調査会社を選ぶ際に、検討すべき重要な評価基準について解説します。
 
 

市場調査会社の選定ポイント

市場調査会社を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
 
 
 
実績と信頼性

過去にどのような調査実績があるかは、市場調査会社を調べるときのとても重要なポイントです。例えば、自社と近い分野での調査実績があれば、その分野の調査に関するノウハウがあると推測できます。また、市場調査会社が所属する業界団体や認定制度なども、信頼性を検討する際の参考にできます。
 
 
専門性や特徴

市場調査会社には、それぞれが得意とする分野や手法、調査規模などがあります。多くの場合、市場調査会社は得意としている専門性や特徴を、サイト上で紹介しています。
サイトに掲載されている市場調査会社の特徴を確認し、自社の調査目的やニーズにマッチしているかを確認しましょう。また、市場調査会社が公開している研究レポートも、専門性を図る重要な指標となります。
 
 
サービス内容と価格

市場調査会社はその専門分野や特徴によって、提供できるサービス内容に違いがあります。また、市場調査の価格も、会社によって大きく異なります。しかし、サービス内容や価格は調査概要が決まらないと算定しづらい場合があり、これらの情報をサイト上で確認するのは、難しいのが実情です。
このような場合は、候補となる市場調査会社に一度連絡を取って、担当者にヒヤリングしてもらうことをおすすめします。市場調査会社に自社の調査ニーズを説明すれば、大まかなサービス内容や価格を案内してくれるので、それらを選定の参考にしてください。
 
 
担当者

多くの市場調査はそれぞれ目的が異なるため、基本的にはオーダーメイドの調査設計を行います。そのため、市場調査会社の担当者とうまくコミュニケーションできるかは、調査を円滑に進めるために欠かせない要素です。
市場調査について分からないことや不明点があれば、積極的に市場調査会社の担当者に尋ねてみましょう。そこで自社のニーズをうまく汲み取って対応してくれる担当者であれば、市場調査がうまく進む可能性は高くなります。
 
 
 
 
 

 
 
 
 

手軽に行える市場調査サービス(セルフ型)の選択

通常、市場調査は個別に調査設計を行うため、精度の高いデータや分析結果を得やすいというメリットがあります。一方で、調査には相応の費用と時間がかかるケースが多く、素早く、低価格で市場データを入手したいというニーズへの対応が難しい場合もあります。
このような時に有用なのが、手軽に行える市場調査サービスです。手軽に行える市場調査サービスとは、インターネット上でアンケートを作成し、そこで得られたデータを自社で分析できるセルフ型のサービスです。セルフ型の市場調査サービスには、以下のようなメリットがあります。

● 低コストで利用できる
● 短い期間でで回答を集められる
● 自社で自由に分析できる

 
 
このようにセルフ型の市場調査サービスはコストや短納期、自由度の高さには優れていますが、一方で精度の高い分析結果を得るには相応の専門知識が必要です。このようなサービスは、予算や時間が限られている場合や、自社で分析ノウハウを構築したい場合に検討してみるのも良いでしょう。
 
 
 
 
 

 
 
 
 

マーケティングリサーチの事例

ここでは、マーケティングリサーチがどのように行われるのか、その事例を紹介します。
 
 
母親が対象の幼児飲料に関するアンケート

このアンケート調査は、3歳以下の子供をお持ちの方を対象に、インターネット上で行われました。
特定銘柄の幼児飲料の認知状況と飲用頻度によって、ユーザーを以下のようなグループに分類しました。

● ヘビーユーザー
特定銘柄の幼児飲料のいずれも、「週に1本以上」飲用しているものはなく、いずれか1つでも「1ヶ月に1本以上」飲用している人
 
● ミドルユーザー
特定銘柄の幼児飲料のいずれも、「週に1本以上」飲用しているものはなく、いずれか1つでも「1ヶ月に1本以上」飲用している人
 
● ライトユーザー
特定銘柄の幼児飲料のいずれも、「1ヶ月に1本以上」飲用しているものはなく、いずれか1つでも「1ヶ月に1本の以下の頻度で」飲用している人
 
● ノンユーザー
特定銘柄の幼児飲料のいずれも「飲んだことはない」人、または特定銘柄の幼児飲料を知らない人

 
 
上記のグループごとに、特定銘柄の幼児飲料を認知経路(テレビ、新聞、店頭、インターネットなど)や子供のテレビに関する情報(テレビ視聴時間、良く見る番組、見せたい番組、見たい番組など)を調べることで、広告展開のマーケティング情報として活用しました。
 
 
ファッションに関するデプスインタビュー

この調査では、調査対象者に高級ブランドについてのコラージュを作成してもらいました。コラージュは、対象者がブランドに抱いているイメージや思いなどを引き出すために利用される手法です。
調査対象者にはインタビューで、コラージュに使用した写真や絵にどのような気分・感覚が感じられたのかを伺い、高級ブランドの持つイメージをリサーチしました。
このような「コラージュ」作成など特別な作業が発生する際は、調査対象者への説明、個人情報漏洩の防止など、様々な配慮が必要となります。
 
 
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市場調査の最新トレンド

市場調査はインターネットの普及などに伴い、新たな情報収集の手段やデータ解析のツールなどが誕生しています。ここでは、そのような市場調査の最新トレンドについて解説します。
 
 

市場動向の把握と分析

ビジネスの成否は、市場環境によって大きく変わります。同じ製品であっても、競合との関係で優位性は高くも低くもなります。だからこそ、マーケティングや経営戦略を立案する際には、市場全体の動向を把握することがとても重要です。
特に技術革新などの新しいトレンドは、市場環境を大きく変化させます。これらの新しいトレンドをうまく利用できれば優位性の高いビジネス展開が可能になりますが、逃してしまうと市場における優位性を失うかもしれません。
近年、市場調査においても数々の技術革新が起きています。情報収集手段の多様化やデータ解析ツールの進化により、市場動向の分析を素早く、詳しく、簡単に行えるようになりました。
 
このような最新調査手法を活用し、市場動向をいかに素早く把握、分析し、マーケティングに活用できるかが、ビジネス成功の重要な鍵となっています。
 
 

データ収集と取得の手法

市場調査におけるデータ収集と取得の手法は、近年、その考え方が大きく変化しています。
 
かつての市場調査では一度に数千人から数万人の対象者に対し大規模なリサーチを行うことで、市場データを大量に取得する方法が主流でした。この方法には市場の豊富なデータを得ることで、詳細で信頼度の高い分析結果を得られるというメリットがあります。
 
一方でデータ収集のコストが高いことや、分析結果を得るまでに時間がかかるため市場の急速な変化に対応できないという問題点を抱えていました。
その後、インターネットやスマートフォンが普及すると、より低コストで手軽に市場データを収集する手法が広まりました。これにより市場調査の考え方は「一度の大規模リサーチ」から「複数回の手軽なリサーチ」へとシフトしています。
 
複数回の手軽なリサーチとは数百人から数千人の対象者に対して、短期間に低コストの調査を行う手法です。この調査手法は従来の調査と比較するとデータの信頼性が下がるものの、統計的な有意性を保ちながら変化を素早く捉えられるというメリットがあります。
さらに、市場調査においてはインターネットやスマートフォンを活用して、以下のような最新手法が誕生しています。

● データ解析ツールによるビッグデータの分析
● オンラインで開催するグループインタビュー
● 調査対象者の視線を分析するやモバイルアイトラッキング
● AIを活用した需要予測や市場動向分析

 
 
 
現在、市場調査の手法が多様化したことで、様々なニーズに対応した市場調査を実施することが可能になりました。ですが、市場調査のニーズが多様化しているからこそ、調査手法の特徴を的確に把握し、自社に適した選択や運用を行えるかがとても重要になっています。
 
だからこそ、専門知識を有する市場調査会社と協力関係を築きながら、自社のニーズにマッチした市場動向を把握できるかが、今後、マーケティングの重要課題となっていくでしょう。
 
 

まとめ

ここまで、市場調査会社の重要性や選定基準などについて解説しました。
市場調査の手法は日々進化しており、以前とは比較にならない費用や時間で、重要な市場動向を把握することが可能になりました。しかし、最新手法をうまく活用するには市場調査に関するある程度の専門知識は不可欠です。
市場調査会社は市場調査に関する専門的な知識や技術を持ち、様々なアドバイスやサポートを行ってくれる存在です。市場調査会社と協力することで、自社に必要なマーケットリサーチ機能を低コストで構築できるようになります。
もし、市場調査に関して問題や悩みがあるようでしたら、一度、市場調査会社に相談してみてはいかがでしょうか。
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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