公開日:2023.08.28

ブランド評価の深掘り:基礎概念から具体的な応用まで

  • ブランディング

ブランドとは、消費者の心に残る印象や感情、価値観などを表現するものです。ブランドは企業においてとても重要な資産であり、いかに強いブランド力を築くかはマーケティング上の重要課題です。
しかし、ブランド力にはその印象や強弱を把握しにくいという特徴があります。そのため、ブランディングを進めていく中で企業とユーザーの間にズレが生じて、思うようなブランド効果を発揮できなくなるケースが起こる場合があります。
 
このようなズレの発生を回避するために、ブランドがユーザーにどのように認知されていくかを調べるのが「ブランド評価」です。ブランド評価はブランドがユーザーに与える影響を適切な指標を用いることで、ブランドの価値を測定する手法です。
 
この記事ではブランド評価の基礎概念を解説するとともに、具体的な応用方法について紹介します。
 

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ブランド評価のコンセプト

ブランドとは企業や商品、サービスなどに関してユーザーが抱く認知や感情であり、ユーザーの購買行動において重要な選択肢や判断基準になります。
 
ここでは、ブランド評価の意味とその重要性について解説します。
 
 

ブランド評価とは?

ブランド評価とはブランドがユーザーに与える影響について、適切な指標を用いながらブランドの価値を測定するものです。ブランド評価は大きく経済的価値(ブランド経済価値など)と消費者価値(ブランド力、ブランド・エクイティなど)の2つに分類されます。
 
ブランド評価は、ブランドの資産価値を把握するだけでなく、ブランドの強みや弱み、競合との違い、市場でのポジションなどを明らかにします。それにより、企業は自社ブランドの価値を的確に把握し、事業戦略やマーケティング施策の立案に役立てることが可能です。
 
 

ブランド評価の重要性

ブランド評価はブランドの価値を測定するために行われ、その価値は経済的価値と消費者価値の2つの側面から測定されます。
 
経済的価値とは、ブランドを金額に直した場合の価値を算定するものです。ブランドの経済的価値を把握することは、企業財務におけるブランドの重要性を明確にします。また、ブランドの使用料や売買における算定の根拠ともなります。
 
消費者価値とは、ブランドが消費者にどのようなイメージや影響力を与えているかを測定するものです。消費者価値は、ブランド・エクイティやブランド力などと呼ばれることもあり、マーケティング施策における重要な情報として活用されます。
 
例えば、ブランドがユーザーにどのような感情を与え、ユーザーのどのようなニーズや欲求を満たしているかなどを分析すれば、ブランディングの方向性や、競合との差別化ポイントなどを明らかにできます。
 
 

ブランド評価の方法

ブランド価値を評価する方法は、その目的によって様々な手法があります。目的に沿った視点や指標を活用することで、より深い洞察や具体的な分析が可能となります。
 
ここでは、ブランド評価の方法について、どのように選択すれば良いかについて解説します。
 
 

ブランド評価の指標選択

ブランドの評価には、経済的価値と消費者価値の2つの側面があります。経済的価値とはブランドを金額に直すといくらになるか算定したもので、消費者価値とはブランドが消費者にどのようなイメージや影響力を与えているかの測定です。
 
マーケティング施策立案において重要なのは消費者価値です。消費者価値はブランドの強みや弱み、競合との差別化ポイントなどを明らかにすることができますが、経済的価値のように絶対的な指標はありません。
 
ブランドの消費者価値を評価したい場合は、自社のマーケティング課題に対して、どのような指標を用いるのが最適かを選択する必要があります。ブランドの知名度を知りたいのであればブランド認知度、ブランドに対するイメージを知りたいのであればブランドイメージが評価すべき指標です。
 
この他にも、ブランドの社会的責任や存在意義を表すブランドパーパスや消費者とブランドとの親近感を表すブランドアフィニティなどの指標を用いる場合もあります。
 
 

消費者の視点でブランド評価を行う

ブランド評価を行う際、重要なのは消費者の視点で評価することです。多くの場合、自社で働く経営者や従業員は、自社ブランドに対して様々な思い入れを持ちます。そのため、どうしても消費者とは異なるイメージを持つ傾向にあります。
 
この状況を例えるなら、子供に対する親の気持ちのようなものです。 親は自分の子供に対して愛情や期待、心配など様々な感情を抱くため、その評価にはどうしても偏りが生じてしまいます。
 
しかし、子供が成長して社会で働きだしたときには、社会は親と違った基準で子供を評価します。これと似たような状況が、ブランド評価においても起きやすくなります。
 
市場におけるブランドの価値を決定するのは、自社ではなく消費者です。消費者は自社とは違った基準でブランドを評価します。マーケティング施策における方向性やヒントを得るためには、消費者の評価を正しく知ることが大切です。
 
そのためにも、ブランドの消費者価値を把握するには、マーケティング調査を行うことが重要です。徹底して消費者の視点に立ったブランド評価を知ることが、価値ある情報分析へとつながります。
 
 

量的・質的ブランド評価方法

ブランド評価の方法には、量的と質的の2つの方法があります。量的側面とは数値で評価する方法で、質的側面とは「こだわりがある」「おしゃれ」など数値では表現できない評価方法です。
 
量的なブランド評価は、消費者の認知や感情などを数値化することで、ブランドの強みや弱み、競合との差別化ポイントなどを明らかにできます。具体的な調査方法としては、ブランド認知度、ブランド選好度、点数によるイメージ評価などが該当します。
 
ブランド認知度とは消費者がブランドの名称やロゴを見聞きしたときに、そのブランドを思い出すことができるかの評価方法です。また、ブランド選好度とは、消費者が複数のブランドから自分の好きなものを選ぶ際に、そのブランドをどのくらい好むかを測定します。
 
通常は数値の把握が難しいブランドイメージについても、イメージを点数評価することで、数値による把握を可能とする評価方法があります。この方法を用いると、ブランドのポジショニングや差別化要因を把握できます。
 
質的なブランド評価は、消費者の認知や感情を言葉や概念で表現することで、ブランドの魅力や特徴、問題点などを感覚的に理解できます。質的なブランドの評価方法には、ブランド連想や口述によるイメージ評価などがあります。
 
ブランド連想とは消費者がブランドに関連付けて思い浮かべる言葉やイメージを調査する手法で、消費者がブランドに持つ印象や感情を把握します。
 
また、口述によるイメージ評価とは、消費者が自分の言葉でブランドに持つイメージを説明する方法です。口述によるイメージ評価はインタビュー形式などで行われ、消費者が持つイメージを深掘りすることで、消費者が求めているニーズや欲求を知ることができます。
 
ブランドとは本来、抽象的な存在です。そのため、1つの側面だけで評価してしまうと、その的確な価値を見誤る可能性があります。だからこそ、ブランドを量的・質的両面から評価することで、ブランドの評価をより的確に把握できます。
 
 

ブランド評価モデルの類型

ブランド評価モデルとは、ブランドの金銭的な価値を評価するための枠組みです。ブランド評価モデルにはさまざまな類型がありますが、ここでは代表的な2種類について紹介します。
 
 
コストベースのブランド評価
 
コストベースのブランド評価とは、ブランドを確立するために費やしたコストを合計して評価する方法です。ここでのコストとは、ブランドの開発や維持にかかった費用や投資なで、ブランド名やロゴの制作費用、広告宣伝費用、研究開発費用などが該当します。
 
コストベースのブランド評価モデルには、比較的簡単で客観的にブランドの価値を算出できるというメリットがあります。しかし、コストはあくまで過去に費やした費用です。そのため、現在の市場でのブランド価値を反映していないという問題点があります。
 
 
マーケットベースのブランド評価
 
マーケットベースのブランド評価モデルとは、市場で販売されている類似ブランドと比較することで、自社ブランドの価値を評価する方法です。マーケットベースのブランド評価では、売上高や利益率、市場シェアなどブランドが持つ収益性や成長性などが考慮されます。
 
そのため、 現在のブランド価値を把握することができ、市場における優位性や競合他社との比較ができることがメリットです。一方で、市場環境や消費者動向に影響されやすい、類似ブランドとの比較が難しいなどの点を考慮する必要があります。
 
 

ブランド評価の実践

ブランド評価とは具体的にどのように進めれば良いのでしょうか?
 
ここでは、ブランドロイヤリティの評価に用いられるNPSという指標を例にして、ブランド評価の進め方について解説します。
 
 

ブランド評価の適用事例

ブランド評価の適用事例として、NPSという指標について紹介します。NPSとは「Net Promoter Score」の略で、ブランドに対するユーザーの「推奨意向」を測る指標です。
 
NPSでは「あなたは友人や同僚に、(ブランドやサービスの名前)をどの程度薦めたいと思いますか?」という質問を行います。選択肢には0(薦めない)~10(薦める)までの11段階を用意し、どの段階にあたるかを答えてもらいます。
その結果、10~9と答えた集団を推奨者(Promoter)、8~7を中立者(Passive)、6~0を批判者(Detractor)の3つに分類し、「推奨者」-「批判者」の割合の差を算出する指標です。
 
NPS指標が高いほど、顧客がブランドやサービスを他人に薦める可能性が高くなります。 一方、NPS指標が低ければ低いほど、顧客がブランドやサービスから離れる可能性が高くなります。
 
 

ブランド評価結果の読み解き

NPS指標だけだと、ブランドに対するユーザーの「推奨意向」しか分かりません。しかし、この指標と他の情報を組み合わせて分析すれば、ブランドの強みや弱みなどより詳細なブランド評価を読み取ることができます。
 
例えば、NPS指標と顧客満足度の相関関係を分析すれば、以下のような顧客心理が読み解けます。
 

● NPSとの相関が高く、満足度が高い要素は「ブランドの強み」
これらの要素がブランドの要となっている。
 
● NPSとの相関が高く、満足度が低い要素は「ブランドの弱み」
これらの要素は、ユーザーがブランドに不満を持ち、離反する理由になる。
 
● NPSとの相関が低く、満足度が高い要素は「維持すべき項目」
これらの要素は、ユーザーがブランドに期待している基本的な要素。
 
● NPSとの相関が低く、満足度が低い要素は「注意観察すべき項目」
これらの要素は、ブランドがユーザーからあまり期待されていない要素。

 
 
このような相関関係を踏まえたうえでインタビューなどの定性調査を行えば、よりユーザーのブランド評価を的確に洞察できます。ブランドへの量的と質的な評価を知ることで、より具体的なマーケティング施策立案へとつなげられます。
 
 

ブランド評価を改善・向上させる戦略

ブランド評価の分析を行ったら、次はブランド評価を改善・向上させるステップです。ここでは、ブランドロイヤリティを改善・向上させるための戦略について解説します。
 
 
ブランドロイヤリティ向上手法
 
ブランド評価を踏まえたうえでブランドロイヤリティを高めるには、以下のような手法があります。
 

● ブランドへの愛着や親近感を高めたい
動画や記事を通じて、ブランドのストーリーや理念を消費者に伝えます。また、SNSなどでブランド運営者が、消費者とコミュニケーションを取る方法も効果的です。
 
● ファンの連帯感を高めたい
ファン同士がブランドに関する情報や感想を共有したり、交流したりするコミュニティを提供する手法が効果的です。例えば、SNSやオンラインフォーラムなどを活用したり、オフラインイベントやワークショップなどの開催などがあります。
 
● ブランドの強みを強化したい
マーケティングリサーチやフィードバックの収集などで消費者のニーズを分析した上で、その要素を強化した商品やサービスを提供します。ブランド評価の結果を商品やサービスの改善や開発などに反映することが重要です。
 
● お得感を高めたい
消費者に対してポイントプログラムなどの報酬や特典を提供します。ただし、クーポン券などディスカウント販売はブランド価値を下げる可能性もあるので、会員制サービスや限定商品など活用して、消費者の特別感や優越感を高める配慮が必要です。

 
 
好循環サイクルの構築
 
ブランド評価を高めると、安定した利益を確保しながらブランド力を高めていける好循環サイクルを構築できるようになります。
 
ここでは、好循環サイクルを構築するための4つのステップを紹介します。
 

STEP1 ターゲットの明確化
 
まずはブランドをどのターゲットに訴求するかを明確にします。
 
消費者は基本的に自分にとってのナンバーワンブランドしか購入しません。自社のブランドがどのターゲットであれば、ナンバーワンブランドと認識されるかをブランド評価を分析して明確にしましょう。
 
また、競合ブランドがある場合は、自社ブランドの強みと弱みを分析して、どのポイントで違いを訴求するか、戦略を立案することが大切です。
 
 
STEP2 コアファンの形成
 
ターゲットユーザーが明確になれば、自社ブランドの強みをユーザーに伝えていきます。大切なポイントは、ターゲットユーザーがブランドと関わることで、高い心理的満足感を得られることです。
 
価格やスペックなどの物理的満足感は、競合商品の出現によって一気に取って代わられる可能性があります。この物理的満足感を追及していると、ブランドによる好循環サイクルは構築できません。
 
一方、心理的満足感は抽象的な存在であるがゆえに、競合商品が出現してもそう簡単にユーザーは離れたりはしません。例えばコーラ飲料において、どんなに美味しい商品を競合が発売したとしても、コカ・コーラ社のブランドイメージを簡単に覆すことはできません。
 
ユーザーの心理的満足感を高めるには、商品の魅力だけでなくユーザーとのコミュニケーションを高めることも重要です。SNSでの交流やコミュニティなどを提供することで、ユーザーの心理的満足感を高めていきます。
 
この心理的満足感の高まりが、ブランドをユーザーにとってのナンバーワンからオンリーワンへと変えていきます。
 
 
STEP3 売上と利益の安定化
 
ブランドがユーザーにとってのオンリーワンとなれば、強力な競合商品が販売されたとしても、ユーザーはそう簡単には他のブランドに移行しません。なぜなら、競合商品のスペックや価格が優れていたとしても、心理的満足感を得られないからです。
 
その結果、ブランドは純粋な競合商品がなくなり、ユーザーの指名買いによって高単価で安定した販売が見込めるようになります。
 
 
STEP4 コスト低下と投資拡大
 
ブランド力の高い商品は指名買いされるため、売上や利益を確保するための新規顧客や顧客維持に関わるコストが大幅に低下します。そうすると、高利益率販売と顧客獲得コスト低下の相乗効果で、ブランドの利益は大きく拡大します。
 
ブランドはその利益をベースとしてブランドに再投資することで、競合と圧倒的な差を生み出すことができます。再投資によりますますブランド力が高まれば、より多くのオンリーワンユーザーを育成し、さらなるブランドの拡大という好循環が構築されます。

 
 

ブランド評価に関連する重要な概念

ブランドの価値を高めるためには、ブランド評価の結果をもとに、どのような戦略を立てるかが重要です。その戦略を立案するためには、ブランドに関連する概念を理解しておく必要があります。ここではブランド評価に関する重要な概念として、「ブランドロイヤリティ」と「ブランドストラテジー」について紹介します。
 
 

ブランドロイヤリティとは?

ブランドロイヤリティとは、消費者が特定のブランドに対して抱く忠誠心や選好度です。 ブランドロイヤリティが高いと、消費者はそのブランドの商品やサービスをリピート購入したり、他人に薦めたりなどの行動をとるようになります。
ブランドロイヤリティの高いユーザーは以下のような行動をとるようになります。

● 安定的に同じブランドの商品やサービスを購入する
● 口コミや推奨などで他の消費者に影響を与える
● 競合他社の商品やサービスに移行しにくい

 
 
ブランドロイヤリティを高めることは、ブランドの長期的な売上や利益の安定化につながります。
 
 

ブランドストラテジーとは?

ブランドストラテジーとは自社のブランドの目的や方向性やポジショニングなどを定め、どうやって消費者に浸透させていくかを考える戦略です。ブランドストラテジーは、ブランドの価値を高めるための基本方針にあたり、ブランドの存在意義を決定づける重要な方針と言えます。
 
ブランドストラテジーと混同されやすい言葉にブランディングがあります。両者の関係はブランドストラテジーが上位概念となり、そのもとで具体的にブランドを浸透させる活動がブランディングに当たります。
 
 

まとめと次のステップ

ここまで、ブランド評価の基礎概念から、具体的な応用方法について解説しました。
 
ブランド評価は、ブランドが消費者にどのように捉えられているかを知るための重要な情報です。この情報があればこそブランドの現状を把握でき、今後、どのようにブランドを浸透させていけばよいかの方向性が見えてきます。
 
ブランド評価を的確に実施して、次はブランドを浸透させるステップへと進んでいく。そうすることで、自社ブランドをユーザーのオンリーワンへと成長させることができるようになります。
 
自社ブランドを本当の意味で価値ある存在にするためにも、まずはブランド価値の評価から始めてみませんか?
 

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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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