2020.12.15
日本のマーケティングリサーチ20年の変遷
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公開日:2021.10.29
皆さんはカッコいいデザインの製品を目にして、それだけでとても欲しくなったような経験はないでしょうか?私たちの日常には、自動車、時計、カメラ、スマートフォン、ノートPCなど、無数ともいえるほどの工業製品が溢れています。そして、それらの多くの製品の中から、初めてひと目見ただけで心の底から“欲しい”と思うような製品と出会うことがあります。逆に、どれほど優れた性能でも、デザインの点からまったく手に入れたいと思えない製品もあります。なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
この点に関して、カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授の有名な認知科学者ドナルド・A・ノーマンは、人間のデザインに対する受容を、人間の情報処理の3つのレベルに当てはめて考察しました。
内臓感覚レベル | 本能、直観(一目惚れ) |
行動レベル | デザインに関する使いやすさ |
内省レベル | 最も高次な情報処理 |
従来は、デザイン学の領域でも、デザインにおいては使いやすさが何よりも重要であると考えられていましたが、ノーマンの考え方によれば、一目惚れを生じさせるには、「内臓感覚レベル」が何より重要であるということになります。つまり、人間は最初にそのデザインに魅力を感じなければ、いくら使いやすいデザインであっても、興味を示さなくなってしまうということです。
最初にユーザーの目に触れるのは、その製品のデザインであることを忘れてはいけません。製品のコモディティー化が進んだ現代だからこそ、これまで以上に製品に対する付加価値(=差別化)が求められるようになっています。そのような文脈において、その差別化の決め手となり得るのがデザインなのです。
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一言でいえば、「心理学をデザインに活かす考え方」となります。デザインにおける様々な問題を、心理学の方法論を用いて解決しようとするのがデザイン心理学です。
製品パッケージを例にして見ていきましょう。ある製品のパッケージがリニューアルされることになったとします。リニューアルの目的は、現在のパッケージや競合他社商品よりもユーザーに目立つようにすることです。リニューアルされた新パッケージが、現在のパッケージや競合他社商品のパッケージよりも目立つかどうかを客観的に判断するにはどのようにすればよいのでしょうか?
例えばAとBという2つのパッケージデザイン案があったとき、直観的にほとんどの人がAのほうがBよりも目立つと感じたとしても、それだけでは定性的な判断に過ぎないので、確かな証拠となりえません。ところが、実験心理学の手法を応用すると、定量的にAとBの2つのパッケージデザイン案の目立ちやすさを比較することが可能になるのです。
その一例が、視覚的探索(visual search)の手法の応用です。視覚的探索というのは、ある特定の対象をそれ以外の対象の中から探し出すという課題です。そして、この視覚的探索課題では、目標刺激を発見するまでの時間が測定されます。
この視覚的探索課題において、目標刺激をパッケージデザイン案Aにした場合とBにした場合でその反応時間を比較すれば、パッケージデザイン案AとBの目立ちやすさを数値的に比較できることになり、デザイン評価のために有益なツールとなるのです。
今までデザイン心理学について見てきましたが、従来のマーケティングリサーチとは異なるアプローチであることがわかるかと思います。デザイン心理学は、従来の方法論では十分にすくい取ることのできなかった人間の心理的なファクターを明らかにする可能性を有した画期的なアプローチ方法を提供します。たとえば、従来は製品の使いやすさや性能の面に目が向けられがちでした(もちろんそれらは重要な要素です)が、その製品が売れるためにはユーザーの内臓感覚に訴える(一目惚れしてもらえる)デザインであることが何よりも重要ですので、その点を明らかにしうるのがデザイン心理学なのです。
高齢者向け製品を例にすると、これまでの「高齢者向け製品」には、シニアは視力も運動能力も低下しているという生理的側面に主に注目し、そのような点に対応すればシニアも喜ぶだろうと安易に考えられた製品も多かったのです。しかし、実際のシニアの方たちからのそうした製品の評判は極めて悪く、満足には程遠いのが現実です。理由は明白で、そのような製品はシニアにとって「使いたくない製品」だからです。
上記のようなカッコ悪い製品では、「この程度の製品で満足しておけばよいのだ」と無言のうちにユーザーに語り掛けているようなものです。だからこそシニア向け製品でも、むしろシニア向け製品だからこそ、より一層スマートで洗練されたデザインが求められるのではないでしょうか。
実際にBBSTONE社が、過去にダイキン社のエアコンリモコンについて手掛けた例を紹介します。
それはデザイン心理学の手法を用いて高齢者の潜在意識を紐解くことで、機械操作の苦手なユーザーにも簡単に使えると同時に、ユーザーの心理的側面にも配慮したデザインのエアコン用リモコンを創り上げるというプロジェクトでした。
そのコンセプトは「人に聞かずに使えるリモコン」です。
従来のユニバーサルデザインを標榜する製品の多くは、スイッチや押しボタンなどが大きく設定され、弁別性を極度に重視した派手な色遣いが使われる一方で、審美性は殆ど考慮されていないようになっていました。このプロジェクトでは一見してボタンの使い方がわかるような簡単かつ明瞭なデザインとしながら、広い層のユーザーにも受け入れられるスマートで洗練されたデザインを目標としました。
このプロジェクトの過程から非常に興味深いことがわかりました。それは機械操作の苦手なユーザーでも、エアコンの自動運転というコンセプトには共感しても、自分自身でエアコンの基本的な操作(冷暖房の切り替え、風量調節)ができないようなエアコンには強い拒否感を示すということです。これは人間には家電の操作を機械に任せるのではなく、自分で操作したいという欲求があるということです。
このような結果から「人に聞かず使える」という概念は「一つのボタンですべてを済ませられる」というわけではなく「一見して自分のしたいことが何でも分かるように思えるわかりやすいデザイン」を実現しなくてはならないことを意味するのです。
最終的な提案では図のように、最も基本的なボタン以外は、半透明のカバーで覆うという方法をとることにしました。そうすることで副次的なボタンは隠されているため、使わないときはすっきりした印象を与えるとともに、副次的なボタンもその存在は認識できるので、ユーザーには使いたい時には使えるという安心感を生じさせることができるのです。
この度アスマークはデザイン心理学をベースにクライアントの課題解決を行っているBB STONE社と業務提携を結び、お客様の抱える多くの課題に対し、BBSTONEの保有するデザイン心理学を用いた改題解決ノウハウとアスマークの保有するリサーチサービスを最大限に活かした新たな視点からのソリューションをご提案いたします。
ヒトの直感を数値化できるデザイン評価、パッケージ評価「デザイン心理学調査」につきましてもご案内しておりますので是非ともご参照を頂けますと幸いです。
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