公開日:2022.06.08

パッケージデザインのつくり方、8つの視点

  • 商品開発

メーカーが商品のパッケージを工夫すると、ときに、商品の実力以上に商品を売れることがあります。
では、これまであまりパッケージに力を入れてこなかったメーカーが、パッケージで販売促進を図ろうと考えたら、まず何から取りかかればよいのでしょうか。
「パッケージでもっと売りたい」と思ったら、何をすればよいのでしょうか。
この記事では、商品のパッケージのつくり方と、デザインの進め方を解説します。
8つの視点を紹介しますので、1つでも多く採り入れてみてください。
 
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コンセプトや方針を決める「狙いが重要」

パッケージ改革に取り組む企業が最初にすべきことはコンセプトを決めることです。
商品開発ではコンセプトづくりから始めているのに、パッケージ・デザインではコンセプトをないがしろにしていないでしょうか。
もしくは「パッケージのコンセプトも商品コンセプトで同じでよい」と考えていないでしょうか。

例えば、メーカーの開発チームが新商品のコンセプトとして「20代の会社員が少し背伸びすれば買うことができるちょっぴりプレミアム感」を打ち出したとします。
しかしパッケージのデザイナーにこのコンセプトをこのまま伝えても、よいデザインにならないでしょう。「ちょっぴりプレミアム感」ではデザインの方向を決めづらいからです。

商品開発のコンセプトは大抵は、消費者が商品を使っているときのことを想像しながらつくります。
しかしパッケージが効果を発揮するのは、商品が店頭に並んだときや、商品がサイトに掲載されたときです。
そのため「ちょっぴりプレミアム感」というコンセプトで商品を開発することはできても、これでパッケージをデザインすることは難航します。

パッケージ・デザインのコンセプトは、もっと具体的なものがよいでしょう。例えば次のようなものです。
 

パッケージ・デザインのコンセプトの例
・思わず手に取りたくなるような
・パッケージを一目みて利用シーンを想像させる
・コンビニの商品棚で真っ先に客の目に飛び込んでくるもの

 

ターゲット層を絞る

新商品をつくるとき、ターゲット層を定めます。ターゲット層の設定は商品開発の段階や、その前のマーケティングの段階で行います。
そしてパッケージを考えるときはさらにターゲットを絞り込んだほうがよいでしょう。

例えば子供向けの商品であれば、商品棚をチェックするのは親です。したがって子供向け「商品のターゲット」は子供でも、「パッケージのターゲット」は親にしなければなりません。

また、若い人向けの文房具品の場合、若い女性は男性向けパッケージを嫌がりますし、若い男性は女性向けパッケージを嫌がります。この場合、商品は同じでも女性用パッケージと男性用パッケージを用意してもよいでしょう。
また、主婦がビジネスマンの夫の下着を買うことがあります。男性用下着それ自体は男性のことだけを考えて開発することができますが、パッケージはあまり「オトコオトコしたもの」にしないほうがよいと判断することもできます。

 

ブランド化するか、単発ヒットを狙うか

メーカーが商品をシリーズ化したり、ラインナップ数を増やしたりする場合、商品のブランド化を検討すると思います。ブランディングに成功すると、価格交渉に巻き込まれず高い利益率を期待できるので、多くの企業が商品のブランド化に注力しています。

商品群のブランド化ではパッケージ・デザインがとても重要で、少なくとも統一感を持たせる必要があります。
大手コンビニがプライベートブランド商品にプレミアム感を持たせようとしたとき、著名なデザイナーに依頼してパッケージを刷新したことがあります(*1)。ポテトチップスのパッケージもハンバーグのパッケージもビーフカレーのパッケージも、同じ色使いと同じロゴと同じフォントを使い、商品写真の配置も同じにしました。パッケージに統一感が出たことで客が「この食品がおいしいなら、あの食品もおいしいはず」と連想するようになり相乗効果が生れこの高級路線は成功しました。

また、単発の商品でもパッケージにインパクトを持たせることで、いわゆる尖った商品にすることができます。
さらに、企業イメージを一変させたいとき、これまでのデザイン・コンセプトからかけ離れたデザインをパッケージにあしらうと、消費者に「かなり変わったな」と気づいてもらえます。

パッケージのデザインの方向性を決めるときは、ブランド化を目指すのか、単発ヒットを狙うのか、激変させるのか、といった検討もしたいところです。

*1:https://goetheweb.jp/lifestyle/art/20210219-design_organization

 

商品価格から決める

「商品の価格」と「パッケージがイメージさせる価格」は開きがないほうがよいでしょう。
例えば、1万円の商品のパッケージを100円の商品のパッケージのようにしたらあまり売れないはずです。なぜなら1万円の商品を買う消費者は「1万円も使った」という実感を得たいからです。100円の商品のパッケージでは1万円分の買い物体験をすることはできません。

また逆に、100円の商品のパッケージを凝ったものにしてしまうと、消費者は「こんなに豪華なパッケージにするくらいなら商品価格を下げればいいのに」とあきれてしまうかもしれません。
「商品の価格」と「パッケージがイメージさせる価格」を近づけることで消費者に違和感を起こさせなくします。

 

素材や形を決める

パッケージのデザインは素材選びから始まっています。プラスチックにするのか、紙にするのか、ツルツルの手触りにするのか、ガサガサ感を出すのか、厚くするのか、薄くするのか――このような検討をする必要があります。
また、素材はパッケージのコストに大きく影響し、それは商品価格に跳ね返っていきます。

形も重要です。
ハムメーカーが、人気ソーセージのパッケージを変更したことが話題になりました(*2)。従来はプラスチック製のパッケージの上部を細いテープで縛って扇の形をつくっていたのですが、エコの観点からその扇の飾りをやめたのです。これでプラスチック使用量が28%減ったそうです。
パッケージの形にこだわるか、エコを追求するか――このハムメーカーは苦渋の選択を迫られました。それくらいパッケージの形にこだわりがあったわけです。
またパッケージの形を変えることで、ユーモラスにすることも、持ちやすくすることもできます。

*2:https://www.nipponham.co.jp/seq/

 

写真、イラスト、コピーを決める

パッケージには写真、イラスト、コピー、説明書きを配置することができます。
商品それ自体のデザインが優れていれば、あえてパッケージはシンプルにして商品の写真を貼ってもよいでしょう。
また最近は、商品名をあえて長くして商品の性質を説明してしまうものもあります。その場合、パッケージに長々とその名称を書き連ねるだけでインパクトが生れます(*3)。

*3:https://bunshun.jp/articles/-/54413

 

機能を決める

パッケージに機能を持たせることもできます。
例えば、保存性を高めなければならない商品のパッケージの素材に、アルミ箔を使うことがあります。
菓子のパッケージにアルミ箔が使われることが多いのですが、これはアルミが酸素、湿気、光、熱を遮断して中身の劣化を防ぐことができるからです。
また開封しにくいパッケージを選ぶことも、開封しやすいパッケージを選ぶこともできます。
商品の性質や用途に応じてパッケージの機能を変えていかなければなりません。

パッケージの機能性では、エコの観点も重要です。
先ほど紹介したソーセージのパッケージの形の変更は、プラスチックの使用量を減らしたのでエコの機能を持たせたと考えることもできます。
さらに、再利用を前提としたパッケージも注目を集めています(*4)。パッケージの耐久性とデザイン性を高めて、使い終わったら空のパッケージを回収して再び商品を充填して販売します。
この方法は昔は当たり前でした。日本酒の一升瓶もジュースの瓶も再利用していましたが、大量消費の時代に入りパッケージは商品を使うときに捨てるのが当たり前のものになりました。
それが今は大量消費が環境問題を引き起こしていることから、パッケージを捨てることは悪とみなされる風潮があります。
パッケージを再利用できない場合でも、プラスチック製から紙製に変えるといった工夫が求められることもあるでしょう。

*4:https://loopstore.jp/

 

売り場を想像したデザインにする

パッケージを、売り場のことを考えてデザインすることがあります。
コンビニは狭い店内に少量多品種の商品を置こうとします。それでコンビニはメーカー各社に小さいパッケージの商品を開発するよう求めます。コンビニの棚を獲得したいメーカーは、そのニーズに応えられるパッケージングを考えていかなければなりません。
その逆に巨大スーパーはまとめ買いを誘うために大容量パッケージの商品を求めるでしょう。
1つの商品に対して小パッケージと大パッケージの両方を用意しなければならないこともあります。

 

まとめ

売れるパッケージや消費者が手に取りたくなるパッケージは、メーカーにとって永遠のテーマといえるでしょう。なぜなら、よいパッケージをデザインしてそれがヒットすれば他社もマネするからです。似たデザインの異なる商品が並べば、パッケージの優位性は薄れてしまいます。
パッケージは合理的な判断に基づいてデザインしていく必要があります。さらに「どう売るか」という戦略的なアプローチも必要になります。
 
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執筆者
アスマーク編集局
株式会社アスマーク 営業部 マーケティングコミュニケーションG
アスマークのHPコンテンツ全ての監修を担い、新しいリサーチソリューションの開発やブランディングにも携わる。マーケティングリサーチのセミナー企画やリサーチ関連コンテンツの執筆にも従事。
監修:アスマーク マーケティングコミュニケーションG

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