会場調査を実施する際のポイントや注意点を、わかりやすく解説いたします。
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会場調査は、ネットリサーチやホームユーステストに比べるとやや割高な調査手法です。調査担当者は誰でも、できる限りコストを抑えたいものですが、それでも会場調査を行うには理由があります。
このレポートでは、会場調査を実施する際のポイントや注意点をわかりやすく解説しています。会場調査がどういった手法かは大体わかっているが、より実践に即した内容・コツが知りたい!という方には特にお勧めのコンテンツです。ぜひ関係者の方とも共有いただき、有意義な調査のために活用していただければ幸いです。
漠然と“会場調査をしたい”と思っている場合、調査手法として会場調査が本当に適しているのでしょうか? 会場や調査員、多数の対象者を要するので、コストは出来る限り抑えたいところです。会場調査は実行動による量的データを得るために行いますが、質的な側面を知りたいのであれば、実行動を組み込んだグループインタビューの方が適しているかもしれません。または、単に量的データだけを求めるのであれば、ホームユーステストで代用できるのかもしれません。その調査の目的は何なのか?どのような調査結果データが必要なのか?他の調査手法と比較して、それぞれのメリット・デメリットを明確にし、会場調査の特長を浮き彫りにします。
会場調査は、ネットリサーチやホームユーステストに比べるとやや割高です。調査担当者は誰でも、できる限りコストを抑えたいものです。 それでも会場調査を行う理由の一つに、「リアルで行わなければならない」ということがあります。 例えば、「実際に試飲・試食をしてもらわなければ評価をできない」「平面ではなく実際のパッケージを見て評価をしてもらいたい」といった状況です。さらに「すべての人に同じ温度で冷蔵した飲み物を飲んでもらいたい」「未発表のパッケージデザインなので厳重に管理したい」という要素が組み合わさった時に会場調査を実施します。 言い換えれば、会場調査のメリットは「全ての対象者に同一条件で管理した製品の試飲・試食調査ができる」「秘匿性の高い呈示物を厳重に管理することができる」ということになります。
会場調査は定量的なデータを得ることを目的として実施します。
コストとの兼ね合いもありますが、通常サンプルサイズは30~300くらいで実施することが多く、自由回答(FA)を除く調査結果は、基本的には全て“%”で分析をします。例えば「自社製品と競合製品」の比較試食調査を行う場合、「自社製品を好む人の割合が〇〇%」「競合製品を好む人の割合が〇〇%」というデータを見て優劣を判断します。
自由回答(FA)は“%”データ分析の際の参考として活用する場合が多く、「問1.A、B 2つの製品を比較して、あなたはどちらの方が好きですか。」「問2.では、問1でそのようにお答えになった理由をお知らせ下さい。」というように、前問でその選択肢を選んだ理由を自由回答(FA)で聞くといった質問パターンとなります。
どの調査でも同じですが、会場調査を行う場合も調査目的を明確にすることが重要です。
調査目的があいまいなまま調査を設計・実施してしまうと、出てきた結果を読み取ることができず、せっかく行った調査が意味のないものになってしまいます。前述のように「自社製品と競合製品との比較をしたい」「自社の既存製品とリニューアル製品との比較をしたい」といったはっきりとした調査の目的を持つことです。また、「この製品のこの部分が評価されるのではないか」「この製品は20代女性に評価されるのではないか」といった仮説を持っていると、より調査の設計がしやすくなります。
会場調査を行う前に、最終的に出てくるアウトプットをイメージしておくことが大切です。
会場調査の場合、他の調査手法に比べ、事前準備の良し悪しが調査当日に与える影響が最も大きいと言われます。場合によっては、数十名の対象者が同時に会場に滞在することになり、また1人あたり20~30分の時間を要することが多いため、滞らないように常に効率的な作業対応が求められます。 当日、足りなくなる備品はないか?質問紙に急遽修正が必要であればどうするか?動かない機材はないか?対象者が何名までなら同時に対応できるのか? 前述のとおり、進行が滞ってしまうのは会場調査において命取りにもなりかねません。念には念を入れて、予めイレギュラーを想定した事前準備の方法についてご説明します。
前述のとおり、会場調査には常に効率的な作業対応が必要となります。会場調査の場合、そのほとんどをマンパワーで補う必要があるので、調査に慣れた人手(調査員)があれば非常にスムーズに進行させることができます。それには、予め必要となる調査員の人数を割り出し、全員に調査の目的・内容・注意すべき点などを伝えておく必要があります。 調査をスムーズに進行させるためには、調査員にどういう指示出しをする必要があるのでしょうか。押さえておくべきポイントを明確に致します。
会場調査は通常2~3週間の準備期間を必要とします。準備の内容としては、
などがあります。
準備期間が長く、多くの人が関わり、当日も多くの対象者が出入りするため、会場調査は一つのイベントと見ることができます。
事前準備の際には、様々な“if”を想定しておくことが大事です。
など、起こり得る様々な状況を想定します。試飲・試食の調査では、当日使用している紙皿や紙コップが足りなくなるといったことがよく起きます。
誤って床に落としてしまったり、破損したりすることもあるため、必要量ギリギリではなく、最低でも必要量の1割は予備として準備します。特にテスト品が不足してしまっては、せっかくの調査が台無しになってしまうため、必ず予備分を準備するようにしましょう。
会場調査の当日になって、調査票の間違いに気が付き修正する必要や、足りない備品を購入する必要が生じたりすることがあります。そのような時のために、あらかじめ会場周辺に「高速でカラーコピーができるお店はないか」「大型のショッピングセンターはないか」など調べておくと良いでしょう。また、インターネットを使う調査の場合はできるだけ前日に会場内で接続状況をチェックしておくことをお勧めします。
ネット環境の整った会場を使用する場合でも、念のためポケットWi-Fiを用意しておくなどすると安心です。
会場調査当日は、調査員を上手くコントロールすることが重要です。調査員の人数は調査の内容・ボリューム・タイムスケジュールによって決定します。
会場調査の調査員の役割は、主に対象者へのアンケート記入方法の説明・回答に誤りがないかのチェック、試飲(試食)品の提供、回答ブースへの案内などです。
また、必要に応じて自由回答(FA)の回答内容についての深堀り(プロービング)も行います。
この自由回答(FA)の回答内容についての深堀り(プロービング)は、ネットリサーチではできない会場調査ならではのメリットと言えます。
調査開始前に、全ての調査員を集めてインストラクションを行います。 インストラクションでは、調査目的、対象属性、対象条件を伝え、具体的にアンケート1問1問についての注意点・チェックポイントを説明していきます。 この際、アンケートの中でも特に重要なポイントや間違えやすい質問があれば、少し時間をかけて強調するようにします。 全ての調査員を集めてインストラクションを行う目的は、全員が共通の認識を持ち誤解をなくし、疑問を解消することです。必ず調査員からの質問を受け付ける時間を設け、質問がなくなるまでインストラクションを続けましょう。
会場調査では来場した対象者の対応をする受付を必ず設けます。
受付では、なりすましを防ぐために身分証を呈示してもらい本人確認をしたり、約束の時間より早く来場したり遅刻をした対象者の対応もします。臨機応変な対応が必要となります。
また、試飲・試食の調査の場合は製品の温度管理や調理といった作業が発生します。
このように、アンケート以外の作業も生じるため、どの調査員をどこに配置するかによってその日の調査がスムーズに進行するか否かが決まってしまいます。
以上のように会場調査においては、調査員をいかに上手くコントロールするかが重要となります。
会場調査には、現場全体を把握する管理者の存在が必要不可欠です。調査員が作業ベースで“点と点を線で結ぶ”働きをするのに対し、管理者は現場全体にアンテナを張り、常に“面で把握する”必要があります。 流れが滞りそうな不安因子はないか?きちんとデータが取れているか?調査員は効率的に動けているか?不足しそうな備品はないか? 問題が発生する前に状況を察知し、対策を講じるのが役目となります。会場調査の心臓部となる管理者の役割について、網羅的に説明します。
果汁100%のオレンジジュースの試飲前に、ある調査員から「果汁100%のオレンジジュースです」と説明を受けた対象者と、別の調査員から「オレンジジュースです」とだけ説明を受けた対象者、風味やイメージを調べる上でバイアス(偏り)がないといえるでしょうか? また、2種類のビールの試飲調査で、全ての対象者に「A⇒B」の順序で試飲してもらった場合、必然的にAのビールの評価が高くならないでしょうか?1杯目がおいしく感じるビールのような製品であれば、なおさらです。 バイアスがない正確なデータを取得するために押さえておくべき留意点をご紹介します。
会場調査では、調査の現場をコントロールする管理者が必要です。管理者の最も重要な役割は「常に会場全体を見渡す」ことです。備品の搬入・搬出、会場設営、調査員へのインストラクション、完了したアンケート票の最終チェックや当日のイレギュラー対応など管理者のすべきことは多岐にわたります。一つのことだけに関わりすぎると全体が見えなくなってしまうため、管理者は常に会場全体を見渡して、調査員への的確な指示を出すことに専念すべきです。特にトラブルが発生すると慌ててしまい、全体が見えにくくなってしまいますが、管理者が全体を見なければ流れが止まることにもなりかねません。どのような状況においても管理者には常に冷静な対応が必要となります。
会場調査に限らず調査を行う際には、バイアス(調査上の偏り)の排除が必要です。会場調査においても、常にこのバイアスを排除することを意識して調査の設計・会場のレイアウトを考えましょう。会場設営の際には、入口から入ってすぐに回答席や呈示物が見えないようなレイアウトにします。可能であればパーテーション等を使用して工夫をします。アンケート開始前から何の調査なのかがわからないようにするためです。 以下、いくつかのバイアスについて説明します。
試飲・試食順・呈示順による偏りを順序(オーダー)バイアスと言います。 2製品以上の試飲・試食調査の場合には、バイアスを排除するため、全ての順序パターンで調査を行います。 例えばP・Q・Rという3種類の製品の試飲調査を実施する場合は「1.P→R→Q」「2. Q→P→R」「3. R→Q→P」の3通りの試飲パターンで行います。さらに全体で300サンプル、うち男女150サンプルずつが対象となる場合には「1.P→R→Q(男性50名・女性50名)」「2. Q→P→R(男性50名・女性50名)」「3. R→Q→P(男性50名・女性50名)」のように男女均等に割り付けます。これを男女均等に割り付けなければ、新たなバイアスが生じてしまいます。
アンケート票に記載している情報以外に調査員が口頭で補足説明を行う場合には、調査員ごとに違う説明をしてしまわないように十分な配慮が必要です。アンケート票に記載するか別紙で行うなどして、できる限り口頭での補足説明は避けるようにしましょう。やむを得ず調査員が口頭で補足説明を行わなければならない場合、説明文章は全ての調査員で統一しなければなりません。
アンケートの質問順序もバイアスがかからないように配慮する必要があります。 例えば「Q1.あなたが下記それぞれのビールをお飲みになる頻度をお答えください。1.○○ビール、2.△△ビール・・・」「Q2.最も後味がよいビールと聞いて思い浮かぶ銘柄をいくつでも結構ですので、ご記入ください」と質問した場合はどうでしょうか。Q2は自由回答で、本来ならばアンケートの一番最初に聞くべき質問です。この例の順番で聞いてしまうとQ1で出てきた銘柄がQ2で多く回答されてしまいます。これが質問順序によるバイアスです。
「火を使って調理をしたものを試食いただき、タブレットでアンケート回答して欲しい」 簡単な要望にも見えますが、これに見合う会場はかなり限られます。 「火を使っても大丈夫」「煙や匂いの対策ができている」「インターネット接続が途切れない」、この3つのポイントをクリアしている必要があります。 調査会社に委託する調査主体側からはイメージしづらい部分もあり、実際に自分で会場選びを行なうとなると、途端に困ってしまいがちです。ここでは、調査内容に適した会場選びのポイントをご説明します。
・・・こういったケースを避けるためにも押さえるべきポイントがあります。 例えば、大学生の対象者であればテスト期間中の調査は避ける、ビジネスマンの対象者であれば大手町や東京の会場にする、といったように対象者に留意した条件にすると融通が利きやすくなるため、キャンセルが出にくくなります。 また、なりすましや条件違いについては、対象者の募集段階の事前アンケート(スクリーニング)で制御します。 具体的な対象者選びのポイントについてご説明します。
会場調査を実施するにあたって、対象条件の設定は非常に重要です。調査目的に合致しない対象者を集めても意味がありません。
「この商品のターゲットはどのような属性か」
「どのような対象条件が必要か」
「サンプルサイズはいくつにするか」
「1つの時間枠に何人ずつ対象者を呼ぶことが可能か」
「何分おきに対象者を呼ぶか」
など、事前に十分吟味してからリクルーティング(対象者招集)を開始します。
会場調査は定量調査です。30~300名など、ある程度のサンプルサイズを集める必要があります。 あまりにも対象条件を絞り込みすぎると必要なサンプルサイズが集められない場合があります。設定した対象条件で会場調査に必要なサンプルサイズが集まるかが不明な場合は、 事前にウェブで「出現率調査」をしてみるのも良いでしょう。あまりにも出現率が低すぎる場合は対象条件の再設定や緩和条件を検討すべきです。 「出現率が低い」=「世の中にあまりいない人達」を対象者としている訳ですので、広く世の中に売り出したい商品の調査である場合は、本当にその対象条件・属性が適切なのかどうか再考する必要があります。
会場調査の調査時間は長くても60分以内に抑えたいところです。
内容にもよりますが、60分を超える調査では対象者にも負担がかかり、後半の回答内容に影響が出る可能性があります。会場調査における適切な調査時間の目安は30分程度です。どうしても60分を超える調査時間になる場合は単調な質問を続けすぎないようにしたり、途中で休憩を挟むなどの工夫をして回答精度を保つように努めましょう。
調査対象者への負担が多ければ多いほど、回答の質を保てなくなってしまいます。“調査対象者への配慮=データの質が高まる”ということを念頭に、できるだけわかりやすく、長時間にならないよう心掛けましょう。
上記の内容を資料としてダウンロードしていただけます(PDF)。アンケート調査がはじめての方にもわかりやすい内容となっておりますので、ぜひお手元に置いてご活用ください。
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